はじめに押さえておきたいこと
- 交換の前に、空焼きを試してください。それで直ることがあります。
- 芯は機種ごとの専用品です。型番で選んでください。
- 取り付ける高さが、燃え方を決めます。ここが作業の要です。
- 灯油を抜き、完全に冷ましてから始めてください。
芯は、何をしている部品か
作業の前に、仕組みを押さえておくと判断が楽になります。
石油ストーブは、灯油を液体のまま燃やしているのではありません。
手順としては、こうなっています。
- 芯が、灯油を吸い上げる。細い繊維の隙間を、液体が伝っていきます
- 先端が熱せられ、灯油が気化する。
- 気化した灯油が、空気と混ざって燃える。
つまり芯は、灯油を運び、気化させる場所を作る部品です。
ここが理解できると、不調の理由が見えてきます。
| 芯に起きること | 燃え方への影響 |
|---|---|
| 繊維の隙間が詰まる | 吸い上げが落ち、火力が下がる |
| 先端が崩れる | 気化する面が不均一になる |
| 高さが足りない | 気化する量が足りない |
| 高すぎる | 気化しすぎて、煤が出る |
そして、吸い上げが落ちると、燃料が足りないまま燃えることになります。
これが不完全燃焼です。一酸化炭素が出ます。
「火力が落ちた」というのは、単に暖かくないという話ではありません。燃え方そのものが変わっているという合図です。
交換する前に、試すこと
「火力が落ちた」「臭いが強い」という理由で、芯の交換を考える方が多いと思います。
ですが、その前に試すことがあります。
ひとくちに芯の不調といっても、原因は一種類ではありません。
| 状態 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 芯にタールが固着している | 灯油の不純物が残った | 空焼きで改善 |
| 芯が短く、硬くなっている | 使用による摩耗 | 交換 |
| 芯が焦げて、崩れている | 寿命 | 交換 |
| 芯が水を吸っている | 灯油に水が混入 | 乾燥、または交換 |
表の上の行が、意外と多い原因です。
灯油に含まれる不純物や、劣化した成分が、燃え残って芯の先に固まります。そこが目詰まりを起こし、灯油の吸い上げが悪くなります。
結果として、火力が落ち、臭いが出ます。芯そのものは、まだ使えます。
この場合の対処が、次に説明する空焼きです。
空焼きという手入れ
芯に残った成分を、燃やして飛ばす作業です。
おおまかな流れは、こうです。
- タンクを外し、本体の灯油を使い切る。
- 灯油がなくなり、火が自然に消えるまで燃やす。
- 完全に冷ます。
- 芯の先の状態を見る。白っぽくなっていれば、うまくいっています
空焼きは、すべての機種でできるわけではありません。機種によっては、禁じられています。取扱説明書に「からだき」「空焼き」の項目があるか、必ず確認してください。記載がない機種で行うと、部品を傷めます。そして、行う場合も必ず換気してください。燃え残りを焼く作業なので、煙と臭いが出ます。窓を開け、その場を離れず、火が消えるまで見ていてください。灯油が切れて消えるまでの間、通常とは違う燃え方をします。周囲に燃えるものがない状態で行ってください。
シーズンの終わりに、これをやっておくと状態が保てます。翌年、点火したときの調子が変わります。
そして、灯油を残さないという目的にもかないます。次のシーズンに持ち越さないための作業でもあります。
持ち越した灯油の扱いは、去年の灯油は使えるかにまとめました。
交換の時期
空焼きをしても改善しないなら、交換です。
交換に踏み切る判断の目安を挙げます。
- 空焼きをしても、火力が戻らない
- 炎の高さが、場所によって違う
- 芯を上げても、規定の高さまで出ない
- 芯の先が、崩れている・焦げている
- 点火に時間がかかる
- 燃焼中、ずっと臭う
とくに2番目が分かりやすい兆候です。
正常な状態では、炎の輪が均一な高さになります。ここが波打っている、片側だけ低い、という場合は芯が傷んでいます。
使用年数の目安としては、数シーズンから、使い方によってはもっと長くもちます。毎年替えるものではありません。
必要な道具
| 道具 | 用途 | 優先度 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 交換用の芯 | 機種専用品 | 必須 | 1,000〜3,000円 |
| プラスドライバー(2番) | 外装のネジ | 必須 | 500〜1,500円 |
