おさえておきたいこと
- 詰まった雪を、手や足で取り除かないでください。除雪機の事故で最も重いけがにつながる行動です。
- 手を離すと止まる安全装置を、ひもなどで固定しないでください。
- 選ぶときは、家の前に積もる雪の量と質、除雪する広さから考えます。
- シーズンの前に試運転、終わったら燃料を抜いて保管します。
便利な機械ほど、事故は重くなります
スコップで何時間もかかる雪かきが、除雪機なら短い時間で終わります。雪の多い地域で暮らす方にとって、体の負担を大きく減らしてくれる機械です。
その一方で、除雪機は回転する刃で雪をかき込み、勢いよく投げ出す機械です。雪をかき込む力は、人の手足や衣服も同じようにかき込みます。
除雪機による事故は、毎年のように起きていて、公的機関からも冬が来るたびに注意が呼びかけられています。そして、その多くは機械の故障ではなく、使い方が原因です。
この記事では、選び方と同じくらい、事故を起こさない使い方に紙幅を割きます。
詰まった雪は、エンジンを止めてから棒で
雪を投げ出す筒や、雪をかき込む部分に雪が詰まったとき、手や足で取り除かないでください。回転が止まって見えても、詰まった雪を取り除いた瞬間に、押さえつけられていた刃が勢いよく回ることがあります。指や手首が巻き込まれる事故は、この場面で起きています。必ず、エンジンを止め、回転する部分が完全に止まったことを確かめてから、付属の雪かき棒などの道具で取り除いてください。棒が付いていない機種や、なくしてしまった場合は、手を入れずに済む長さの道具を用意しておきます。「少しだけだから」「急いでいるから」という判断が、取り返しのつかないけがにつながります。
雪が詰まりやすいのは、水分を多く含んだ重い雪のときです。気温が高めの日や、雨まじりの雪の日には、詰まる前提で作業の計画を立ててください。
詰まりそのものを減らす工夫もあります。
- 一度にかき込む量を減らす。除雪幅いっぱいを使わず、少し重ねながら進みます
- 進む速さを落とす。機械が雪を投げ出す速さより速く押し込まないようにします
- 湿った雪は、降り積もる前にこまめに除雪する。固まってからでは、機械の負担も増えます
安全装置を、無効にしないでください
多くの除雪機には、レバーから手を離すと、刃の回転や走行が止まる仕組みが付いています。
このレバーは、握り続けていないといけないので、長く作業すると手が疲れます。そこで、レバーをひもやテープで縛り、握らなくても動くようにしてしまう人がいます。
これは、絶対にやめてください。
この装置が役に立つのは、転んだとき、機械に引きずられそうになったとき、何かが巻き込まれたときです。とっさに手を離せば止まる。それが、使う人の命を守る最後の仕組みです。縛ってしまえば、転んだあとも機械は動き続けます。
手が疲れるなら、休憩をはさむことで対応してください。長時間の作業そのものが、判断を鈍らせる原因にもなります。寒さで指先がかじかむと、とっさにレバーから手を離す動きも遅れます。休憩の間に温かい飲み物をとり、手を温めてから作業に戻ってください。
後ろに下がるときが、いちばん危ない
除雪機の事故には、巻き込まれるものと並んで、後退しているときに転び、機械の下敷きになるものがあります。
- 後ろを振り返って、足元と障害物を確かめてから下がる。
- 壁や塀、車の前で後退しない。挟まれます
- 凍った路面や、段差のある場所では、とくに慎重に。
- 下がるときは、走行の速さをいちばん遅くする。
足元の雪は、踏み固められて滑りやすくなっています。滑りにくい底の長靴を履いてください。
種類と選び方
| 種類 | 特徴 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 電動(小型) | 軽く、音が静か。燃料の管理が要らない | 積雪が少なめで、除雪する範囲が狭い |
| エンジン式・小型 | 電源がない場所でも使える | 一般的な住宅の玄関先や車庫の前 |
| エンジン式・自走式 | 自分で走るので、押す力が要らない。重い | 積雪が多い地域、広い敷地 |
機種を選ぶときは、次の順番で考えてください。
- ひと晩に積もる雪の深さ:機械が一度にかき込める高さに見合っているか
