はじめに押さえておきたいこと
- 2013年、京都府福知山市の花火大会で死者3名、重軽傷48名の事故が起きました。原因はエア抜きをせずにキャップを開けたことです。
- 夏場の車内や物置では、缶の内圧が上がります。缶が膨らんでいたら要注意のサインです。
- エア抜きねじがない古いタイプの缶は、日陰で冷ましてから開けてください。
エア抜きが先、キャップが後です
この記事で覚えていただきたいことは、たったひとつです。
ガソリン携行缶を開けるときは、先にエア抜きねじをゆるめて内圧を逃がす。それから給油キャップを開ける。
この順番を逆にすると、中のガソリンが霧のように噴き出します。周囲に火の気があれば、そのまま引火します。
大げさに聞こえるでしょうか。実際に、この手順を飛ばしたことで3人が亡くなった事故があります。
私は乙種第4類危険物取扱者の資格を持っています。この記事では、なぜ噴き出すのかという仕組みから、正しい手順、そして缶の選び方までを書いていきます。
作業自体は10秒で終わります。知っているかどうかだけの差です。
福知山花火大会の事故で何が起きたか
2013年8月、京都府福知山市の花火大会会場で爆発火災が起きました。
屋台の発電機に給油しようとした人が、ガソリン携行缶のエア抜きをせずに注ぎ口を開けました。その瞬間、ガソリンが霧状に噴き出します。近くにあった調理器具の火が引火し、爆発的に燃え広がりました。
死者3名、重軽傷者48名。花火を見に来ていた人たちが巻き込まれました。
この事故を受けて、国民生活センターは2021年2月にガソリン携行缶の取り扱いに関する注意喚起を出しています。各地の消防本部も繰り返し呼びかけています。
ここで強調したいのは、事故を起こした人が特別に不注意だったわけではない、ということです。
携行缶の説明書を隅々まで読む人は、そう多くありません。エア抜きねじの存在自体を知らない方もいます。知らなければ、誰でも同じことをします。
なぜ噴き出すのか
仕組みを理解しておくと、危険な状況を自分で判断できるようになります。
ガソリンは常に蒸発している
ガソリンの引火点はマイナス40度以下です。これは、マイナス40度の環境でも燃える蒸気を出しているという意味です。
つまり、日本の日常的な気温ではガソリンは常に蒸発し続けています。密閉された缶の中では、蒸発した気体が逃げ場を失って溜まっていきます。
温度が上がると、圧力が跳ね上がる
蒸発の量は温度に強く影響されます。気温が上がるほど、蒸発するガソリンは増えます。
夏場の車内は50度を超えます。金属製の物置も、直射日光が当たれば同じくらいになります。そんな場所に置かれた缶の中では、圧力がどんどん高まっています。
缶を見れば分かることがあります。ふくらんでいたら、内圧が上がっているサインです。平らだったはずの側面や底が張り出していないか、確認してください。
キャップを開けた瞬間、一気に吹き出す
圧力が高まった状態で、給油キャップをいきなり開けたらどうなるか。
閉じ込められていた圧力が、狭い注ぎ口から一気に外へ出ます。そのとき、液体のガソリンも一緒に押し出されます。勢いよく出た液体は、細かい霧になります。
ここが一番危ないところです。霧状になったガソリンは、空気とよく混ざります。燃えるのに最適な状態ができあがってしまうのです。
そこに火の気があれば、瞬時に燃え広がります。福知山で起きたのは、まさにこれでした。
火がなくても危険です。噴き出したガソリンは顔や体にかかります。ガソリンは皮膚から吸収され、目に入れば強い痛みを伴います。
エア抜きねじの正しい使い方
では、具体的な手順です。
まず、ねじの場所を確認する
エア調整ねじは、給油キャップとは別に付いています。缶の上部、キャップの隣にある小さなねじがそれです。
製品によって「エア調整ネジ」「エア抜きネジ」「通気口」など呼び方が違います。マイナスドライバーで回すタイプ、指でつまむタイプ、レバー式などがあります。
