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ガス工事は自分でできる?|必要なのは工具ではなく資格です

目次

先に要点だけ

  • ガス管に関わる工事は、資格がなければできません。工具を揃えても解決しません。
  • 一般の方ができるのは、ガス栓から機器へのゴム管接続まで。ここが境界線です。
  • ふろがまと湯沸器は「特定ガス消費機器」として、設置工事に監督者が必要です。
  • ガスの事故はやり直しが利きません。失敗の代償が、他の工事と桁違いです。

結論:必要なのは工具ではなく、資格です

「ガス工事 必要工具」で調べてこられた方に、まず正直にお伝えします。

ガス管に手を加える工事は、一般の方には認められていません。

工具の問題ではありません。適切な工具を買い揃えても、法令上できないものはできません。

この記事は、その線引きを説明するものです。どこまでが自分でよくて、どこからが資格者の領域なのか。これが分かれば、業者に何を頼むべきかも判断できるようになります。

先に、私の立場を書いておきます

法令の話をする以上、私自身がどの立場から書いているかを明示しておきます。

私が持っているのは第二種高圧ガス販売主任者の免状です。LPガスを販売する事業所で、保安を監督するための資格になります。

この免状は、ガス消費機器設置工事監督者の認定講習を受けるための資格要件のひとつとして挙げられています。つまり、法体系としては地続きの位置にあります。

ただし、私は監督者ではありません。認定講習を受けておらず、ガス消費機器設置工事監督者の資格も、液化石油ガス設備士の資格も持っていません。したがって、私自身がガス工事を施工することはできません。この記事は、法令の枠組みと考え方を整理したものであり、施工の手引きではありません。

資格の守備範囲については、運営者情報にも書いています。

なぜ、ここまで厳しいのか

他のDIYと比べて、規制が突出して厳しい分野です。理由があります。

失敗したときに起きること他の作業との違い
ガス漏れ目に見えない。気づくのが遅れる
爆発・火災建物ごと失われる
一酸化炭素中毒無色無臭。動けなくなってから気づく
隣家・階下への被害自分だけの問題では済まない

棚を落としても、板が割れるだけです。水漏れは、床が濡れて気づきます。

ですがガス漏れは、気づかないまま部屋に溜まります。そして着火した瞬間に、取り返しがつかなくなります。

とくにLPガスは空気より重いため、床を這って低いところに滞留します。臭いに気づく高さより下に溜まっていることがあります。この性質についてはカセットボンベの中身と規格にも書きました。

資格制度は、この危険の大きさに対応したものです。「面倒な規制」ではなく、事故の積み重ねから作られた仕組みだと考えてください。

関わる法令と資格

ガス工事の法体系は、複数の法律にまたがっています。まず全体像を示します。

法律対象
ガス事業法都市ガスの供給と設備
液化石油ガス法LPガス(プロパン)の供給と消費設備
特定ガス消費機器の設置工事の監督に関する法律ふろがま・湯沸器などの設置工事
高圧ガス保安法高圧の状態にあるガス全般
建築基準法・消防法排気設備、設置場所の条件

都市ガスかLPガスかで、適用される法律が変わります。ここが分かりにくい原因のひとつです。

主な資格

資格できること
液化石油ガス設備士LPガスの供給・消費設備の工事
ガス消費機器設置工事監督者特定ガス消費機器の設置工事の監督と施工
簡易内管施工士都市ガスの屋内配管工事(ガス事業者の認定)
ガス主任技術者ガス工作物の工事・維持・運用の保安監督

