この記事の要約
- 自転車のネジは六角が中心。4mm・5mm・6mmで大半が回せます。
- 空気入れはバルブの形式を確認してから買ってください。合わないと入りません。
- ペダルの左側は逆ネジです。知らずに回すと、ネジ山を壊します。
- ブレーキに不安があれば店へ。ここは自分で判断しないでください。
結論:六角レンチと空気入れ、まずこの2つです
先に答えを書きます。
自転車の整備を自分でやるなら、最初に買うのは六角レンチセットと空気入れです。合わせて4,000円ほど。
この2つで、日常的に発生する作業のほとんどに対応できます。サドルの高さ調整、ハンドルの角度、ブレーキレバーの位置、そして空気圧の管理。
逆に、最初から工具を揃えすぎないでください。自転車には専用工具が非常に多く、揃え始めるときりがありません。そして、その多くは年に1回使うかどうかです。
どこまで自分でやり、どこから店に任せるか。その線引きも含めて書いていきます。
必要な工具の一覧
| 工具 | 用途 | 優先度 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 六角レンチセット(ミリ) | ほぼ全ての調整 | 必須 | 1,000円台〜 |
| 空気入れ(バルブに対応したもの) | 空気圧の管理 | 必須 | 2,000〜5,000円 |
| プラスドライバー(2番) | 変速の調整、小物の固定 | 高い | 500〜1,500円 |
| タイヤレバー | タイヤの脱着 | 高い | 数百円 |
| パンク修理キット | チューブの補修 | 高い | 数百円 |
| チェーン用の油 | 注油。最も効く整備です | 高い | 1,000円前後 |
| ウエス・古布 | 清掃 | 高い | 手持ちで可 |
| 15mmスパナ | 車輪のナット(一般車) | 車種による | 1,000円前後 |
| ペダルレンチ(15mm薄口) | ペダルの脱着 | 中 | 1,500円前後 |
| トルクレンチ | 締め付けの管理 | カーボン車は必須 | 5,000円〜 |
| ワイヤーカッター | ブレーキ・変速ワイヤーの切断 | 低い | 2,000円〜 |
| 自転車スタンド | 作業中に車体を保持する | 低い | 5,000円〜 |
上の6つまでが、日常の範囲です。ここまでで5,000円前後。
15mmスパナから下は、車種と、やりたいことによって変わります。
六角レンチが要になります
自転車を見てみてください。ネジの頭が、六角の穴になっているはずです。
| サイズ | よく使う箇所 |
|---|---|
| 4mm | ブレーキレバー、変速レバー、小物の固定 |
| 5mm | サドル、ハンドル、ブレーキ本体 |
| 6mm | クランク、一部のシートポスト |
| 2〜3mm | 変速機の細かい調整 |
4mm・5mm・6mmの3本で、日常の調整はほぼ足ります。
ただし、セットで買ってください。理由は、ネジ穴を見てもサイズが判別できないからです。1本ずつ買い足していくと、必ず「そのサイズだけがない」事態になります。
ガタがあるレンチを使わないでください
自転車のネジは、アルミ製の部品に留まっていることが多いものです。
アルミは鉄より柔らかい。サイズの合わないレンチで力をかければ、簡単にネジ穴の角が丸くなります。
挿したレンチを軽く揺すって、カタカタと動くなら、それは違うサイズです。とくにミリとインチの混同には注意してください。
詳しくは六角レンチの選び方にまとめました。
空気入れは、バルブを確認してから
買ってから「入らない」と気づく人が多い部分です。
自転車のバルブには、3つの形式があります。
| 形式 | 別名 | 主な車種 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 英式 | ウッズ、ダンロップ | 一般車(ママチャリ) | 最も普及。空気圧を正確に測りにくい |
| 仏式 | プレスタ | ロードバイク | 高い圧力に対応。細い |
| 米式 | シュレーダー | マウンテンバイク、子ども車の一部 | 自動車と同じ形式 |
まず、ご自身の自転車のバルブを見てください。タイヤの空気を入れる口の形です。
- 英式:ゴムのキャップの下に、金属のナットがある太めの形
- 仏式:細長く、先端に小さなネジがある
- 米式:太く短い。車のタイヤと同じ見た目
買うときは、3種類すべてに対応した製品を選んでおくと確実です。家族で複数台あると、形式が混在していることがよくあります。
空気圧の管理が、最も効く整備です
地味ですが、これが一番です。