今すぐ、お手元の缶を確認してみてください。どれがエア抜きねじか分からないまま使っている方は、意外と多いです。
開けるときの手順
- 周囲に火の気がないことを確認する。喫煙、ストーブ、エンジン。すべて止めてください。
- 缶を平らな地面に置く。手に持ったまま開けない。車の荷台の上でも開けない。
- 顔を近づけない。缶の真上に顔を持ってこないでください。
- エア抜きねじをゆっくりゆるめる。「シュー」という音がします。
- 音が完全に止まるまで待つ。数秒で終わることも、しばらくかかることもあります。
- それから給油キャップを開ける。
ポイントは4番の「ゆっくり」です。勢いよく全開にすると、ねじの穴から圧力とともにガソリンが飛び出すことがあります。少しずつ、様子を見ながらゆるめてください。
閉めるときも順番があります
意外と忘れられがちですが、閉めるときも大切です。
給油キャップを閉めてから、エア抜きねじを閉める。開けるときと逆の順番です。
そしてエア抜きねじは必ず閉めてください。開けたままにすると、走行中の揺れでガソリンが漏れます。ここを閉め忘れる事故が実際に起きています。
作業が終わったら、キャップとねじの両方を指で確認する。この習慣をつけてください。
エア抜きねじがない缶を持っている場合
すべての携行缶にエア抜きねじが付いているわけではありません。特に古いタイプや、海外製の一部にはありません。
その場合は、缶を冷ましてから開けるしかありません。
- 日陰の涼しい場所に移し、30分以上置く。
- 缶のふくらみが収まったか、手で触って確認する。
- キャップをゆっくり、少しずつゆるめる。一気に開けない。
- 顔を離し、風上に立つ。
水をかけて急速に冷やす方法は、おすすめしません。缶の外側に付いた水が、給油時に中に入る可能性があるからです。
正直に言えば、エア抜きねじのない缶は買い替えたほうがいいです。数千円で安全が買えます。毎回冷ますのを待つ手間を考えても、割に合います。
保管中の漏れと亀裂にも注意
噴き出し事故だけではありません。国民生活センターには、保管している携行缶からガソリンが漏れていた、缶に亀裂が入っていたという相談が寄せられています。
漏れの原因はいくつかあります。
パッキンの劣化
キャップの内側には、ゴムのパッキンが入っています。これは消耗品です。
硬くなっていないか、ひび割れていないか、ひしゃげていないか。年に一度は確認してください。パッキンだけ交換できる製品もあります。
内圧による変形
高温の場所に置かれ続けた缶は、膨張と収縮を繰り返します。この動きが金属を疲労させ、継ぎ目に亀裂を生みます。
だから保管場所が大事なのです。直射日光の当たらない、風通しのよい場所に置いてください。車内や締め切った物置は最悪の条件です。
底の錆
地面に直接置いていると、底から錆びていきます。特にコンクリートの上は湿気が上がってきます。
すのこや棚に載せる、あるいはトレーの上に置く。それだけで寿命が変わります。
季節ごとの注意点
夏:最も危険な季節
言うまでもなく、夏がいちばん危険です。
車で運んできた缶を、そのまま炎天下で開けるのは避けてください。日陰に移し、少し落ち着かせてから作業する。この一手間が事故を防ぎます。
草刈りや発電機の使用は、夏に集中します。使う頻度が上がる季節と、危険が高まる季節が一致しているのが、この道具の厄介なところです。
冬:油断しやすい季節
冬は内圧が上がりにくいので、噴き出し事故は減ります。ただし別のリスクがあります。
静電気です。空気が乾燥する季節は、体に静電気が溜まりやすくなります。給油の直前に金属部分に触れて放電させる。これを習慣にしてください。
また、暖房器具が近くにあることも増えます。石油ストーブの近くで給油作業をしない。当たり前に思えて、寒いとつい室内でやりたくなります。
静電気こそ、見えない着火源です
噴き出しと並んで危険なのが静電気です。こちらは目に見えないぶん、意識されにくいと感じています。
液体が流れるだけで電気が生まれる