- 雪の質:乾いた軽い雪か、湿った重い雪か。重い雪ほど力のある機種が要ります
- 除雪する広さ:除雪幅が狭いと、往復の回数が増えます
- 雪を飛ばす先があるか:自分の敷地の中に、雪を置ける場所が必要です
- しまう場所と、自分で扱える重さか
このうち4番は、買ってから気づく方が多い点です。
除雪機は、雪を遠くへ飛ばします。飛ばす先が隣の家の敷地や、道路になってはいけません。道路に雪を出すことは、多くの自治体が禁止や自粛を呼びかけています。住宅が密集した場所では、飛ばす先が確保できず、思ったほど使えないことがあります。
そして5番。力のある機種ほど重くなります。雪の上で、自分が方向を変えられる重さかを考えてください。販売店で実際に動かしてみるのが確実です。
使う前に確かめること
- 作業する範囲に、雪に埋もれた物がないか。石、れんが、新聞、ホース、子どものおもちゃ。かき込むと機械を壊し、飛ばせば凶器になります
- 人やペットが近くにいないか。とくに小さな子どもは、機械に近づきたがります
- 雪を飛ばす方向に、窓や車、人がいないか。
- 屋根から雪が落ちてこないか。軒下での作業は避けます
- 巻き込まれやすい服装をしていないか。長いマフラーや、ひもの垂れた上着は脱ぎます
雪に埋もれた物は、秋のうちに片付けておくのがいちばん確実です。雪が積もってからでは、どこに何があるか分かりません。車止めの縁石や、花壇の囲いのように動かせない物は、目印の棒を立てておきます。
シャーボルトの予備を用意する
多くのエンジン式の除雪機には、シャーボルトという部品が使われています。
雪をかき込む刃が、石や固い氷を噛んだとき、わざと先に折れて、機械の重要な部分を守るためのボルトです。折れると、刃が回らなくなります。
ここで大事なのは、折れたシャーボルトの代わりに、普通のボルトを使わないことです。普通のボルトは折れにくいので、次に固いものを噛んだとき、代わりに高価な部品が壊れます。
機種に合った予備を、シーズン前に手元へ用意しておいてください。交換するときも、エンジンを止めてから行います。
作業に向いた時間帯と天気
除雪機は、いつ動かしてもよい機械ではありません。時間帯と天気によって、危険の種類が変わります。
| 状況 | 気をつけること |
|---|---|
| 早朝や夜 | エンジンの音は、静かな住宅地では想像以上に響きます。暗いと足元も雪の中の物も見えません。ライトを点け、近所への配慮も考えます |
| 吹雪の中 | 視界が悪く、近づく人や車に気づけません。飛ばした雪が風で戻ってきます。弱まるのを待つほうが安全です |
| 晴れて気温が上がった日 | 屋根からの落雪が起きやすくなります。軒下に機械を入れないでください |
| 雨まじりの雪 | 雪が重く、詰まりやすくなります。一度にかき込む量を減らします |
落雪は、音もなく一度に落ちてきます。除雪機を操作している間は、エンジンの音で屋根の気配にも気づけません。家の周りを除雪するときは、軒から離れた場所から始め、軒下は最後に、屋根の雪の状態を見てからにしてください。
服装にも、この機械ならではの注意があります。顔の前に氷のかけらが跳ねてくることがあるので、保護めがねがあると安心です。手袋は、指先の感覚が分かる厚さのものを選び、垂れたひもの付いたものは避けてください。
車庫の中でエンジンをかけない
寒い朝、車庫や物置の中でエンジンをかけて、暖まってから外に出す。そうしたくなる気持ちは分かります。
ですが、エンジンの排気には一酸化炭素が含まれます。閉じた空間では、短い時間で危険な濃度になります。色も臭いもないので、気づけません。
エンジンをかけるのは、外に出してからにしてください。一酸化炭素の怖さは、暖房器具の換気と一酸化炭素で詳しく書きました。雪に埋もれた車の中で同じことが起きる話は、冬の車の備えにもあります。
燃料の扱い
エンジン式の除雪機の多くは、ガソリンを使います。
給油のときに守ってほしいことがあります。
- エンジンを止め、冷めてから給油する。熱い部分にガソリンがかかれば燃えます
- 屋外の、風通しのよい場所で給油する。
- 給油の前に、体の静電気を逃がす。冬は乾燥していて、静電気が起きやすい季節です
