薪ストーブや焚き火のために、丸太を割って薪を作る。ていねいに割った薪がきれいに積み上がっていくのは、気持ちのよい作業です。けれど薪割りは、重い刃物を、足元に向かって振り下ろす作業でもあります。道具選びと、振り方と、立ち位置を知らないまま始めると、斧が思わぬ方向へ跳ねます。
始める前に押さえること
- 薪割りには、木を切る斧ではなく、割るための斧を選びます。刃の形が違います。
- 割る木は、地面ではなく台の上に置きます。斧が地面や足に向かわないようにするためです。
- 足を開き、振り下ろした斧が足に届かない立ち位置をとります。
- 周りに人がいないこと、とくに子どもが近づかないことをよく確かめてから振ります。
切る斧と、割る斧は違います
「斧」とひとくくりにされがちですが、木を切るための斧と、割るための斧は、刃の形が違います。
| 道具 | 刃の形 | 向いている作業 |
|---|---|---|
| 伐採用の斧 | 刃が薄く、鋭い | 木を倒す、枝を落とす。薪割りには向きません |
| 薪割り用の斧 | 刃の後ろが厚く、くさびの形 | 丸太を繊維に沿って割る |
| 重い薪割り斧(大きなもの) | 頭が重く、くさびの形 | 太い丸太や、割りにくい木 |
| 手斧(ハンドアックス) | 小ぶり | 割った薪をさらに細くする、焚きつけを作る |
| くさびとハンマー | くさびを打ち込む | 斧だけでは割れない、節の多い太い木 |
薄い刃の斧で丸太を割ろうとすると、刃が木に食い込んだまま抜けなくなります。割るための斧は、刃の後ろが厚くなっていて、打ち込んだ勢いで木を左右に押し広げる形をしています。
そして、自分の体に合った重さと長さを選ぶことが大切です。重すぎる斧は、振り下ろす途中で狙いがぶれます。長すぎる柄は、足元に近い位置で扱いにくくなります。店で実際に持ち、無理なく持ち上げて、まっすぐ振り下ろせるかを確かめてください。
身を守る装備
| 装備 | 役割 | 優先度 |
|---|---|---|
| 保護めがね | 割れた木の破片が、顔に向かって飛んでくる | 必須 |
| 厚手の手袋 | 木のささくれ、とげから手を守る | 必須 |
| つま先を守る安全靴 | 落ちた薪や、跳ねた斧から足を守る | 高い |
| 長ズボン | 飛んだ破片から脚を守る | 高い |
| すね当て | 斧が脚の方へ流れたときの備え | 中 |
手袋については、ひとつ注意があります。表面が滑りやすい手袋は、振っている途中で柄が手から抜けやすくなります。柄をしっかり握れる、手のひらに滑り止めのある手袋を選んでください。
割る前に、場所を整える
薪割りの事故は、振り方より先に、場所の準備で決まることが多くあります。
- 平らで、足元が滑らない場所を選ぶ。濡れた地面、落ち葉の上、凍った地面は避けます
- 割る台(台木)を置く。太く短い丸太を、平らに立てて使います
- 振りかぶる空間を確かめる。頭上の木の枝、電線、物干しに斧が当たらないか見ます
- 周り数メートルに、人やペットがいないようにする。割れた木は、思ったより遠くへ飛びます
- 割った薪を置く場所を、足元から離して決めておく。足元に散らかると、つまずきます
2番の台木は、大事な役割を持っています。ぐらつかないよう、底が平らで、割る丸太より太いものを選んでください。
地面に直接置いた丸太を割ると、割れて抜けた斧は、そのまま地面か、自分の足に向かいます。台の上に置けば、抜けた斧は台木に当たって止まります。台木の高さは、膝のあたりが扱いやすいとされています。低すぎると斧の先が足元へ流れやすく、高すぎると力が入りません。
足に向かって振り下ろさない
斧は、割り損ねたとき、木に当たって跳ね返ったとき、割れて抜けたときに、狙いと違う方向へ流れます。その先に自分の足があれば、けがにつながります。いちばん起きやすいのは、木の端に斧が当たって横へ滑る、あるいは割れた勢いで斧が振り抜けて、手前に来る場合です。足は肩幅より広く開き、振り下ろした斧の軌道が、両足の間の地面に向かう立ち位置をとってください。台木より手前に足を出さないこと、片足を前に踏み出して振らないことも大切です。そして、丸太を片手で押さえたまま振らないでください。押さえる手は、斧の通り道の上にあります。