ガソリンのような液体が管や注ぎ口を通って流れると、その摩擦で電気が発生します。流動帯電と呼ばれる現象です。
やっかいなのは、ガソリンが電気を通しにくい液体だということです。発生した電気が逃げられず、液体の中や容器に溜まっていきます。
そして限界に達したとき、放電します。火花が飛ぶということです。周囲がガソリンの蒸気で満たされていれば、そこで引火します。
人体も帯電します。車のシートから降りたとき、ドアに触れてバチッときた経験があると思います。あれと同じ電気が、給油作業のときに放電すれば着火源になります。
静電気を防ぐ5つの習慣
- 缶を地面に直接置く。金属缶なら、溜まった電気が地面へ逃げます。荷台の上やプラスチックのケースの上では逃げません。
- 作業前に金属に触れる。自分の体の電気を先に逃がします。セルフのスタンドにある静電気除去シートは、まさにこのためのものです。
- ゆっくり注ぐ。勢いよく流すほど、発生する電気は増えます。急がないでください。
- ノズルをタンクの口に接触させる。金属同士が触れていれば、電位差が生まれにくくなります。
- 化学繊維の服を避ける。冬場のフリースやナイロンは帯電しやすい素材です。
特に2番目は、習慣にする価値があります。作業を始める前に、車のボディでも物置の金属部分でも、どこか手で触れる。1秒で終わります。
缶から機械へ注ぐときの手順
ここまでは「缶を開ける」話でした。次は「注ぐ」話です。こぼす事故の大半は、この場面で起きます。
- 機械のエンジンを止め、冷ます。マフラー周辺は数百度になっています。こぼれた燃料が触れれば発火します。
- 機械を平らな場所に置く。傾いていると、タンクの口から溢れやすくなります。
- ノズルを取り付ける。缶から直接注ぐと、まず確実にこぼします。
- ノズルの先をタンクの口に差し込む。浮かせたまま注がないでください。
- 一気に傾けず、少しずつ起こしていく。缶の中の空気の入れ替わりで、ドクドクと脈打つように出ることがあります。
- 満タンにしない。燃料は温度で膨張します。タンクの口いっぱいまで入れると、日中に溢れます。
- 注ぎ終わったら、機械側と缶側の両方のふたを閉める。缶はエア抜きねじも忘れずに。
- こぼれた分を拭き取る。そのまま始動させると、こぼれた燃料に引火する可能性があります。
5番の「脈打つように出る」現象は、経験がないと驚きます。缶の中に空気が入るタイミングで流量が変わるためです。手元が狂ってこぼす原因になります。
これを防ぐには、空気穴のあるノズルを使うか、缶を傾けすぎないことです。安いノズルでも、あるとないとでは作業のしやすさが全く違います。
万一、引火してしまったら
考えたくないことですが、知っておくべきです。判断を誤ると被害が広がります。
水をかけてはいけません
これが最も重要な点です。ガソリンの火災に水をかけると、火が広がります。
ガソリンは水より軽く、水に溶けません。水をかけると、燃えているガソリンが水の上に浮いたまま流れていきます。つまり、火のついた液体を撒き散らすことになります。
反射的にバケツの水をかけたくなる場面ですが、絶対にやめてください。
使えるのはABC粉末消火器と乾いた砂
油の火災はB火災と分類されます。消火器のラベルに、B火災に対応していることを示す表示があるか確認してください。
家庭用として広く売られているABC粉末消火器は、A(普通火災)B(油火災)C(電気火災)のすべてに対応します。ガソリンを扱う作業場所には、これを1本置いておくことをすすめます。
消火器がなければ、乾いた砂をかけて空気を遮断する方法もあります。屋外で作業するなら、バケツ一杯の砂を用意しておくと安心です。濡れた砂は使えません。
迷ったら消火より避難
初期消火で対応できるのは、ごく小さな火だけです。目安として、炎が自分の背丈を超えたら消火は諦めてください。
その場を離れ、周囲の人に知らせ、119番通報する。ガソリンの火災は数十秒で手に負えなくなります。物は燃えても構いません。
