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エンジンオイル交換に必要な工具|上抜きと下抜きで揃えるものが変わります

目次

はじめに押さえておきたいこと

  • 上抜きなら、車の下にもぐらずに済みます。安全面での差は大きいものです。
  • 下抜きではリジッドラックが必須。ジャッキだけで下に入らないでください。
  • 選ぶ基準は粘度と規格。取扱説明書に指定があります。
  • 廃油はそのまま捨てられません。処理方法を先に決めてから作業してください。

まず、上抜きか下抜きかを決めてください

オイル交換には、2つの方法があります。どちらを選ぶかで、必要な工具がまったく変わります。

上抜き下抜き
方法オイルレベルゲージの穴から吸い出すドレンボルトを外して落とす
ジャッキアップ不要必要
車の下にもぐる不要必要
必要な工具オイルチェンジャージャッキ、リジッドラック、レンチ
抜ける量やや残ることがあるほぼ抜ける
ドレンボルト触らないワッシャー交換が必要
失敗のリスク低いボルトのなめ、締めすぎ

初めてなら、上抜きをおすすめします。

理由は安全性です。車の下に体を入れる必要がありません。この一点だけで、事故のリスクが大きく下がります。

ただし、車種によっては上抜きに対応していないことがあります。ゲージの管の形状によっては、ホースが底まで届きません。事前に確認してください。

必要な工具

工具用途上抜き下抜き目安
オイルチェンジャー上から吸い出す必須3,000〜15,000円
フロアジャッキ車体を持ち上げる必須5,000〜20,000円
リジッドラック持ち上げた車体を支える必須3,000〜10,000円
メガネレンチ・ソケットドレンボルトの脱着必須2,000円〜
トルクレンチドレンボルトを規定値で締める高い5,000円〜
ドレンワッシャー毎回交換する消耗品必須数十円
廃油受け(オイルパン)抜いたオイルを受ける必須1,000〜3,000円
廃油処理箱処分用必須必須数百円
オイルフィルターレンチフィルター交換時状況次第状況次第1,000〜3,000円
ジョウゴ(オイルジョッキ)こぼさず注ぐ必須必須500〜2,000円
ウエス、手袋清掃と保護必須必須数百円
輪止め車の移動を防ぐ推奨必須1,000円前後

上抜きなら、1万円前後で一式が揃います。

下抜きは、ジャッキとリジッドラックが加わるぶん2万円から4万円ほど。ただし、これらはタイヤ交換にも使えます。

オイルの選び方

売り場に行くと種類が多く、迷います。ですが、見るべき点は決まっています。

粘度の表示

缶に「0W-20」「5W-30」といった表示があります。これが粘度です。

部分意味
前の数字+W低温での流れやすさ。小さいほど寒さに強い
後ろの数字高温での粘り。大きいほど硬い

Wはを表します。

重要なのは、指定された粘度を使うことです。

近年の車は、燃費のために非常に柔らかいオイルを前提に設計されていることがあります。指定が0W-20の車に、硬い5W-40を入れると、本来の性能が出ません。

「硬いほうが保護性能が高い」という考えは、現代のエンジンでは当てはまらないことがあります。取扱説明書の指定に従ってください。

規格の表示

もうひとつ、品質を示す規格があります。

  • API規格:「SP」「SN」などの記号で示されます。後のアルファベットほど新しい規格です。
  • ILSAC規格:省燃費性能を含む規格です。
  • メーカー独自の規格:輸入車では、これが指定されていることがあります。

ガソリン車とディーゼル車では、規格の系統が異なります。間違えないでください。

とくにディーゼル微粒子捕集フィルターを備えた車では、対応したオイルを使わないと、フィルターを詰まらせることがあります。

量を確認してください

意外な落とし穴です。

必要な量は車種によって違います。3リットルで足りる車もあれば、5リットル以上必要な車もあります。

そして、オイルフィルターを交換するかどうかで必要量が変わります。フィルター内に残る分があるためです。

取扱説明書に「フィルター交換なし◯L、あり◯L」と書かれています。買う前に確認してください。

下抜きの手順と注意

ジャッキだけで車の下に入らないでください。油圧は抜けます。オイル交換は、タイヤ交換と違って全身を車の下に入れる作業です。落ちてくれば逃げられません。リジッドラックを必ず併用し、できれば車輪をジャッキの上に残さない配置にしてください。

