この記事で分かること
- 工具は要りません。手だけで、5分で終わります。
- 拭けない原因は、ワイパーではなくガラスの油膜かもしれません。
- アームを立てたまま手を離さないでください。ガラスが割れます。
- ゴムだけ替えるか、ブレードごと替えるかで費用と手間が変わります。
結論:交換の前に、ガラスを疑ってください
「ワイパーが拭き取れなくなった」
そう感じたとき、多くの方はワイパーを買いに行きます。ですが、交換しても改善しないことがあります。
原因が、ワイパー側ではなくガラス側にあるためです。
| 症状 | 疑うところ |
|---|---|
| スジが残る | ゴムの劣化、欠け |
| 全体が白くぼやける | ガラスの油膜 |
| ビビリ音がする | ゴムの反転不良、アームの角度 |
| 水が玉になって残る | 撥水剤とゴムの相性 |
| 拭いた直後に曇る | 油膜、または内側の汚れ |
白くぼやける症状なら、まずガラスを疑ってください。新品のワイパーを付けても、油膜の上を滑るだけです。
油膜とは何か
ガラスの表面に付く、薄い油の膜です。
原因はいくつもあります。
- 他の車の排気に含まれる油分
- ワックスやコーティング剤の飛沫:洗車のときに付きます。
- 撥水剤の劣化した残り
- ゴムから溶け出した成分
油膜が付いていると、夜間の対向車のライトが乱反射します。ぎらついて見えにくくなる、あの状態です。
雨の夜に「急に見えにくくなった」と感じるなら、これが原因かもしれません。安全に直結する問題です。
油膜の落とし方
専用の油膜取りクリーナーを使います。1,000円ほどで買えます。
- ガラスを水で流し、砂を落とす。
- クリーナーをスポンジに付け、ガラスを磨く。
- よく洗い流す。研磨剤が残らないように。
- 水を弾かなくなったか確認する。均一に濡れれば、油膜が落ちています。
4番が判定の方法です。水が玉になるなら、まだ油分が残っています。べったりと濡れ広がる状態が、油膜のないガラスです。
注意点として、クリーナーが塗装やゴムに付かないようにしてください。研磨剤を含むものは、塗装を傷めます。周囲を養生するか、すぐに洗い流してください。
ゴムだけか、ブレードごとか
| ゴムだけ交換 | ブレードごと交換 | |
|---|---|---|
| 費用 | 500〜1,500円 | 1,000〜3,000円 |
| 手間 | やや面倒 | 簡単 |
| 時間 | 10分ほど | 5分ほど |
| 金具のサビ | そのまま残ります | 新品になります |
| 向いている場面 | 金具がきれいなとき | 数年使ったブレード |
私の考えを書きます。
2〜3回はゴムだけ交換し、その後ブレードごと替える。これが現実的だと思います。
ブレードの金具は、少しずつサビて歪みます。歪んだ金具では、新しいゴムを付けてもガラスに均一に当たりません。
ゴムを替えても改善しないなら、金具のほうが寿命です。
買う前に確認すること
| 確認 | 注意点 |
|---|---|
| 長さ | 運転席と助手席で違います |
| 取り付け形状 | Uフックが主流。輸入車は別形状も |
| ゴムの幅と長さ | ゴムだけ買う場合 |
| ゴムの形状 | 金具の溝の形に合うもの |
| リアワイパーの有無 | 形状が前と違うことがあります |
運転席と助手席で長さが違うのは、見落としやすい点です。
2本セットで売られているものもありますが、同じ長さが2本ということもあります。確認せずに買うと、片方が合いません。
売り場には車種別の適合表が置かれています。年式と型式で調べてください。型式は車検証に記載があります。
あるいは、古いゴムを持っていく。これがいちばん確実です。長さと断面の形を、その場で比べられます。
交換の手順
アームを立てた状態で、手を離さないでください。ワイパーアームはバネで強く押し付けられています。ブレードを外した状態で倒れると、金属の先端がガラスを直撃します。フロントガラスが割れます。交換費用は数万円から十数万円です。作業中は、タオルをガラスに敷いておいてください。それだけで、万一のときの被害を防げます。
ブレードごと交換する場合
- ガラスにタオルを敷く。保険です。
- アームを立てる。カチッと止まる位置まで。
- ブレードの接続部を確認する。ツメやレバーがあります。
- ツメを押しながら、ブレードを外す。下方向にスライドさせるものが多い。
- 新しいブレードを差し込む。カチッと音がするまで。
- しっかり付いたか、引っ張って確認する。
