先にまとめ
- 結論:一酸化炭素は、色も臭いもありません。自分では気づけません。
- 症状が出たときには、すでに判断力が落ちています。
- 換気は1時間に1〜2回が目安。ただし機種の指示が優先です。
- 空気の入り口と出口、両方が要ります。片方だけでは流れません。
なぜ、気づけないのか
一酸化炭素中毒が怖いのは、危険を察知できないという一点に尽きます。
| 都市ガス・プロパン | 一酸化炭素 | |
|---|---|---|
| 色 | なし | なし |
| 臭い | 付けてあります | なし |
| 気づけるか | 臭いで分かる | 分からない |
都市ガスやプロパンガスには、意図的に臭いが付けられています。漏れたときに気づけるようにするためです。
ところが、一酸化炭素には、それがありません。
燃焼の結果として、その場で発生するものだからです。あらかじめ臭いを付けておく、ということができません。
だから、部屋に充満していても、いつもと同じに感じます。
症状が出たときには、遅いのです
一酸化炭素中毒の初期症状は、頭痛、吐き気、めまい、眠気です。ここに、この中毒の恐ろしさがあります。眠気が出る、という点です。暖かい部屋でうとうとするのは、ごく自然なことに感じられます。危険の合図だとは思いません。そして、症状が進むと判断力そのものが落ちます。「窓を開けよう」「外に出よう」と考える力が失われていきます。自力で動けなくなり、そのまま意識を失う。この経過をたどるため、気づいて助かるという前提が成り立ちません。だからこそ、症状が出る前の段階で、換気という習慣によって防ぐしかないのです。
もうひとつ、覚えておいてほしいことがあります。
同じ部屋にいる人が、同時に影響を受けます。
誰かが異変に気づいて助ける、という展開になりにくい。全員が同じように、眠くなっていきます。
そして、体の小さい方ほど、早く影響を受けます。小さなお子さん、高齢の方、そしてペット。
燃焼する器具と、しない器具
まず、お使いの暖房器具がどちらなのかを確かめてください。
| 器具 | 燃やすか | 換気が要るか |
|---|---|---|
| 石油ストーブ | 燃やす | 必要 |
| 石油ファンヒーター | 燃やす | 必要 |
| ガスストーブ・ガスファンヒーター | 燃やす | 必要 |
| 木炭・練炭 | 燃やす | 必要 |
| エアコン | 燃やさない | 不要 |
| 電気ストーブ・こたつ | 燃やさない | 不要 |
| 床暖房(電気式) | 燃やさない | 不要 |
| FF式(屋外へ排気) | 燃やす | 排気経路の点検が要ります |
表の最後の行を、補足します。
給気と排気を屋外で行う方式の器具があります。室内の空気を汚さない構造です。
この場合、室内の換気という点では負担が小さくなります。
ただし、安心してよいわけではありません。
- 屋外の排気口が、雪や物でふさがれる
- 排気管が外れる、腐食する
- 設置の不備で、排気が室内に戻る
いずれの場合も、燃えた気体が室内に入ります。
屋外側の排気口は、シーズン前に見てください。雪の多い地域では、冬の間も確認が要ります。
同じ話は、給湯器にも当てはまります。給湯器の交換にまとめました。
どんなときに発生するのか
一酸化炭素は、不完全燃焼で生じます。
燃えるために必要な酸素が足りないと、燃え方が変わります。その結果として出るものです。
| 状況 | なぜ危険か |
|---|---|
| 換気をせずに使い続けた | 部屋の酸素が減っていきます |
| 芯や燃焼部が傷んでいる | 正常に燃えません |
| 劣化した灯油を使った | 燃え方が不安定になります |
| 吸気口がふさがれている | 空気が入りません |
| 排気の経路が詰まっている | 燃えた気体が戻ります |
| 気密性の高い部屋 | すきま風による自然な換気がありません |
最後の項目に、注意してください。
近年の住宅は、断熱と気密の性能が上がっています。暖かく、省エネであることは利点です。
ですが、その裏返しとして、自然に入ってくる空気が減っています。
昔の家では、意識しなくてもすきま風が入りました。今は、そうではありません。換気は、意識してやる作業になりました。
すきま風を塞ぐ工事をした部屋では、とくにそうです。窓の結露・すきま風対策でも触れました。塞ぐだけでは、別の問題が出ます。
