要点を先に
- 結論:冬タイヤは、雪より先に「気温」で判断します。7℃が目安です。
- お湯をフロントガラスにかけないでください。割れます。
- チェーンは駆動輪に。装着練習は、雪の降る前に。
- 車内に置く備えは、閉じ込められた場合を想定して選びます。
冬支度は、降る前に終わらせてください
冬の車の備えには、明確な特徴があります。
必要になったときには、もう準備できないという点です。
雪が降ってからタイヤを買いに行こうとしても、そもそも走れません。店には在庫がありません。交換の予約も取れません。
チェーンも同じです。初めての装着を、吹雪の路肩でやることになります。暗くて、寒くて、手がかじかんだ状態で。
だから冬支度は、秋のうちに済ませる作業です。この記事も、そのつもりで読んでください。
冬タイヤは気温で判断します
交換の時期を「初雪」で考える方が多いのですが、これは遅い判断です。
基準は気温7℃前後とされています。
理由は、ゴムの性質にあります。夏タイヤのゴムは、低温で硬くなります。硬いゴムは路面に密着しません。雪がなくても、乾いた路面でも、止まる性能が落ちます。
冬タイヤは、低温でも柔らかさを保つ配合になっています。雪のためだけの装備ではありません。
そして、最も危険なのは凍結路面です。
- 橋の上:下から冷えます。前後の道が乾いていても凍ります。
- トンネルの出入り口:日陰と日向の境目です。
- 交差点の手前:制動と発進で路面が磨かれ、光ります。
- 日陰の坂:一日中融けません。
路面が黒く濡れて見えるのに凍っている状態を、ブラックアイスバーンと呼びます。見た目では判別できません。
気温が下がった朝晩は、濡れて見える路面を疑ってください。
とくに、山から下りてきた直後や、川沿いの道は要注意です。周囲より気温が低く、路面だけが凍っていることがあります。気温計が表示されている車なら、走りながら数字を見る習慣をつけてください。3℃を下回ったら、凍結を前提に運転を切り替えます。
残っている冬タイヤを使う場合
去年のタイヤをそのまま使う方は、2点を確認してください。
- プラットフォーム:溝の中にある突起です。ここまで減ると、冬用としての性能は期待できません。
- ゴムの硬さ:溝が残っていても、経年で硬化します。爪で押して弾力がなければ、交換を検討してください。
溝の残りだけで判断すると、見誤ります。年数も一緒に見てください。
タイヤの側面には、製造時期を示す4桁の数字が刻まれています。前2桁が週、後2桁が年です。
交換作業そのものについては、タイヤ交換に必要な工具にまとめました。
チェーンは、駆動輪に付けます
間違えやすい点です。
| 駆動方式 | 装着する位置 |
|---|---|
| 前輪駆動 | 前輪 |
| 後輪駆動 | 後輪 |
| 四輪駆動 | 取扱説明書に従う |
四輪駆動は、車によって指定が異なります。思い込みで判断しないでください。
また、サイズが合っていることが前提です。タイヤのサイズ表示を確認してから購入してください。
必ず、家の駐車場で一度装着してみてください。説明書を読みながら、明るい場所で、乾いた地面で。手順を体が覚えていれば、実際の場面で落ち着いて作業できます。ぶっつけ本番は、路肩での長時間の作業になります。後続車のいる場所で、寒さの中でやることになります。この練習だけは、省かないでください。
チェーンの種類
| 種類 | 特徴 | 向く場面 |
|---|---|---|
| 金属製 | 安い、収納が小さい、走行音が大きい | 使用頻度が低い、非常用 |
| 樹脂・ゴム製 | 装着が比較的容易、静か、かさばる | 年に数回使う |
| 布製 | 非常に軽い、装着が早い、耐久性は低い | 短距離の緊急脱出 |
年に一度あるかどうか、という地域なら金属製で十分です。
冬に何度も雪道を走るなら、装着のしやすさにお金をかける価値があります。
いずれも、装着したまま高速で走らない、乾いた路面を長く走らないという点は共通です。チェーンが傷み、車体も傷めます。
車に積んでおくもの
| もの | 用途 | 優先度 |
|---|---|---|
| スノーブラシ・スクレーパー | 雪下ろし、氷の除去 | 必須 |
| 解氷スプレー | 凍り付いたガラス、鍵穴 | 必須 |
| 手袋(防水) | 作業全般 | 必須 |
