要点を先に
- 違いは打撃があるかどうか。インパクトは回しながら叩いています。
- 最初の1台はドリルドライバーです。穴あけができて、締めすぎも防げます。
- インパクトが要るのは長いビスを大量に打つとき。それ以外では過剰です。
- ビットの互換性が違います。インパクトは六角軸専用、ドリルドライバーは丸軸も掴めます。
結論:迷っているなら、ドリルドライバーです
先に答えを書きます。
これから電動工具を1台買うなら、ドリルドライバーを選んでください。
理由は3つあります。
- 穴あけができます。インパクトは穴あけが得意ではありません。
- 締めすぎを防げます。クラッチという機構が付いています。
- 音が静かです。集合住宅では、これが決定的な差になります。
売り場ではインパクトドライバーのほうが目立ちます。プロが使っているのもインパクトです。ですが、プロの現場と家庭のDIYでは、求められるものが違います。
何がどう違うのかを、順番に説明していきます。
違いは「叩いているかどうか」
両者を分けているのは、この一点です。
ドリルドライバーは、ただ回します
モーターの回転を、そのまま先端に伝えます。単純な仕組みです。
そのぶん、回転が滑らかです。穴を開けるときに、まっすぐきれいに掘れます。
インパクトドライバーは、回しながら叩きます
内部にハンマーとアンビルという部品があり、回転方向に打撃を加えています。
使ったことがあれば、あの「カカカカッ」という音を思い浮かべてください。あれが打撃の音です。
金づちで釘を打つのと同じ理屈です。連続的に押すより、瞬間的に叩くほうが、はるかに大きな力を出せます。
だから長いビスも、硬い木も、ねじ込めます。これがインパクトの存在理由です。
比較すると、こうなります
| ドリルドライバー | インパクトドライバー | |
|---|---|---|
| 打撃 | なし | あり |
| 締める力 | 中程度 | 非常に大きい |
| クラッチ | あり(締めすぎを防ぐ) | なし |
| 穴あけ | 得意 | 苦手 |
| 先端の取付 | チャック(丸軸も掴める) | 六角軸専用 |
| 音 | 静か | 大きい |
| 手首への反動 | 大きい | 小さい |
| 本体の大きさ | やや長い | 短い |
| 価格 | やや安い | やや高い |
| 向いている人 | 家庭のDIY全般 | 本数を打つ人 |
注目してほしいのは「手首への反動」の行です。
直感に反するかもしれませんが、力が強いインパクトのほうが、手首は楽です。
理由は打撃にあります。ドリルドライバーはビスが食いつくと、行き場を失った力が本体を回そうとします。手首がねじられるわけです。インパクトは、その力を打撃として逃がしています。
力の弱い方が長時間の作業をする場合、この差は無視できません。
クラッチという安全装置
ドリルドライバーの最大の利点です。
本体の先端近くに、数字の書かれたリングがあります。1から20前後まで刻まれているものが一般的です。
これがクラッチです。設定した力を超えると、空回りして止まります。
| 設定 | 使う場面 |
|---|---|
| 弱い数字(1〜5) | 組み立て家具、薄い板、小さいネジ |
| 中間(6〜12) | 一般的な木ネジ |
| 強い数字(13〜) | 硬い材料、太いビス |
| ドリルマーク | 穴あけ。クラッチが働きません |
使い方の基本は、弱い設定から始めて、足りなければ上げることです。
最初から強くすると、締めすぎて材料を壊します。とくに組み立て家具のパーティクルボードは、簡単に潰れます。
この点は組み立て家具に必要な工具にも書きました。
インパクトにはクラッチがありません
止めるタイミングは、使う人が判断します。
これが初心者に難しいところです。打撃音は締まってからも同じように鳴り続けます。音と手応えから止め時を読むには、経験が要ります。
慣れないうちは、気づけばビスが板を突き抜けています。
穴あけができるかどうか
もうひとつの大きな違いです。
ドリルドライバーの先端はチャックという構造で、丸い軸のドリル刃も掴めます。太さも無段階に調整できます。
インパクトドライバーの先端は六角の穴です。六角軸(対辺6.35mm)の先端工具しか差せません。
| 作業 | ドリルドライバー | インパクト |
|---|---|---|
| 木に穴を開ける | 得意 | 六角軸の刃なら可能 |
| 金属に穴を開ける | 可能 | 不向き |
| 正確な位置に開ける | 得意 | 不向き |
| 大きな穴(ホールソー) | 可能 | 不向き |
| コンクリートに穴 | 不可 | 不可 |
