はじめに押さえておきたいこと
- 掃除は上から下へ、乾いた作業から濡れた作業へ。順番で手間が変わります。
- 家庭用の洗剤を、そのまま車内に使わないでください。変色やベタつきの原因になります。
- 臭いの元は、たいていシートとエアコンにあります。芳香剤では消えません。
- 掃除機は、吸引力より「隙間に届くか」で選びます。
順番を決めると、二度手間が消えます
車内の掃除で疲れる原因は、道具の性能ではありません。
順番です。
拭いたあとに掃除機をかければ、埃がまた落ちます。濡らしたあとに乾拭きの作業をすれば、跡が残ります。
原則は2つだけです。
- 上から下へ。落ちた埃を、あとでまとめて回収します。
- 乾いた作業から、濡れた作業へ。
これに沿うと、手順はこうなります。
- 物を出す。マット、ゴミ、荷物。空にします。
- 天井から埃を落とす。ブラシで。
- ダッシュボード、パネルの埃を落とす。
- 掃除機をかける。上から下、奥から手前。
- 拭き掃除。汚れの軽い場所から。
- ガラスの内側。最後です。
- マットを洗って、乾かして戻す。
6番を最後にする理由は、他の作業で必ず手垢や飛沫が付くからです。
必要な道具
| 道具 | 用途 | 優先度 | 目安 |
|---|---|---|---|
| 掃除機(隙間ノズル付き) | シート下、隙間、マット | 必須 | 3,000円〜 |
| マイクロファイバークロス | 拭き掃除全般 | 必須 | 数百円(複数枚) |
| 柔らかいブラシ | 送風口、縫い目、細部の埃出し | 高い | 500円前後 |
| 内装用クリーナー | 樹脂パネル、ハンドル | 高い | 1,000円前後 |
| ガラスクリーナー | 内側のくもり取り | 高い | 500円前後 |
| 粘着ローラー | 布シートの毛、糸くず | 中 | 数百円 |
| ゴム手袋 | 布シートの毛を集める | 中 | 数百円 |
| 綿棒・竹串 | スイッチの周り、細い溝 | 中 | 数百円 |
| スチームクリーナー | シートのしみ、除菌 | 低い | 5,000円〜 |
最初にそろえるなら、上の4つで足ります。
クロスは、複数枚を用意して使い分けるのが要点です。1枚で全部やると、汚れを塗り広げることになります。
- 埃取り用(乾いたまま)
- 洗剤を付けて拭く用
- 仕上げの乾拭き用
- ガラス専用(他と混ぜない)
ガラス用を分けるのは、油分が付いたクロスで拭くと、必ず筋が残るためです。
掃除機は、届くかどうかで選ぶ
車内の汚れは、狭い場所に溜まります。
- シートとセンターコンソールの隙間
- シートレールの周り
- シートの座面と背もたれの境目
- ドアポケットの底
ここに手が入りません。だから細いノズルが要ります。
吸引力の数字を比べるより、付属ノズルの形と、ホースの取り回しを見てください。
家庭用の掃除機でも構いません。延長コードが届くなら、それで十分です。専用品を買う前に、まず手持ちで試してください。
家庭用洗剤を、そのまま使わないでください
車内の素材は、家庭の内装とは違います。アルコールを含むものは、樹脂の表面を白く曇らせることがあります。塩素系のものは、変色や生地の傷みを招きます。研磨剤入りのものは、艶のある面に細かい傷を残します。そして、ハンドルやシフトノブは、直接肌が触れる場所です。滑りやすくなる薬剤は、運転そのものを危険にします。使う前に、目立たない場所で試してください。
内装用と書かれた製品を選ぶのが、結局は安全です。
そして、多くの汚れは水拭きで落ちます。
固く絞ったクロスで拭き、すぐに乾拭きする。まずこれを試してください。落ちない汚れにだけ、洗剤を使います。
艶出し剤の注意
ダッシュボードに艶を出す製品があります。
ここで一つ、実用上の問題があります。
ダッシュボードが光ると、フロントガラスに映り込みます。晴れた日、前が見えにくくなります。
使うなら、艶消しタイプを選んでください。見た目のためだけに、視界を犠牲にする必要はありません。
汚れが溜まる場所は、決まっています
やみくもに掃除しても、達成感が出ません。
汚れやすい場所を先に押さえると、少ない時間で見た目が変わります。
| 場所 | 溜まるもの | 効く道具 |
|---|---|---|
| ハンドル | 手の脂。黒く艶が出ます | 水拭きと乾拭き |
| シフトノブ、ドアの取っ手 | 手垢 | 水拭き |
| ドリンクホルダー | 糖分、埃が固まります | 綿棒、ぬるま湯 |
