はじめに押さえておきたいこと
- すべての作業は止水栓を閉めることから始まります。ここを飛ばさないでください。
- 要になる工具はモンキーレンチとウォーターポンププライヤーの2つです。
- 水漏れの多くはパッキンの劣化。数十円の部品で直ることがあります。
- 壁の中や床下の配管には手を出さないでください。被害が桁違いになります。
まず止水栓。工具の話はその後です
水まわりの作業には、他の分野にない特徴があります。
失敗すると、水が出続けます。
木工で失敗しても、板が1枚だめになるだけです。ですが水まわりでは、部品を外した瞬間に水が噴き出し、止められなくなることがあります。
集合住宅なら、階下への漏水になります。被害額が、工具代とは比べものになりません。
だから、この記事の最初に書くのは工具ではありません。
作業の前に、必ず止水栓を閉めてください。そして、その場所を今のうちに確認しておいてください。
止水栓の場所を知っていますか
水を止める箇所は、大きく2種類あります。
| 種類 | 場所 | 止まる範囲 |
|---|---|---|
| 個別の止水栓 | 洗面台の下、便器の脇、台所シンク下 | その器具だけ |
| 元栓(量水器・メーターボックス) | 屋外の地面、集合住宅なら玄関脇のパイプスペース | 建物全体 |
通常の作業では、その器具の個別の止水栓を閉めれば足ります。
ですが、元栓の場所も今日のうちに確認しておいてください。いざ水が噴き出してから探すのでは、間に合いません。
- 閉める向きは、時計回りが一般的です。
- 閉めたら、蛇口を開けて水が出ないことを確認する。ここまでが確認です。
- マイナスドライバーで回すタイプもあります。溝に合う幅のものを用意してください。
- 長年動かしていない止水栓は固着していることがあります。無理に回すと壊れます。
最後の項目は現実的な問題です。何十年も回していない止水栓は、動かないことがあります。その場合は、作業自体を業者に任せる判断が必要になります。
必要な工具
| 工具 | 用途 | 優先度 | 目安 |
|---|---|---|---|
| モンキーレンチ | ナットを回す。サイズが可変 | 必須 | 1,500〜3,000円 |
| ウォーターポンププライヤー | 太いナット、丸い部品を掴む | 必須 | 1,500〜3,000円 |
| プラスドライバー(2番) | ハンドルや金具の脱着 | 必須 | 500〜1,500円 |
| マイナスドライバー | 止水栓を回す、カバーを外す | 必須 | 500円前後 |
| シールテープ | ねじ込み部の止水 | 高い | 数百円 |
| バケツ・雑巾 | 残った水を受ける | 必須 | 手持ちで可 |
| ピンセット・ラジオペンチ | 古いパッキンを取り出す | 高い | 1,000円前後 |
| ラバーカップ | 詰まりの解消 | 高い | 1,000円前後 |
| ゴム手袋 | 汚れと洗剤から手を守る | 高い | 数百円 |
| 懐中電灯・ヘッドライト | シンク下は暗い | 中 | 1,000円前後 |
| 洗面台用のレンチ | 奥まった蛇口のナット | 状況次第 | 2,000円〜 |
上の6つで、5,000円ほど。日常的なトラブルの多くに対応できます。
意外と効くのがヘッドライトです。シンク下は暗く、しかも両手がふさがります。片手で懐中電灯を持ちながらの作業は、実際にはできません。
2つの主役工具
モンキーレンチ
口の幅を調整できるレンチです。1本でさまざまなサイズのナットに対応できます。
水まわりでこれが重宝するのは、ナットのサイズが規格外のことが多いためです。専用のスパナを揃えるより、1本で済ませるほうが現実的になります。
使い方には、はっきりしたコツがあります。
- ガタがなくなるまで、しっかり口を締める。緩いまま回すと、ナットの角をなめます。
- 力をかける向きに注意する。可動する顎(あご)の側に力がかかると、開いて外れます。
- 固定側の顎で受けるように回す。これが正しい向きです。
2番目と3番目は、覚えておく価値があります。
モンキーレンチは、向きを間違えると口が開きます。そのままナットの角を削り、丸くしてしまいます。
力を受けるべきは、動かない側の顎です。柄を握ったとき、可動する顎が回転方向の後ろ側に来るように当ててください。
ウォーターポンププライヤー
名前のとおり、水まわりのために生まれた工具です。
支点の位置を段階的に変えられ、口が大きく開きます。太い配管や、丸い部品を掴めます。