インパクトで穴あけが苦手なのは、打撃が刃を傷めるからです。金属用のドリル刃は、叩かれる前提で作られていません。刃が欠けます。
また、打撃で刃先が暴れるため、狙った位置からずれやすくなります。
なお、インパクトの六角軸は対辺6.35mm、つまり4分の1インチです。ソケットアダプタを付ければ、ボルトやナットを回すこともできます。ただし打撃で締めるため、締め付けの強さを管理できません。トルクを守りたい箇所には使わないでください。この考え方はソケットの差込角の選び方にも書いています。
コンクリートには、どちらも使えません
誤解が多い点なので、はっきり書いておきます。
コンクリートやブロックに穴を開けるには、振動ドリルまたはハンマードリルが必要です。まったく別の工具です。
名前が似ているので混同されますが、打撃の向きが違います。
- インパクトドライバー:回転方向に叩く。ビスをねじ込むため。
- 振動ドリル・ハンマードリル:前後方向に叩く。硬い材料を砕くため。
インパクトでコンクリートに挑んでも、穴は開きません。刃を壊すだけです。
音の問題
カタログでは目立たない項目ですが、住環境によっては最重要になります。
インパクトドライバーの打撃音は、かなり大きく、そして響きます。金属を叩く音なので、壁や床を伝わりやすい性質があります。
集合住宅で、休日の昼間に数分使う。それでも、隣室には確実に聞こえます。
ドリルドライバーはモーター音だけです。この差は、実際に使う頻度に効いてきます。音を気にして使わなくなる工具は、持っていないのと同じです。
マンションやアパートにお住まいなら、この一点だけでもドリルドライバーを選ぶ理由になります。
用途別の早見表
| やりたいこと | 適する工具 |
|---|---|
| 組み立て家具を組む | 手締め、またはドリルドライバー(弱設定) |
| 壁に棚を付ける | ドリルドライバー |
| 木材で棚や台を作る | ドリルドライバー |
| ウッドデッキを作る | インパクト |
| 石膏ボードを張る | インパクト |
| 2×4材で本格的に組む | インパクト |
| 自転車・バイクの整備 | 手工具が基本 |
| コンクリートに穴 | 振動ドリル |
| カーテンレールを付ける | ドリルドライバー |
境目は、「長いビスを、何十本も打つか」です。
ウッドデッキや大きな棚を作るなら、インパクトの出番です。数百本のビスを手で打つのは現実的ではありません。
ですが、家庭の用事の大半は「数本から数十本のネジ」で終わります。ここではドリルドライバーが快適です。
電圧とバッテリーの選び方
どちらを選ぶにせよ、次に迷うのがここです。
| 電圧 | 性格 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 10.8V前後 | 軽くて小さい。力は控えめ | 家具の組立、小物の取付 |
| 14.4V | 中間。扱いやすい | 家庭のDIY全般 |
| 18V | 力が強い。重くなる | 本格的な木工、屋外作業 |
家庭用なら、10.8Vから14.4Vで足ります。
18Vは力がありますが、そのぶん重くなります。重い工具は、だんだん使わなくなります。頭上での作業では、腕が上がりません。
バッテリーで囲い込まれます
知っておいてほしい構造の話です。
充電式の工具は、メーカーごとにバッテリーの規格が違います。互換性はありません。
つまり、最初に選んだメーカーが、その後もついて回ります。2台目、3台目を買うとき、同じメーカーなら本体だけ買えばよく、別メーカーならバッテリーと充電器も必要になります。
1台目を選ぶ時点で、その先を考える価値があります。
- 今後も工具を増やす予定があるか。あるなら、品揃えの広いメーカーを。
- この1台で終わりか。なら、安価なもので構いません。
- すでに同じメーカーの工具を持っているか。あるなら、それに合わせるのが得です。
なお、バッテリーは消耗品です。数年で劣化します。本体より先に、バッテリーの寿命が来ます。交換用が入手できるメーカーかどうかも、確認しておいてください。
一緒に買っておくもの
| もの | 理由 | 優先度 |
|---|---|---|
| プラスビット(2番)の予備 | 消耗品です。必ず摩耗します | 必須 |
| 木工用ドリル刃のセット | 下穴を開けるのに使います | 高い |
| 保護メガネ | 切粉が目に入ります | 高い |
| ビットホルダー | 先端を長く伸ばせます | 中 |
| マグネット付きビット | ネジが落ちにくくなります | 中 |
