先に要点だけ
- 実際に、危険物の分類を誤って表示していた製品が回収・訂正された事例があります。
- エアゾール缶が高圧ガス保安法の対象外なのは、内容積1リットル以下という除外規定があるからです。規制がない=安全、ではありません。
- 車内・直射日光下は厳禁です。40度を超えると破裂の危険があります。
- ブレーキ周りに使うときは高温部が冷えてから。走行直後のローターは数百度です。
結論:パーツクリーナーは、ガソリンに近い危険物です
最初に結論を書きます。
パーツクリーナーやブレーキクリーナーの多くは、消防法上の危険物「第4類第1石油類」に分類されます。
第1石油類とは、引火点が21度未満の引火性液体のことです。ガソリンと同じ区分です。常温で引火するという意味になります。
ホームセンターで数百円で買えて、整備の現場でも日常的に使われています。だから危険物という意識を持ちにくい。ここに落とし穴があります。
私は乙種第4類危険物取扱者と、第二種高圧ガス販売主任者の資格を持っています。この記事では、パーツクリーナーが法令上どう扱われるのか、なぜスプレー缶には高圧ガスの規制がかからないのか、そして実際にどう保管し、どう使えばいいのかを書いていきます。
危険物の表示を誤っていた製品があります
この話から入るのが、いちばん実感が湧くと思います。実際に起きた出来事だからです。
大阪市消防局が、スプレー缶(パーツクリーナー)の危険物に関する誤表示についてという注意喚起を公表しています。
内容はこうです。ある製品のラベルに、危険物の分類が「第2石油類 危険等級Ⅲ」と表示されていました。しかし実際には「第1石油類 危険等級Ⅱ」に該当する製品だった、というものです。
これは単なる書き間違いでは済みません。分類がひとつ違うだけで、扱いの前提がまるごと変わってしまうからです。
| 区分 | 引火点 | 危険等級 | 常温での引火 |
|---|---|---|---|
| 第1石油類 | 21度未満 | Ⅱ | する |
| 第2石油類 | 21度以上70度未満 | Ⅲ | しにくい |
第2石油類だと思って扱っていた液体が、実は常温で引火するものだった。保管する側にとっては、前提が変わります。
特に事業所では、保管量によって届出や許可の要否が変わります。分類を誤れば、知らないうちに違反状態になっていた、ということも起こり得ます。
ここから学べることは、ひとつです。お手元の缶のラベルを、一度確認してみてください。「危険物 第4類 第1石油類」といった表示が、どこかに小さく印刷されているはずです。
なぜスプレー缶に高圧ガスの規制がかからないのか
ここは私の資格が直接関わる部分なので、少し丁寧に書きます。
パーツクリーナーの缶には、液体だけでなく噴射剤となるガスが入っています。液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)が使われることが多く、これらはいずれも可燃性です。
加圧された可燃性ガスが入っている。それなら高圧ガス保安法の対象になりそうなものです。実際にはなりません。
適用除外の条件
高圧ガス保安法には、エアゾール製品を規制の対象外とする除外規定があります。おおむね次の条件です。
- 容器の内容積が1リットル以下であること
- 温度35度における圧力が0.8メガパスカル以下であること(可燃性でないフルオロカーボンの場合は2.1メガパスカル以下)
- 圧縮ガスのみを噴射剤とする製品では、温度35度で1メガパスカル未満であること
市販のパーツクリーナーは、たいてい420ミリリットルから840ミリリットル程度です。内容積1リットル以下という条件に収まります。だから高圧ガス保安法の対象から外れています。
