この記事で分かること
- 洗車傷の原因はスポンジではなく、挟まった砂です。道具より手順で決まります。
- バケツを2つ使ってください。これだけで傷の入り方が変わります。
- いちばん傷をつけているのは、実は拭き取りの工程です。
- 直射日光の下で洗わないでください。水滴の跡が消えなくなります。
結論:良いスポンジより、たっぷりの水と2つのバケツ
洗車の道具を調べると、スポンジやシャンプーの比較が出てきます。
ですが、塗装に傷を入れるかどうかを決めているのは、道具ではありません。
原因は、ボディとスポンジの間に挟まった砂です。
どんなに柔らかいスポンジでも、砂粒を抱えたまま擦れば、その砂が塗装を削ります。紙やすりを当てているのと同じことになります。
だから、洗車で本当に大事なのは「砂を挟まない仕組み」です。高価な道具より、こちらを先に整えてください。
必要な道具
| 道具 | 用途 | 優先度 | 目安 |
|---|---|---|---|
| バケツ2つ | 洗う用とすすぐ用 | 必須 | 1,000〜3,000円 |
| カーシャンプー(中性) | 汚れを浮かせる | 必須 | 1,000円前後 |
| 洗車スポンジ、またはムートン | ボディを洗う | 必須 | 1,000〜3,000円 |
| ホイール用のブラシ・スポンジ | ボディ用とは必ず分ける | 必須 | 1,000円前後 |
| 拭き取り用クロス(大判) | 水滴を残さない | 必須 | 1,000〜3,000円 |
| ホース、または高圧洗浄機 | 予洗いとすすぎ | 必須 | — |
| バケツの底に敷くネット | 落ちた砂を再付着させない | 高い | 1,000円前後 |
| ホイール用クリーナー | ブレーキダストを落とす | 中 | 1,000円前後 |
| 細部用のブラシ | エンブレム、給油口まわり | 中 | 数百円 |
| 脚立・踏み台 | ルーフに手が届かない場合 | 車種による | — |
合計で1万円弱。そのうち最も効くのが、バケツ2つと拭き取り用クロスです。
逆に、スポンジは数千円のものと数百円のもので、結果に大きな差は出ません。手順のほうが影響します。
バケツを2つ使う理由
洗車の技術として、最も費用対効果が高い方法です。
普通は、バケツ1つでこうします。
- バケツにシャンプー液を作る
- スポンジを浸す
- ボディを洗う
- スポンジをバケツに戻す
- 2から4を繰り返す
この手順の問題は、4番でスポンジに付いた砂が、バケツの中に持ち込まれることです。
そして次に浸したとき、その砂をまた拾います。洗えば洗うほど、バケツの中の砂が増えていく。後半になるほど、傷が入りやすくなります。
2バケツ法の手順
- バケツAにシャンプー液、バケツBに真水を入れる
- スポンジをAに浸し、ボディを洗う
- スポンジをBですすぐ(砂を落とす)
- きれいになったスポンジをAに戻す
- 2から4を繰り返す
違いは3番だけです。洗浄液に戻す前に、真水で砂を落とす。
これでシャンプー液が汚れにくくなり、砂を持ち回らずに済みます。
さらに、バケツの底に網(グリットガード)を敷くと効果が上がります。落ちた砂が底に留まり、スポンジが触れなくなるためです。
バケツ1つ増やすだけです。数百円の投資で、傷の入り方が変わります。
洗う手順
- 日陰で、ボディが冷えている状態にする。
- まず水だけで全体を流す。砂を落とすのが目的です。
- ホイールから先に洗う。いちばん汚れています。
- スポンジをよく泡立て、上から下へ洗う。
- 1面ごとにスポンジをすすぐ。
- 全体を水で流す。泡を残さないでください。
- すぐに拭き取る。乾く前に。
2番の予洗いが、いちばん重要です
省略されがちですが、傷を防ぐ最大の工程です。
スポンジを当てる前に、表面の砂をできるだけ水で流し落としてしまう。ここで落ちた砂は、二度と塗装を擦りません。
時間をかけてください。洗車全体の時間配分で言えば、ここに最も割く価値があります。
高圧洗浄機があれば、この工程が非常に楽になります。ただし、当て方には注意が必要です。距離を取り、直角に当てないでください。詳しくは高圧洗浄機の選び方に書きました。
なぜ上から下へなのか
汚れが下へ流れるから、というのが一つ。
もう一つの理由が重要です。車体の下のほうほど、汚れがひどいからです。
ドアの下端、バンパーの下、フェンダーの内側。ここには泥と砂がこびりついています。