割り方の手順
- 丸太を、台木の中央にまっすぐ立てる。傾いていると、斧が当たった瞬間に倒れます
- 割れ目(ひび)があれば、その線を狙う。乾いた丸太の端には、放射状のひびが入っていることがあります
- 節を避けて、木目に沿った位置を狙う。節のある場所は、割れにくく、斧が跳ねやすくなります
- 両足を開き、斧の頭を狙う位置に一度そっと当てて、距離を合わせる。
- 両手で柄を持ち、まっすぐ持ち上げて、まっすぐ振り下ろす。
- 割れなければ、無理に続けて打たず、一度斧を抜いて位置を確かめる。
5番は、力より、まっすぐさが大事です。腕だけで振り回すと、斧の軌道が弧を描いて、狙いから外れます。斧の重さを使って、頭の上から台木へ向かって、まっすぐ落とす感覚で振ってください。
太い丸太は、いきなり真ん中を狙わず、端から少しずつ割っていく方法もあります。外側から薄く割り取っていけば、一度に大きな力が要りません。
斧が木に食い込んで抜けないとき
割りきれずに、斧が丸太に刺さったまま止まることがあります。慣れないうちは何度も起きることなので、慌てないでください。無理に外そうとして手元が狂うほうが危険です。一度、斧から手を離して、どう外すかを考えてから動きます。
- 斧が刺さった丸太ごと持ち上げて、台木に叩きつける方法は、慣れないうちは避ける。丸太が外れて飛ぶことがあります
- 柄をこじって抜こうとしない。柄が折れたり、頭が抜けたりします
- くさびを使って割れ目を広げ、斧を外す。
くさびとは、斧の割れ目の横に打ち込み、ハンマーで少しずつ叩いて木を割り広げる道具です。ハンマーでくさびを打つとき、くさびの頭が欠けて飛ぶことがあります。保護めがねは必ず着けてください。
割りやすい木、割りにくい木
| 状態 | 割りやすさ |
|---|---|
| 節の少ない、まっすぐな木 | 割りやすい |
| 切り口にひびが入っている木 | ひびに沿って割れやすい |
| 節の多い木、枝の付け根 | 割りにくく、斧が跳ねやすい |
| 木目がねじれている木 | 割れ方が読みにくい |
| 凍っている木 | 種類によっては割りやすくなることもあるが、破片が飛びやすい |
割りにくい木を、斧だけで何度も何度も叩き続けるのは、疲れるうえに事故のもとです。節の多い部分は、くさびを使うか、無理に割らずに別の使い道を考えるほうが安全です。
丸太そのものを短く切りそろえる作業には、のこぎりやチェーンソーを使います。チェーンソーの扱いと装備はチェーンソーに必要な道具一式にまとめました。庭木の枝を切った程度の太さなら、庭木の剪定に必要な道具で書いたのこぎりで足ります。
斧の手入れと、柄の点検
薪割りの斧は、使う前に柄と頭の状態を必ず確かめてください。とくに、長い間しまっていた斧や、人から譲り受けた斧は、見た目より傷んでいることがあります。
- 頭が、柄にしっかり固定されているか。振ったときに頭が抜けて飛べば、大きな事故になります
- 柄に、ひび割れや傷がないか。傷んだ柄は、振り下ろした衝撃で折れます
- 刃が大きく欠けていないか。
- 柄が乾きすぎて、頭との間にすき間ができていないか。
ひとつでも気になる点があれば、その日は使わないでください。柄の交換や頭の締め直しは、製品の案内に従うか、購入した店に相談します。
使い終わったら、刃に付いた木くずや樹液を拭き、錆びないよう薄く油を塗ってしまいます。刃にはカバーを付け、子どもの手の届かない場所へ。雨の当たる屋外に置きっぱなしにすると、柄が傷み、頭も緩みやすくなります。
電動の薪割り機という選択
量が多い場合や、体への負担を減らしたい場合は、電動やエンジン式の薪割り機を使う方法があります。丸太を置き、機械の力でくさびを押し込んで割ります。
斧を振らずに済むぶん、腰や肩の負担は大きく減ります。ただし、機械ならではの危険があります。
- 丸太を押さえる手を、くさびの近くに置かない。挟まれると、機械は止まりません
- 両手で操作する仕組みを、無効にしない。片手を空けるための細工は、挟まれ事故の原因です
- ひとりで操作する。丸太を押さえる人と、操作する人を分けると、息が合わずに事故が起きます
- エンジン式は、屋内や車庫で動かさない。排気ガスがこもります