規制がない、は安全という意味ではありません
ここが大事なところなので、はっきり書いておきます。読み違えると、判断を誤ります。
適用除外は「危険がないから外した」わけではありません。小型で、一般消費者が日常的に使う製品まで高圧ガスとして規制すると社会が回らないという、実務上の線引きです。
缶の中には、依然として加圧された可燃性ガスと、常温で引火する溶剤が入っています。物理的な危険は何ひとつ減っていません。
「法律で規制されていないから大丈夫」という発想は、この分野では通用しません。むしろ、規制の網から外れている製品ほど、使う側の判断に委ねられていると考えてください。
保管で守るべきこと
スプレー缶の事故は、使用中よりも保管中に多く起きています。
40度を超える場所に置かない
ほとんどの製品のラベルに「火気と高温に注意」「40度以上になる場所に置かないこと」と書かれています。これは飾りではありません。
中の噴射剤は温度が上がると膨張します。缶の内圧が耐圧を超えれば、破裂します。破裂した瞬間、可燃性の液体と気体が一気に飛び散ります。
絶対に置いてはいけない場所を挙げます。
- 車内・トランク・ダッシュボード上。夏場は50度を軽く超えます。
- 直射日光の当たる窓際。
- ストーブ、給湯器、暖房器具の近く。
- 金属製の物置で日が当たる場所。
- エンジンルーム内や、機械の上。
特に多いのが、整備中に車内やボンネットの上に置きっぱなしにするパターンです。作業に集中していると忘れます。使ったら定位置に戻す習慣が、事故を防ぎます。
まとめ買いすると規制の対象になることも
安いときに箱買いする方がいます。ここで注意が必要です。
第1石油類(非水溶性)の指定数量は200リットルです。840ミリリットルの缶なら、単純計算で約238本に相当します。これだけ買う方は稀でしょう。
ただし、指定数量の5分の1、つまり40リットルを超えると「少量危険物」として市町村の火災予防条例の対象になります。840ミリリットル換算で約48本です。
整備工場や事業所であれば、この本数はあり得る量です。しかも、他の危険物と合算して計算します。エンジンオイル、ガソリン、灯油、塗料。倉庫にあるものを全部足すと、意外な数字になることがあります。
基準は市町村の条例で定められており、地域差があります。事業として扱うなら、所轄の消防署に一度確認しておくと安心です。
使うときに気をつけること
高温部が冷えてから使う
ブレーキクリーナーの名前どおり、ブレーキ周りの清掃に使うことが多いと思います。
ここで危険なのが、走行直後のブレーキローターは数百度になっているということです。峠を下ってきた後などは、真っ赤になっていることさえあります。
そこに引火点21度未満の液体を吹きかけたらどうなるか。想像に難くありません。
マフラーやエキゾーストマニホールドも同様です。触れるくらいまで冷えてから作業する。これを徹底してください。
触って確かめるときは、手のひらではなく指の甲を近づけてください。熱ければ反射的に手が引っ込みます。手のひらで直接触れると、やけどの範囲が広がります。整備の現場では基本とされる確認の仕方ですが、独学だと教わる機会がないところです。
換気を確保する
噴霧された溶剤は、空気中に広がります。閉め切ったガレージや、風の通らないピットの中では、可燃性の蒸気が滞留します。
この蒸気は空気より重く、低いところに溜まります。ピットや床付近が危険です。そこに何か着火源があれば引火します。
健康面でも換気は必要です。有機溶剤を吸い続けると、頭痛や吐き気を起こします。屋外か、風の通る場所で作業してください。
溶接・グラインダー作業とは絶対に併用しない
これは強調しておきたい点です。