使う前の点検チェックリスト
シーズンの最初や、久しぶりに缶を出したときに確認してほしい項目です。
| 確認箇所 | 見るポイント | 問題があれば |
|---|---|---|
| 缶全体の形 | ふくらみ、へこみ、変形がないか | 日陰で冷ます。戻らなければ交換 |
| 底面 | 錆、腐食、湿った跡がないか | 錆が進んでいれば交換 |
| 継ぎ目 | 亀裂、にじみがないか | 使用中止 |
| キャップのパッキン | 硬化、ひび割れ、変形 | パッキン交換または缶ごと交換 |
| エア抜きねじ | 固着せずスムーズに回るか | 固着していれば使用中止 |
| 品名の表示 | 消えていないか | 油性マーカーで書き直す |
| ノズル | ゴム部分の劣化、ひび割れ | ノズルのみ交換可能 |
ここで一番見落とされるのがエア抜きねじの固着です。長年使っていない缶では、ねじが回らなくなっていることがあります。
力任せに回すと、ねじ山を壊します。壊れれば、内圧を逃がす手段がなくなります。回らない缶は使わないと決めてください。
やってはいけないこと
まとめて挙げておきます。
- エア抜きせずにキャップを開ける。この記事の主題です。
- 缶を持ったまま開ける。噴き出したとき、全身にかかります。
- 車の荷台に載せたまま開ける。静電気が逃げません。地面に降ろしてください。
- 缶の真上から覗き込む。顔にかかります。
- エンジンをかけたまま給油する。発電機も草刈機も、必ず停止させてから。
- 熱い機械にそのまま給油する。エンジンが冷めるまで待ってください。こぼれた燃料が高温部に触れると発火します。
- エア抜きねじを開けっぱなしにする。走行中に漏れます。
- 暗い場所でライターの火を頼りに作業する。笑い話ではなく、実際にある事故です。
機械別の注意点
携行缶を使う相手は、たいてい決まっています。機械ごとにつまずきやすい点が違うので、整理しておきます。
発電機:停電中こそ焦らない
発電機は、停電という非常時に使います。暗い、急いでいる、明かりが欲しい。事故の条件がそろいやすい場面です。
必ずエンジンを止め、少し冷ましてから給油してください。動かしたまま給油したくなりますが、マフラーは高温です。
照明はヘッドライトなどのLEDを使ってください。ろうそくやライターの火で手元を照らすのは論外です。
屋内やガレージ内での運転は、一酸化炭素中毒の危険があります。給油以前の問題として、必ず屋外で使ってください。
草刈機・チェーンソー:混合燃料の管理
2サイクルの機械には混合燃料を使います。混合燃料もガソリンと同じ扱いなので、容器も手順も変わりません。
注意点は劣化の早さです。混合燃料はオイルが混ざっているぶん、ガソリン単体より傷みやすくなります。1か月を目安に使い切ってください。
作業直後の機械は非常に熱くなっています。特にチェーンソーは、連続使用後にすぐ給油しがちです。数分でいいので待ってください。
農機・除雪機:季節をまたぐ保管に注意
年に数回しか使わない機械は、燃料を入れたまま長期保管されがちです。
劣化したガソリンはキャブレターを詰まらせます。シーズン終わりには燃料を抜くか、使い切ってから保管してください。缶に残った分も同じです。
よくある質問
Q. エア抜きねじから出てくる気体は危険ですか?
A. 危険です。出てくるのはガソリンの蒸気で、そのまま燃えます。
だから火の気のない場所で、風通しのよい屋外で作業してください。室内やガレージの中でエア抜きをすると、蒸気が溜まります。ガソリンの蒸気は空気より重いので、床付近に溜まる性質があります。
Q. 「シュー」という音がしません。故障ですか?
A. 内圧が上がっていなければ、音はしません。それ自体は正常です。
涼しい場所に置いてあった缶や、中身が少ない缶では音がしないこともあります。音がしなくても、手順を省略しないでください。先にねじをゆるめる習慣が、暑い日にあなたを守ります。