| エアコンの送風口 | 埃。フィンの奥に付きます | 細いブラシ |
| シートの隙間 | 硬貨、菓子、レシート | 隙間ノズル |
| ドアポケットの底 | 砂、埃 | 掃除機、拭き取り |
| ペダルの周り | 靴からの砂と泥 | 掃除機 |
| シートベルトの帯 | 手垢と汗 | 固く絞った布 |
この中で、意外と効果が大きいのがハンドルです。
毎回、手が触れます。そのため脂が蓄積し、黒ずんで、握ると少し滑ります。
ここを拭くだけで、運転中の手触りが変わります。見た目より、体感の差が大きい場所です。
ただし、艶が出る薬剤は使わないでください。滑ると危険です。水拭きと乾拭きで十分です。
シートベルトも、拭ける場所です
忘れられがちですが、毎回触れる部品です。
いっぱいまで引き出し、洗濯ばさみなどで巻き取らないよう留めてから、固く絞った布で拭きます。
注意点があります。濡れたまま巻き取らないでください。内部の機構に湿気を持ち込むことになります。乾いてから戻してください。
また、強い洗剤や漂白剤は使わないでください。シートベルトは、事故のときに体を支える部品です。繊維の強度に関わる薬剤は避けます。
シートの掃除
素材によって、やり方が変わります。
| 素材 | やり方 | 避けること |
|---|---|---|
| 布(ファブリック) | 掃除機→ブラシで毛羽立てて再度吸う | 濡らしすぎ。乾かないと臭います |
| 合成皮革 | 水拭き→乾拭き | 強い洗剤、こすりすぎ |
| 本革 | 専用クリーナー→保湿 | 水分の放置、直射日光 |
布シートで最も多い失敗が、濡らしすぎです。
内部のスポンジまで水が入ると、乾きません。そして数日後、独特の臭いが出ます。掃除したはずなのに、悪化します。
布を濡らす作業は、晴れた日の午前中に。窓を開け、扇風機を当てて、その日のうちに乾かしてください。
毛やホコリは、ゴム手袋で集まります
ペットの毛や、衣類の繊維。掃除機で吸い切れないことがあります。
そういうときは、ゴム手袋をはめて、シートを撫でてください。
静電気と摩擦で、毛が一か所に集まります。あとはまとめて取るだけです。
粘着ローラーより早く、広い面に向いています。道具を買わずにできる方法として、覚えておいて損はありません。
臭いは、元を断たないと消えません
芳香剤を置いても、臭いが混ざるだけです。
原因は、たいてい次のどれかです。
| 原因 | 手がかり | 対処 |
|---|---|---|
| シートに染みた汗や飲み物 | 座席付近が強い | 掃除して、しっかり乾かす |
| エアコン内部のカビ | 送風開始の数秒が強い | フィルター交換、送風で乾燥 |
| マット下の湿気 | マットをめくると分かる | 乾燥、必要なら交換 |
| こぼした食べ物 | 隙間に落ちている | 探して取り除く |
| 喫煙の残り | 天井が黄ばんでいる | 天井まで含めた清掃 |
見分けやすいのがエアコンです。
始動直後の数秒だけ強く臭うなら、内部にカビが出ています。
対策は2つ。エアコンフィルターの交換と、降車前に送風にして内部を乾かすことです。
送風での乾燥は、簡単です。目的地に着く数分前にエアコンを切り、送風だけにする。内部の水滴が飛び、カビが育ちにくくなります。習慣にすれば、それだけで臭いの発生をかなり抑えられます。
フィルターは、多くの車で助手席側のグローブボックスの奥にあります。工具なしで交換できる車種が多く、部品も数千円です。自分でやる価値の高い整備の一つです。
ただし、位置と手順は車種によって異なります。取扱説明書を確認してください。
ガラスの内側が曇る理由
「拭いても、すぐ白くなる」という相談があります。
内側の汚れは、油膜です。
内装の樹脂から出る成分、手の脂、たばこの煙。これらが少しずつ膜になります。乾拭きでは落ちません。
手順はこうです。
- ガラスクリーナーを、クロスに吹く。ガラスに直接吹くと、周りに垂れます。
- 横方向に拭く。
- 乾いたクロスで、縦方向に拭き上げる。
方向を変える理由は、拭き残しの位置が分かるからです。筋が横なら1回目、縦なら2回目の残りだと判別できます。
そして、曇り止めより先に、汚れを落としてください。汚れた面に塗っても効きません。
外側の油膜については、ワイパーの交換のほうで書きました。内と外は、原因も対処も別です。
掃除しながら、点検もできます
車内を掃除する時間は、普段は見ない場所を見る時間でもあります。
ついでに、次の点を確かめてください。
- マットの下が濡れていないか:雨漏りや、エアコンの排水詰まりの兆候です。
