要点を先に
- 自動停止のあるポンプを選んでください。あふれの大半が防げます。
- その場を離れないでください。自動停止があっても、です。
- 電池は使うたびに抜くか、シーズン後に必ず抜く。液漏れします。
- こぼした灯油は、拭いた布を屋外で乾かしてから捨ててください。
あふれさせないことが、すべてです
給油ポンプ選びの基準は、ひとつに絞れます。
灯油をあふれさせないこと。
あふれると、実際に何が起きるのか。
- 床にしみ込みます。畳やカーペットなら、抜けません
- 臭いが、何日も残ります。
- タンクの外側に付いたまま、本体に戻すことになります。
- そして、火気があれば燃えます。
数百円の道具ですが、失敗したときの損害は、それをはるかに超えます。
だからこの記事では、性能の比較より「あふれさせないための道具と手順」を中心に書きます。
ポンプの種類
| 種類 | 価格の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 手動(しゅこしゅこ) | 100〜300円 | 電池不要。時間がかかる。目を離せない |
| 電動・自動停止なし | 500〜1,500円 | 楽だが、止め忘れであふれます |
| 電動・自動停止つき | 1,500〜3,000円 | これを推します |
| 電動・充電式 | 3,000円〜 | 電池交換が不要。本体は高め |
迷ったときのために、はっきり書いておきます。差額は、せいぜい千数百円です。
自動停止のあるものを選んでください。これが、この記事でのはっきりした推奨です。
理由は単純で、人間は、その場を離れるからです。
給油には数分かかります。その間に、電話が鳴る。子どもに呼ばれる。宅配が来る。「少しだけ」と離れた結果が、あふれです。
自動停止は、その人間の性質に対する備えです。
それでも、離れないでください
自動停止は、確実に働くとは限りません。センサーの汚れ、電池の消耗、ノズルの角度、タンクの形状。条件が揃わないと、止まらないことがあります。「自動だから大丈夫」という前提で、その場を離れないでください。ポンプが止まらなければ、タンクからあふれた灯油は床に流れ続けます。18リットルが全部出るまで、止まりません。実際に起きている事故です。自動停止は、目を離してよい理由にはなりません。あくまで、うっかりへの二重の備えと考えてください。
選ぶときに見る点
自動停止のほかにも、見ておきたい点があります。
| 見る点 | なぜ |
|---|---|
| 管の長さ | 短いと、ポリタンクの底まで届きません |
| ノズルの形 | タンクの口に、確実に掛かるか |
| 電池の種類 | 単2か単3か。手持ちに合わせると楽です |
| 本体の固定 | ポリタンクの口に、しっかり付くか |
| スイッチの位置 | とっさに止められる位置にあるか |
| 逆流防止 | 止めたあと、管の灯油が戻るか |
意外に効くのが、ノズルの形です。
タンクの口に引っ掛けて固定できる形なら、手を添えなくても外れません。まっすぐな棒状のものは、抜けて床に垂れることがあります。
そして、管の長さも見てください。
短いと、残りが少なくなったときに届きません。底のほうの灯油が使えず、結局は余らせることになります。
ただし、底ぎりぎりまで吸うのも問題です。水や沈殿物が底にたまっている場合、それを吸い込みます。
最後の数センチは、無理に使わない。そのくらいの割り切りでよいと思います。
給油の場所を決める
ポンプそのものの話に入る前に、場所の話をさせてください。
ストーブのそばで給油しないでください。
タンクを本体から抜いて、別の場所へ運ぶ。その手間を惜しまないでください。理由は、石油ストーブの手入れにも書きました。
給油に向く場所の条件を挙げます。
- 火気がない
- 換気ができる
- 床が、しみ込まない素材(土間、コンクリート、玄関のたたき)
- 明るい
- タンクを置いても安定する、平らな場所
畳やカーペットの上での給油は、避けてください。こぼしたときの被害が、桁違いになります。
屋外という選択もありますが、雨や雪の日は避けてください。タンクに水が入ります。水が混ざるとどうなるかは、去年の灯油は使えるかで書きました。
そして、暗い場所も避けてください。タンクの目盛りが見えません。夕方以降なら、手元を照らすものを用意してください。
あわせて用意するもの