| 皿取りキリ | ネジ頭を沈められます | 低い |
付属のビットは1本だけ、ということがよくあります。ビットは消耗品です。先端が摩耗すると、ネジ穴を舐めるようになります。
数百円のものですから、予備を持っておいてください。
下穴の話
木にネジを打つとき、先に細い穴を開けておくと失敗が減ります。これを下穴と呼びます。
効果は3つあります。
- 木が割れにくくなります。とくに端の近くに打つとき。
- ネジがまっすぐ入ります。狙った位置からずれません。
- 締める力が少なくて済みます。手も工具も楽です。
穴の太さは、ネジの軸(ねじ山を除いた芯の部分)と同じくらいが目安です。太すぎると効きません。
この下穴あけこそ、ドリルドライバーが得意な作業です。1台で下穴とネジ締めの両方をこなせるのが、最初の1台に推す理由でもあります。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| インパクトで家具を組んだ | 板が割れる | 手締めかドリルドライバー |
| クラッチを最強にしたまま使った | 締めすぎて材料を壊す | 弱い設定から始める |
| インパクトで金属に穴を開けた | 刃が欠ける | ドリルドライバーを使う |
| コンクリートに挑んだ | 穴が開かず刃が傷む | 振動ドリルを使う |
| 摩耗したビットを使い続けた | ネジ穴を舐める | 予備と交換する |
| 下穴なしで端に打った | 木が割れる | 下穴を開ける |
| 本体を斜めに当てた | ネジが傾き、頭が潰れる | まっすぐ押し当てる |
| 18Vを買ったが重くて使わない | 結局手工具に戻る | 実際に持って選ぶ |
最後の項目は、意外と多い話です。
カタログの数値は大きいほうが良く見えます。ですが、使わなくなった高性能な工具より、毎回手に取る軽い工具のほうが役に立ちます。
可能なら、店頭で実際に持ってみてください。
判断に迷いやすいこと
Q. 両方買うべきでしょうか
A. 最初は1台で構いません。
ドリルドライバーを使っていて「力が足りない」と感じる場面が繰り返し出てきたら、そのときインパクトを足してください。
必要になってから買うほうが、選ぶ目も育っています。先回りして揃えると、使わない工具が増えます。
Q. セット品はお得ですか
A. バッテリーと充電器が付いているかを確認してください。
安く見える商品が、本体のみということがあります。すでに同じメーカーのバッテリーを持っている人向けの売り方です。
初めて買うなら、バッテリー2個と充電器が付いたセットが結局は安くなります。1個だけだと、充電中は作業が止まります。
Q. コード式は選択肢に入りますか
A. 用途が限られるなら、悪くありません。
バッテリーの劣化がなく、価格も抑えられます。作業場所が決まっているなら、合理的な選択です。
ただし、コードの取り回しは想像以上に面倒です。家具の裏、脚立の上、屋外。こうした場面では、充電式の身軽さが効きます。
Q. ネジがうまく入っていきません
A. 押す力が足りていないことが多いです。
電動でも、手工具と同じで「押しながら回す」のが基本です。押しが弱いとビットが浮き、ネジ頭を削ります。
それでも入らないなら、下穴を開けてください。硬い材料では、下穴なしで入れるほうが無理があります。
Q. 中古品はどうでしょうか
A. バッテリーの状態が読めないため、慎重に判断してください。
本体が無事でも、バッテリーが劣化していれば使えません。そしてバッテリーは、新品を買うと本体に近い価格になることがあります。
買うなら、バッテリーは新品を別途用意する前提で価格を見てください。
ここまでの要点
- 違いは打撃の有無。インパクトは回しながら叩いています。
- 最初の1台はドリルドライバー。穴あけができ、クラッチで締めすぎを防げます。
- インパクトが要るのは長いビスを大量に打つときです。
- コンクリートには、どちらも使えません。振動ドリルが必要です。
- バッテリーはメーカーで囲い込まれます。1台目で先を考えてください。
電動工具売り場に立つと、インパクトドライバーが主役に見えます。数字も大きく、プロっぽい。惹かれるのは自然なことだと思います。
ですが、道具は作業に合っているかどうかで選ぶものです。力が強すぎる工具は、材料を壊します。
家庭のDIYで本当に困るのは「力が足りない」ことより、「加減ができない」ことのほうが多い。クラッチという機構は、まさにそこを解決するために付いています。
なお、機種ごとの仕様や適合する先端工具は製品によって異なります。実際にお使いになる際は、取扱説明書をご確認ください。