最初にお伝えしたいこと
- 車のエアコンフィルターは、多くの車で工具なし、または簡単な工具だけで交換できます。
- 場所は助手席のグローブボックスの奥であることが多いですが、車種によって違います。
- 交換で最も多い失敗は、フィルターの向きを逆に入れることです。
- エアコンをつけたときの臭いや、風の弱さが気になったら、まずフィルターを見てください。
エアコンフィルターの役割
車のエアコンは、外の空気や車内の空気を取り込み、温めたり冷やしたりして送り出しています。その空気の通り道に入っているのが、エアコンフィルターです。
取り込む空気には、道路のほこり、花粉、排気ガスに含まれる細かい汚れ、落ち葉のかけらなどが混ざっています。フィルターは、それらを受け止めて、車内に入る空気をきれいにする役目を担っています。
エンジンが空気を吸い込むための「エアクリーナー」とは、別の部品です。名前が似ているので混同されがちですが、エアコンフィルターは、人が吸う空気のためのフィルターだと考えてください。
交換を考えるサイン
| 気になること | フィルターとの関係 |
|---|---|
| エアコンをつけた直後に、かび臭い、すっぱい臭いがする | 湿った汚れがたまり、臭いの元になっていることがあります |
| 風量を上げても、吹き出す風が弱い | 汚れで目詰まりし、空気が通りにくくなっています |
| 窓が曇りやすく、なかなか晴れない | 空気の流れが弱く、曇りを取る力が落ちています |
| 花粉の季節に、車内で目や鼻がむずむずする | フィルターが花粉を受け止めきれていない可能性があります |
交換の時期は、取扱説明書やメンテナンスノートに目安が書かれています。その目安より早く交換したほうがよいのは、次のような使い方をしている場合です。
- 交通量の多い道路をよく走る
- 砂ぼこりの多い道や、工事現場の近くを走る
- 木の多い場所に車を止めている。落ち葉や花粉がたまりやすくなります
- 湿気の多い地域や季節に、エアコンをよく使う
必要な道具
エアコンフィルターの交換は、自分でできる車の手入れの中でも、道具が少ない作業です。
| 道具 | 役割 | 優先度 |
|---|---|---|
| 車種に合った交換用フィルター | 寸法と形が合うもの。いちばん大事 | 必須 |
| 懐中電灯やヘッドライト | グローブボックスの奥は暗い | 高い |
| 掃除機(すき間用のノズル) | フィルターを外した枠の周りのごみを吸う | 高い |
| 軍手 | 汚れたフィルターを触る。枠の角で手を切らない | 中 |
| ごみ袋 | 古いフィルターを外したら、すぐ入れる | 中 |
| プラスドライバー | ネジで留めている車種だけ | 車種による |
| 内張りはがし | カバーをツメで留めている車種で、傷を付けずに外す | 車種による |
ドライバーや内張りはがしが要るかどうかは、車種によって違います。作業の前に、取扱説明書でフィルターの場所と外し方を確かめてください。取扱説明書に交換の手順が載っていない車種は、販売店に任せる前提で考えるほうが無難です。
フィルターの選び方
エアコンフィルターは、車種ごとに寸法と形が決まっています。見た目が似ていても、数ミリ違えばすき間ができ、汚れた空気がフィルターを避けて流れてしまいます。
- 車検証で、車の型式と年式を確かめる。
- カー用品店の適合表や、メーカーの案内で、合うフィルターを探す。
- 迷ったら、外した古いフィルターを店に持っていく。寸法と形を直接比べられます
フィルターには、いくつか種類があります。値段の差は、中に使われている素材や、受け止められる粒の細かさの違いから来ています。どれを選んでも、寸法が合っていることが前提です。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ほこりや花粉を受け止める基本の種類 | 価格が手ごろ。まずはこれで十分なことが多い |
| 活性炭などで臭いを抑える種類 | 排気ガスの臭いが気になる人に。価格は上がる |
| 細かい粒子まで受け止める種類 | 花粉や細かいほこりが気になる人に。目が細かいぶん、風量が少し落ちることがある |
