この記事の要点
- 穴が星形のネジは、トルクス(ヘクスローブ)です。 六角レンチやプラスドライバーでは、回せません。
- 合わせる工具は、「T」と数字で表されるサイズで選びます。T25のように書きます。
- 大きさが合っていないと、すぐに潰れます。手元のネジに差してみて、がたつかないものを選んでください。
- 星形の中央に小さな突起があるものは、穴付きの専用ビットが要ります。
トルクスとは何か
トルクスは、ネジやボルトの頭にある穴の形の名前です。穴が、六つの丸い突起を持つ星のような形をしています。国際規格では、ヘクスローブと呼ばれています。
家具や家電、パソコン、自転車、車まわりなど、いろいろな場所で使われています。プラスやマイナスの溝に比べると、工具が空回りしにくく、強い力をかけられる点が特徴です。
その代わり、合う工具がないと、まったく回せません。 分解しようとして、星形の穴が出てきたときに、初めて困る人は少なくありません。
なぜ星形の穴が使われるのか
プラスの溝は、強く回すと、ドライバーが浮いて外れやすい形です。この現象を、カムアウトと呼びます。
星形の穴は、工具が穴の壁面全体で力を受けるため、強く回しても外れにくくできています。そのため、次のような場所で選ばれています。
- 強い力で締める必要があるボルト。
- 工場で、機械が自動で締める部品。
- 何度も着脱する、点検用のふた。
つまり、星形が使われているのは、「しっかり締めたい」という意図があるからです。軽い気持ちで外せるものではない、と考えたほうが安全です。
どんな場所で出会うか
トルクスネジに出会いやすいのは、次のような場所です。
- 車まわり: ライトの固定部や、ブレーキまわりのボルトなどで見かけることがあります。
- 自転車: ブレーキや、ローターの固定ボルトなどに使われていることがあります。
- 家電やパソコン: 外装のネジとして使われることがあります。
- 電動工具: 本体の組み立てネジで見かけることがあります。
機種や年式で、使われ方は違います。分解する前に、ネジの形を一度、確認しておくと安心です。
見分け方
まず、手元のネジが本当にトルクスかを確かめます。
- 穴が星形で、角が丸い: トルクスです。
- 穴が六角形で、角が尖っている: 六角穴です。六角レンチで回します。
- 穴が十字: プラスです。ドライバーで回します。
六角と星形は、見間違えやすい形です。穴の角が、丸みを帯びていれば星形です。六角レンチを差したときに、がたついて入りきらないなら、星形を疑ってください。
星形のボルトも、2種類あります
- 内側が星形のもの(内トルクス): 頭に穴があり、中にビットを差し込みます。ふつう、トルクスと言えばこちらです。
- 外側が星形のもの(外トルクス): ボルトの頭そのものが星形で、上からソケットをかぶせて回します。サイズは「E」と数字で表します。
車まわりのボルトでは、外トルクスも見かけます。この記事では、主に内トルクスを説明します。
サイズの表し方
内トルクスのサイズは、「T」に数字を続けて表します。T10、T15、T20、T25、T30、T40、といった具合です。
- 数字が大きいほど、星形の穴も大きくなります。
- 数字と、実際の寸法が、ミリ単位でそのまま対応するわけではありません。
- そのため、数字を覚えるより、実物に合わせて選ぶほうが確実です。
使われやすいサイズの傾向
よく見かけるのは、T10からT30あたりまでです。ただ、機器によって違います。
- 小さな家電や、パソコンまわりには、小さめの数字が使われます。
- 自転車や車のボルトでは、中くらいの数字が使われることが多いです。
あくまで傾向です。実際の機器で必ず確かめてください。
工具の選び方
トルクス用の工具には、いくつかの形があります。
- ドライバー型: 小さなネジ向けです。家電や小物の分解に向いています。
- L型レンチ: 六角レンチと同じ形をしています。力をかけやすく、自転車や車で使われます。
- ビット: 電動ドライバーや、ラチェットに付けて使います。サイズ違いを何本もそろえやすい形です。
- ビットのセット: 複数のサイズがまとまっています。最初は、これが便利です。
