車のパンクに必要な道具|修理キットとスペアタイヤの使い分け

目次

まず結論から

  • パンクに気づいたら、修理より先に、安全な場所に止まることを考えます。
  • 最近の車は、スペアタイヤではなく応急修理キットを積んでいることが多くあります。どちらが積んであるか、今のうちに確かめてください。
  • 修理キットは万能ではありません。タイヤの側面の傷や大きな穴は直せません。
  • どちらで対処しても、それは応急の処置です。決められた速度と距離を守り、早めに店で見てもらいます。

パンクに気づいたとき、最初にやること

走っている途中で、ハンドルが片側に取られる。足元からゴトゴトという音や振動が伝わる。タイヤの空気圧を知らせる警告が点く。こうした変化があれば、パンクを疑ってください。

ここで大事なのは、慌てて急ブレーキを踏まないことです。空気の抜けたタイヤは、急な操作で車の向きを乱しやすくなっています。

  1. ハンドルをしっかり握り、ゆっくり速度を落とす。
  2. ハザードランプを点ける。
  3. 後ろの車に気をつけながら、安全に止まれる場所まで移動する。
  4. 平らで、交通の流れから離れた場所に止める。

「すぐに止まらないとタイヤが傷む」と考えがちですが、車の流れの中で作業するほうが、はるかに危険です。タイヤは交換できますが、人の体は交換できません。少し先の広い場所まで、ゆっくり進んでください。

高速道路の場合

高速道路の路肩で、タイヤ交換や修理の作業をしないでください。路肩に止まった車や、そのそばに立つ人に、後ろから来た車が突っ込む事故が起きています。高速道路で止まるときは、後ろの車に知らせるための停止表示器材(三角の表示板)を置くことが決められています。発炎筒もあわせて使います。そのうえで、車の中に残らず、ガードレールの外など安全な場所へ避難してください。作業は、ロードサービスや道路の管理者に任せます。車内に残っていると、追突されたときに逃げ場がありません。

停止表示器材は、車に最初から積まれているとは限りません。積んでいなければ、用意しておいてください。発炎筒には使用期限があるので、あわせて確かめます。

自分の車に積んであるのは、どちらか

パンクへの備えは、車によって大きく2つに分かれます。同じメーカーの車でも、車種や年式、グレードによって違うことがあります。前に乗っていた車と同じだと思い込まないでください。

スペアタイヤ応急修理キット
中身予備のタイヤ(多くは細い応急用)パンクをふさぐ液と、空気を入れる小型の機械
対応できるパンクタイヤごと替えるので、傷の場所を問わない接地面の小さな穴だけ
作業ジャッキで持ち上げ、タイヤを交換する液を入れて、空気を入れる
力と時間必要比較的少ない
使ったあと元のタイヤを修理か交換タイヤの交換が必要になることが多い

最近の車は、軽くするためや荷室を広くするために、スペアタイヤを積まず、修理キットだけを載せていることが多くなっています。

自分の車がどちらなのかは、荷室の床の下を開けると分かります。パンクしてから初めて開けるのではなく、晴れた日に一度見ておいてください。中身がそろっているか、修理キットの期限が切れていないかも、そのときに確かめられます。

応急修理キットで直せるパンク、直せないパンク

修理キットは、タイヤの内側に液を入れ、空気を入れて回すことで、小さな穴を内側からふさぐ仕組みです。

状態修理キットで
接地面に、釘などで開いた小さな穴対応できることが多い
タイヤの側面の傷や裂け対応できない
大きな穴、長い切り傷対応できない
タイヤがホイールから外れかけている対応できない
空気が抜けたまま長く走ってしまったタイヤの内側が傷んでいて、使えないことがある

とくに注意してほしいのが、タイヤの側面です。

側面は、走っている間ずっと大きくたわむ部分です。ここに傷があると、液でふさいでも保てません。縁石にこすった、段差に強く当てた、というあとの空気漏れは、側面の傷を疑ってください。その場合は、キットを使わず、スペアタイヤへの交換かロードサービスを考えます。

タイヤに釘が刺さっていても、その場で抜かないほうがよい場合があります。刺さっている釘が、穴をふさいでいることがあるためです。キットの説明書に、釘の扱いが書かれています。それに従ってください。

