浴室のかびは、こすっても落ちません。表面を拭いても、根が素材の奥に入っているためです。落とすには、薬剤を塗って、時間を置いて、成分を届かせる必要があります。そして、最も効くのは、生えてからの対処ではなく生やさない工夫です。風呂上がりに四十秒かけるだけで、かびの出る量は目に見えて減ります。この記事では、落とし方の手順と、繰り返さないための習慣を書きます。
この記事でわかること
- こすっても落ちない理由
- 薬剤を効かせる三つの条件
- 場所ごとの落とし方
- 生やさないための習慣
なぜこすっても落ちないか
黒く見えている部分は、かびの本体ではありません。生えたかびが作り出した色素です。
かび自体は、ゴムや目地の内部に根を張っています。表面をこすっても、内部の部分が残るので、しばらくすると同じ場所に出てきます。
だから、落とすには薬剤で色素を分解し、内部のかびも殺す必要があります。物理的にこする作業は、その補助でしかありません。
強くこすると、かえって素材に細かい傷が付き、そこにかびが入り込みやすくなります。ブラシでごしごし擦る方法は、長い目で見て逆効果です。
薬剤を効かせる三つの条件
市販の薬剤を使っても落ちない、という相談の原因は、たいてい使い方にあります。
一つめが、乾いた面に使うことです。濡れた壁に吹き付けると、水で薄まって効きません。作業の前に、水気を拭き取ってください。
二つめが、時間を置くことです。吹いてすぐ流すと、成分が内部まで届きません。製品に書かれた時間を守ってください。数分から、長いもので三十分です。
三つめが、流れ落ちないようにすることです。壁や天井では、薬剤が垂れてしまいます。ラップやキッチンペーパーで覆うと、その場にとどまります。
この三つを守ると、同じ薬剤でも結果が変わります。一度で落ちなければ、繰り返してください。
換気を先に確保する
作業に入る前に、安全の話をします。
かび取りの薬剤は、塩素系のものが主流です。強い成分なので、換気を確保してください。窓を開けるか、換気扇を回します。
ゴム手袋を使ってください。素手で触ると、皮膚が荒れます。目に入ると危険なので、保護めがねがあれば使います。
そして、酸性の洗剤と混ぜないでください。有毒な気体が発生します。浴室用の洗剤には酸性のものがあるので、続けて使う場合は、間に十分な水洗いを入れてください。
上を向いて天井に吹き付けると、薬剤が顔に落ちます。天井には、柄の付いた道具で塗るほうが安全です。
ゴムの部分の落とし方
最もかびが出やすいのが、扉のゴムや、浴槽の縁のコーキング材です。
水気を拭き取ってから、薬剤を塗ります。液体の製品より、粘りのある製品のほうが密着します。
その上からラップをかけ、乾かないようにします。この状態で二十分から三十分置いてください。
時間が来たら、ラップを外して水で流します。薄い部分は、これで落ちます。
残っていれば、もう一度繰り返してください。二回、三回と重ねることで、少しずつ薄くなります。一度で落とそうとして、放置する時間を延ばしすぎると、素材を傷めます。
天井の落とし方
天井は見落とされがちですが、ここが胞子の発生源になります。
目に見えるかびがなくても、天井には胞子が付着しています。ここを掃除しないと、壁を落としてもすぐ再発します。
柄の付いた掃除道具に、薬剤を含ませた布を巻き付けて拭きます。吹き付ける方法は、落ちてくるので避けてください。
拭いた後は、水拭きで成分を取り除きます。最後に乾拭きをすると、乾きが早くなります。
月に一度、この作業をするだけで、浴室全体のかびの出方が変わります。
目地とタイルの場合
タイル張りの浴室では、目地の部分にかびが入ります。
目地は素材が多孔質で、内部に水と汚れがたまります。かびにとって条件のよい場所です。
薬剤とラップの方法で落ちますが、深く入ったものは残ります。何度か繰り返しても薄くならなければ、目地そのものを打ち直すという方法になります。
目地の補修材は市販されていて、自分でも作業できます。古い目地を削り取り、新しい材料を詰める手順です。
