先に要点だけ
- 寒くなる前に、一度点けてください。本番で不具合が出ると困ります。
- 給油は、必ず火を消してから。使用中の給油は事故につながります。
- タンクのふたは、締めたあと逆さにして確認してください。
- 臭いや不完全燃焼の多くは、手入れ不足と灯油の劣化が原因です。
寒くなってからでは、遅いのです
暖房器具には、他の家電と違う特徴があります。
半年、使わずに置かれているという点です。
その間に、埃が積もります。電池が切れます。ゴムの部品が硬くなります。前のシーズンの灯油が、タンクの底に残っていることもあります。
そして、必要になるのはいちばん寒い日です。
その日に点かないと、修理も買い替えも間に合いません。店の在庫も、その時期には減っています。
ですから、まだ寒くない時期に一度点けてみる。これが、この記事でいちばん伝えたいことです。
試運転は、窓を開けて短時間で構いません。異音、異臭、表示の異常。そこを見るだけです。10分もかかりません。不具合が見つかっても、この時期なら修理も買い替えも間に合います。
置き場所で、安全の大半が決まります
手入れの話をする前に、置き方の話をさせてください。
暖房器具による火災は、機器の故障より周囲の物に燃え移る形で起きています。
| 近くに置きがちなもの | 何が起きるか |
|---|---|
| カーテン | 風でなびいて触れます |
| 洗濯物 | 落ちて、そのまま燃えます |
| 新聞・雑誌 | 輻射熱で焦げます |
| スプレー缶 | 破裂します |
| ソファ・座布団 | 低い位置ほど危険です |
| 電源タップ | 熱で被覆が傷みます |
本体には、確保すべき距離が表示されています。前後左右と上方で、数値が違います。
とくに見落とされるのが上方向です。ストーブの上に棚がある、洗濯物を干す物干しが通っている。そうした配置は避けてください。
そして、季節の途中で物が増えます。
置いた当初は空いていたのに、冬が深まるにつれて、周りに毛布やら段ボールやらが寄ってくる。これは実際によく起こります。ときどき、周囲を見渡してください。
もうひとつ、床の素材にも注意してください。畳やカーペットの上に直接置くと、熱で傷みます。不燃性の敷板を用意してください。
手入れに必要な道具
| 道具 | 用途 | 優先度 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 乾電池 | 点火用。ストーブは単一が多い | 必須 | 数百円 |
| 掃除機 | フィルター、吸気口の埃 | 必須 | — |
| 乾いた布 | 外装、反射板 | 必須 | — |
| 柔らかいブラシ | 細かい隙間の埃 | 高い | 500円前後 |
| 灯油ポンプ | 残った灯油の抜き取り | 高い | 数百円〜 |
| ウエス・新聞紙 | こぼれた灯油の処理 | 高い | — |
| ゴム手袋 | 灯油から手を守る | 中 | 数百円 |
| 一酸化炭素警報器 | 安全の確保 | 推奨 | 3,000円〜 |
特別な工具は要りません。掃除機と布で、ほとんど済みます。
ひとつ、乾電池には注意してください。
入れたまま夏を越すと、液漏れすることがあります。漏れた液が端子を腐食させ、点火しなくなります。
片付けるときに抜いておくのが理想ですが、忘れていた場合は、電池を入れる部分を必ず確認してください。白い粉のようなものが付いていたら、それが漏れた跡です。
使い始める前の確認
- 置き場所を決める。カーテン、家具、洗濯物から離してください。
- 周りと上の埃を取る。吸気口が詰まっていると、燃え方が変わります。
- 乾電池を新しくする。
- タンクに古い灯油が残っていないか見る。
- ふたやパッキンの状態を確認する。硬化やひび割れを見ます。
- 燃焼筒が、正しい位置にあるか確認する。
- 対震自動消火装置が働くか確認する。
- 窓を開けて、試運転する。
6番と7番を、少し詳しく説明します。
燃焼筒の位置
石油ストーブの中央にある、筒状の部品です。
掃除のときに外したり、運んだ拍子にずれたりします。
ここが正しい位置にないと、不完全燃焼を起こします。
症状としては、炎の形がおかしい、煤が出る、臭いが強い、といった形で現れます。
取扱説明書に、正しい位置の図が載っています。点火する前に、合っているかを見てください。
対震自動消火装置
揺れを感知して、自動で火を消す仕組みです。