高性能なものほど目が細かく、同じ期間でも目詰まりしやすい面があります。性能の高さだけで選ぶより、交換の時期を守れるかどうかを考えて選ぶほうが、結果として車内の空気は保たれます。
交換の手順
ここでは、グローブボックスの奥にフィルターがある、よくある形の車を例にします。実際の手順は、必ず取扱説明書で確かめてください。
- エンジンを止め、エアコンを切る。風が出ている状態で開けると、ごみが奥へ吸い込まれます
- グローブボックスの中の物を出す。
- グローブボックスを外す、または下へ大きく開けられる状態にする。多くは、両側のストッパーを内側へ押すと下がります
- 奥にあるフィルターのふたを外す。ツメで留まっていることが多いので、無理に引っ張らないでください
- 古いフィルターを、向きを見ながら引き出す。取り出す前に、写真を撮っておくと確実です
- 枠の周りのごみを、掃除機で吸う。
- 新しいフィルターを、正しい向きで差し込む。
- ふた、グローブボックスを元に戻す。
- エアコンをつけて、風がきちんと出るか確かめる。
5番で古いフィルターを引き出すときは、ゆっくり、水平にが大事です。汚れたフィルターを勢いよく抜くと、上に乗っていた落ち葉やほこりが、エアコンの奥へ落ちていきます。落ちたごみは、臭いの元になることがあります。
向きを逆に入れないでください
エアコンフィルターには、空気の流れる向きが決まっています。多くの製品には、枠に矢印や「AIR FLOW」「UP」といった表示があります。この向きを逆にして入れると、フィルターが本来の性能を出せず、ひだの形がつぶれることもあります。古いフィルターを取り出すとき、どちらの面が上を向いていたか、矢印がどちらを指していたかを必ず見ておいてください。取扱説明書やフィルターの箱にも、向きの説明が書かれています。暗いグローブボックスの奥では、表示が見えにくいので、ライトで照らして確かめます。
向きのほかに、フィルターを奥までまっすぐ入れることも確かめてください。途中で斜めになっていたり、ひだの端が折れ曲がっていたりすると、すき間ができます。
古いフィルターの汚れ具合を見ておく
取り出した古いフィルターは、すぐに捨てずに、一度よく見てください。次の交換時期を決めるための手がかりになります。
- 全体が黒っぽく、ひだの奥まで灰色になっている:交換の間隔を短くしたほうがよい使い方です
- 落ち葉や虫の死がいが多くたまっている:駐車場所の影響が大きいかもしれません
- 湿ったような跡や、かびの点がある:臭いの元です。エアコンの使い方も見直します
- 少し色が変わっている程度:今の交換の間隔で問題ないと考えられます
フィルターを叩いたり、掃除機で吸ったりして、きれいにして再び使う方法を見かけることがあります。ですが、多くのフィルターは交換を前提にした部品です。ひだの奥に入り込んだ細かい汚れは取れず、叩けば繊維を傷めます。交換してください。
臭いが残るときは、フィルター以外も疑う
新しいフィルターに替えても、エアコンの臭いが消えないことがあります。その場合は、フィルターのさらに奥に原因があるかもしれません。
エアコンで空気を冷やす部品には、冷やしたときにできる水滴が付きます。そこに汚れがたまり、湿ったまま放置されると、かびが増えて臭いの元になります。
臭いを出にくくするには、次の使い方が役に立ちます。どれも、今日から費用をかけずに始められます。
- 目的地に着く少し前に、冷房を切って送風だけにする。奥の部品を乾かしてから止めます
- ときどき外の空気を取り込む設定にする。ずっと車内の空気を回していると、湿気がこもります
- 車内の汚れや食べこぼしをためない。車内の空気もエアコンが吸い込んでいます
車内の掃除の手順と道具は、車内の掃除に必要な道具にまとめました。それでも臭いが強く残るなら、奥の部品の洗浄を、整備工場やカー用品店に相談してください。市販のスプレーを奥へ吹き込む方法もありますが、使う場所と量を誤ると、電装部品に液がかかるおそれがあります。製品の説明をよく読み、不安があれば店に任せます。
季節ごとに気にしておきたいこと
エアコンフィルターの汚れ方は、季節によって変わります。交換の時期を、季節の変わり目に合わせて考えると忘れにくくなります。
| 季節 | 起きやすいこと | 気にしておきたい点 |