| ゴム手袋 | 灯油と煤から手を守る | 必須 | 数百円 |
| 新聞紙・シート | 床の養生 | 必須 | — |
| 灯油ポンプ | 残った灯油の抜き取り | 高い | 数百円〜 |
| ウエス | 拭き取り | 高い | — |
| ラジオペンチ | 細かい部品の取り回し | 中 | 1,000円前後 |
| スマートフォン | 分解の記録 | 高い | — |
最後の項目を、強くおすすめします。
分解の各段階で、写真を撮ってください。
石油ストーブの分解は、外す部品が多く、順番があります。組み立てで迷ったとき、写真が唯一の頼りになります。
ネジも、場所によって長さが違うことがあります。外した順に並べて置いてください。小皿や、仕切りのある容器を用意しておくと確実です。
そして、作業する場所も選んでください。床に灯油が垂れる前提です。玄関のたたきや、土間、屋外の風のない場所が向きます。居室の畳の上で始めると、後始末で困ります。
芯は、機種専用です
買い物の段階で失敗する原因は、ほぼここに集まります。
芯には、機種ごとの型番があります。「石油ストーブ用の芯」という汎用品では、合いません。
確認する手順です。
- 本体の型番を確認する。背面や側面の表示にあります
- 取扱説明書で、適合する芯の型番を調べる。
- その型番で購入する。
取扱説明書がない場合は、メーカーの相談窓口に本体の型番を伝えれば分かります。
ここで、ひとつ注意があります。
古い機種は、芯の供給が終わっていることがあります。
その場合、直す手段がありません。ほかの部分が健全でも、買い替えを検討することになります。部品の供給期間は、製造が終わってから一定の年数と決められているのが一般的です。
芯を注文する前に、その機種を今後も使い続けるかを考えてください。年数の経った機器なら、他の部品も傷んでいます。
作業の流れ
手順は機種によって異なります。必ず、取扱説明書に従ってください。
ここでは、一般的な流れと、つまずきやすい点を示します。
- 消火し、完全に冷ます。数時間おいてください
- タンクを外し、本体内の灯油を抜く。
- 乾電池を外す。
- 床を養生する。灯油が垂れます
- 燃焼筒、上部の部品を外す。写真を撮りながら
- 外装を外す。ネジの位置を記録します
- 芯を固定している部品を外す。
- 古い芯を抜く。
- 新しい芯を、指定の向きで取り付ける。
- 高さを調整する。ここが最重要です
- 逆の順で組み立てる。
- 灯油を入れ、しばらく置いてから点火する。
9番と10番、12番を補足します。
向きと高さが、すべてを決めます
芯には、上下と表裏があります。
印や切り欠きが付いていることが多く、それを目印に取り付けます。逆に入れると、正しく燃えません。
そして、高さ。
芯を最も上げた状態で、どこまで出るか。これが機種ごとに決められています。
- 高すぎる:炎が大きくなりすぎ、煤が出ます
- 低すぎる:火力が出ず、不完全燃焼になります
調整の方法と、正しい高さの数値は、取扱説明書に記載があります。
ここを「だいたいで」済ませないでください。不完全燃焼は、一酸化炭素の発生につながります。
すぐに点火しないでください
組み立てが終わって、灯油を入れる。
そこで、すぐに火を点けないでください。
新しい芯は、乾いています。灯油が全体に染み込むまで、時間がかかります。
染み込む前に点火すると、正常に燃えません。芯を傷めることもあります。
待つ時間は機種によりますが、取扱説明書に指定があります。その時間を守ってください。
そして、最初の点火は窓を開けて行ってください。製造時の油分などが燃えて、臭いが出ることがあります。
炎を見れば、状態が分かります
交換後の確認でも、日常の点検でも使える見方です。
| 炎の様子 | 状態 |
|---|---|
| 青い炎が、均一な高さで並ぶ | 正常 |
| 一部だけ、赤や黄色が強い | 芯の傷み、または異物 |
| 高さが波打っている | 芯の摩耗や、取り付けのずれ |
| 全体に赤く、揺れる | 不完全燃焼の疑い |
| 炎の先から、黒い煙 | すぐ消火してください |
点火した直後や、消火のときは、一時的に赤い炎が出ます。これは正常です。
問題なのは、安定して燃えているはずの時間帯に赤い炎が続く場合です。
芯を交換したら、最初の燃焼で必ず炎を見てください。取扱説明書に、正常な炎の写真や図が載っていることがあります。それと見比べるのが最も確実です。
違って見えるなら、芯の高さを疑ってください。組み立て直しになりますが、そのまま使うより安全です。