先に下を洗うと、スポンジが砂だらけの状態でルーフやボンネットを触ることになります。いちばん目立つ面に、いちばん汚れたスポンジを当てる。これは避けたい順序です。
ホイールは道具を分けてください
ホイールにはブレーキダストが付いています。ブレーキパッドやローターが削れた、金属の粉です。
これがスポンジに入り込んだまま塗装を擦れば、確実に傷が入ります。
ホイール用のスポンジやブラシは、ボディ用と絶対に共用しないでください。色や形で区別が付くものを選ぶと、間違えません。
拭き取りが、最大の傷の原因です
意外に思われるかもしれません。
丁寧に洗った後、水滴を拭き取る工程。ここでいちばん傷が入っていることが少なくありません。
- 洗い残した砂が、まだ表面に残っている。それをクロスで引きずります。
- クロス自体に、前回の砂が残っている。地面に落としたものをそのまま使う人もいます。
- 力を入れて拭いてしまう。水滴を取ろうとして、こする動きになります。
- 乾いてきて焦る。急ぐほど雑になります。
拭き取りのコツ
- 大判のクロスを、置いて滑らせる。押し付けて擦らないでください。
- クロスの自重で吸わせる感覚で。力は要りません。
- 複数枚を用意する。1枚が水を含んだら次へ。
- 落としたクロスは使わない。洗ってから次回に。
- 洗濯するときは柔軟剤を使わない。吸水性が落ちます。
- 上から下へ、同じ方向に。往復させないでください。
吸水性の高いマイクロファイバー製の大判クロスなら、置いて引くだけで水が取れます。こする必要がありません。
ここに数千円かける価値はあります。スポンジより、クロスにお金をかけてください。
直射日光の下で洗わないでください
水滴が自然に乾くと、水に含まれていたミネラル分が残ります。これが白い輪のような跡になり、拭いても取れなくなります。ひどい場合は、塗装表面に食い込んで簡単には除去できません。炎天下のボディは非常に高温になっており、水をかけた端から乾いていきます。日陰か、朝夕の涼しい時間に洗ってください。
「洗車日和」という言葉から、晴れた日の昼間を思い浮かべる方が多いと思います。
ですが塗装にとっては、曇りの日、あるいは日陰のほうがずっと良い条件です。
どうしても日中に洗うなら、一面ずつ洗って、すぐ拭き取る。全体を濡らしてから順に洗うのではなく、区切って進めてください。
シャンプーの選び方
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 中性 | 基本。塗装にもコーティングにも穏やか |
| アルカリ性 | 油汚れに強い。脱脂力が高い |
| 酸性 | 水垢向け。金属部に注意 |
| ワックス・コーティング成分入り | 手軽。ただし効果は限定的 |
迷ったら中性を選んでください。日常の洗車では、これで足ります。
注意してほしいのが、食器用洗剤を使わないことです。
安く済みそうに見えますが、脱脂力が強く、ワックスやコーティングを落としてしまいます。ゴムや樹脂部品を傷めることもあります。
カーシャンプーは1本1,000円ほどで、何十回も使えます。ここを節約する意味はありません。
冬の洗車は、下回りを
雪の降る地域では、冬の洗車に別の意味があります。
路面には融雪剤が撒かれます。塩化物を含むものが一般的で、これが車体に付着します。
塩分は、金属の腐食を強く促進します。そして最も付着するのが、見えない下回りです。
- 下回りを水で流してください。洗車機の下部洗浄も有効です。
- ホイールハウスの内側も。泥と一緒に溜まります。
- 頻度を上げる。汚れが目立たなくても、塩分は付いています。
- 洗ったら、しっかり乾かす。水が残ると凍ります。
見た目の美しさではなく、錆の予防のための洗車です。目的が違います。
凍結する気温の日は、ドアの隙間やロックの水分にも注意してください。凍って開かなくなります。
洗車機は使ってよいのか
意見が分かれる話題です。私の考えを書きます。
| 洗車機 | 手洗い | |
|---|---|---|
| 時間 | 数分 | 1時間前後 |
| 費用 | 1回数百円 | 道具代のみ |
| 傷 | 入る可能性がある | 手順次第 |
| 細部 | 届かない箇所が残る | 対応できる |
| 下回り | 洗えるコースがある | 難しい |
洗車機で傷が入るとすれば、原因はブラシに残った前の車の砂です。仕組みとしては、手洗いで砂を挟むのと同じことが起きています。