- 床が湿っていないか:放置すると錆びます。原因を探してください。
- 非常用の備品は入っているか:三角表示板、発炎筒。発炎筒には使用期限があります。
- 車検証と自賠責の証明書:積んでいないと、それ自体が問題になります。
- シートの取り付け部にがたつきはないか
- スペアタイヤや工具:積んであるはずのものが、揃っているか。
とくにマットの下の湿りは、見つけたら原因を追ってください。
自然に乾くことはありません。密閉された空間で、床材の下に水が残り続けます。
そして、発炎筒の期限切れは見落とされがちです。使う場面はめったに来ませんが、来たときに使えなければ意味がありません。掃除のたびに、日付を見る癖をつけてください。
車載の工具や備品については、自分でできる車の整備にもまとめました。
ありがちな失敗
| 失敗 | 結果 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 拭いてから掃除機をかけた | 埃が戻る | 掃除機が先 |
| 布シートを濡らしすぎた | 数日後に臭う | 固く絞る、その日に乾かす |
| 1枚のクロスで全部やった | 汚れを広げる | 用途で分ける |
| ガラスに直接スプレーした | 内装に垂れる | クロスに吹く |
| ダッシュボードに艶を出した | ガラスに映り込む | 艶消しを選ぶ |
| 洗剤を試さずに使った | 変色 | 目立たない場所で試す |
| 芳香剤で臭いに対処した | 混ざって悪化 | 原因を探す |
| マットを濡れたまま戻した | 床が錆びる | 完全に乾かす |
最後の1つは、見落とされがちです。
マットの下は、鉄の床板に防音材が乗っている構造です。ここに水が入ると、乾きません。長く放置すれば錆びます。
マットを洗ったら、完全に乾くまで戻さないでください。半日では足りないこともあります。
細かい疑問に答えます
Q. どのくらいの頻度でやりますか
A. 分けて考えると続きます。
- 毎回:ゴミを持ち帰る
- 月に一度:掃除機とガラスの内側
- 季節ごと:シート、マット、エアコンフィルターの確認
全部を一度にやろうとすると、腰が重くなります。
ゴミを溜めないだけで、大掃除の負担はかなり減ります。
Q. 飲み物をこぼしたら
A. 速さがすべてです。
- こする前に、吸い取る。乾いた布を押し当てます。
- 水を少量つけた布で、叩くように移す。
- 乾いた布で水分を吸う。
- 風を当てて乾かす。
こすると、繊維の奥へ押し込むことになります。叩いて移すのが基本です。
布を替えながら、汚れが移らなくなるまで繰り返します。一枚で押し当て続けても、吸ったものが戻るだけです。
とくに牛乳やジュースは、放置すると臭いが残ります。糖分とたんぱく質が残るためです。その場で対処してください。
Q. 業者に頼むべき場面はありますか
A. あります。
- シート内部まで染みた汚れや臭い
- 天井の広範囲の汚れ(自分でやると、たるみの原因になります)
- 売却前に、状態を整えたい場合
とくに天井は難しい場所です。
生地が接着されているため、水分を含ませると剥がれて垂れ下がります。元に戻すのは簡単ではありません。
天井は、軽く拭く程度にとどめてください。強くこすらず、水分も最小限に。ここだけは、手を出しすぎないほうが結果が良い場所です。
Q. 外装の洗車と、どちらを先に
A. 車内が先です。
ドアを開け閉めし、マットを出し入れするからです。洗ったあとの外装に、埃や水滴が付きます。
外装の手順は洗車に必要な道具にまとめました。
押さえておきたいこと
- 上から下へ、乾いた作業から濡れた作業へ。
- クロスは用途ごとに分ける。ガラス用は特に。
- 家庭用洗剤をそのまま使わない。目立たない場所で試す。
- 布シートは濡らしすぎない。臭いの原因になります。
- 臭いは芳香剤ではなく、元を断つ。
- マットは完全に乾かしてから戻す。
車内は、家の中より汚れやすい場所です。
密閉されていて、温度が上がり、湿気がこもる。そこに人が座り、飲み食いをします。
しかも、夏の車内は高温になります。汚れが変質し、臭いに変わるまでの時間が、家の中よりずっと短いのです。こぼしたものを翌週まで放っておく、という判断が通用しません。
だからこそ、年に一度の大掃除より、月に一度の10分のほうが効きます。溜めないほうが、結局は楽です。
なお、内装の素材や適した薬剤は車種によって異なります。使用する製品の表示と、取扱説明書の指示をご確認ください。