そして、この確認は換気しながら行ってください。異常な燃え方をしている可能性がある状態での作業です。
自分でやるか、頼むか
正直に書きます。この作業は、誰にでも勧められるものではありません。
| 自分でやる | 依頼する | |
|---|---|---|
| 費用 | 芯の代金のみ | 芯代+作業費 |
| 時間 | 1〜2時間 | 預ける期間 |
| 難易度 | 機種による | — |
| 失敗した場合 | 不完全燃焼の危険 | — |
次に当てはまるなら、販売店やメーカーに依頼してください。
- 取扱説明書がない
- 分解の手順が記載されていない
- 途中で、部品の位置が分からなくなった
- 正しい高さの基準が分からない
- 組み立てたが、燃え方に不安がある
とくに最後の項目です。
「なんとなく組めたけれど、炎の形が違う気がする」という状態で使い続けないでください。
これは、家の中で火を燃やす機器です。判断に迷うなら、そこで止めるのが正しい選択です。
「必要な工具はありません」という結論もある、という話は給湯器の交換でも書きました。調べた結果、自分でやらないと決められるのも、情報の役割です。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 汎用品を買った | 合わない | 型番で選ぶ |
| 冷めないうちに始めた | 火傷 | 数時間おく |
| 灯油を抜かずに分解した | 床にこぼれる | 先に抜く |
| 写真を撮らなかった | 組み立てで詰まる | 段階ごとに撮る |
| 芯を逆向きに入れた | 正常に燃えない | 印を確認 |
| 高さを合わせなかった | 不完全燃焼 | 説明書の数値に従う |
| すぐ点火した | 燃え方が安定しない | 染み込むまで待つ |
| 不安なまま使い続けた | 一酸化炭素中毒 | 販売店へ相談 |
質問と回答
Q. 芯の値段はどのくらいですか
A. 機種によりますが、1,000円台から3,000円ほどが目安です。
本体の価格を考えれば、安い部類の修理です。
ただし、依頼する場合は作業費が加わります。本体が古ければ、買い替えとの比較になります。
Q. ファンヒーターにも芯はありますか
A. 構造が違います。
ファンヒーターの多くは、灯油を気化させて燃やす仕組みで、芯を使わない機種が主流です。
そのため、この記事の作業は当てはまりません。
ファンヒーターの手入れは、フィルターの掃除が中心になります。石油ストーブ・ファンヒーターの手入れにまとめました。
Q. 交換したのに、臭いが取れません
A. 芯以外の原因を疑ってください。
- 燃焼筒の位置がずれている
- 芯の高さが合っていない
- 灯油が劣化している
- 組み立てで、部品が正しく収まっていない
- 換気が足りていない
作業後に臭いが出るようになったなら、組み立てを疑うのが自然です。
そのまま使い続けず、いったん止めて確認してください。
Q. 何シーズンで替えるものですか
A. 決まった年数はありません。
使用時間と、使っている灯油の状態で大きく変わります。
持ち越した灯油を使うと、芯の寿命は縮みます。不純物が固着するためです。
年数で判断せず、炎の形と火力で判断してください。
逆にいえば、丁寧に扱えば長くもちます。新しい灯油を使い、シーズン終わりに空焼きをして、灯油を残さない。この3つを守っている家庭では、芯の交換はめったに必要になりません。
ここまでの要点
- まず空焼きを試す。ただし、対応する機種かを確認してください。
- 芯は機種専用。本体の型番から調べてください。
- 供給が終わっている場合があります。買う前に確認を。
- 写真を撮りながら分解する。
- 向きと高さが、燃え方を決めます。
- 不安が残るなら、使わずに相談してください。
芯の交換は、部品代だけで済む修理です。数千円で、機器が本来の状態に戻ります。
その一方で、失敗すると不完全燃焼を招く作業でもあります。この2つが、同じ作業の中に同居しています。
取扱説明書に手順が載っている機種なら、挑戦する価値はあります。載っていないなら、それは自分でやることを想定していない機種だということです。
そして、いちばん確実なのは芯を傷めない使い方をすることだと考えています。交換の話をひととおり書いてきましたが、必要にならないほうがいいのです。
なお、分解の手順、適合する部品、調整の基準は機種ごとに異なります。作業の前に取扱説明書を確認し、判断に迷う場合は販売店またはメーカーにご相談ください。