空気は、乗らなくても自然に抜けていきます。月に一度は入れてください。
空気圧が下がった状態で乗ると、こうなります。
- 重くなる。同じ距離を走るのに、余計な力が要ります。
- パンクしやすくなる。段差でチューブが挟まれて穴が開きます。
- タイヤの寿命が縮む。側面が変形して傷みます。
- ハンドルが不安定になる。
「最近ペダルが重い」と感じたら、たいてい空気です。本体の故障ではありません。
タイヤの側面に、適正な空気圧が書かれています。仏式や米式なら、圧力計付きのポンプで数値を合わせられます。
英式は正確な測定が難しいので、指で押して硬さを確認する方法が現実的です。強く押しても、ほとんどへこまない程度が目安です。
ペダルの左は逆ネジです
知らないと必ず失敗する箇所です。
| 側 | 緩める方向 |
|---|---|
| 右(チェーンのある側) | 反時計回り(通常) |
| 左 | 時計回り(逆ネジ) |
なぜ逆になっているのか。ペダルを漕ぐ力で、緩まないようにするためです。
もし左も通常のネジだったら、漕ぐたびに緩む方向に力がかかります。走行中にペダルが外れれば、大きな事故になります。
これを知らずに「固くて回らない」と力をかけ続けると、ネジ山を壊します。クランク側のネジ山が潰れると、修理は高額です。
覚え方はこうです。どちらも「自転車の前方向に回すと緩む」。左右で回転方向は逆になりますが、この覚え方なら間違えません。
なお、ペダルには薄口の15mmスパナが必要です。通常のスパナでは厚みがあって入りません。
チェーンの注油
空気入れと並んで、費用対効果の高い整備です。
- まず汚れを拭き取る。ウエスでチェーンを挟み、ペダルを逆回転させます。
- コマひとつずつに油をさす。ペダルを回しながら、少しずつ。
- 数分置く。油を内部に浸透させます。
- 表面の余分な油を拭き取る。ここが重要です。
4番を省略する方が多いのですが、表面に残った油は砂を集めます。砂を含んだ油は研磨剤と同じで、かえってチェーンを削ります。
油は、内部に入っていれば十分です。外側はきれいに拭いてください。
ブレーキのリムやディスクに、油をつけないでください。ブレーキが効かなくなります。スプレー式の油を使うときは特に注意してください。飛沫が回り込みます。付いてしまった場合は、専用のクリーナーで完全に脱脂する必要があります。
どこまで自分でやるか
ここが、この記事でいちばん伝えたい部分です。
| 作業 | 難易度 | 判断 |
|---|---|---|
| 空気入れ | 易しい | 自分で |
| チェーン注油 | 易しい | 自分で |
| サドル・ハンドルの高さ調整 | 易しい | 自分で |
| ライト・カゴの取り付け | 易しい | 自分で |
| パンク修理 | やや難しい | 覚える価値あり |
| ブレーキシューの交換 | やや難しい | 不安なら店へ |
| 変速の調整 | 難しい | 店を推奨 |
| ブレーキワイヤーの交換 | 難しい | 店を推奨 |
| ホイールの振れ取り | 専門的 | 店へ |
| ボトムブラケット、ヘッド周り | 専門的 | 店へ。専用工具が必要 |
線引きの基準は明確です。
失敗したときに、走行中の事故につながるかどうか。
サドルの高さを間違えても、乗りにくいだけです。ですがブレーキが効かなければ、止まれません。ここは自信がない限り、手を出さないでください。
専用工具が必要な部分も、店に任せるほうが合理的です。年に1回使うかどうかの工具に、数千円から数万円をかける意味は薄いのです。
整備不良は法律上も問題になります
自転車は道路交通法上の軽車両です。
ブレーキが正常に効かない自転車での通行は、法令上の問題になり得ます。夜間の無灯火も同様です。
「自分の自転車だから、自分の責任」では済みません。止まれずに人にぶつかれば、相手を傷つけます。
定期的に、専門店で点検を受けることをおすすめします。
カーボン部品には、トルクレンチが要ります
スポーツ用の自転車をお持ちの方に向けた話です。
フレーム、ハンドル、シートポスト。これらがカーボン素材の場合、締め付けの強さが数値で指定されています。
カーボンは、金属のように「少し変形して耐える」という性質を持ちません。限界を超えると、割れます。
しかも、割れは内部から進行することがあります。外から見て問題なくても、走行中に突然折れる可能性があります。
「感覚で締める」が通用しません。指定された数値を守るために、トルクレンチが必要になります。
逆に、一般車(ママチャリ)ではここまでの管理は求められません。車種によって必要な道具が変わる、という一例です。