キットを使ったあとに守ること

  • 説明書に書かれた速度と距離を守る。修理キットで直したタイヤは、あくまで仮の状態です
  • しばらく走ったら、空気圧を確かめ直す。多くのキットで、この手順が案内されています
  • できるだけ早く、タイヤの店や整備工場で見てもらう。液を使ったことを伝えてください
  • 使ったキットの補充を忘れない。次のパンクで困ります

液を入れたタイヤは、修理ができず、交換になることが少なくありません。ホイールの内側の掃除や、空気圧を測るセンサーの点検が必要になることもあります。キットは「その場を切り抜けて、店まで走るための道具」だと考えてください。

スペアタイヤに交換する場合

スペアタイヤを積んでいる車なら、パンクしたタイヤを外して付け替えます。

作業の流れそのものは、季節のタイヤ交換と同じです。手順と、そろえておきたい工具はタイヤ交換に必要な工具にまとめました。ただし、パンクのときは自宅の駐車場ではなく、道路のそばで作業することになります。条件が悪いぶん、次の点に気をつけてください。

  • 傾いた場所、やわらかい地面では持ち上げない。ジャッキが倒れます
  • パンクしたタイヤと対角の位置のタイヤに、輪止めをする。輪止めがなければ、石や木片で代わりにします
  • ジャッキで持ち上げた車の下に、体を入れない。
  • 同乗者は車から降ろし、安全な場所で待ってもらう。

ジャッキで支えただけの車は、少しのきっかけで落ちます。車の下にもぐる作業をするなら、別に支えが要ります。この点はリジッドラック(ウマ)の選び方で詳しく書きました。

応急用タイヤの決まり

多くの車に積まれているスペアタイヤは、普通のタイヤより細く、軽い応急用です。

  • 出せる速度の上限が決められています。タイヤや車に表示があります
  • 空気圧の指定が、普通のタイヤより高いことが多いです
  • 長く使い続けるためのタイヤではありません。早めに元のタイヤを直すか、交換します

そして見落とされがちなのが、積みっぱなしのスペアタイヤの空気です。何年も使わずにいると、空気は少しずつ抜けていきます。いざ付け替えたら、スペアタイヤも空気が足りなかった。これでは役に立ちません。ふだんの空気圧の点検のとき、スペアタイヤも一緒に見てください。

付け替えたあとのナットの締め方は、トルクレンチの選び方で書いたとおりです。道路のそばでトルクレンチがなくても、できる限り均等に締め、店に着いたら締め付けを確かめてもらってください。

車に積んでおきたいもの

もの役割
停止表示器材(三角表示板)後ろの車に知らせる。高速道路で止まるときに必要
発炎筒夜間や見通しの悪い場所で知らせる。使用期限を確かめる
懐中電灯やヘッドライト夜の作業。両手が空くヘッドライトが便利
軍手タイヤやホイールの汚れと熱から手を守る
空気圧計修理後やスペアタイヤの空気を確かめる
輪止めジャッキで持ち上げるときに車が動かないように
反射材の付いた上着夜間に車の外へ出るとき、自分の姿を見せる
雨具雨の中で待つとき、作業するとき

このうち上の2つは、パンクに限らず、故障で止まったときにも使うものです。冬の立ち往生に備える品は冬の車の備えに、バッテリー上がりのときの道具はバッテリー上がりの対処にまとめました。まとめて一つの袋に入れておくと、いざというときに探さずに済みます。

外から穴に差し込む修理道具について

カー用品店などでは、タイヤの外側から穴に栓を差し込んでふさぐ道具も売られています。

ただ、家庭で使うことは、私はおすすめしていません。

  • タイヤの内側の傷みが、外からは分からない。空気が抜けたまま走ったタイヤは、内側がこすれて傷んでいることがあります
  • 穴の角度や大きさによって、ふさぎきれない。
  • ふさいだように見えて、走っているうちに漏れ出すことがあります

タイヤは、車の重さと人の命を、手のひらほどの面積で路面に伝えている部品です。直してよいかどうかの判断そのものを、タイヤを外して内側まで見られる店に任せるほうが確実です。

パンクを減らすために

パンクは、運が悪ければ誰にでも起きます。ただ、日ごろの点検で起きにくくすることはできますし、起きたときの被害を小さくもできます。

  • 月に一度、空気圧を確かめる。空気が足りないタイヤは、側面が大きくたわみ、傷みやすくなります
  • 溝の深さと、表面のひび割れを見る。
  • 縁石に寄せすぎない。側面をこすった傷は、あとから空気漏れの原因になります
  • 工事現場の近くの道路では、落ちている釘やねじに気をつける。
  • 荷物を積みすぎない。