- アームをゆっくり戻す。
- ウォッシャー液を出して、拭き取りを確認する。
6番を必ずやってください。付いたように見えて、実は掛かっていないことがあります。走行中に外れると危険です。
ゴムだけ交換する場合
- ブレードをアームから外す。ここまでは同じです。
- ゴムの端にあるストッパーを確認する。片側だけ抜けるようになっています。
- ゴムを引き抜く。硬い場合はペンチを使ってください。
- 金属の細い板(バーテブラ)を、古いゴムから外す。2本入っています。
- 新しいゴムに、その板を入れる。向きに注意してください。
- ブレードの溝に差し込む。
- ストッパーが掛かるまで、しっかり入れる。
4番と5番が、ゴム交換の要です。
ゴムの中には、細い金属の板が2本入っています。これがゴムを支え、ガラスに押し付ける役割をしています。
新品のゴムに付属していないことがあります。その場合、古いゴムから移し替えてください。捨ててしまうと、使えなくなります。
そして、板には向きがあります。断面の形が左右で違うことがあるので、外すときに確認してください。
ビビリ音の原因
「ガガガ」と震えるような音が出ることがあります。
これは、ゴムがうまく反転していないために起きます。
ワイパーのゴムは、進行方向に応じて傾きが変わります。行きと帰りで、寝る向きが入れ替わる。この動きがスムーズでないと、引っかかって震えます。
| 原因 | 対処 |
|---|---|
| ゴムが硬化している | 交換 |
| ガラスに油膜がある | 油膜を落とす |
| 撥水剤との相性 | 撥水対応のゴムに替える |
| アームの角度が狂っている | 調整、または専門店へ |
| ゴムに砂が挟まっている | 拭き取る |
意外と多いのが撥水剤との相性です。
ガラスに撥水コーティングをすると、水が玉になって流れます。ですが、通常のワイパーゴムでは、この上を滑りにくいことがあります。
撥水コーティングを使うなら、撥水ガラス対応のゴムを選んでください。逆に、撥水対応ゴムを普通のガラスに使うと、これも音が出ることがあります。
ガラスとゴムは、組み合わせで考えてください。
ガラスの内側も忘れないでください
見落とされやすい部分です。
フロントガラスの内側にも、汚れが付きます。そして、こちらのほうが視界への影響が大きいことがあります。
- ダッシュボードから出る成分:樹脂の可塑剤が、熱で揮発してガラスに付着します。
- タバコのヤニ:黄色く曇ります。
- 手の脂:拭いたつもりで広げていることも。
- エアコンから出る油分
内側の汚れは、ワイパーでは絶対に取れません。そして、曇りやすさにも直結します。
「デフロスターをかけても、なかなか曇りが取れない」という場合、内側の油膜が原因かもしれません。
拭くときのコツを挙げます。
- 2枚のクロスを使う。1枚で汚れを落とし、もう1枚で乾拭きします。
- 縦と横で方向を変える。拭き残しが分かります。
- 洗剤は薄めて使う。成分が残ると、かえって曇ります。
- ダッシュボードの上を養生する。液だれで傷めます。
車内の清掃全般については、車内の掃除に必要な道具にまとめました。
交換の時期
目安は半年から1年とされます。ですが、使用状況で大きく変わります。
- 屋外駐車:紫外線でゴムが硬化します。早く劣化します。
- 屋根付き駐車場:条件がよく、長持ちします。
- 雪の多い地域:氷を擦って傷みます。
- ほとんど雨に使わない:それでもゴムは劣化します。
判断の目安を挙げます。
- 拭いた跡にスジが残る
- ゴムを指でなぞると、ひび割れや硬さを感じる
- ゴムの縁が欠けている
- ビビリ音が出るようになった
梅雨入り前に確認するのが、実用的な習慣です。いちばん必要になる時期の直前に、状態を見ておく。
日常のひと手間
寿命を延ばす方法があります。
- 洗車のとき、ゴムを拭く。挟まった砂を落とします。
- 乾いたガラスで動かさない。ゴムが削れます。
- 凍ったガラスで動かさない。ゴムがちぎれます。
- 長期間停める前に、ワイパーを立てておく。ゴムの変形を防げます。
2番目は、意外とやってしまいます。ほこりを払おうとして、乾いたまま動かす。これはゴムにもガラスにも良くありません。
ウォッシャー液を出してから動かしてください。詳しくは洗車に必要な道具にも書いた、「砂を挟んで擦らない」という原則と同じ話です。
冬のワイパー
雪の降る地域では、専用品があります。
| 通常のワイパー | 冬用(スノーブレード) | |
|---|---|---|