  1. エンジンを軽く暖める。オイルが流れやすくなります。ただし熱すぎると火傷します。
  2. 平らな場所で、輪止めをする。
  3. ジャッキアップし、リジッドラックで支える。
  4. ドレンボルトの位置を確認する。ミッションオイルのボルトと間違えないでください。
  5. 廃油受けを真下に置く。勢いよく出るので、位置に余裕を。
  6. ボルトを緩め、外す。最後は手で。落とさないように。
  7. 抜けきるまで待つ。10分から15分。
  8. ワッシャーを新品に替え、ボルトを締める。規定トルクで。
  9. 車体を下ろす。
  10. 新しいオイルを入れる。少しずつ、量を確認しながら。
  11. エンジンをかけ、数分後に止めて、レベルゲージで確認する。
  12. ドレンボルトからの漏れを確認する。

ドレンボルトが最大の難所です

初心者が失敗するのは、ほぼここです。

失敗結果
締めすぎたオイルパンのねじ山が壊れます
緩すぎた走行中に緩み、オイルが漏れます
ワッシャーを再利用したにじみます
ボルトの頭をなめた次回外せません
斜めに入れたねじ山を壊します
別のボルトを外したミッションオイルが出ます

とくに怖いのが締めすぎです。

オイルパンはアルミ製のことが多く、鉄のボルトより柔らかい素材です。強く締めれば、ねじ山が削れます。

そうなると、オイルパンごとの交換になります。数万円の修理です。

トルクレンチを使ってください。「手ごたえで分かる」と考えないほうがいい部分です。

また、ドレンワッシャーは毎回交換してください。数十円の部品です。潰れることで密閉する仕組みなので、再利用すると漏れます。

上抜きの手順

  1. エンジンを軽く暖める。粘度が下がり、吸い出しやすくなります。
  2. オイルレベルゲージを抜く。
  3. チェンジャーのホースを、ゲージの管に差し込む。底に当たるまで。
  4. 吸い出す。手動ポンプ、電動、エア式などがあります。
  5. 出なくなるまで続ける。
  6. ゲージを戻し、新しいオイルを入れる。
  7. 量を確認する。

3番で、ホースが底まで届いているかが肝心です。

途中で引っかかっている場合、そこまでのオイルしか抜けません。抜けた量を計って、規定量と比べてください。大きく少なければ、届いていない可能性があります。

なお、上抜きでは底に沈んだ汚れが残りやすいという指摘があります。ただし現代のエンジンでは、そこまで大量の沈殿物が溜まることは多くありません。

気になるなら、数回に一度は下抜きにするという運用でも構いません。

量の確認が、最後の関門です

入れる量を間違えると、エンジンを傷めます。

起きること
少なすぎる潤滑不足。焼き付きの危険
多すぎる撹拌による泡立ち、抵抗増、シールからの漏れ

入れすぎも問題です。「多めに入れておけば安心」ではありません。

確認の手順を書きます。

  1. 規定量より少なめに入れる。
  2. エンジンをかけ、数分回す。各部にオイルが回ります。
  3. 止めて、5分ほど待つ。オイルが下に落ちるのを待ちます。
  4. レベルゲージを一度抜いて、拭いてから差し直す。
  5. 抜いて、油面を見る。上限と下限の間にあれば適正です。
  6. 足りなければ、少しずつ足す。

4番を省略しないでください。一度拭かないと、正しい油面が読めません。

また、平らな場所で測ってください。傾いていると誤差が出ます。

廃油の処理を、先に決めてください

作業を始めてから困る部分です。

抜いたオイルは、そのまま捨てられません。

  • 排水口や地面に流すのは違法です。土壌と水質を汚染します。
  • 燃えるゴミにそのまま出すこともできません。

現実的な方法は、廃油処理箱を使うことです。中の吸収材にオイルを吸わせ、燃えるゴミとして出せる自治体が多くあります。

数百円で、オイル交換1回分を吸収できます。オイルを買うときに、一緒に買っておいてください。

他にも、カー用品店やガソリンスタンドでの引き取り、自治体の回収といった方法があります。ただし、条件は地域と店舗によって異なります。

詳しくは廃エンジンオイルの捨て方にまとめました。事業者と家庭でルールが違う点も書いています。

交換時期の考え方

「3,000kmごと」という話を聞くことがありますが、現代の車では過剰なことが多くなっています。

取扱説明書に、車種ごとの指定が書かれています。まずそこを確認してください。

そして、使い方によって条件が変わります。

使い方オイルへの負担
短距離の繰り返し大きい。暖まる前に止まります
渋滞路の走行が多い大きい
山道、荷物を多く積む大きい
高速道路を一定速度で比較的小さい
年間走行距離が少ない距離より期間で判断