|---|---|---|
| 春 | 花粉と黄砂がフィルターにたまる | 花粉の季節の前に替えると、車内で過ごしやすくなります |
| 梅雨から夏 | 湿気で汚れが湿り、臭いが出やすい | 冷房をよく使う前に状態を見ておきます |
| 秋 | 落ち葉や虫がフィルターの上にたまる | 木の多い場所に止めるなら、枠の周りのごみも吸います |
| 冬 | 窓の曇り取りで風をよく使う | 風が弱いと、曇りがなかなか取れません |
とくに冬は、見落とされがちです。フロントガラスの曇りが取れにくいのは、視界の安全に直結します。寒い朝に曇りがなかなか晴れないと感じたら、フィルターの目詰まりも疑ってください。冬の車の備え全体は、冬の車の備えにまとめました。
そして、交換した日付と走行距離を、メンテナンスノートや、スマートフォンのメモに残しておくことをすすめます。「前にいつ替えたか」を覚えている人は、ほとんどいません。記録があれば、次の交換を先延ばしにせずに済みます。
作業で気をつけたいこと
- グローブボックスのストッパーやツメを、力任せに外さない。樹脂の部品は、寒い日に硬くなって割れやすくなります
- 外したネジやクリップは、小さな容器に入れる。足元のすき間に落とすと、見つけるのが大変です
- 助手席のエアバッグ付近のカバーには手を出さない。フィルター交換に必要な範囲だけを外します
- 無理な姿勢で長く作業しない。足元にもぐり込む姿勢は、首や腰に負担がかかります
フィルターの位置がエンジンルームの中にある車種もあります。その場合は、エンジンが冷めてから作業し、ほかの部品や配線に触れないよう注意してください。作業に不安がある場所なら、無理をせず店に頼みます。自分でできる整備の範囲の考え方は、クルマの自分でできる整備で書きました。
よく聞かれること
Q. 店に頼むと、どのくらいかかりますか
A. フィルターの代金に、作業の工賃が加わる形が一般的です。
工賃の額は店によって違い、フィルターを店で買うと工賃が安くなる場合もあります。オイル交換や点検のついでに頼むと、待ち時間も少なく済みます。自分で交換すれば工賃はかかりませんが、ツメを割ってしまうと、かえって高くつくことがあります。
Q. フィルターを入れずに走っても大丈夫ですか
A. たとえ短い期間であっても、それは避けてください。
フィルターがないと、ほこりや落ち葉がエアコンの奥へ直接入り込みます。奥の部品が汚れれば、臭いの原因になるだけでなく、掃除や修理に手間と費用がかかります。交換用のフィルターが届くまでの間は、古いフィルターを戻しておくほうがよいです。
Q. 家のエアコンのフィルターと同じように洗えますか
A. 車のエアコンフィルターの多くは、水で洗って使う作りにはなっていません。
紙や不織布でできたものを水で洗うと、形が崩れ、乾いても元の性能に戻りません。「洗える」と明記された製品以外は、交換と考えてください。
Q. 交換したら、すぐ効果は分かりますか
A. 汚れがひどかった場合は、風の強さや臭いの違いを、その場で感じることが多いです。
一方で、交換の時期が早めだった場合は、はっきりした違いを感じないこともあります。それは、まだ性能が保たれていたという意味なので、無駄だったわけではありません。臭いの原因がフィルター以外にある場合も、交換だけでは変わりません。前の節で書いた、奥の部品を乾かす使い方もあわせて試してください。
交換のポイントのまとめ
- 臭い、風の弱さ、曇りやすさを感じたら、まずフィルターを見る。
- フィルターは車種に合う寸法と形のものを選ぶ。迷ったら古いものを持って店へ。
- 取り出す前に向きを確かめ、写真を撮る。新しいものは矢印に合わせて入れる。
- 古いフィルターはゆっくり水平に抜き、枠の周りのごみを吸う。
- 樹脂のツメは力任せに外さない。不安な車種は店に任せる。
エアコンフィルターは、ふだん目に入らない場所にある部品です。だからこそ、車を買ってから一度も替えていない、ということが珍しくありません。
取り出した古いフィルターの色を見ると、毎日どれだけの汚れを受け止めていたのかが分かります。その汚れの向こうで、自分や家族が息をしていたと考えると、交換の数分は決して面倒な手間ではないはずです。