モンキーレンチとの使い分けは、こうです。
| 場面 | 使う工具 |
|---|---|
| 六角のナット | モンキーレンチ |
| 太い樹脂のナット | ウォーターポンププライヤー |
| 丸い部品、掴みにくい形 | ウォーターポンププライヤー |
| 強く締める必要がある | モンキーレンチ |
| 傷をつけたくない | 布を挟んで、いずれか |
プライヤーの歯は、樹脂やメッキの部品に傷をつけます。見える部分を掴むときは、布やゴムを挟んでください。
水漏れの多くはパッキンです
蛇口からポタポタと落ちる。根元からにじむ。こうした症状の多くは、ゴムのパッキンが硬くなったことが原因です。
ゴムは経年で弾力を失っていきます。10年も経てば、硬く縮んでしまい、わずかな隙間ができます。
部品は数十円から数百円です。これで直るなら、修理費とは桁が違います。
| 症状 | 疑うところ |
|---|---|
| 閉めても先から落ちる | ケレップ(コマパッキン) |
| ハンドルの根元からにじむ | 三角パッキン |
| 蛇口の付け根から漏れる | Uパッキン、接続部のパッキン |
| シャワーホースの接続部 | ホース側のパッキン |
| ナットの接続部 | パッキン、または締め付け不足 |
交換のときは、外した古い部品を持って買いに行ってください。種類とサイズが非常に多く、現物合わせが確実です。
あるいは、蛇口の型番を控えておく。メーカーのサイトで適合部品を調べられます。
シングルレバーは別物です
ひとつ注意があります。
レバーひとつで温度と水量を調整する蛇口では、内部がカートリッジという部品になっています。単純なパッキンではありません。
この場合、交換はカートリッジごとになります。数千円する部品です。
また、機種ごとの適合が厳密です。型番を確認してから購入してください。似ていても付きません。
シールテープの使い方
ねじ込み式の接続部で、水漏れを防ぐための白いテープです。
- 古いテープを完全に取り除く。残っていると密着しません。
- ねじ山の汚れを拭き取る。
- ねじ込む方向と同じ向きに巻く。逆だと、締めるときにめくれます。
- 5回から6回ほど巻く。厚すぎても薄すぎてもいけません。
- 指でねじ山になじませる。形が浮き出るまで。
- 先端の1山ぶんは巻かない。テープの切れ端が配管内に入るのを防ぎます。
3番の巻く向きが最も間違えやすい点です。
逆向きに巻くと、部品をねじ込む動作でテープがめくれていきます。結果として、隙間ができて漏れます。
ねじ込む方向に巻けば、締めるほどテープが締まります。実際にねじ込む動作をしてみて、向きを確認してから巻いてください。
ラバーカップの正しい使い方
意外と、使い方を誤解されている道具です。
強く押し込む道具だと思われがちですが、実際は逆です。効くのは、引くときの力です。
- カップが浸かる程度まで水を張る。空気ではなく水を動かします。
- ゆっくり押し当てて、空気を抜く。
- 勢いよく引く。ここで詰まりを手前に引き出します。
- 数回繰り返す。
押すときに力を込めると、詰まりを奥へ押し込んでしまうことがあります。押すのは準備、引くのが本番と覚えてください。
なお、洋式トイレと和式、シンク用では、カップの形が異なります。合わないものだと密着せず、効きません。
どこまで自分でやるか
| 作業 | 難易度 | 判断 |
|---|---|---|
| シャワーヘッドの交換 | 易しい | 自分で |
| 排水口のゴミ受け掃除 | 易しい | 自分で |
| ラバーカップで詰まりを取る | 易しい | 自分で |
| 蛇口のパッキン交換 | やや難しい | 覚える価値あり |
| 排水トラップの清掃 | やや難しい | 自分でできる範囲 |
| シングルレバーのカートリッジ交換 | 難しい | 型番確認のうえ慎重に |
| 蛇口本体の交換 | 難しい | 自信がなければ業者へ |
| トイレのタンク内部品 | 難しい | 機種による |
| 壁の中・床下の配管 | 専門的 | 業者へ |
| 給湯器まわり | 専門的 | 業者へ。ガスが絡みます |
給湯器やガス配管には、絶対に触らないでください。ガス漏れは、水漏れとは危険の性質が違います。ガス機器の設置や配管の工事には資格が必要です。異常を感じたら、自分で確認しようとせず、ガス会社か販売店に連絡してください。
線引きの基準を書きます。
止水栓を閉めれば水が止まる範囲なら、失敗しても被害は限定的です。