脱脂してから溶接する、という作業の流れは自然です。しかしクリーナーを吹いた直後に火花を出す作業をするのは、非常に危険です。
溶剤が完全に揮発するまで待ってください。表面が乾いて見えても、隙間や部品の裏側に残っていることがあります。
また、塩素系のクリーナーは高温にさらされると有害なガスを発生させることが知られています。溶接する部位には、非塩素系を選ぶほうが無難です。
樹脂とゴムへの影響
安全とは別の話ですが、失敗しやすいポイントなので触れておきます。
パーツクリーナーは強い溶剤です。樹脂部品を白化させたり、ゴムを膨潤させたり、塗装を侵したりします。
ブレーキ周りでも、キャリパーのピストンシールやダストブーツはゴムです。直接大量に吹きかけると劣化を早めます。
不安な箇所は、目立たない部分で試してから使う。あるいは、ウエスに吹きかけてから拭く。この方法なら飛散も減らせます。
缶の中に何が入っているのか
成分を知っておくと、扱い方の理由が腑に落ちます。
パーツクリーナーは、大きく分けて溶剤と噴射剤でできています。
溶剤:汚れを落とす本体
油汚れを溶かす役割を担う部分です。製品によって使われるものが違います。
- 石油系炭化水素:ノルマルヘキサンなど。最も一般的で、引火性があります。
- アルコール類:速乾性を高めるために配合されることがあります。
- 塩素系溶剤:洗浄力が非常に強い一方、高温で有害なガスを発生させる懸念があります。
第1石油類に分類される理由は、この溶剤の引火点にあります。ガソリンと同じように、常温で燃える蒸気を出しているということです。
噴射剤:中身を押し出すガス
液体を霧にして飛ばすための加圧ガスです。液化石油ガス(LPG)やジメチルエーテル(DME)が主に使われます。
どちらも可燃性です。つまり、この缶は燃える液体を、燃えるガスで噴射している製品ということになります。
使い切ったつもりの缶にも、この噴射剤が残っています。「空だから安全」と言えない理由がここにあります。
SDSを見れば正確に分かります
製品の正確な情報を知りたいときは、SDS(安全データシート)を確認するのが確実です。
メーカーのウェブサイトで、製品名とあわせて「SDS」で検索すれば、たいてい公開されています。そこには成分、引火点、危険物の分類、応急処置の方法まで書かれています。
事業所で危険物を扱う場合、SDSの備え付けが求められる場面もあります。ラベルの表示だけで判断せず、一次情報にあたる習慣をつけてください。
健康への影響も見過ごせません
火災の話ばかりしてきましたが、日常的に使う人にとっては、こちらのほうが現実的なリスクかもしれません。
吸い込むとどうなるか
有機溶剤の蒸気を吸い込むと、頭痛、めまい、吐き気といった症状が出ます。「作業していたら気分が悪くなった」は、慣れの問題ではありません。体が出している警告です。
短時間で大量に吸えば急性の中毒症状が出ます。少量でも長期間繰り返せば、神経系や肝臓への影響が心配されます。
特に危険なのが、ピットの中や車の下に潜っての作業です。溶剤の蒸気は空気より重いため、低い場所に溜まります。顔の位置が低いほど、濃い蒸気を吸うことになります。
対策はシンプルです
- 屋外か、風の通る場所で作業する。これがいちばん効きます。
- 扇風機やサーキュレーターで空気を動かす。ガレージ内なら必須です。
- 長時間の連続作業を避ける。こまめに外の空気を吸ってください。
- 気分が悪くなったら、すぐ中断する。我慢して続けないことです。
- 大量に使う作業では防毒マスクを検討する。簡易的な防塵マスクでは蒸気を防げません。
防塵マスクと防毒マスクは別物です。白い不織布のマスクでは、有機溶剤の蒸気は素通りします。ここを誤解している方が多いので、あえて書いておきます。