意外に思われるかもしれませんが、短距離ばかりの使い方は、オイルにとって厳しい条件です。

エンジンが十分に暖まらないと、燃焼で生じた水分がオイルに混ざったまま残ります。これが劣化を早めます。

また、走らなくても劣化します。年間の走行距離が少ない場合は、距離ではなく期間で交換時期を判断してください。

これは自分でやってよいのか

法令上の位置づけに触れておきます。

自分の車を、趣味の範囲で整備することは認められています。認証を受けた事業者でなければできないのは、業として行う場合です。

オイル交換は、分解を伴う整備にはあたらないと扱われるのが一般的です。自分の車であれば、問題ありません。

ただし、整備不良の状態で走行すれば、別の問題になります。オイルが漏れたまま走る、量が不足したまま走る。これは道路交通法上の責任が生じ得ます。

整備の法令上の区分は、クルマの自分でできる整備に整理しました。

質問と回答

Q. オイルフィルターも毎回替えますか

A. 2回に1回が目安とされることが多いようです。

ただし、車種ごとに指定があります。取扱説明書を確認してください。

交換する場合、専用のフィルターレンチが必要です。形状が何種類もあるので、自分の車に合うものを選んでください。

取り付け時は、ゴムパッキンに新しいオイルを薄く塗ってから手で締めます。締めすぎると次回外せません。

Q. 店に頼むのと、どちらが安いですか

A. 回数によります。

店で交換すれば、工賃込みで数千円が目安です。オイル代だけを見れば、自分でやっても大きくは変わりません。

差が出るのは、工具を他の作業にも使う場合です。ジャッキとリジッドラックはタイヤ交換にも使えます。合わせて考えると、元が取りやすくなります。

そして、廃油処理の手間もあります。店なら、そこも任せられます。この点は正直に評価してください。

Q. オイルが黒いのは異常ですか

A. ある程度は正常です。ただし、状態を見てください。

  • 黒いが、さらさらしている:汚れを取り込んでいる証拠。正常な働きです。
  • どろりとしている:交換時期を過ぎています。
  • 白く濁っている:水分の混入。要点検です。
  • 量が増えている:燃料の混入の可能性。異常です。
  • 金属粉がきらきらしている:内部の摩耗。専門店へ。

後半の3つは、オイル交換で解決する問題ではありません。点検を受けてください。

Q. バイクでも同じですか

A. 手順は似ていますが、オイルの種類に注意が必要です。

多くのバイクでは、エンジンオイルがクラッチの潤滑も兼ねています。

そのため、省燃費をうたう車用のオイルを入れると、クラッチが滑ることがあります。摩擦を減らす添加剤が、クラッチにも作用してしまうためです。

バイク用として売られているもの、あるいは指定された規格のものを使ってください。

押さえておきたいこと

  • 初めてなら上抜き。車の下にもぐらずに済みます。
  • 下抜きならリジッドラック必須。全身を車の下に入れる作業です。
  • ドレンボルトは締めすぎない。オイルパンが壊れます。
  • ワッシャーは毎回交換。数十円の部品です。
  • 粘度と規格は、取扱説明書の指定に従う。
  • 入れすぎも問題です。少なめから足していってください。
  • 廃油の処理方法を先に決めてから作業を始めてください。

オイル交換は、自分でできる整備の入口として語られることが多い作業です。

ですが実際には、ジャッキアップの危険、ドレンボルトの締め加減、廃油の処理と、つまずく要素がいくつも並んでいます。タイヤ交換より難度は高いと考えてください。

それでも取り組む価値があるのは、車の状態を自分の目で見る機会になるからです。抜いたオイルの色、下回りの汚れ、にじみの有無。店に任せていたら気づかないことが分かります。

なお、指定される粘度、規格、油量、締め付けトルクはすべて車種によって異なります。作業の前に、お乗りの車の取扱説明書を必ずご確認ください。

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