コーキング材の場合も同じです。内部まで黒くなったものは、打ち替えるのが確実です。
排水口と扉の下
見えにくい場所に、汚れがたまります。
排水口は、分解して洗ってください。髪の毛と皮脂がたまり、ぬめりとにおいの原因になります。かびの栄養にもなります。
扉の下の部分、水が流れる溝も汚れます。細いブラシでこすってください。歯ブラシが使いやすい場所です。
扉の枠の内側にも、水がたまります。分解できる製品なら外して洗ってください。
椅子や洗面器の裏側も、忘れやすい場所です。置きっぱなしにすると、床との接地面に汚れが固まります。
かびが育つ条件を断つ
ここからが本題です。かびが育つには、四つの条件が要ります。
水分、温度、栄養、酸素。このうち、酸素と温度は家庭で操作できません。だから、水分と栄養を断つことになります。
栄養とは、石けんかす、皮脂、髪の毛です。これを流すことで、かびの餌がなくなります。
水分は、乾かすことで断てます。浴室が常に濡れている状態を作らないことが、最も効きます。
風呂上がりの四十秒
毎日続けられる範囲で、最も効果が大きい習慣を書きます。
最後に出る人が、壁と床に水をかけます。これで石けんかすと皮脂が流れます。二十秒ほどの作業です。
次に、冷たい水をかけます。浴室の温度が下がり、かびが育ちにくい状態になります。これも二十秒ほどです。
最後に、換気扇を回します。そのまま数時間、可能なら翌朝まで回し続けてください。
この三つで、かびの出る量ははっきり減ります。合わせて四十秒ほどの作業です。
水気を取るとさらに効く
もう一歩進めるなら、水気を取る作業を足してください。
窓用のワイパーで、壁と鏡の水を切ります。数十秒で終わり、乾く時間が大きく短くなります。
扉のゴムと、浴槽の縁は、タオルで拭いておくとなおよい場所です。最もかびが出やすい部分なので、ここだけでも効果があります。
鏡の水を切っておくと、うろこ状の汚れも付きにくくなります。あれは水に含まれる成分が乾いて固まったものなので、乾く前に拭けば残りません。
換気の使い方
換気扇は、回し方で効果が変わります。
扉を閉めて回してください。開けたままだと、浴室の湿った空気ではなく、脱衣所の空気を吸い出すことになります。
空気の入り口も必要です。扉の下に隙間があるか、給気の口があるかを確認してください。完全に密閉されていると、空気が動きません。
窓がある浴室では、窓を開けるより換気扇のほうが効くことが多いものです。窓を開けると、外の湿った空気が入る場合があります。
換気扇のフィルターも掃除してください。ほこりが詰まると、能力が落ちます。半年に一度が目安です。
置くものを減らす
浴室に置いてあるものが、乾きを妨げています。
シャンプーの容器の底、椅子の裏、洗面器の内側。どこも水がたまり、乾きません。ここからかびが広がります。
吊るす形式の収納に替えると、底に水がたまりません。容器を宙に浮かせるだけで、かなり変わります。
椅子と洗面器は、立てかけて水を切ってください。床に伏せて置くと、接地面が乾きません。
そもそも、浴室に置くものを減らすのが一番です。使うたびに持ち込む形にすれば、掃除の手間も減ります。
燻煙の製品を使う
煙を出して、浴室全体に成分を行き渡らせる製品があります。
すでに生えたかびを落とす力はありませんが、生えるのを遅らせる効果があります。掃除の後に使うと、きれいな状態が長く保てます。
目安は、一か月から二か月に一度です。製品の表示に従ってください。
使う前に、浴室のものを片付けてください。煙が届かない場所には効きません。使用中は、扉を閉め切ります。
季節による変化
かびが増える時期は決まっています。
気温が二十度を超え、湿度が高くなる時期に活発になります。梅雨から夏にかけてが、最も増える季節です。
この時期の前に、一度徹底して掃除しておくと、その後の広がりが抑えられます。五月のうちに手をつけるのが理想です。
冬は気温が低いぶん増えにくいのですが、暖房で室温が上がり、結露が出る住宅では油断できません。