そもそも、使わずに済む場面もあります
当サイトは工具や消耗品を紹介するメディアですが、買わなくていいものは、そう書く方針です。
パーツクリーナーは便利ですが、万能ではありません。使いどころを絞ったほうが、安全もコストも改善します。
| 作業 | おすすめの方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 広い面積の油汚れ落とし | パーツウォッシャー、または水性洗浄剤 | スプレーだと何本も使う。コストも危険も増える |
| ざっくりした汚れの除去 | ウエスで先に拭き取る | クリーナーは仕上げに使うほうが効率的 |
| ブレーキの最終脱脂 | パーツクリーナー(速乾) | ここは本来の用途。残留物を残さない |
| 手の油汚れ | 専用のハンドクリーナー | 皮膚に溶剤を使わないでください |
| 電装品の接点 | 接点復活剤・電子部品用クリーナー | 樹脂やコーティングを傷めない |
特に「手の油汚れをパーツクリーナーで落とす」のは、絶対にやめてください。皮膚から溶剤が吸収されます。手はきれいになりますが、体には確実に負担がかかっています。
使用量を抑えれば、蒸気の発生量も減ります。安全とコストは、この場面では同じ方向を向いています。節約のために我慢するのではなく、正しい使い方をした結果として本数が減る、と考えてください。
また、ウエスに吹きかけて拭く方法は覚えておく価値があります。直接噴射に比べて、使用量も飛散も大幅に減ります。狙った場所だけを狙って洗浄できるので、樹脂やゴムを傷めるリスクも下がります。
種類の選び方
店頭にはいくつも種類が並んでいます。違いを整理します。
| 種類 | 特徴 | 向いている作業 |
|---|---|---|
| 速乾タイプ | すぐ乾く。洗浄力はやや穏やか | ブレーキ、電装品周り |
| 中速乾・遅乾タイプ | 乾きが遅く、汚れを浮かせる時間がある | 頑固な油汚れ、エンジン周り |
| 非塩素系 | 樹脂やゴムへの攻撃性が比較的低い | 迷ったらこちら |
| 塩素系 | 洗浄力が強い。高温で有害ガスの懸念 | 金属部品の脱脂。溶接部位は避ける |
| 逆さ使用可 | 缶を逆さにしても噴射できる | 下回り、狭い場所 |
迷ったら非塩素系の速乾タイプを選んでおけば、大きな失敗はありません。多くの作業に対応できます。
下回りの作業が多いなら、逆さ使用可は大きな差になります。車の下に潜って上を向いて噴射する場面で、これがないと使えません。地味ですが、購入前に確認する価値があります。
一緒に用意しておきたいもの
- 保護メガネ:跳ね返りが目に入ると強い痛みを伴います。下向き作業では必須です。
- 耐溶剤手袋:普通のゴム手袋は溶剤で溶けることがあります。ニトリル製が扱いやすいです。
- ウエス:直接吹かずに拭き取る作業で使います。飛散を減らせます。
- 受け皿・トレー:洗浄液が地面に垂れるのを防ぎます。
- ABC粉末消火器:油火災に対応。作業場所に1本置いてください。
保護メガネは軽視されがちですが、下回りの作業では液体が真上から落ちてきます。眼球は再生しません。数百円で守れるものは守ってください。
捨て方
スプレー缶の廃棄は、事故が多い場面です。
まず使い切ること
大原則です。中身が残ったまま捨てると、収集車の中やごみ処理施設で火災が起きます。実際に毎年起きています。
使い切るときは、屋外の風通しのよい場所で、火の気がないことを確認してから噴射してください。振ってみて音がしなくなり、噴射音も出なくなれば空です。