石油ストーブには、この装置が備えられています。地震のときに火災を防ぐための、最後の砦です。
この装置が働くかどうかは、自分で確認できます。
機種によりますが、本体を軽くたたく、あるいは指定の方法で作動を試すことができます。取扱説明書に手順があります。
年に一度、シーズン前に確かめてください。働かない状態で使うのは、危険です。
給油は、火を消してから
燃焼中、あるいは消火した直後に給油しないでください。本体は高温です。こぼれた灯油が熱い部分に触れれば、そこで燃えます。カートリッジのタンクを抜き差しする作業も同じです。消火し、本体が冷めてから行ってください。そして、給油の場所も重要です。ストーブのそばで注ぐと、こぼした灯油がすぐ近くの熱源に触れます。タンクを別の場所へ持っていって給油してください。面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が事故を防ぎます。実際の火災の多くは、この省略から起きています。
給油そのものにも、順番があります。
- 消火して、冷めるのを待つ。
- タンクを取り出し、給油する場所へ運ぶ。
- ふたを開け、ポンプで注ぐ。目盛りを見て、入れすぎない。
- ふたを確実に締める。
- 逆さにして、漏れないか確認する。
- タンクの外側を拭く。
- 本体に戻す。
5番を、必ずやってください。
ふたの締め忘れ、締め方の甘さは、実際によく起こります。そのまま本体に入れると、内部に灯油が漏れます。あふれた灯油が燃えれば、火災です。
逆さにして数秒。それだけで確認できます。手が汚れるのを嫌って省く方がいますが、ここは省いてよい手順ではありません。
そして、入れすぎにも注意してください。タンクには目盛りがあります。満杯まで入れると、温度が上がったときに膨張してあふれます。
灯油以外を、絶対に入れないでください
石油ストーブにガソリンを入れると、爆発的に燃えます。灯油とガソリンは、燃えやすさがまるで違います。灯油が引火するのは、おおむね40℃以上に温められてからです。一方、ガソリンは氷点下でも引火する蒸気を出します。ストーブは灯油を前提に作られており、ガソリンの蒸気を扱える構造ではありません。少量の混入でも、重大な事故になります。そして、この事故は「間違えるはずがない」と思っている家庭で起きています。原因は、容器の取り違えです。混合燃料を作るために携行缶を持っている、農機具用のガソリンがある。そうした家庭では、容器と置き場所を、はっきり分けてください。
燃料と容器の対応は、灯油ポリ容器にガソリンは違法にまとめました。
灯油は赤いポリタンク、ガソリンは金属製の携行缶。形と色が違うのは、取り違えを防ぐためです。
もし入れてしまった、あるいはその疑いがある場合は、絶対に点火しないでください。そのまま販売店か、消防に相談してください。
臭いが強いときの原因
「石油ストーブは臭いもの」と思われがちですが、これは半分だけ正しい理解です。正常に燃えていれば、それほど臭いません。
強く臭う場合には、必ず原因があります。
| いつ臭うか | 考えられる原因 |
|---|---|
| 点火・消火のとき | ある程度は正常。長く続くなら要確認 |
| 燃焼中ずっと | 不完全燃焼の疑い。芯、燃焼筒、換気 |
| 使っていないとき | 灯油の漏れ、こぼれた灯油の残り |
| 今年から急に | 灯油の劣化を疑ってください |
とくに燃焼中ずっと臭う場合は、放置しないでください。
不完全燃焼が起きているなら、一酸化炭素が発生している可能性があります。
換気を確保したうえで、原因を確かめてください。分からなければ、使用を止めて販売店に相談してください。
灯油そのものが原因の場合もあります。前のシーズンから持ち越した灯油は、色と臭いが変わります。黄色っぽく濁っている、酸っぱいような臭いがする。そうした灯油は、使わないでください。燃え方が変わり、機器も傷めます。
換気の考え方は、暖房器具の換気と一酸化炭素に詳しくまとめました。
ファンヒーターの手入れ
ファンヒーターは、空気を吸って、温めて、吹き出す器具です。
そのため、石油ストーブより埃の影響を強く受けます。
- 背面のフィルター:ここが最も詰まります。掃除機で吸ってください
- 吹き出し口:埃と、焦げた臭いの元がたまります
- 本体の下:床の埃を吸い上げます
- 温度センサーの周り:ふさがると、制御が狂います