最初の1本は、セットで
どのサイズが必要かは、分解するまで分かりません。そこで、小さいサイズから中くらいのサイズまでを、まとめて持つのが現実的です。
安すぎるものは、先端が欠けたり、すぐに摩耗したりします。星形の先端は、精度が大切です。値段だけで選ばないでください。
先端の精度を見る
- 先端に、バリ(削りかす)が付いていないか。
- 星形の角が、きれいに揃っているか。
- 材質や、表面の処理が表示されているか。
多くの場合、先端が焼き入れされていて、固いものが長持ちします。
合わせ方のこつ
実際に合わせるときは、次の手順で進めます。
- ネジの穴のごみを、爪楊枝などで取ります。
- 小さめのサイズから、順にビットを差してみます。
- 差し込んで、まったくがたつかず、奥まで入るものを選びます。
- 迷ったら、一つ小さいサイズと比べます。
- 選んだビットをまっすぐ押し付けて、ゆっくり回します。
大きいと入らず、小さいとがたつきます
サイズが一つ小さいと、入るけれども、がたつきます。がたつきを我慢して回すと、穴の角が削れて、潰れます。
逆に、大きすぎると、そもそも奥まで入りません。
ぴったりのビットは、押し込まなくても、すっと奥まで入ります。 この感触を覚えておくと、迷いません。
代用してはいけません
手元に合う工具がないとき、代わりのもので回したくなります。次のことは避けてください。
- 六角レンチを無理に差す。 星形の穴と、六角の工具は、形が合いません。角を潰します。
- サイズの合わないビットで回す。 がたつきが、穴を削ります。
- マイナスドライバーを、星形の角に当てて回す。 先端が滑って、穴も工具も傷みます。
潰してしまうと、あとから回すのが、とても難しくなります。潰れたネジの外し方は、ネジが回らない時の対処法に書きました。
六角穴との違いについては、六角レンチの選び方でも触れています。
穴の中央に突起があるもの
星形の穴の中央に、小さな突起(ピン)が立っているものがあります。これは、いたずらや、勝手な分解を防ぐための、いじり止めのトルクスです。
- 通常のトルクス用ビットは、突起に当たって、奥まで入りません。
- 専用の、中央に穴が開いたビットが必要です。
- サイズ表記に、「H」や「TR」などの記号が付くことがあります。T25HやTR25のような書き方です。
突起があるのに、通常のビットを無理に押し込むと、ビットも突起も折れます。突起を見つけたら、無理をしないでください。
メーカーが分解を想定していない機器の場合は、無理に開けないほうがよいこともあります。保証や安全のためです。
締めるときの注意
トルクスは、工具が滑りにくいので、強い力をかけすぎやすい面があります。
- ネジの大きさに見合った力で、締めます。
- 小さなネジを、強い電動工具で締めると、頭が潰れたり、ネジ山が壊れたりします。
- 車のブレーキまわりなど、締め付けの強さが決まっている場所は、トルクレンチが必要です。
トルクレンチについては、トルクレンチの選び方を参考にしてください。タイヤ用のおおよその目安も、そこにあります。
固く締まったトルクスを外すとき
長く使った機器では、ネジが固着していることがあります。無理は禁物です。
- ビットが、穴の奥まで入っているかを確認します。
- ビットをまっすぐ、強く押し付けた状態で、ゆっくり力をかけます。
- 一気に回さず、少しずつ力を加えます。
- 動かないときは、無理に力を足さず、固着を緩める方法に切り替えます。
押し付ける力が弱いと、ビットが浮いて、穴の角を削ります。押す力7割、回す力3割くらいの気持ちで、押し込みながら回してください。
固着したボルトの外し方は、錆びて固着したボルトの外し方で詳しく書いています。
奥まったネジには、長いビットを
ネジが、深い穴の底にあることがあります。短いビットだと、ビットを持つ部分が穴の縁に当たり、まっすぐ差せません。
- 長めのビットや、ロングタイプのドライバーを選びます。
- 先端に磁石が付いたものは、ネジを落とさずに運べて便利です。
- 長いものほど、押し付ける向きが曲がりやすいので、まっすぐ当てることを意識します。