このとき、狭い場所や風下で噴射しないでください。可燃性の蒸気が自分の周りに滞留します。一度に一気に出し切ろうとせず、少しずつ、間を空けながら抜くほうが安全です。地面に向けて噴射すると土壌を汚すので、ウエスや吸着材に吸わせながら抜く方法もあります。
穴あけは自治体の指示に従う
ここは自治体によって指示が分かれます。
かつては「穴を開けて出す」が一般的でした。しかし穴あけ作業中の引火事故が相次いだため、近年は「穴を開けずに出す」としている自治体が増えています。
どちらが正しいかは、お住まいの市町村の分別ルールで決まります。必ず自治体の案内を確認してください。ここは全国共通の答えがありません。
もし穴を開ける指示であっても、屋外で、火の気のない場所で、専用の穴あけ器具を使ってください。ドライバーとハンマーで叩くのは、火花が出る可能性があります。
整備工場や事業所で扱う場合
個人の使用とは、押さえるべき点が変わります。仕事で使う方向けに整理します。
保有量は必ず合算して数える
危険物の規制は、種類ごとの合算で判断します。パーツクリーナーだけを数えても意味がありません。
計算の考え方はこうです。それぞれの保有量を指定数量で割り、合計します。この値が0.2を超えると少量危険物、1.0を超えると指定数量以上です。
整備工場の倉庫にあるものを思い浮かべてください。ガソリン、軽油、エンジンオイル、ギアオイル、塗料、シンナー、パーツクリーナー。すべてが計算の対象です。
「うちは大した量じゃない」と思っていても、足し合わせると基準を超えていることがあります。棚卸しの機会に一度計算してみることをすすめます。
届出と資格の要否
| 保有量 | 区分 | 必要な対応 |
|---|---|---|
| 指定数量の5分の1未満 | 規制対象外の範囲 | 市町村条例の遵守事項に従う |
| 5分の1以上、指定数量未満 | 少量危険物 | 消防署へ届出。条例の技術基準に適合させる |
| 指定数量以上 | 危険物施設 | 許可が必要。危険物取扱者の選任も必要 |
基準は市町村の火災予防条例で定められており、地域によって細部が異なります。ここは全国一律ではありません。
私が確認した範囲でも、一般家庭と事業所で届出の基準を分けている自治体がありました。事業として扱うなら、所轄の消防署に相談するのが確実です。
従業員に伝えるべきこと
事故は、たいてい「知らなかった人」が起こします。最低限、次の3点は共有しておいてください。
- これは危険物であること。ガソリンと同じ第1石油類だと伝えるのが、いちばん伝わります。
- 高温部にかけないこと。走行直後のブレーキ、マフラー、溶接部位。
- 使ったら定位置に戻すこと。車内やボンネットの上への置き忘れが、破裂事故につながります。
あわせて、消火器の場所と使い方も確認しておいてください。油火災に対応した消火器かどうか、ラベルを見れば分かります。
細かい疑問に答えます
Q. パーツクリーナーとブレーキクリーナーは何が違いますか?
A. 実質的にはほぼ同じ製品で、名称の違いが中心です。製品によっては同一のものに両方の名前が付いています。
あえて言えば、ブレーキクリーナーは残留物を残さない速乾性が重視され、パーツクリーナーは幅広い部品の脱脂を想定していることが多い傾向にあります。
選ぶときは名称ではなく、速乾か遅乾か、塩素系か非塩素系か、逆さ使用が可能かを見てください。こちらのほうが実用上の差になります。
Q. 車に常備しておきたいのですが、だめですか?
A. おすすめしません。夏場の車内は、この製品にとって最悪の環境です。
多くの製品に「40度以上になる場所に置かない」と明記されています。直射日光の下に駐車した車の車内は、この温度を大きく超えます。ダッシュボード上なら70度を超えることもあります。
