この記事の要点
- バッテリー端子の白い粉は、端子の金属が腐食したものです。 放っておくと、電気の通りが悪くなり、エンジンがかかりにくくなります。
- 落とすには、重曹を溶かしたぬるま湯と、ブラシを使います。素手では触らないでください。
- 外すのはマイナス端子から。 付けるのはプラス端子からです。順番を間違えると、ショートの危険があります。
- 掃除したあとは、端子を保護する処理をします。そうしないと、また粉が出ます。
白い粉の正体
エンジンルームを開けて、バッテリーの端子に白や青緑の粉がふいていた。そんな経験のある人は多いと思います。
この粉は、端子の金属が、バッテリーの内部から出る微量のガスや液と反応してできた、腐食の生成物です。バッテリーの中には、希硫酸という酸性の液が入っています。ごく少量が端子のまわりに出ると、鉛や銅と反応して粉になります。
色には、おおよその傾向があります。
- 白っぽい粉: 鉛の端子が腐食したものです。多くはこちらです。
- 青緑色の粉: 銅の部分が腐食したものです。ケーブルの端のほうに出ます。
どちらも、電気を通しにくい物質です。端子とケーブルのあいだに挟まると、電気の流れを邪魔します。
粉が出ると、何が困るのか
粉が出ていても、すぐに車が止まるわけではありません。ただ、次のような不調につながります。
- エンジンをかけるときの音が、弱々しくなる。
- ライトが暗い、または、ちらつく。
- バッテリーを交換したばかりなのに、すぐ上がる。
- 充電しても、電圧が上がりにくい。
バッテリー自体は元気なのに、端子の腐食で電気が届かない。この状態は、実は珍しくありません。バッテリーを交換する前に、端子を見てください。粉を落とすだけで直るなら、交換の出費を避けられます。
バッテリーが上がる原因の全体は、バッテリーがすぐ上がる原因にまとめています。
作業の前に、守ってほしいこと
粉は、酸性の物質を含んでいます。素手で触らないでください。 皮膚につくと、荒れることがあります。目に入ると、危険です。
- 保護メガネをかけます。
- ゴム手袋または作業用手袋をします。
- 汚れてもよい服を着ます。袖口に付いた酸で、生地が傷みます。
- 作業は、風通しのよい場所でします。
もし粉や液が目に入ったら、すぐに大量の水で洗い流し、医療機関に相談してください。皮膚についたときも、水でよく洗います。
火気を近づけない
バッテリーからは、水素を含むガスが出ることがあります。火花や火気は厳禁です。タバコはもちろん、近くでの溶接や火を使う作業も避けてください。
必要な道具
特別な道具は要りません。ほとんどは、家にあるもので足ります。
- レンチ: 端子の締め付けナットに合うサイズのもの。多くは10ミリです。
- 重曹: 小さじ数杯ぶん。
- ぬるま湯と、使い捨ての容器。
- ワイヤーブラシや古い歯ブラシ: 端子の汚れを落とします。
- ウエス(古布): 水気を拭きます。
- 端子用のグリースや保護スプレー: 掃除のあとに塗ります。
ホームセンターやカー用品店には、端子専用のブラシもあります。丸い形のブラシで、端子とケーブルの内側を同時に磨けます。何度も掃除するなら、一つあると便利です。
掃除に使ってはいけないもの
手近なもので済ませたくなりますが、次のものは避けてください。
- 酸性の洗剤: すでに酸の粉が付いているところに酸を足しても、中和になりません。
- 糖分の入った飲料: 乾くとべたつき、ほこりを呼びます。後始末が大変になります。
- 金属製の硬いブラシで、強くこする: 鉛の端子は柔らかく、削れてしまいます。
- ドライバーなどの金属工具で、こそげ落とす: 工具の先がプラスと車体に触れると、火花が出ます。
力を入れずに、重曹水とブラシで、ゆっくり落としてください。
作業の前に、確認しておくこと
掃除のために端子を外すと、車によっては、設定がリセットされます。
- 時計、ラジオの局、ナビの設定。
- パワーウィンドウの自動動作の学習。
- アイドリングストップなど、電子制御の学習値。
メモリーバックアップという機器を使えば、外すあいだも電気を保てます。これを使わない場合は、事前に設定をメモしておいてください。