フィルターは、シーズン中も月に一度は見てください。
詰まったまま使うと、必要な空気が入りません。燃焼が不安定になり、消費電力も増えます。
そして、置き場所にも注意してください。
吹き出し口の前に、物を置かないでください。洗濯物を乾かそうとして前に干す。スプレー缶を近くに置く。いずれも危険です。
スプレー缶については、カセットボンベの保管方法でも書きました。熱を持つ場所の近くに置くものではありません。
シーズンの終わりにやること
春の片付けをきちんとやると、次の秋が楽になります。
- 灯油を使い切る。最後は空焚きになるまで燃やします(機種の指示に従ってください)
- タンクと本体に、灯油を残さない。残った分はポンプで抜きます
- 乾電池を抜く。液漏れを防ぎます
- 全体の埃を取る。
- 完全に冷めてから、袋や箱に入れる。
- 湿気の少ない場所へ。
1番と2番が要点です。
灯油を入れたまま夏を越すと、劣化します。そして、その劣化した灯油が、次のシーズンの不調の原因になります。
抜いた灯油の扱いについては、去年の灯油は使えるかを参照してください。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 使用中に給油した | 火災 | 消火して冷ましてから |
| ふたの締めが甘かった | 本体内に灯油が漏れる | 逆さにして確認 |
| 電池を入れたまま夏を越した | 液漏れで点火しない | 片付け時に抜く |
| 古い灯油を使った | 異臭、不完全燃焼、故障 | 持ち越さない |
| フィルターを掃除しなかった | 燃焼が不安定になる | 月に一度 |
| 燃焼筒がずれていた | 煤と臭い | 点火前に確認 |
| 前に洗濯物を干した | 着火の危険 | 周囲を空ける |
| タンクを満杯にした | 膨張してあふれる | 目盛りまで |
よくある質問
Q. 点火しません。故障ですか
A. 順に確認してください。
- 電池:新しいものに替えてみてください
- 電池の端子:液漏れの跡がないか
- 灯油の残量:センサーが働いていることがあります
- タンクが正しく入っているか
- 安全装置:一度リセットが必要な機種があります
1番と2番で解決することが、かなりあります。
それでも点かず、灯油が古い場合は、灯油を疑ってください。劣化した灯油では、うまく点火しません。
Q. 何年くらい使えますか
A. 手入れ次第ですが、部品には寿命があります。
とくに、ゴムのパッキン類は経年で硬くなります。ここが傷むと、灯油が漏れます。
そして、古い機種は交換部品の供給が終わっていることがあります。
次のいずれかがあれば、買い替えを考えてください。
- 灯油のにおいが、消しても残る
- 異常な音がする
- 燃え方が安定しない
- 対震自動消火装置が働かない
Q. 一酸化炭素警報器は必要ですか
A. あったほうがよい、と考えています。
一酸化炭素は、色も臭いもありません。人間の感覚では気づけません。
「眠くなってきた」「頭が痛い」と感じたときには、すでに進んでいます。
換気を守っていれば起きにくいものですが、換気を忘れることはあります。その備えとして意味があります。
Q. 分解して掃除してもいいですか
A. 取扱説明書に書かれている範囲だけにしてください。
外して洗える部品と、そうでない部品があります。燃焼に関わる部分を、勝手に分解しないでください。
戻し方を誤ると、不完全燃焼につながります。命に関わる部分です。
芯の交換については、機種によって手順が定められています。石油ストーブの芯の交換にまとめました。
おわりに
- 寒くなる前に、一度点けてください。
- 給油は消火して、冷ましてから。別の場所で行ってください。
- ふたは、逆さにして確認。
- 灯油以外を、絶対に入れない。容器を分けてください。
- 燃焼中ずっと臭うなら、放置しない。
- 春に灯油を残さない。次の秋が楽になります。
石油ストーブは、電気を使わずに暖がとれる器具です。停電のときにも使えます。
その一方で、家の中で火を燃やしていることも確かです。
点火のボタンひとつで済むので忘れがちですが、扱っているのは消防法上の危険物です。手入れと確認は、その前提の上にあります。難しいことは何もありません。順番を守るだけです。
なお、機種ごとに手入れの方法や安全装置の仕様は異なります。作業の前に取扱説明書を確認し、異常がある場合は販売店またはメーカーにご相談ください。