注目してほしいのは、液化石油ガス設備士の資格があれば、ガス消費機器設置工事監督者としても施工できるという点です。認定講習を受ける必要がありません。

逆に言えば、これらの資格を持たない人が施工することは想定されていません。

「特定ガス消費機器」とは何か

耳慣れない言葉ですが、家庭にある機器が含まれます。

  • ガスバーナー付きのふろがま、およびガスバーナーを使える構造のふろがま
  • ガス湯沸器
  • これらの排気筒
  • その排気筒に接続される排気扇

つまり、給湯器とふろがま、そしてその排気設備です。

これらの設置工事や変更工事には、監督者による監督が法律で義務づけられています。

なぜこの機器群が特別扱いなのか。排気が絡むからです。

ガス漏れだけでなく、不完全燃焼による一酸化炭素中毒のリスクがあります。排気筒の接続が不適切だと、排ガスが室内に戻ります。無色無臭のまま。

「給湯器を自分で交換したい」という相談を見かけますが、これは法律が正面から規制している領域です。

できないこと、できること

実務的な境界線を整理します。

作業一般の方
ガス管(内管)の増設・移設・撤去できません
ガス栓の新設・交換できません
給湯器・ふろがまの設置・交換できません
排気筒の工事できません
ビルトインコンロの交換できません(ガス接続を伴うため)
LPガスボンベの交換できません(供給事業者の業務)
ガス栓と機器をゴム管でつなぐできます
ゴム管の交換できます
テーブルコンロの置き換えできます(ゴム管接続のみの場合)
ガス機器の掃除できます

境界は明快です。ガス栓より先(機器側)は自分の領域、ガス栓より手前(配管側)は資格者の領域。

この一線を覚えておけば、迷う場面はほとんどなくなります。

ビルトインコンロは要注意です

誤解が多い部分なので、補足します。

据え置きのテーブルコンロは、ゴム管でガス栓につなぐだけです。これは自分で交換できます。

一方、システムキッチンに組み込まれたビルトインコンロは違います。ガス管と直接接続されており、配管側の作業になります。

見た目は「置き換えるだけ」に思えますが、法令上の扱いはまったく別です。業者に依頼してください。

ゴム管の扱い

自分でできる数少ない範囲なので、正しくやってください。

  • ガスの種類に合ったものを使う。都市ガス用とLPガス用は色が異なります。
  • 赤い線が入った専用のゴム管を使う。汎用のホースで代用しないでください。
  • ガス栓の根元まで、しっかり差し込む。赤い線が隠れるまでが目安とされます。
  • ゴム管止め(バンド)で固定する。抜け防止です。
  • 長さは必要最小限に。長すぎると引っかけます。
  • コンロの下や熱源の近くを通さない。溶けます。
  • ひび割れ、硬化、変色があれば交換する。

ゴム管は消耗品です。ゴムは時間とともに弾力を失い、数年で硬くなります。熱源の近くにあれば、その進み方はさらに早くなります。

硬くなったゴム管は、ガス栓から抜けやすくなります。定期的に確認して、劣化していれば交換してください。数百円の部品です。

また、使っていないガス栓には必ずキャップをしてください。何かの拍子に開けば、ガスが出続けます。

業者に頼むときの確認

自分でできない以上、頼み方が重要になります。

確認することなぜ
資格を持つ者が施工するか法令上の要件です
作業内容の内訳何にいくらかかるかを把握するため
機器の型番と価格相見積もりの比較に必要
保証の範囲と期間機器保証と工事保証は別です
既存機器の撤去・処分費見積もりから漏れることがあります
追加工事が発生する条件後から増えることを防ぎます

資格の確認を、遠慮しないでください。まっとうな業者なら、聞かれて困ることはありません。

また、機器保証と工事保証は別のものです。機器が壊れたときと、施工が原因で不具合が出たとき。それぞれ誰が対応するのかを確認しておいてください。

ガス会社に相談するのが基本です

どこに頼めばよいか分からない場合、契約しているガス会社が最初の窓口になります。

自社で施工するか、提携する業者を紹介してくれます。設備の状況を把握しているという利点もあります。

価格を抑えたいなら、そこから相見積もりを取ってください。比較の基準がないまま安さだけで選ぶのは、この分野では危険です。

ガスの臭いがしたら

知っておいてほしい対応です。

換気扇のスイッチを入れないでください。スイッチの接点で火花が出て、着火する可能性があります。照明のスイッチ、電気製品のスイッチも同じです。「換気しなければ」と反射的にスイッチへ手が伸びますが、ここが最も危険な行動になります。