| 構造 | 金具がむき出し | ゴムで覆われている |
| 雪の付着 | 金具に凍りつく | 凍りにくい |
| 夏場の使用 | 問題なし | 不向き。重く、劣化が早い |
通常のワイパーは、金具の隙間に雪が入り込んで凍ります。そうなると、ゴムがガラスに密着しなくなります。
冬用は全体がゴムで覆われているため、この問題が起きにくくなっています。
ただし、夏場はそのまま使わないでください。重く、紫外線で劣化が早まります。タイヤと同じで、シーズンごとの履き替えになります。
冬季の車の備えは、冬の車の備えにまとめました。
凍りついたときは
凍ったまま動かさないでください。
- ゴムがちぎれます。氷に貼り付いた状態で無理に動かすためです。
- モーターに負担がかかります。動かない物を回そうとします。
- ヒューズが切れることもあります。
エンジンをかけ、デフロスターでガラスを温めてから動かしてください。
また、降雪が予想される夜は、ワイパーを立てておくと貼り付きません。ただし、風の強い日は倒れることがあるので注意してください。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| アームを倒してガラスを割った | 数万円以上の修理 | タオルを敷く |
| 左右同じ長さを買った | 片方が合わない | 適合表を確認 |
| 金属の板を捨てた | ゴムが支えられない | 古いゴムから移す |
| 油膜を落とさず交換した | 改善しない | ガラスを先に確認 |
| 撥水剤とゴムが合っていない | ビビリ音 | 組み合わせで選ぶ |
| 乾いたガラスで動かした | ゴムが削れる | ウォッシャー液を出す |
| 凍ったまま動かした | ゴムがちぎれる | 解凍してから |
| 取り付けを確認しなかった | 走行中に外れる | 引っ張って確認 |
よくある質問
Q. ウォッシャー液は水でよいですか
A. 冬は凍ります。専用の液を使ってください。
水道水を入れていると、寒冷地ではタンクやホースの中で凍結します。膨張して、部品が割れることもあります。
また、油汚れを落とす成分が入っている点も違います。虫の付着や排気の油分は、水だけでは落ちません。
製品には対応温度の表示があります。お住まいの地域の最低気温に合ったものを選んでください。
Q. 撥水コーティングをすれば、ワイパーは不要ですか
A. 不要にはなりません。
ある程度の速度が出ていれば、水は風で飛びます。ですが、低速時や停車中は流れません。
そして、コーティングは次第に効果が落ちます。むらになると、かえって見にくくなることもあります。
ワイパーの補助として考えてください。
Q. 車検で見られますか
A. 拭き取りの状態は確認されます。
ワイパーが正常に作動し、視界を確保できることが求められます。ゴムがちぎれている、まったく拭けないといった状態では、指摘を受けることがあります。
ウォッシャー液が出るかも確認されます。タンクが空になっていないか、事前に見ておいてください。
Q. 高いワイパーは違いますか
A. ゴムの材質と、金具の構造に差があります。
グラファイトなどで表面処理されたゴムは、滑りがよく、音が出にくいとされています。
また、金具が一体化したエアロタイプは、高速走行時に浮き上がりにくい設計です。
ただし、消耗品であることは変わりません。高価なものを長く使うより、安価なものを早めに替えるほうが、視界は良好に保てます。
まとめ
- 工具は要りません。手だけで5分です。
- 拭けない原因は、ガラスの油膜かもしれません。先に確認してください。
- アームを倒さないでください。タオルを敷いておくと安心です。
- 左右で長さが違います。適合表か、現物で確認を。
- ゴムの中の金属板を捨てないでください。
- 撥水剤とゴムは、組み合わせで選ぶ。
ワイパーの交換は、車の整備で最も気軽にできる作業です。工具が要らず、失敗しても数千円で済みます。
ですが、視界の確保という意味では安全に直結する部品でもあります。雨の夜に見えないことほど、怖いものはありません。
そして、この記事でいちばん伝えたいのは「原因を切り分ける」という考え方です。拭けないからワイパーを替える、ではなく、なぜ拭けないのかを先に見る。
他の整備でも、この順番は変わりません。工具の揃え方はクルマの自分でできる整備にまとめました。
なお、適合する部品や交換方法は車種によって異なります。作業にあたっては、お乗りの車の取扱説明書と、購入する製品の適合表示をご確認ください。