とはいえ、雑な手洗いより、洗車機のほうがましな場合もあります。予洗いをせず、1つのバケツで、炎天下に洗うくらいなら、洗車機のほうが傷は少ないかもしれません。
現実的な使い分けを挙げます。
- 普段は洗車機、時々ていねいに手洗い。手間と結果のつり合いが取れます。
- 冬の下回り洗浄は洗車機。自分では洗いにくい部分です。
- 塗装を大事にしたいなら手洗い。ただし正しい手順で。
やってはいけないこと
| やること | 結果 |
|---|---|
| 予洗いせずにスポンジを当てる | 砂で塗装を削ります |
| バケツ1つで最後まで洗う | 後半ほど傷が入ります |
| ホイール用スポンジをボディに使う | 鉄粉で傷が入ります |
| 炎天下で洗う | 水滴の跡が残ります |
| 食器用洗剤を使う | コーティングが落ちます |
| 拭き取りで力を入れる | 細かい傷が入ります |
| 地面に落としたクロスを使う | 砂を引きずります |
| 洗いっぱなしで乾かす | 水跡が残ります |
よくある質問
Q. どのくらいの頻度で洗えばよいですか
A. 月に1〜2回が目安です。ただし状況によります。
- 鳥のふん、虫、樹液:見つけ次第、すぐ落としてください。放置すると塗装を侵します。
- 融雪剤の時期:頻度を上げてください。
- 海沿い:塩分が付きます。頻度を上げてください。
- 屋根付き駐車場:汚れにくいので、間隔を空けても構いません。
洗いすぎも、傷を増やす要因になります。汚れていないのに毎週擦る必要はありません。
Q. 傷がついてしまいました
A. 深さによって対処が変わります。
爪を立てて引っかからない程度の細かい傷なら、コンパウンドで目立たなくできることがあります。ただし、コンパウンドは塗装を削る作業です。やりすぎれば、かえって悪化します。
爪が引っかかる深さなら、下地まで達している可能性があります。放置すると錆びるので、専門店に相談してください。
Q. コーティングはしたほうがよいですか
A. 汚れが落ちやすくなる、という利点はあります。
ただし、傷が入らなくなるわけではありません。洗い方が雑なら、コーティングの上から傷が入ります。
また、コーティングをすれば洗車が不要になるわけでもありません。洗車の手間を減らすものであって、なくすものではないと考えてください。
Q. マンションで水が使えません
A. 水なし洗車用の製品もありますが、条件が付きます。
スプレーして拭き取るタイプの製品は、汚れが軽い場合に限って有効です。
砂やほこりが乗った状態で使うと、その砂を拭き広げることになります。予洗いができない以上、この点は避けられません。
汚れが溜まったら、コイン洗車場を使ってください。高圧洗浄機で予洗いができます。
Q. バイクも同じですか
A. 基本は同じですが、水をかける場所に注意が必要です。
バイクは外装で覆われていない部分が多く、電装部やベアリング、マフラーの排気口に水が入りやすくなっています。
とくに高圧の水を直接当てるのは避けてください。シール部分から水が侵入します。
洗った後は、チェーンの注油を忘れないでください。油が落ちた状態で走ると、急速に摩耗します。
Q. 拭き取り用クロスは何枚あればよいですか
A. 大判で3枚以上あると安心です。
1枚が水を含み切ってしまうと、そこから先は拭くのではなく、水を塗り広げる作業になります。
ボディ用とガラス用、細部用で分けておくとさらに使いやすくなります。クロスは消耗品です。毛羽立ってきたら、下回りや足回りの拭き取りに回してください。
まとめ
- 傷の原因は砂です。スポンジの品質ではありません。
- 予洗いに時間をかけてください。ここで落ちた砂は、二度と塗装を擦りません。
- バケツは2つ。洗う用とすすぐ用に分けてください。
- ホイール用の道具は共用しない。鉄粉が入っています。
- 拭き取りは、置いて滑らせる。力を入れないでください。
- 直射日光の下で洗わない。水跡が残ります。
洗車は、道具を揃えれば上手くいく作業ではありません。手順の設計で結果が決まります。
そして、その設計の中心にあるのは「砂をどう扱うか」という一点です。予洗いで落とし、2バケツで持ち回らず、拭き取りで引きずらない。
この視点で見ると、なぜその手順なのかが全部つながります。覚える項目は減り、応用が利くようになります。
なお、塗装やコーティングの状態は車ごとに異なります。使用する製品の説明書と、施工店の指示を優先してください。