エンジン式の機械の燃料や、動かないときの確かめ方は、エンジンがかからない時の直し方や屋外エンジン機械の整備工具と共通する部分があります。
体を痛めないための段取り
薪割りのけがは、斧による切り傷だけではありません。腰や肩、手首を痛めることも多い作業です。
- 始める前に、体を軽くほぐす。寒い日ほど、いきなり重い斧を振ると筋を痛めます
- 丸太を持ち上げるときは、腰を落として脚の力で持ち上げる。前かがみのまま持ち上げると、腰に負担が集中します
- 重すぎる丸太は、転がして台木の近くまで運ぶ。無理に抱えないでください
- 短い時間で区切り、こまめに休む。疲れると、斧を持ち上げる高さも狙いも乱れます
- 汗をかいたら、手と柄の握りを拭く。濡れた手は柄が滑ります
重い物の持ち方は、家具の移動・模様替えの道具で書いた考え方と同じです。腕ではなく、脚と体の重さを使うことを意識してください。
時間帯と天気
薪割りは、明るく、足元のよく見える時間帯に行ってください。夕方の薄暗い中では、台木の上の丸太と、斧の刃先の位置が見えにくくなります。
雨の日や雨上がりは、柄も地面も滑ります。風の強い日は、割れた木の破片が思わぬ方向へ飛びます。条件の悪い日は、無理に進めないことです。薪は乾かすのに時間がかかるので、急いで割っても、すぐに使えるわけではありません。
近くに住宅がある場所では、割る音が響く時間帯にも気を配ってください。早朝や夜の作業は、周りの迷惑になることがあります。
薪割りについての疑問
Q. 割った薪は、すぐに燃やせますか
A. 切ったばかりの木は水分が多く、そのままでは燃えにくく、煙が多く出ます。火もなかなか大きくなりません。
風通しのよい場所で、雨が当たらないように積み、しっかり乾かしてから使ってください。乾かす期間は、木の種類や太さ、置く場所によって大きく変わります。湿った薪を燃やし続けると、煙突や焚き火の道具に汚れがたまりやすくなります。
Q. 手斧だけで薪割りはできますか
A. 細い薪をさらに割る、焚きつけを作るといった軽い作業には、よく向いています。
ただし、太い丸太を手斧で割ろうとすると、何度も叩くことになり、手が木に近い位置で作業するぶん危険が増えます。太いものは、大きな薪割り斧か、くさびを使ってください。手斧で細く割るときも、木を手で持ったまま割らないことは同じです。
Q. 積んだ薪の置き場所に気をつけることは
A. 家の壁にぴったり付けて高く積むと、湿気がこもり、虫の住みかにもなります。
壁から少し離し、崩れない高さにとどめてください。そして、燃えやすい物のそばや、ストーブ・焚き火の近くに大量に置かないことです。灯油やガソリンの容器と同じ場所にまとめて置くのも避けます。燃料の保管の考え方は灯油の運搬と保管にまとめています。
Q. 子どもに手伝ってもらってもいいですか
A. 斧を振る作業は、子どもにはさせないでください。大人がそばで見ていても同じです。
子どもが周りにいるだけでも、割れた木の破片が飛んでいく先に入ってしまうことがあります。手伝ってもらうなら、斧を振っていない時間に、割り終わった薪を離れた場所へ運んでもらうくらいにとどめます。そのときも、作業を止めてから近づいてもらうと決めておいてください。振りかぶっている最中に、後ろから声をかけられたり、近づかれたりするのが、いちばん危ない場面です。
薪割りで守ること
- 道具は割るための斧を、自分の体に合う重さで選ぶ。
- 保護めがねと、滑りにくい手袋を必ず着ける。
- 丸太は膝の高さの台木の上に立てる。地面で割らない。
- 足を開き、斧の軌道が足に向かわない位置で、まっすぐ振り下ろす。
- 丸太を手で押さえたまま振らない。割れにくい木はくさびを使う。
- 使う前に柄と頭の固定を確かめ、傷んでいれば使わない。
薪割りは、慣れてくると一定のリズムで進められるようになります。そのリズムが心地よく、つい「あと1本」と続けたくなる作業です。
けれど、疲れてくると斧を持ち上げる高さが下がり、振り下ろす軌道がぶれてきます。狙いが外れ始めたら、それが今日の終わりの合図です。残りの丸太は、明日も同じ場所で待っていてくれます。
この作業に近い話として、チェーンソーに必要な道具一式もまとめています。
発電機の選び方、高圧洗浄機の選び方や、草刈機に必要な道具一式も、あわせて確認しておくと安心です。