ただし、明らかに缶が膨らんでいるのに音がしない場合は、ねじが詰まっている可能性があります。その缶は使わず、消防署かスタンドに相談してください。
Q. 携行缶が膨らんでいます。どうすればいいですか?
A. まず日陰の涼しい場所へ移してください。無理に開けようとしないことです。
手順としては、火気のない屋外に移す、しばらく置いて冷ます、それからエア抜きねじをゆっくりゆるめる、という流れになります。
膨らみが極端で、変形が戻らない場合は缶が傷んでいます。中身を安全に処理したうえで、缶は買い替えてください。
Q. ガソリンが手にかかりました。大丈夫ですか?
A. すぐに石けんと水で洗い流してください。
ガソリンは皮膚の脂を奪い、荒れの原因になります。長時間触れていると化学やけどを起こすこともあります。皮膚から体内に吸収される成分もあります。
衣服に染みた場合は着替えてください。染みたまま火の近くに行くのは危険です。目に入った場合は、大量の水で15分以上洗い流し、医療機関を受診してください。
Q. 発電機に給油するとき、エンジンは止めるべきですか?
A. 必ず止めてください。そして、少し冷ましてから給油します。
稼働中のエンジンは高温です。マフラー周辺は数百度に達します。こぼれたガソリンが触れれば、それだけで発火します。
停電時など「止めたくない」場面ほど、事故は起きます。燃料が切れる前に、余裕をもって計画的に給油してください。
Q. 缶を長期間使わないときは、空にすべきですか?
A. 中身を使い切って、空にしておくのが基本です。ただし空の缶も安全ではありません。
空の缶の中には、残った燃料が蒸発した気体が満ちています。液体で満たされているときより、むしろ燃えやすい濃度になっていることがあります。
「空だから」と油断せず、火気から離して保管してください。ふたは閉めておきます。
Q. 子どもやペットがいる家では、どう気をつければいいですか?
A. 手の届かない場所に置き、施錠できるならなお良いです。
子どもが缶を倒す、ふたを開ける、といった事故は現実に起きています。ガソリンは少量でも誤飲すれば重篤です。誤飲した場合、無理に吐かせてはいけません。肺に入ると化学性肺炎を起こします。ただちに救急へ連絡してください。
ペットについても同様です。こぼれたガソリンを舐める、足に付いたものを毛づくろいで舐める。どちらも中毒につながります。作業した場所は必ず拭き取ってください。
Q. 携行缶に消費期限のようなものはありますか?
A. 金属製の缶に法定の期限はありません。ただし部品は劣化します。
特にパッキンはゴムなので、5年から10年で硬化します。見た目に問題がなくても、密閉性は落ちています。エア抜きねじの動きが渋くなってきたら、そろそろ買い替えの時期です。
なお、ガソリン用のプラスチック容器を運搬に使う場合は、製造から5年以内という法令上の要件があります。こちらは目安ではなく期限です。
Q. 缶を車で運んだ直後に給油しても大丈夫ですか?
A. 夏場はおすすめしません。少し待ってください。
車内で温まった缶は、内圧が上がっています。着いてすぐ開けると噴き出しやすい状態です。日陰に降ろして、しばらく置いてから作業してください。
急ぐ場合でも、エア抜きねじをゆっくりゆるめて、音が完全に止まるまで待つ。この手順を守れば対処できます。
Q. 給油中にこぼしてしまいました。すぐ動かしていいですか?
A. いけません。こぼれた燃料を拭き取り、揮発するまで待ってください。
機械の表面にガソリンが残った状態でエンジンをかけると、高温のマフラーやエンジン本体に触れて発火する危険があります。実際に多い事故のパターンです。
吸着マットかウエスで拭き取り、数分置いて臭いが弱まってから始動してください。使ったウエスは丸めて放置せず、密閉して処分します。
ここまでの要点
要点を整理します。
- 順番は「エア抜きねじ → 給油キャップ」。閉めるときは逆順で、ねじの閉め忘れに注意。
- 2013年の福知山では、この順番を誤って3人が亡くなりました。知識の有無だけの差です。
- 缶がふくらんでいたら、内圧上昇のサイン。日陰で冷ましてから開けてください。
- 缶は地面に置いて開ける。手に持ったまま、荷台に載せたままは危険です。
- エア抜きねじのない缶は買い替えを検討してください。安全は数千円で買えます。
- 保管場所は直射日光を避けた風通しのよい場所。車内は最悪です。
- 給油は必ずエンジンを止めて、冷ましてから。
ガソリン携行缶は、ホームセンターで誰でも買える道具です。免許も資格も要りません。
だからこそ、危険が見えにくくなっています。手順書を読まずに使い始めても、たいていは何も起きません。何も起きないから、危ないと思わなくなります。
そして、条件がそろった日に事故が起きます。暑い日、急いでいるとき、近くに火がある場所で。
福知山の事故が起きたのも、まさにそういう日でした。夏の夕方、人が大勢いる会場で、屋台の火が近くにある状況。ひとつでも条件が欠けていれば、あれほどの被害にはならなかったはずです。
逆に言えば、条件をひとつ減らすだけで事故は防げます。日陰に移す。火から離れる。ねじを先にゆるめる。どれも数十秒でできることばかりです。
この記事の内容は執筆時点の情報にもとづいています。取り扱いに不安があるときは、お住まいの地域の消防本部に相談してください。安全に関する問い合わせは、いつでも歓迎されます。分からないまま使い続けるより、ずっと確実です。
この記事を読んだ方は、次に缶を開けるとき、きっとエア抜きねじを探すはずです。それだけで十分です。10秒の手間が、取り返しのつかない事故を防ぎます。
なお、車で運ぶときの量や積み方についてはガソリン携行缶は車に何リットル積める?にまとめています。