ですが壁の中や床下は違います。漏れても気づかず、気づいたときには構造材が腐っている。集合住宅なら階下に及びます。
ここは、金額の問題ではありません。取り返しがつくかどうかの問題です。
作業の手順
- 止水栓を閉める。蛇口を開けて、水が出ないことを確認します。
- バケツと雑巾を用意する。配管内に残った水が必ず出ます。
- 分解しながら写真を撮る。部品の順番と向きは、後で必ず分からなくなります。
- 外した部品を、順番に並べる。小さなゴムやリングを失くさないでください。
- 部品を交換する。
- 元に戻す。締めすぎに注意してください。
- 止水栓を少しずつ開ける。一気に開けないでください。
- 漏れがないか確認する。しばらく置いてから、もう一度見てください。
3番と4番が、失敗を防ぐ鍵です。
水まわりの部品は、小さなゴムのリングが向き付きで入っていることがあります。裏表を逆に組むと、漏れます。写真がないと判断できません。
そして6番。締めすぎに注意してください。樹脂の部品は、力任せに締めると割れます。パッキンは、適度な力で挟まれてこそ機能します。
8番も重要です。組んだ直後は漏れていなくても、数時間後ににじんでくることがあります。その日のうちに、もう一度確認してください。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 止水栓を閉めずに外した | 水が噴き出す | 必ず閉めて確認 |
| モンキーレンチの向きを間違えた | ナットの角がなめる | 固定側で力を受ける |
| 口を緩めたまま回した | 同上 | ガタなく締める |
| シールテープを逆に巻いた | 漏れる | ねじ込む方向に巻く |
| 樹脂部品を締めすぎた | 割れる | 適度な力で止める |
| 分解の記録を残さなかった | 戻せない | 写真を撮る |
| 合わない部品を買ってきた | 作業が止まる | 現物か型番を持参 |
| バケツを用意しなかった | 床が水浸し | 先に置いておく |
判断に迷いやすいこと
Q. 賃貸の場合はどうしますか
A. まず管理会社に連絡してください。
設備の不具合は、貸主の負担で修理されることが多いものです。自分で直してしまうと、その費用は戻りません。
それに、勝手に手を加えて悪化させた場合、責任を問われる可能性があります。連絡が先です。
Q. 詰まりは薬剤で直りますか
A. 軽い詰まりなら効きますが、限界があります。
髪の毛や油汚れには効果があります。ですが、固形物が詰まっている場合は溶けません。
また、薬剤を混ぜないでください。種類によっては有害なガスが発生します。1種類だけを、表示どおりに使ってください。
まずはラバーカップを試すのが順序です。
Q. 業者を呼ぶ判断はどこですか
A. 次のどれかに当てはまれば、呼んでください。
- 止水栓が固くて回らない
- どこから漏れているか分からない
- 壁や床が濡れている
- ガスが絡む設備である
- 分解したが元に戻せない
とくに「壁や床が濡れている」は要注意です。目に見える場所の外で漏れている可能性があります。
Q. 予防のためにできることは
A. 定期的に見ることです。
- シンク下を、半年に一度覗く。にじみや白い水垢の跡がないか。
- 洗濯機のホースを確認する。外れかけていないか、劣化していないか。
- 排水口をこまめに掃除する。詰まりの予防になります。
- 長期間家を空けるときは、元栓を閉める。
水漏れは、早く見つけるほど被害が小さい種類のトラブルです。シンク下を覗く数分が、大きな差になります。
ここまでの要点
- 必ず止水栓を閉めてから。元栓の場所も今のうちに確認を。
- モンキーレンチとウォーターポンププライヤー。この2本が要です。
- モンキーは固定側で力を受ける。向きを間違えるとなめます。
- シールテープはねじ込む方向に巻く。逆だとめくれて漏れます。
- 壁の中と床下、ガス機器には触らない。被害の性質が違います。
水まわりは、自分でできる範囲とそうでない範囲が、はっきり分かれる分野です。
パッキン1つで直る不具合を業者に頼めば、出張費だけで数千円かかります。一方で、手を出すべきでない場所に触れば、被害は何十万円にもなります。
その線を分けるのが、止水栓で止まる範囲かどうかという基準です。ここを判断の軸にしてください。
工具の揃え方の考え方は、最初に揃える工具にもまとめています。
なお、設備の構造や部品は製品ごとに異なります。作業にあたっては、お使いの機器の説明書やメーカーの情報をご確認ください。賃貸物件では、着手前に管理会社へご相談ください。