| もの | 用途 | 優先度 |
|---|---|---|
| 受け皿・トレー | タンクの下に敷く。少量のこぼれを受ける | 高い |
| ウエス・新聞紙 | 拭き取り、ノズルの雫受け | 必須 |
| ゴム手袋 | 手荒れを防ぐ | 高い |
| ポンプ置き場(袋・容器) | 使用後のノズルからの雫を受ける | 高い |
| 予備の乾電池 | 途中で止まると困ります | 中 |
| 作業灯 | 暗い場所での給油 | 中 |
意外と効くのが、ポンプの置き場所です。
使い終わったポンプのノズルからは、灯油が垂れます。それをそのまま床に置くと、点々と跡が残ります。
専用の袋や、細長い容器に入れて保管してください。ポンプを買うと付いてくる場合もあります。
給油の手順
- ストーブを消火し、冷めるのを待つ。
- タンクを抜き、給油する場所へ運ぶ。
- 受け皿の上に、タンクを置く。
- ポリタンクとタンクの高さを確認する。ポリタンクが上です
- ノズルを、タンクの口に確実に差し込む。
- ポンプを動かす。
- 目盛りを見ながら、その場で待つ。
- 止める。自動停止に任せきりにしない
- ノズルを抜くとき、雫を垂らさない。少し待ってから抜きます
- ふたを締め、逆さにして確認する。
- タンクの外側を拭いて、本体に戻す。
4番について、少し補足します。
電動ポンプでも、ポリタンクを高い位置に置くほうが安定します。電池が弱っているときは、とくにそうです。
ただし、不安定な台の上に置かないでください。18リットルのタンクは重く、倒れれば大事です。
そして9番。ノズルを抜く瞬間が、床を汚す最大の場面です。
ポンプを止めたあと、数秒待ってください。管の中の灯油が落ちきります。それから、ウエスをノズルの下に添えて抜いてください。
静電気にも、注意してください
冬の給油作業には、もうひとつ条件が重なります。
乾燥した季節に、化学繊維の衣服を着て、屋外で作業する。静電気が起きやすい条件が揃っています。
灯油は、ガソリンほど気化しやすくはありません。常温では、そのままでは引火しにくい性質です。
ですが、条件が揃えば別です。こぼれて広がった灯油、しみ込んだ布、暖房で温まった室内。そうした状況では、油断できません。
ガソリンの携行缶で起きた噴出事故については、ガソリン携行缶の噴き出し事故にまとめました。灯油はそこまでの危険性はありませんが、考え方は共通します。
習慣として、次を守ってください。
- 作業前に、金属に触れて静電気を逃がす。ドアノブなどで構いません
- 給油中に、衣服を脱ぎ着しない。
- ポンプや容器を、引きずらない。
- 火の気のある場所で作業しない。
この習慣は、ガソリンを扱うときには必須です。灯油で身につけておけば、そちらでも役に立ちます。
電池は、抜いてください
これは、電動ポンプで最も多い故障の原因です。
電池を入れたまま放置すると、液漏れします。
漏れた液は端子を腐食させ、動かなくなります。そして、多くの場合は買い替えになります。数百円の電池のために、本体を失う形です。
とくに、給油ポンプは寒い場所に置かれがちです。物置、玄関、ベランダ。温度差の大きい場所ほど、液漏れは起きやすくなります。
対策は簡単です。手間もかかりません。
- シーズンが終わったら、必ず抜く
- 長く使わないときも抜く
- 抜いた電池は、テープを貼って保管
- 新旧を混ぜて使わない
この習慣は、石油ストーブの点火用電池にも当てはまります。同じ日にまとめて抜いてください。
タンクを運ぶところから、作業です
給油そのものより、前後の運搬で困っている方が多いように思います。
18リットルのポリタンクは、灯油が入るとかなりの重さになります。これを物置から出し、給油場所まで運ぶ。腰への負担が大きい作業です。
工夫の余地があります。
- 18リットルではなく、小さいタンクを併用する。10リットル程度なら扱いやすくなります
- 台車やキャリーを使う。距離があるなら効きます
- ポリタンクの置き場所を、給油する場所の近くにする。
- 持ち上げず、床に置いたまま作業する。ポンプなら高さの調整で対応できます
とくに3つ目が効きます。
置き場所を決めるときは、購入時の搬入と、給油時の動線の両方を考えてください。毎日のように運ぶことになります。
ただし、置き場所には条件があります。直射日光が当たらないこと、火気から離れていること、居室ではないこと。ここは譲れません。