ハイブリッド車や、一部の輸入車は注意が必要です。 バッテリーを外す手順が、取扱説明書で決められていることがあります。手順に従わないと、不具合につながるおそれがあります。説明書を確認し、心配ならディーラーや整備工場に相談してください。
バッテリーの外し方と付け方の基本は、車のバッテリー交換の順番に書きました。
粉の落とし方
手順は次のとおりです。
- エンジンを止め、キーを抜きます。ライトなどもすべて切ります。
- マイナス端子のナットを緩め、ケーブルを外します。 外したケーブルは、端子に触れない位置にずらしておきます。
- 次に、プラス端子を同じように外します。
- 重曹を、ぬるま湯に溶かします。目安は、コップ1杯のぬるま湯に小さじ1杯ほどです。
- 粉が付いた端子とケーブルの端に、重曹水をかけます。泡が出るのは、酸が中和されている反応です。
- ブラシで、汚れをこすり落とします。
- 汚れが落ちたら、水を含ませたウエスで拭き、さらに乾いたウエスで水気をよく取ります。
- 端子とケーブルの金属面が、鈍い光を取り戻したことを確認します。
重曹水をかけすぎない
重曹水は、バッテリーの内部に入らないようにしてください。バッテリーの上面に、液を注入する口(補水口)がある場合は、キャップを閉めたまま作業します。
水が多すぎると、周辺の部品にかかります。必要最小限にとどめてください。
泡が止まったら
泡が出なくなったら、中和が終わったサインです。そのあと、きれいな水で軽く流し、水気を取ります。
ケーブルと、車体側のつなぎ目も見る
白い粉が出ているのは、端子だけとは限りません。
バッテリーのマイナス端子からのびるケーブルは、車体の金属部分につながっています。この車体側のつなぎ目(アース)が腐食しても、電気の通りが悪くなります。
- ケーブルの被覆が、ひび割れていないか。
- ケーブルの中の銅線が、緑色に変色していないか。
- 車体側のつなぎ目に、さびや粉がないか。
ケーブルが傷んでいたり、中の銅線が細くなっていたりする場合は、掃除では直りません。ケーブルの交換が必要です。整備工場に相談してください。
取り付けと、保護
きれいにしたら、元に戻します。順番は、プラスから先、マイナスはあとです。
- プラス端子に、ケーブルを取り付けて、ナットを締めます。
- マイナス端子に、ケーブルを取り付けて、ナットを締めます。
- ケーブルを手で軽く揺すって、動かないことを確認します。
- 端子の金属部分に、端子用のグリースか保護スプレーを薄く塗ります。
締めすぎない
ナットを強く締めすぎると、端子が変形したり、ケーブルが傷んだりします。手で揺すっても動かなくなったところで十分です。
保護を省かない
保護の処理をしないと、同じ場所に、また粉が出ます。グリースやスプレーは、空気や湿気から金属を守ります。
端子を直接触る場所なので、塗りすぎも禁物です。端子の接する面にグリースが厚く入ると、かえって電気の通りが悪くなることがあります。端子を締めてから、外側から薄く塗ってください。
作業のあとの確認
元に戻したら、次のことを確かめます。
- エンジンを始動して、スムーズにかかるか。
- ライトやワイパーが、正常に動くか。
- 時計やナビの設定が、消えていないか。必要なら入れ直します。
- パワーウィンドウの自動動作が、おかしくなっていないか。
車種によっては、窓を一度、全開から全閉まで動かす作業が必要な場合があります。取扱説明書に手順があれば、それに従ってください。
エンジンをかけたあとは、30分ほど走ると、電気が安定します。
使ったウエスと、重曹水の始末
作業のあとの片付けも、大切です。
- 使ったウエス: 酸を含んでいるので、洗って再利用せず、使い捨てにします。自治体の分別に従って出してください。
- 残った重曹水: 少量なら、たっぷりの水で薄めて流します。
- ブラシ: 水でよく洗い、乾かします。
作業の最後に、手をよく洗ってください。手袋をしていても、念のためです。
粉が出る原因と、予防
掃除しても、また粉が出る。そんなときは、原因を見直します。
- バッテリーの寿命が近い: 古くなると、内部から出るガスや液が増えます。