細い穴の奥で、ネジを落とすと、拾うのに苦労します。磁石付きのビットは、その手間を減らします。
電動ドライバーで回すときの設定
ビットを電動工具に付けて回すこともできます。ただし、次の点に気をつけてください。
- 低速で始めます。 速い回転は、ビットが浮いて、穴を傷める原因になります。
- 締める強さを調整できる機種は、弱めの設定から試します。
- 最後の締めは、手で行います。締めすぎを防げます。
星形は外れにくい分、電動で締めすぎたときの被害が大きくなります。ネジ山が壊れると、修理が必要になります。
使う前と、後の手入れ
ビットは、先端の状態で、寿命が決まります。
- 使うたびに、先端のごみや油を拭き取ります。
- 先端が丸くなってきたら、交換します。
- 湿気のある場所に放置せず、ケースに入れて保管します。
先端が削れたビットは、新しいネジを潰す原因になります。惜しまずに交換してください。
収納の工夫は、工具の収納でも書いています。
そろえる順番
最初から、全部のサイズを買う必要はありません。次の順番が、無駄がありません。
- まず、ビットのセット(小さい方から中くらいまで)。
- 作業で、よく使うサイズが分かってから、単品や、L型レンチを足す。
- いじり止めのものに出会ったら、そのときに穴付きビットを買い足す。
実際に使うサイズは、人によって偏ります。使ううちに、よく使う番号が見えてきます。そのときに、手に馴染む形で買い足すのが、いちばん失敗しません。
全体の工具のそろえ方は、最初に揃える工具にまとめています。
作業を始める前の確認
分解や取り外しを始める前に、次のことを確認してください。
- 取扱説明書に、分解の手順や注意が書かれていないか。
- 保証期間内の機器ではないか。分解すると、保証が受けられなくなることがあります。
- 電源や電池は、外しているか。
感電や、ケガの危険がある機器は、無理に開けず、メーカーや修理店に相談してください。
迷いやすい質問
Q. 六角レンチで回せることもありますか
ごく小さなネジでは、六角レンチの先が、たまたま入ることもあります。しかし、確実に回る保証はなく、穴を傷める原因になります。必ず合う工具を使ってください。
Q. T25と、T25Hは同じですか
いいえ。後ろにHが付くものは、中央に穴の開いた、いじり止め用のビットです。ふつうのT25のビットとは別物です。
Q. サイズが分からないとき、どうすればいいですか
小さいサイズから順に、ネジに差して試します。がたつかずに奥まで入るものが、合うサイズです。
Q. 100円ショップのビットでも使えますか
軽い作業なら、使える場合もあります。ただ、先端の精度や硬さが不足していることがあります。大切なネジや、固く締まったネジには、しっかりしたものを使ってください。
Q. 星形の穴が潰れてしまいました
外す方法は、状態によって変わります。ゴムを挟む、潰れた穴に合うビットを打ち込むなど、いくつかの方法があります。手順は、ネジが回らない時の対処法で説明しています。
Q. 自転車のボルトに多いと聞きました
自転車では、ブレーキまわりなどに使われていることがあります。ただ、自転車や部品によって違います。実物で確かめるのが確実です。整備全般の工具は、自転車の整備に必要な工具にまとめています。
最後に確認しておくこと
もう一度、整理します。
- 穴が星形で角が丸いものは、トルクスです。
- サイズは「T」と数字で表し、実物に合わせて選びます。
- ぴったりのビットは、押し込まなくても、すっと奥まで入ります。
- 六角レンチなどで代用すると、穴を潰します。
- 中央に突起があるものは、穴付きの専用ビットが必要です。
最初の1本は、セットで用意しておくと、分解のときに慌てません。ネジの形を見分けられるだけで、余計な傷を作らずに済みます。分解の前に、ネジの形と位置を写真に撮っておくのもおすすめです。元に戻すときに、どの場所にどのネジが使われていたかが分かり、組み間違いを防げます。外したネジは、場所ごとに小皿や袋に分けて保管してください。長さや太さが違うネジが混ざると、元に戻せなくなります。
関連する内容は、ペンチとプライヤーの違い、ネジのサイズの見方や、スパナとモンキーレンチの違いにまとめています。