- あふれさせない。こぼれたガソリンは、すぐに拭き取ります
- 携行缶のふたは、ゆっくり開ける。内圧で噴き出すことがあります
ガソリンは、必ず決められた携行缶に入れてください。灯油用のポリタンクには入れられません。選び方はガソリン携行缶の選び方に、ふたを開けるときの注意はガソリン携行缶の噴き出し事故にまとめました。
そして、ガソリンは長く置くと劣化します。シーズンの初めにまとめて買いすぎないでください。劣化したガソリンは、エンジンがかからない原因になります。かからないときの確かめ方は、エンジンがかからない時の直し方で段階ごとに書きました。
シーズンの前と、終わったあと
雪が降る前に
除雪機が必要になるのは、大雪の朝です。その朝にエンジンがかからないと、どうにもなりません。雪が降る前に、一度動かしておいてください。
- エンジンオイルの量と汚れ
- 燃料が古くなっていないか
- 刃やボルトに、ゆるみや割れがないか
- 安全装置が、手を離すと確実に止まるか
- ライトやスイッチが働くか
とくに安全装置の確認は、毎シーズン必ず行ってください。止まるはずのときに止まらない状態で、雪の中に出ていくことになります。
春にしまうとき
除雪機は、ほかの屋外の機械と違い、春から秋まで長く眠る機械です。この間の保管のしかたで、次の冬の調子が決まります。
- 燃料を抜く。タンクだけでなく、取扱説明書の手順に従って、燃料の通り道からも抜きます
- 雪や水気を落として、乾かす。残った水分が錆の原因になります
- 雨の当たらない場所に置く。カバーをかけます
- 取扱説明書に沿って、バッテリーの扱いを決める。
燃料を抜いて保管する理由と手順の考え方は、草刈機などの冬の保管と共通します。屋外機械の冬季保管を参考にしてください。季節は逆でも、長く使わない機械に燃料を残さない、という点は同じです。
ひとりで作業するときの備え
雪かきは、早朝に、ひとりで行うことが多い作業です。
もし機械の下敷きになったり、巻き込まれたりしても、周りに誰もいなければ助けを呼べません。
- 作業を始める前に、家族に声をかけておく。
- 携帯電話を、体に身につけておく。
- 終わる時間の目安を伝えておく。戻らなければ、家族が見に来られます
屋根の雪下ろしも、同じ考え方が当てはまります。高い場所での作業は、脚立とはしごの選び方で書いた転落の危険に、雪の重さと滑りやすさが加わります。
購入前によく出る疑問
Q. 電動の小さな除雪機で足りますか
A. 積雪が少なく、除雪する範囲が玄関先程度なら、足りることがあります。
ただし、重く湿った雪や、ひと晩に深く積もる雪には力不足になりがちです。住んでいる地域で、例年どのくらいの雪が、どんな質で降るかを基準に考えてください。
電源コードの付いた機種は、コードを刃に巻き込まないよう、取り回しに注意が要ります。
Q. 中古の除雪機でも大丈夫ですか
A. 状態をきちんと確かめられるなら、選択肢になります。
とくに見てほしいのは、安全装置が正しく働くかです。前の持ち主が縛って使っていて、仕組みが傷んでいることがあります。整備した販売店から買う、あるいは購入後に点検を受けると安心です。
Q. 雪の少ない年も、点検は必要ですか
A. 必要です。
使わなかった年ほど、燃料やゴム部品は劣化しています。雪が少なかった翌年に、突然の大雪が来ることもあります。使った回数ではなく、季節ごとに点検してください。
おさえておくこと
- 詰まった雪は、エンジンを止め、回転が止まってから棒で。手や足は入れない。
- 安全装置を縛らない。疲れたら休む。
- 後退するときは、後ろを見て、ゆっくり。
- 雪を飛ばす先を、買う前に考える。
- 車庫の中でエンジンをかけない。
- 雪の前に試運転、春には燃料を抜いて保管。
除雪機は、雪国の暮らしを大きく楽にしてくれる機械です。
ただ、便利さに慣れるほど、安全のための手間は省かれていきます。止めてから棒で取る。手を離せば止まる仕組みを残しておく。どちらも数秒の手間です。その数秒が、毎年の事故の分かれ目になっています。
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