空気圧は、ガソリンスタンドの空気入れで測れます。指定の値は、運転席のドアを開けたところのラベルに書かれていることが多いので、一度見ておいてください。自分でできる点検の範囲はクルマの自分でできる整備にまとめています。

夜や雨の中でパンクしたら

明るい昼間の平らな駐車場でパンクするとは限りません。むしろ、困るのは暗い夜道や、雨の降る日です。

  • 車の外に出る前に、後ろから来る車を確かめる。ドアを開けた瞬間が危険です
  • 反射材の付いた上着を着るか、明るい色の服で外に出る。夜の路肩で、黒っぽい服の人は運転席からほとんど見えません
  • ライトは両手が空くヘッドライトを使う。懐中電灯を口にくわえたり、脇に挟んだりしての作業は、手元が狂います
  • 雨の中では、ジャッキの足元が滑りやすくなる。少しでも不安なら、作業をあきらめてロードサービスを待ちます

視界が悪い条件では、作業の手際より自分の姿を周りに見せることが優先です。発炎筒は、夜間や雨の中でこそ役に立ちます。

そして、ひとりで判断に迷ったら、作業しない側を選んでください。待つ時間はかかっても、けがをする心配はありません。タイヤは明日直せます。

パンクのときに迷うこと

Q. 空気が少しずつ減るだけです。すぐ対処が必要ですか

A. できるだけ早めに店で見てもらってください。

ゆっくり空気が抜けるパンクは、気づかないまま走り続けやすいものです。空気の足りない状態で走れば、タイヤの側面や内側が傷み、修理できたはずのタイヤが交換になることがあります。空気を足してごまかし続けないでください。

Q. ロードサービスを呼ぶべきか迷います

A. 次のどれかに当てはまるなら、呼んでください。

  • 高速道路や、交通量の多い道路で止まった
  • 夜間、雨の中、見通しの悪い場所
  • タイヤの側面が傷んでいる
  • 工具の使い方に自信がない

自動車保険や、クレジットカードに付いている場合もあります。自分がどのサービスを使えるかを、連絡先と一緒に控えておくと、いざというとき迷いません。

Q. パンクしにくいタイヤはありますか

A. 空気が抜けても一定の距離を走れるランフラットタイヤがあります。

ただし、使える車は限られ、空気が抜けたときに走れる速度と距離にも決まりがあります。パンクしなくなるタイヤではなく、安全な場所まで移動する余裕を持たせるタイヤだと考えてください。

Q. 修理キットにも期限がありますか

A. あります。パンクをふさぐ液は、時間がたつと固まったり、性能が落ちたりします。

キットの本体や液の容器に、使用期限が書かれています。車を買ってから一度も開けていない場合、期限が切れていることは珍しくありません。車検や定期点検のときに、あわせて見てもらうと忘れにくくなります。期限が切れていたら、車種に合うものに交換してください。

おぼえておくこと

  • 修理より先に、安全な場所に止まる。高速道路では作業しない。
  • 停止表示器材と発炎筒を積んでおき、期限を確かめる
  • 自分の車がスペアタイヤか修理キットか、今のうちに見ておく。
  • 修理キットは側面の傷や大きな穴には使えない
  • 応急の処置のあとは速度と距離を守り、早めに店へ
  • スペアタイヤの空気圧も、ふだんから点検する。

パンクへの備えは、使わずに何年も過ぎていくものです。だからこそ、荷室の床の下に何が入っているかを知らないまま、という方が少なくありません。

次に給油したついでに、一度だけ荷室を開けてみてください。そこに何があるか分かっているだけで、道路のそばで立ち尽くす時間はずいぶん短くなります。

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この記事を書いた人

工具逆引き堂の運営者。乙種第4類危険物取扱者(令和3年8月取得)、第二種高圧ガス販売主任者(令和8年5月取得)。ガソリン・灯油などの燃料やカセットボンベの扱いを中心に、作業ごとに必要な工具と、法令・安全上の注意点を整理しています。資格の詳細と記事の守備範囲は運営者情報をご覧ください。

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