パンク修理という分かれ道
覚えるかどうか迷う作業です。私は覚える価値があると考えています。
理由は、パンクがいちばん困る場所で起きるからです。通勤の途中、出先、夜。押して帰るには遠い場所で起きます。
必要なものは、次の通りです。
- タイヤレバー(2〜3本)
- パッチとゴムのり、または予備チューブ
- 紙やすり(パッチを貼る面を荒らす)
- 空気入れ(携帯用があると出先で対応できます)
コツをひとつ。穴を塞ぐ前に、刺さっているものを探してください。
ガラス片や金属片がタイヤに残ったままだと、修理したチューブがすぐまた穿孔します。タイヤの内側を、指でぐるりとなぞって確認してください。
ただし、指を切らないよう慎重に。ウエスを当てながらなぞる方法が安全です。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| ペダルの左を通常方向に回した | ネジ山を壊す | 左は逆ネジ |
| サイズの合わない六角レンチを使った | ネジ穴がなめる | ガタがないか確認 |
| バルブの形式を確認せず買った | 空気入れが使えない | 先にバルブを見る |
| チェーンの油を拭き取らなかった | 砂を集めて摩耗が進む | 表面は拭く |
| ブレーキに油がついた | 制動力が落ちる | スプレーの飛沫に注意 |
| 締めすぎてカーボンを割った | 部品の交換 | トルクレンチを使う |
| タイヤ内の異物を取らずに修理した | すぐまたパンク | 内側を確認する |
| 空気を入れずに乗り続けた | 重い、パンクしやすい | 月に一度入れる |
よくある質問
Q. 携帯用の工具は必要ですか
A. 遠出をするなら、あると安心です。
折りたたみ式の六角レンチが1つあれば、走行中に緩んだ箇所を締め直せます。数百グラムです。
ただし、携帯用は本締めには向きません。短くて力が入らないためです。あくまで応急用と考えてください。
Q. 潤滑スプレーは何でもいいですか
A. チェーンには、自転車用の油を使ってください。
汎用の潤滑スプレーには、油分を洗い流す性質を持つものがあります。一時的に軽くなりますが、内部の油まで落ちてしまうことがあります。
結果として、しばらくすると以前より状態が悪くなります。数百円の差ですから、専用のものを使ってください。
Q. どのくらいの頻度で整備すればよいですか
A. 目安を挙げます。
| 頻度 | やること |
|---|---|
| 月に一度 | 空気入れ、全体の目視 |
| 2〜3か月に一度 | チェーンの清掃と注油 |
| 半年に一度 | ネジの緩み確認、ブレーキの状態確認 |
| 年に一度 | 専門店での点検 |
雨に濡れた後は、その都度チェーンを拭いてください。錆びる速度がまったく違います。
Q. 子どもの自転車も同じですか
A. 基本は同じですが、点検の頻度を上げてください。
子どもは、不具合に気づいても伝えないことがあります。「ブレーキが効きにくい」と感じても、そのまま乗り続けてしまう。
大人が定期的に確認してください。ブレーキ、ライト、空気圧、ネジの緩み。この4点だけでも、月に一度見ておく価値があります。
成長に合わせたサドルの高さ調整も忘れないでください。低すぎると漕ぎにくく、疲れます。
Q. 電動アシスト車で気をつけることは
A. 電気系統には触らないでください。
空気入れ、注油、サドル調整といった基本の整備は同じです。ですがバッテリー、モーター、配線には手を出さないでください。
また、車体が重く、力も強いぶん、ブレーキとタイヤの消耗が早い傾向があります。点検の間隔は短めに考えてください。
まとめ
- 六角レンチセットと空気入れ。この2つから始めてください。
- 空気入れはバルブの形式を確認してから。英式・仏式・米式があります。
- 空気圧の管理が、最も効く整備です。月に一度。
- ペダルの左は逆ネジ。知らないとネジ山を壊します。
- ブレーキと変速は、不安なら店へ。事故に直結します。
自転車は、身近な乗り物でありながら、専用工具が非常に多い機械でもあります。すべてを自分でやろうとすると、工具代が本体価格を超えることさえあります。
ですが、効果の大きい整備ほど、道具が要りません。空気を入れる。チェーンを拭いて油をさす。この2つだけで、走りも寿命も変わります。
まずはそこから始めて、必要になったときに1つずつ足していく。工具の揃え方の考え方は、最初に揃える工具にもまとめています。
なお、車種によって構造や必要な工具は異なります。とくにブレーキや変速に関わる作業は、取扱説明書の指示に従い、判断に迷う場合は自転車店にご相談ください。