  1. 火を消す。使用中の火気をすべて止めます。
  2. ガス栓と、可能ならメーターのバルブを閉める。
  3. 窓と扉を手で開ける。スイッチには触らないでください。
  4. 屋外に出てから、ガス会社に連絡する。室内で電話をかけないでください。

LPガスは空気より重いため、床を掃くように外へ出してください。都市ガスは軽いため、上へ抜けます。

連絡先を、今のうちに確認しておいてください。ガスメーターの近くや、検針票に書かれています。

ありがちな誤解

誤解実際
器具を買えば自分で付けられるガス接続を伴えば資格が必要です
賃貸だから何もできないゴム管の交換などはできます
ボンベは自分で交換できる供給事業者の業務です
都市ガスもLPガスも同じ器具も配管も別。互換性はありません
コンロは全部同じ据え置きとビルトインで扱いが違います
資格がなくても自宅なら問題ない自宅であっても法令の対象です

都市ガスとLPガスの違いは、とくに注意してください。

ガス機器には、対応するガスの種類が表示されています。種類が違う機器を接続すると、不完全燃焼や異常燃焼を起こします。

引っ越しで機器を持っていく場合、引っ越し先のガス種を必ず確認してください。違えば、その機器は使えません。

よくいただく疑問

Q. 資格なしでやったら、どうなりますか

A. 法令違反となり、罰則の対象になり得ます。

ただし、罰則より現実的に重いのは事故が起きたときの責任です。

無資格の工事が原因で火災や中毒事故が発生した場合、保険の適用が問題になることがあります。集合住宅なら、他の住戸への賠償も生じます。

具体的な適用については、所管の窓口や契約中のガス会社にご確認ください。

Q. 通販で給湯器を買って、取り付けだけ頼めますか

A. 対応する業者はありますが、確認事項が増えます。

  • その機器が設置場所に適合するか。排気方式、寸法、能力。
  • 保証がどうなるか。機器と工事で窓口が分かれます。
  • 不具合時の責任の所在。機器の問題か施工の問題かで、押し付け合いになることがあります。

安く済むこともありますが、トラブル時の対応が複雑になるという点は理解しておいてください。

Q. 賃貸で給湯器が壊れたら

A. 管理会社か大家に連絡してください。自分で手配しないでください。

給湯器は建物に付属する設備です。通常は貸主の負担で修理・交換されるものです。

自分で業者を呼んで交換してしまうと、費用が戻らないだけでなく、原状回復の問題にもなり得ます。

Q. カセットこんろは例外ですか

A. 配管につながないため、この規制の対象外です。

カセットボンベを機器に取り付けて使うものは、ガス工事にあたりません。誰でも使えます。

ただし、中身は同じLPガスです。取り扱いの注意は変わりません。カセットボンベの保管方法もあわせてご覧ください。

Q. 資格を取ることはできますか

A. 可能ですが、自宅の工事のためだけに取る資格ではありません。

液化石油ガス設備士やガス消費機器設置工事監督者は、業として工事を行う人のための制度です。講習や試験に相応の時間と費用がかかります。

1回の工事のために取得するのは、現実的とは言えません。業者に頼むほうが、時間もお金も少なく済みます。

まとめ

  • ガス管に関わる工事は、資格がなければできません。
  • 境界はガス栓。そこから機器側は自分の領域、手前は資格者の領域です。
  • 給湯器とふろがまは「特定ガス消費機器」。監督者が必要です。
  • ビルトインコンロは配管作業。据え置き型とは扱いが違います。
  • ガス臭いときは、スイッチに触らないでください。窓を手で開けます。

この記事は、「できません」という話が中心になりました。工具の紹介を期待して来られた方には、期待外れだったかもしれません。

ですが、「できない」と正確に知ることも、判断のうちです。できないことに時間と工具代を使わずに済みますし、業者に何を頼めばよいかも分かります。

そして、この分野で無理をした場合の代償は、他とは比べものになりません。ここは素直に、資格を持つ人に任せてください。

なお、この記事は法令の枠組みを整理したものです。個別の工事が規制の対象となるかどうかは、設備の状況や地域によって判断が異なることがあります。実際の判断は、契約中のガス会社または所管の窓口にご確認ください。

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