| 長靴 | 雪の中での作業 | 高い |
| ブースターケーブル | バッテリー上がり | 高い |
| 牽引ロープ | 脱出 | 中 |
| スコップ | 雪かき、脱出 | 中 |
| 毛布・防寒着 | 立ち往生時 | 高い |
| 飲料水・食料 | 立ち往生時 | 高い |
| モバイルバッテリー | 連絡手段の確保 | 高い |
下半分は、「動けなくなったとき」を想定した備えです。
大雪で高速道路や幹線道路が止まり、何時間も動けなくなる。この事態は、実際に繰り返し起きています。
そのとき必要なのは、道具よりも体温と連絡手段です。
バッテリー上がりへの対処はこちらにまとめました。冬は、バッテリーが最も弱る季節です。
立ち往生したら、マフラーを掘ってください
排気口が雪でふさがれた状態でエンジンをかけ続けると、排気ガスが車内に入ります。一酸化炭素中毒により、命に関わります。実際に、毎年のように事故が起きています。雪に埋まった状態でエンジンをかけるなら、マフラーの周りを掘り、繰り返し確認してください。降り続いていれば、また埋まります。可能であれば、暖房を切って防寒着で耐えるほうが安全です。スコップを積んでおく理由は、雪かきのためだけではありません。
この知識は、知らないと命に関わります。
一酸化炭素は、無色無臭です。気づけません。眠くなって、そのまま意識を失います。
だから、備えとして毛布と防寒着を挙げました。エンジンを止めても耐えられる状態を作っておくためです。
凍ったガラスへの対処
朝、ガラスが凍っている。急いでいる。
ここでお湯をかけてはいけません。
ガラスは、急激な温度変化で割れます。小さな傷があれば、そこから一気に広がります。フロントガラスの交換は高額です。
正しい手順は、こうです。
- エンジンをかけ、デフロスターを入れる。内側から温めます。
- 解氷スプレーを吹く。外側の氷を溶かします。
- スクレーパーで削る。樹脂製のものを使ってください。
- ワイパーで無理に払わない。凍り付いたまま動かすと、ゴムが裂けます。
4番は見落としがちです。ワイパーがガラスに凍着したまま作動させると、ゴムが傷み、モーターにも負担がかかります。
雪の予報が出ている夜は、ワイパーを立てておくという方法があります。凍り付きを防げます。
ワイパーゴムの傷みについては、ワイパーの交換で詳しく書きました。
ウォッシャー液も冬用に
見落とされやすい準備です。
ウォッシャー液には、凍結温度の表示があります。水で薄めたものを入れていると、寒冷地では凍ります。
タンクの中で凍れば出ません。配管の中で凍れば、部品が破損することもあります。
そして冬は、融雪剤で前が見えなくなります。頻繁に使うことになります。原液のまま入れるか、寒冷地向けの表示を確認してください。
雪を下ろしてから走ってください
屋根に雪を載せたまま走る車を見かけます。
これは危険です。
- ブレーキ時に、前へ落ちます。視界が一瞬でふさがれます。
- 走行中に、後続車へ飛びます。相手の視界を奪います。
- 屋根の雪は重い。挙動が変わります。
落下した雪が原因で事故が起きれば、責任を問われる可能性があります。
下ろすのは、屋根だけではありません。
- フロント・リアガラス
- 灯火類すべて(雪で覆われていると、点いていないのと同じです)
- ナンバープレート
- ドアミラー
- ボンネット上の給気口周辺
ブラシは、樹脂製の柔らかいものを選んでください。硬いもので擦ると、塗装に細かい傷が付きます。
燃料と、下回りの話
装備の話に隠れがちですが、冬に効いてくる要素が2つあります。
燃料は、半分を切ったら入れる
冬は、燃料計の見方を変えてください。
立ち往生したとき、暖房を使えるかどうかは燃料の残量で決まります。何時間動けないかは、そのときになるまで分かりません。
また、燃料が少ないとタンク内に空気が多く残ります。気温差で結露し、水がたまる原因になるとされています。
そして雪の日は、給油所にたどり着けないことがあります。道が閉じていれば、それまでです。
「半分を切ったら入れる」。冬の間だけ、その基準にしてください。
融雪剤は、洗い流してください
雪国の道路には、凍結防止のために融雪剤がまかれます。
これが車の下回りに付着したまま残ると、錆の進行を早めます。