重い物を動かすときの体の使い方は、家具の移動・模様替えの道具にもまとめました。腰ではなく、脚で持ち上げてください。
こぼしたときの対処
どれだけ気をつけていても、こぼれることはあります。そのときの手順を、先に決めておいてください。
- 火気を確認する。近くに火があれば、まず消してください
- 窓を開ける。
- 広げずに、押さえて吸い取る。拭くのではなく、押し当てます
- 吸わせた布や紙を、屋外へ出す。
- 風通しのよい場所で、完全に乾かす。
- 乾いてから、自治体の指示に従って捨てる。
4番と5番を、省かないでください。
灯油を吸った布を、丸めてごみ箱に入れるのは危険です。しみ込んだ油は、液体のままより燃えやすい状態になっています。
床の素材別の注意は、去年の灯油は使えるかにまとめました。
そして、臭いが残っている間は、その場で火を使わないでください。気化した成分が、空気中に残っています。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| その場を離れた | あふれる | 離れない。自動停止も過信しない |
| 畳の上で給油した | しみ込んで抜けない | 場所を選ぶ |
| ノズルを勢いよく抜いた | 床に点々と垂れる | 数秒待ち、布を添える |
| 電池を入れたまま片付けた | 液漏れで故障 | シーズン後に抜く |
| 満杯まで入れた | 膨張してあふれる | 目盛りまで |
| 雨の日に屋外で給油した | 水が混入する | 屋根のある場所で |
| ポンプを床に直置きした | 雫で跡が残る | 袋か容器に入れる |
| 拭いた布をごみ箱へ | 出火の危険 | 屋外で乾かしてから |
細かい疑問に答えます
Q. 手動と電動、どちらがいいですか
A. 電動を推します。ただし、手動にも利点はあります。
手動は電池が要りません。停電のときにも使えます。100円台で買えます。
ただ、時間がかかります。そして、握り続ける必要があるため、途中でやめにくいという面があります。
おすすめは、電動を主に使い、手動を予備として持っておく形です。電池が切れたとき、停電のときに困りません。
Q. 吸い上げが弱くなりました
A. まず電池を疑ってください。
新しい電池に替えても改善しない場合は、次の点を確認してください。
- ノズルの詰まり:異物が入ることがあります
- 管の差し込み不足:灯油に届いていない可能性
- タンクの残量:底が近いと空気を吸います
- 高さの関係:ポリタンクが低すぎませんか
数百円から千円台の道具です。調子が悪ければ、無理に使わず買い替えてください。
Q. 何年くらい使えますか
A. 樹脂とゴムでできた道具なので、経年で劣化します。
次のいずれかがあれば、交換してください。
- 管にひび割れがある
- 接続部から漏れる
- 樹脂が白っぽく、硬くなっている
- 自動停止が働かないことがある
とくに1つ目は、使用中に折れて、灯油が噴き出すことにつながります。
Q. ポリタンクから直接、注げませんか
A. おすすめしません。
18リットルのタンクを持ち上げて傾ける作業は、重く、不安定です。量の調整も効きません。
こぼす前提の作業になります。数百円のポンプを使ってください。
例外は、タンクの残りが少なくなったときです。ポンプの管が届かない量になれば、傾けて注ぐほうが早い場合もあります。その場合も、受け皿を敷き、少量ずつ、両手で支えて行ってください。タンクの口に、じょうごを使うと失敗しにくくなります。
まとめ
- 自動停止つきを選ぶ。差額は千数百円です。
- それでも、その場を離れない。
- 場所を選ぶ。畳とカーペットの上では給油しないでください。
- ノズルは、数秒待ってから抜く。
- 電池は、シーズン後に必ず抜く。
- 拭いた布は、屋外で乾かしてから捨てる。
給油ポンプは、家の中でいちばん安い道具のひとつだと思います。
それでいて、失敗すると被害が大きい。この不釣り合いが、この道具の特徴です。
安いほうを選んで数分の手間を増やすか、少し出して備えを買うか。冬のあいだ、何十回も繰り返す作業だという点を踏まえて選んでください。
そして、繰り返す作業だからこそ、慣れて雑になります。事故が起きるのは、初回ではありません。何度もやって、手順を省き始めたころです。
なお、製品ごとに使い方や注意点は異なります。使用前に、製品に付属する説明をご確認ください。