年に二回、季節の変わり目に大掃除をする形にすると、無理なく管理できます。
落ちなくなったら
何度やっても黒いままの場所があります。
ゴムやコーキング材の内部まで入ったかびは、薬剤では落としきれません。この場合は、打ち替えるという判断になります。
自分でやるなら、カッターで古い材料を切り取り、清掃して乾かしてから、新しい材料を詰めます。材料は千円前後です。
業者に頼む場合、浴室一室で数万円が目安になります。見た目がはっきり変わるので、費用に見合うと感じる方は多いはずです。
賃貸なら、まず管理会社に相談してください。設備の劣化として扱われることがあります。
浴室以外にも出る場所
同じ条件がそろえば、他の場所にもかびは出ます。
洗面所は、浴室から流れてくる湿気で条件が悪くなります。洗濯機の裏、洗面台の下、壁の隅。扉を閉め切ると空気が動かないので、換気を意識してください。
窓まわりも、結露の水がたまる場所です。サッシの下の溝、カーテンの裾、窓枠の木の部分。冬に発生しやすい場所です。
押し入れやクローゼットも、空気が動かず湿気がこもります。壁に接して物を詰め込むと、その面が乾きません。隙間を空けて置いてください。
エアコンの内部も、湿った状態が続く場所です。運転の後に送風で乾かす機能があれば、使ってください。
体への影響
見た目の問題だけではありません。
かびの胞子は空気中を漂い、呼吸とともに体に入ります。人によっては、せきやくしゃみ、鼻の症状につながります。
喘息やアレルギーのある方がいる家庭では、特に注意が必要です。浴室のかびが、症状を悪くする要因になることがあります。
小さな子どもや高齢の方がいるなら、掃除の優先度は上がります。浴室は毎日使う場所で、しかも密閉された空間です。
掃除をする本人も、胞子を吸い込みます。作業のときは、マスクをしてください。
掃除の道具をそろえる
用意するものは多くありません。どれも数百円から千円台です。
かび取りの薬剤は、粘りのある形式が壁に使いやすいものです。液体の形式は、平らな床や浴槽に向きます。両方あると使い分けられます。
ラップは、薬剤を密着させるために使います。台所用のもので構いません。キッチンペーパーを挟むと、さらに密着します。
柄の付いた掃除道具は、天井と壁の上部に届きます。腕を上げ続けずに済むので、作業が楽になります。
使い古しの歯ブラシは、目地や溝に使えます。捨てる前に取っておいてください。
そして、水を切るワイパーです。掃除の後だけでなく、毎日の習慣にも使います。
よくある質問
換気扇は回し続けてよいですか
問題ありません。消費電力は小さく、一日中回しても電気代はわずかです。二十四時間の換気を前提とした住宅では、そもそも止めない設計になっています。かびを防ぐ効果のほうが大きいものです。
重曹やお酢で落とせますか
表面の軽い汚れには効きますが、根を張ったかびには足りません。色素を分解する力がないためです。予防や日常の掃除には使えますが、黒くなった部分には塩素系の薬剤が必要です。
薬剤のにおいが残ります
水でよく流し、換気を続けてください。数時間で薄くなります。においが強いうちは、浴室を使わないほうが安全です。作業は、夜より、その後換気の時間が取れる午前中に行うのがおすすめです。
窓のない浴室ではどうしますか
換気扇が生命線になります。回す時間を長くし、フィルターの掃除も欠かさないでください。扉を閉めて回すこと、空気の入り口を確保することが特に重要です。乾きにくいぶん、水気を拭き取る作業の効果も大きくなります。
まとめ
浴室のかびは、こすっても落ちません。乾いた面に薬剤を塗り、ラップで覆い、時間を置く。この三つの条件を守ってください。天井の掃除も忘れないでください。ここが胞子の発生源になります。そして、生えてからの対処より、生やさない工夫のほうが効きます。風呂上がりに、水で流して、冷水をかけて、換気扇を回す。四十秒の習慣で、かびの出る量ははっきり変わります。
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