厄介なのは、見えない場所で進むことです。外装がきれいでも、下回りやマフラー周り、足回りの奥が傷んでいきます。
対策は単純です。雪道を走ったら、下回りを水で流す。
洗車機の下回り洗浄でも構いません。頻度のほうが大切です。年に一度の丁寧な洗浄より、走るたびの水洗いが効きます。
洗車の道具については、洗車に必要な道具にまとめました。ただし冬は、洗ったあとに凍るという別の問題があります。ドアの周りやゴム部分の水気は拭き取ってください。翌朝、開かなくなります。
冬の運転で気をつけること
| 操作 | 冬のやり方 |
|---|---|
| 発進 | ゆっくり。空転させない |
| 加速 | じわりと。急がない |
| ブレーキ | 早めに、弱く、何度かに分けて |
| ハンドル | 大きく切らない |
| 車間 | 通常の2倍以上 |
| 坂道 | 途中で止まらない |
共通しているのは、「急」の付く操作をしないということです。
冬タイヤを履いていても、凍った路面では止まりません。装備は、余裕を作るためのものです。速く走るためのものではありません。
そして、四輪駆動でも止まる距離は変わりません。駆動力の話と、制動力の話は別です。ここを混同した過信が、事故につながります。
出発前の3分でできること
装備をそろえたら、あとは習慣の問題です。
雪の朝、出発前に確認したいことを並べます。
- ドアの周りの氷:無理に引くと、ゴムが裂けます。
- ワイパーの凍着:先に手で剥がしてから、スイッチを入れます。
- タイヤの周りの雪:固まっていると、発進で空転します。
- 灯火とナンバー:雪をすべて落とします。
- 目的地の道路情報:規制や通行止めを、出る前に見ます。
最後の1つが、実は最も効きます。
通れない道に向かわないことが、どんな装備より確実だからです。
そして、冬の運転で一番強い判断は「今日は乗らない」です。
装備をそろえるのは、選択肢を持つためです。出なくていい日に出ないという選択も、その一つだと考えています。
質問と回答
Q. 雪がめったに降らない地域でも、冬タイヤは必要ですか
A. 走る場所によります。
地元だけを走るなら、降ったときに乗らないという選択もあります。
ただし、山を越える、旅行に出るのであれば話が変わります。出発地が晴れていても、目的地が雪ということはあります。
また、道路によっては冬用タイヤの装着が規制の条件になることがあります。チェーンだけでは通れない場面もあります。
Q. オールシーズンタイヤで足りますか
A. 状況によります。
浅い雪であれば走行できる製品が多い一方、凍結路面での性能は、冬タイヤに及びません。
年に数回、うっすら積もる程度の地域では選択肢になります。
雪国や、凍結の多い地域では冬タイヤを選んでください。中途半端な装備が、最も危険です。
Q. 外したタイヤはどう保管しますか
A. 直射日光と雨を避けて、屋内に。
- ホイール付きなら横に寝かせて積む
- タイヤのみなら立てて並べる
- 空気圧は少し下げておく
- 洗って、乾かしてから
置き場所がなければ、保管サービスという選択肢もあります。交換作業とあわせて依頼できる場合があります。
Q. いつ夏タイヤに戻しますか
A. こちらも気温で判断してください。
安定して7℃を超えるようになれば、戻す時期です。
冬タイヤのまま夏を走ると、柔らかいゴムが早く減り、次の冬に使えなくなります。燃費も落ちます。制動距離も伸びます。
ただし、山間部では4月以降も降ることがあります。地域と行動範囲で判断してください。
ここまでの要点
- 結論:冬支度は、降る前に終わらせてください。
- 冬タイヤの判断は気温7℃。雪ではありません。
- チェーンは駆動輪へ。家で一度、装着してみてください。
- お湯をかけない。ガラスが割れます。
- 雪に埋まったらマフラーを掘る。一酸化炭素中毒を防ぎます。
- 屋根の雪を下ろしてから走る。
- 装備は余裕を作るもの。速く走るためのものではありません。
冬の備えは、使わずに済めばそれが一番です。
積んだまま一冬を越し、春に降ろす。それでいいのだと思います。
ただ、必要になる日は、予告なしに来ます。そのとき積んでいなければ、どうにもなりません。
なお、地域ごとの規制や、車種ごとの指定については状況が異なります。装備の選定と装着方法は、取扱説明書と、お住まいの地域の道路情報をご確認ください。