換気の考え方
目安として、1時間に1〜2回、1〜2分と案内されることが多くあります。
ただし、機種の取扱説明書に指示があれば、そちらが優先です。部屋の広さ、機器の大きさ、住宅の構造によって必要な量が変わります。
ここで、大事な点をひとつ挙げておきます。
窓を1か所だけ開けても、空気は流れません。
空気が出ていくには、入ってくる場所が要ります。そして、入ってくるには、出ていく場所が要ります。
- 対角線上の2か所を開ける。部屋の端と端です
- 片側しか窓がないなら、扉を開ける。廊下側へ抜けます
- 換気扇を併用する。出口を作れます
- 短時間、大きく開ける。細く長く開けるより効率的です
寒いのは分かります。ですが、1〜2分です。
その間に室温は少し下がりますが、壁や家具が持っている熱で、すぐ戻ります。長く細く開けているより、短く大きく開けるほうが、寒さも少なく済みます。
24時間換気を止めないでください
近年の住宅には、常時運転する換気の仕組みが備えられています。
これを切らないでください。
「寒い」「音が気になる」という理由で止める方がいますが、止めることを前提に設計されていない設備です。
燃焼する暖房器具を使う部屋では、なおさらです。換気扇・レンジフードの掃除と交換にも書きました。
換気を、忘れないための工夫
「1時間に1〜2回」と分かっていても、続きません。
暖かい部屋にいると、忘れます。そして、忘れることを責めても意味がありません。仕組みで解決してください。
- タイマーを鳴らす。台所用のもので構いません
- 行動と結びつける。お茶をいれるとき、席を立つときに開ける
- 番組やテレビの区切りで開ける。
- 換気を知らせる機能を使う。機種によっては、一定時間で警報が鳴ります
- 家族で、担当を決めておく。
4番目に触れておきます。
石油ファンヒーターの多くには、一定時間ごとに換気を促す表示や音が備わっています。
これが鳴ったとき、止めてすぐ点け直すという使い方をしていないでしょうか。それでは、意味がありません。
音を消すためではなく、窓を開けるための合図です。
そして、機器が知らせてくれるのは運転時間であって、室内の空気の状態ではありません。知らせがない機種でも、換気は必要です。
警報器を、置いてください
ここまで書いてきた通り、人間の感覚では検知できません。
それなら、機械に任せるしかありません。数千円で買えるものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 価格の目安 | 3,000円台から |
| 電源 | 電池式、コンセント式 |
| 設置場所 | 機器から少し離れた、生活する高さ |
| 寿命 | 製品ごとに期限があります |
| 火災警報器との違い | 別物です。兼用の製品もあります |
最後の行を、補足します。
住宅用の火災警報器は、一酸化炭素を検知しません。煙や熱を感知するものです。
「うちには警報器がある」と思っていても、それが一酸化炭素に対応しているとは限りません。表示を確認してください。
そして、警報器には寿命があります。センサーが劣化します。本体に期限の表示があるので、確認してください。
設置場所については、製品の説明に従ってください。器具の真上や、風の当たる場所は避けるよう指示されていることが多いようです。
とくに危ない場面
過去の事故から、繰り返し起きている状況を挙げておきます。
寝るときに、点けたまま
就寝中は、換気ができません。
そして、異変に気づけません。眠っているところに眠気が重なる形になります。
燃焼する暖房器具は、寝る前に消してください。
寒さが心配なら、電気の暖房や、寝具で対応してください。電気であれば、燃焼による一酸化炭素は出ません。
テントや車の中で
屋外用の器具を、閉じた空間で使う。毎年、事故が起きています。
テントの中でのストーブや炭。車内での燃焼器具。いずれも、非常に狭く、密閉された空間です。
部屋より、はるかに早く酸素が減ります。締め切ったテントの中は、住宅の一室とは比べものにならない容積です。暖をとるつもりが、短時間で危険な状態になります。
雪で埋まった車内の話は、冬の車の備えにも書きました。排気の出口がふさがれると、同じことが起きます。
炭を、屋内に持ち込む