破裂した場合、密閉された車内に可燃性の液体と気体が充満します。そこでエンジンをかければ、何が起きるか分かりません。
出先で使う予定があるなら、作業に行くときだけ積んで、帰ったら降ろすという運用にしてください。常備は避けるべきです。
Q. 缶が膨らんでいます。使っても大丈夫ですか?
A. 使わないでください。内圧が異常に上がっている状態です。
高温の場所に置かれていた可能性があります。まず涼しい日陰へ移し、温度が下がるのを待ってください。触らずに時間を置くことです。
膨らみが戻らない場合や、変形が激しい場合は、自治体か消防署に処分方法を相談してください。無理に噴射して使い切ろうとするのは危険です。
Q. 手についても大丈夫ですか?
A. すぐに洗い流してください。皮膚の脂を奪うため、繰り返せば手荒れになります。
有機溶剤は皮膚から吸収される成分を含みます。作業のたびに素手で触っていると、蓄積の影響が心配です。耐溶剤手袋の使用をすすめます。
目に入った場合は、大量の水で15分以上洗い流し、医療機関を受診してください。
Q. 家庭で保管するとき、何本までなら問題ありませんか?
A. 一般家庭で数本程度なら、通常は届出の対象にはなりません。
ただし、量の問題より置き場所の問題のほうが現実的です。1本でも、車内や日なたに置けば破裂の危険があります。
まとめ買いをする方や、事業所で扱う方は、他の危険物との合算で条例の対象になることがあります。心当たりがあれば所轄の消防署へ確認してください。
Q. 電装品やセンサーに使っても平気ですか?
A. 製品によります。電装専用のクリーナーを使うほうが安全です。
一般的なパーツクリーナーは溶剤が強く、樹脂製のコネクタやセンサーの被覆を傷めることがあります。酸素センサーなど、特定の物質に弱い部品もあります。
接点復活剤や電子部品用クリーナーとして売られている製品を使い分けるのが確実です。
Q. 使い終わった缶は、すぐゴミに出していいですか?
A. 空にしたあと、屋外で少し置いてから出すことをすすめます。
「空」に見えても、内部には可燃性の気体が残っています。ガス抜きキャップが付いている製品なら、指示に従って処理してください。
そのうえで、自治体の分別ルールに従って出してください。繰り返しになりますが、穴あけの要否は地域で異なります。
Q. 洗浄したあとの液体は、どう処理すればいいですか?
A. 地面や排水口に流さないでください。受け皿で受けて、油と同じ扱いで処理します。
洗浄に使った液は、溶剤と落とした油が混ざった状態です。土壌や水路を汚染しますし、排水管に入れば蒸気が滞留する危険もあります。
量が少なければ、廃油処理箱や吸着材に吸わせて、自治体の指示に従って処分してください。事業所から出るものは産業廃棄物として扱う必要があります。
Q. 冬に噴射力が弱くなるのはなぜですか?
A. 気温が下がると、噴射剤の圧力が下がるためです。故障ではありません。
缶の中の噴射剤は、温度によって圧力が変わります。寒い日には勢いが落ち、中身が残っていても出にくくなります。
ここで絶対にやってはいけないのが、火であぶる、ストーブの前で温める、熱湯につけるといった加温です。破裂の危険があります。室内に持ち込んで、常温に戻るのを待ってください。
Q. 灯油で代用してもいいですか?
A. 部品の予備洗浄になら使えますが、仕上げには向きません。
灯油は昔から部品洗浄に使われてきました。引火点が40度以上あるため、常温での引火の危険は第1石油類より低くなります。大量の部品を洗うなら、パーツウォッシャーに灯油を張るほうが安全で経済的です。
ただし灯油は揮発が遅く、油分が残ります。ブレーキ周りの最終脱脂には絶対に使わないでください。制動力に直結します。仕上げは速乾性のクリーナーを使ってください。
なお、灯油も消防法上の危険物です。容器や保管の基準は守る必要があります。
押さえておきたいこと
要点を整理します。
- パーツクリーナーの多くは第4類第1石油類。引火点21度未満、常温で引火します。
- 危険物の表示を誤っていた製品の事例があります。お手元の缶のラベルを一度確認してください。
- 高圧ガス保安法の対象外なのは、内容積1リットル以下という除外規定があるから。危険がないからではありません。
- 40度を超える場所に置かない。車内、直射日光下、暖房器具の近くは厳禁です。
- 高温部が冷えてから使う。走行直後のブレーキローターは数百度です。
- 換気を確保する。蒸気は空気より重く、低い場所に溜まります。
- 捨てるときは使い切る。穴あけの要否は自治体で異なります。
パーツクリーナーは、整備をする人なら誰でも持っている道具です。数百円で買えて、日常的に使う。だからこそ、危険物だという意識が薄れていきます。
私が伝えたいのは、怖がってほしいということではありません。ガソリンと同じ区分の液体を手に持っているという事実を、頭の片隅に置いておいてほしいということです。
それだけで、熱いローターに吹きかける前に一呼吸置けます。缶を車内に忘れずに済みます。事故の多くは、そういう小さな判断の積み重ねで防げています。
私自身、工具を揃えはじめたころは、パーツクリーナーを「便利な洗浄スプレー」としか思っていませんでした。ラベルに「第4類第1石油類」と書かれていることに気づいたのは、危険物の勉強を始めてからです。
あの小さな表示には、意味があります。ガソリンと同じ棚に置かれるべき液体だ、という宣言です。それを知ってから、置き場所も使い方も変わりました。
今日、作業を終えたら、お手元の缶のラベルを一度見てみてください。そこに何と書かれているかを知っているかどうかが、扱い方を変えます。
記載の内容は、書いた時点で確認できた情報によります。危険物の分類や保管の基準は、製品や地域によって異なります。判断に迷うときは、製品のラベルとお住まいの地域の消防本部の案内を確認してください。
燃料の容器については灯油ポリ容器にガソリンは違法|燃料と容器の適合早見表と罰則にまとめています。あわせてご覧ください。
あわせて、ガソリン携行缶の選び方も参考になるはずです。