- 過充電: 発電機(オルタネーター)が、必要以上に充電している可能性があります。
- 端子の緩み: 振動で緩むと、そこから腐食が進みます。
- バッテリー本体のひび: 液がにじむ原因になります。
数か月たたないうちに、何度も粉がふくなら、バッテリーか充電系統に問題があるかもしれません。その場合は、整備工場で点検を受けてください。
寿命の見方は、車のバッテリーの寿命と交換時期で説明しています。
年に2回、見る習慣
予防には、点検の習慣が役立ちます。
- 夏の前と、冬の前に、端子のようすを見ます。
- 粉が少ないうちに、拭き取ります。
- ナットの緩みも、あわせて確かめます。
自分でやってよい範囲と、任せる目安
粉の状態によって、自分でやるか、任せるかを決められます。
自分で掃除してよい状態:
- 端子のまわりに、うっすらと粉がふいている程度。
- ブラシでこすれば、落ちる程度。
- バッテリー本体に、ひびやふくらみがない。
専門家に任せたほうがよい状態:
- 粉が盛り上がって、端子をすっかり覆っている。
- 液がべったりとにじみ、ケーブルまで濡れている。
- 焦げたような臭いや、卵が腐ったような臭いがする。
- ハイブリッド車や、手順が特殊な車に乗っている。
迷ったときは、後者に寄せて判断してください。点検だけなら、短時間で済みます。
交換を考える目安
端子の掃除は、あくまで症状への手当てです。次のような場合は、バッテリーそのものを交換する時期かもしれません。
- バッテリーの側面がふくらんでいる。
- 本体にひびが入って、液がにじんでいる。
- 掃除をしても、すぐにエンジンがかかりにくくなる。
- 使用年数が、3〜5年を超えている。
ふくらみやひびのあるバッテリーは、使い続けないでください。破損や液漏れの危険があります。
古いバッテリーは、家庭ごみには出せません。処分については、古いバッテリーの処分方法を参考にしてください。
久しぶりに乗る車の場合
何か月も動かしていなかった車は、バッテリーが弱り、端子も汚れがちです。乗る前に、端子の状態を見てください。
粉が出ていたら、先に掃除してからエンジンをかけます。長期間の保管のしかたは、車に数か月乗らないときの保管に書きました。
迷いやすい質問
Q. 水だけで洗い流してはいけませんか
水だけでも、粉は落ちます。ただ、酸が残るので、重曹で中和したほうが確実です。洗い流した水は、周囲の部品に付かないよう注意してください。
Q. 重曹の代わりに、お湯だけでも落ちますか
軽い汚れなら、落ちます。ただ、白い粉は酸の性質を持つので、お湯だけでは不十分なことがあります。
Q. 粉が付いたまま、使い続けてもいいですか
すぐに困ることはなくても、腐食は少しずつ進みます。気づいたら、早めに掃除してください。進行すると、端子が削れて、交換が必要になることもあります。
Q. 掃除のあと、エンジンがかかりません
端子の締め付けが足りないか、ケーブルを取り違えた可能性があります。プラスとマイナスが正しくつながっているか、ナットが緩んでいないかを確認してください。それでもかからなければ、バッテリーの寿命も疑います。
Q. 自分でやるのが不安です
ガソリンスタンドやカー用品店、整備工場で、点検と掃除を頼めます。特にハイブリッド車や輸入車は、無理をせず、専門家に任せるのが安全です。
最後に確認しておくこと
もう一度、整理します。
- 白い粉は、端子の腐食です。素手で触らず、保護メガネと手袋をつけます。
- 外すのはマイナスから、付けるのはプラスからです。
- 重曹を溶かしたぬるま湯で中和し、ブラシで落とします。
- 掃除のあとは、グリースか保護スプレーを薄く塗ります。
- 何度も粉が出るなら、バッテリーや充電系統の点検を受けます。
端子の掃除は、15分ほどでできる作業です。バッテリーを交換する前に、一度試してみてください。それだけで、調子が戻ることもあります。作業の前後で、エンジンをかけたときの音を比べてみると、変化がよく分かります。掃除の日付を手帳やスマートフォンにメモしておけば、次の点検の目安にもなります。半年後に同じ場所を見て、粉が戻っていないかを確かめてください。