七輪や火鉢を、換気の乏しい場所で使う。
炭は、炎が見えにくく、静かに燃えます。そのため、危険が実感しにくいという特徴があります。
ですが、酸素を消費していることに変わりはありません。むしろ、消えかけの状態では不完全燃焼になりやすくなります。
発電機を、屋内や軒下で
停電のときに、屋内や玄関先で発電機を動かす。
これも、毎年のように繰り返されている事故です。
発電機はエンジンを回しています。排気が屋内に入れば、極めて危険です。
この点は、発電機の選び方にもまとめました。屋外で、建物から離して使ってください。
「おかしい」と思ったら
- まず、窓を大きく開ける。
- 暖房器具を消す。
- 全員で、外に出る。ペットも連れて
- 体調に異変があれば、医療機関へ。
- 原因が分かるまで、その器具を使わない。
この順番には、意味があります。
換気が最優先です。原因を調べるのは、そのあとで構いません。
そして3番。「少し休めば治る」と、その場に留まらないでください。判断力が落ちている状態で、その判断をすることになります。
疑うきっかけになる兆候を、挙げておきます。
- 暖房を点けているときだけ、頭が痛い
- その部屋にいると、異常に眠くなる
- 複数の人が、同時に体調を崩す
- 炎が赤く、揺れている
- 煤が出ている
1番目と3番目が重なったら、まず疑ってください。
よくいただく疑問
Q. 電気の暖房なら安全ですか
A. 一酸化炭素という点では、その通りです。
燃焼しないため、この危険はありません。就寝時に使えるのは、この理由です。
ただし、別の危険はあります。接触による火傷、可燃物への着火、たこ足配線による発熱。
電気の使いすぎについては、分電盤とブレーカーの基礎にまとめました。暖房器具は、消費電力の大きい機器です。
Q. 換気すると、燃料代がもったいないのでは
A. 損失は、思っているほど大きくありません。
短時間の換気で入れ替わるのは、主に空気です。壁、床、家具に蓄えられた熱は、そのまま残ります。
窓を閉めれば、その熱で室温は戻っていきます。
そして、この比較は成り立ちません。燃料代と、命は比べるものではありません。
Q. 昔からこの使い方ですが、大丈夫でした
A. 住宅が変わっている可能性があります。
窓を替えた、断熱工事をした、すきま風を塞いだ。そうした変更があれば、条件は変わっています。
そして、機器そのものも年数とともに劣化していきます。
これまで問題がなかったことは、これからも問題がない理由にはなりません。
Q. 部屋が広ければ安心ですか
A. 時間がかかるだけで、進行することに変わりはありません。
広い部屋では、酸素が減るまでの時間が長くなります。ですが、閉め切ったまま使い続ければ、いずれ同じ状態になります。
そして、広い部屋では大きな機器を使うことになります。消費する酸素も増えます。
広さを、換気しない理由にしないでください。
むしろ注意したいのは、狭い部屋で小さな器具を使う場合です。「小さいから大丈夫」という感覚が働きます。ですが、部屋も狭いのです。器具の大きさと部屋の広さは、釣り合っていることが前提になっています。
押さえておきたいこと
- 結論:色も臭いもなく、自分では気づけません。
- 眠気が症状のひとつです。危険だと感じられません。
- 1時間に1〜2回、1〜2分。機種の指示があればそちらを優先。
- 2か所開ける。入り口と出口の両方が要ります。
- 寝るときは消す。燃焼する器具は、とくに。
- 警報器を置く。火災警報器とは別物です。
この記事は、道具の紹介がほとんどありません。
ですが、暖房に関する記事の中で、最も書いておきたかった内容です。
ストーブの手入れも、灯油の管理も、芯の交換も、突き詰めれば正常に燃やすための作業です。その先にあるのが、この話でした。
窓を開けるという、それだけのことで防げます。寒い数分と引き換えにするには、あまりに大きなものがかかっています。
そして、この習慣は同居する方にも共有してください。ひとりが知っていても、その人が留守の日に守られません。なぜ開けるのかまで含めて、家の中で共通の理解にしておいてください。
なお、必要な換気の量や方法は、機器と住宅によって異なります。お使いの機器の取扱説明書を確認し、体調に異変を感じた場合は、速やかに換気のうえ医療機関にご相談ください。