塗料のスプレー缶は、中身を使い切ってから出します。これが原則です。難しいのは、使い切ったかどうかの判断と、中身が固まって出てこなくなった缶の扱いです。カセットボンベなら振れば液体の感触でわかりますが、塗料の缶は中に撹拌用の玉が入っているため、振った感触では残量がつかめません。この記事では、残量の確かめ方、噴射できなくなった缶の対処、自治体で割れる穴あけの扱いまでをまとめます。作業はすべて屋外で行ってください。
この記事でわかること
- 残量の確かめ方と使い切り方
- ノズルが詰まって出ないときの対処
- 穴あけの扱いが自治体で割れる理由
- 塗料が飛び散らない作業のしかた
塗料スプレーの中身は二種類
缶の中には、塗料そのものと、それを押し出すためのガスが入っています。この二つを両方出し切る必要があります。
押し出すためのガスは、液化石油ガスやジメチルエーテルが使われています。どちらも可燃性で、カセットボンベの中身と性質が近いものです。缶が残った状態で収集車に入れば、圧縮されて裂け、火災につながります。
塗料のほうは、顔料と樹脂と溶剤が混ざったものです。こちらは燃えるだけでなく、周囲を汚します。ガスだけ抜けて塗料が残った缶は、処理施設で潰されたときに中身が飛び散ります。
だから、両方を出し切ることが求められます。ガスだけ、あるいは塗料だけを出しても、終わりではありません。
残量の確かめ方
塗料スプレーの缶には、中身を混ぜるための金属の玉が入っています。振るとカラカラと音がしますが、この音では残量がわかりません。空の缶でも同じ音がします。
確実なのは、重さで比べる方法です。同じ製品の新品と持ち比べれば、差がはっきりわかります。新品がない場合でも、明らかに軽くなっていれば、中身は減っています。
もう一つは、実際に噴射してみることです。段ボールの切れ端に向けて数秒押し、何も出なければ塗料は空です。このとき、ガスだけが抜ける音がするなら、ガスはまだ残っています。音もしなくなるまで押し続けてください。
缶を逆さにして押すと、ガスだけが出ます。塗料を使い切った後、この方法でガスを抜く製品もあります。ただし、逆さで使えない製品もあるので、缶の表示を確認してください。
使い切る作業の段取り
中身を出す作業は、屋外の風通しのよい場所で行います。周囲に人がいないこと、火の気がないことを確認してください。
- 地面に段ボールか新聞紙を広く敷く。塗料は細かい霧になって広がる
- 風上に立ち、風下へ向けて噴射する。顔にかからない向きを取る
- 手袋と、できれば保護めがねを使う
- 作業用の服を着る。普段着では確実に汚れる
- 隣家の車や洗濯物の位置を確認する。霧は思ったより遠くまで飛ぶ
- 一度に長く押さず、数秒ずつ区切る
霧になった塗料は、数メートル先まで届きます。駐車場の近くで作業して、隣の車に薄く付着させてしまう事故が起きています。塀や建物に向けて噴射するのも避けてください。
段ボールに向けて噴射すれば、塗料はそこで止まります。使い終わった段ボールは、乾かしてから可燃ごみに出せる地域が多いはずです。
出てこなくなった缶の対処
中身が残っているのに噴射できない。これが一番困る状態です。原因は二つに分かれます。
一つめは、ノズルの詰まりです。前回使った後に塗料が残り、乾いて固まっています。ノズルを外して、うすめ液に浸けると溶けます。細い針で穴を通す方法もありますが、力を入れすぎるとノズルを壊します。
ノズルは、同じメーカーの他の缶から外して流用できる場合があります。使い終わった缶のノズルを一つ取っておくと、こうしたときに役立ちます。
二つめは、ガスが先に抜けてしまった場合です。塗料は残っているのに、押し出す力がありません。この状態は家庭では回復できません。缶に穴を開ける方法は危険なので、自治体に相談してください。
中身が固まって流動しなくなった缶も同じです。何年も置かれた缶では、塗料が缶の内側に張り付いています。無理に振っても出てきません。
穴あけの扱いは地域で割れる
かつては、スプレー缶に穴を開けてから出すよう求める自治体が多くありました。今は、この方針が分かれています。
穴を開けるよう求める側の理由は、収集車と処理施設での火災を防ぐためです。中身が残った缶が混ざると、圧縮のときに裂けて引火します。穴が開いていれば、その危険はありません。
穴あけを禁じる側の理由は、住民が作業する過程での事故です。穴あけ器具を刺すとき、金属どうしが擦れて火花が出ます。室内で作業してガスがたまり、引火した事例も報告されています。
どちらの考え方にも根拠があるので、自分の住む地域がどちらなのかを確認してください。ごみの分別カレンダー、自治体のサイト、清掃センターへの電話で調べられます。求められていないのに穴を開ける必要はありません。
穴を開ける場合の手順
自治体が穴あけを求めている場合は、専用の器具を使ってください。ドライバーや釘で叩くのは危険です。
作業は屋外で、火の気のない場所で行います。缶をしっかり固定し、器具を垂直に当てて一度で開けます。斜めに力をかけると、器具が滑って手を傷めます。
穴を開けると、残っていた中身が噴き出します。塗料が入っていれば飛び散るので、必ず段ボールの上で、風下に向けて作業してください。開けた後は数分置いて、完全に抜けるのを待ちます。
作業中に強い抵抗を感じたら、中身が多く残っています。一度やめて、まず噴射で出し切ってから開け直してください。
出すときの分け方
空になった缶の区分も、自治体で違います。
資源ごみとして金属類に混ぜる地域、スプレー缶だけを別にまとめる地域、専用の回収箱を置いている地域があります。透明な袋を指定されるのは、収集する人が中身を確認できるようにするためです。
プラスチックのキャップとノズルは、外して別の区分に出すよう求められることがあります。缶の口に残った樹脂の部品まで外す必要があるかは、地域によります。
缶の外側に塗料が付いていても、通常はそのままで構いません。洗う必要はありません。ただし、著しく汚れている場合は、拭いてから出すほうが親切です。
保管中に気をつけること
使いかけの缶を取っておく場合、置き場所には条件があります。
缶には、四十度以上になる場所に置かないことと明記されています。夏の車内、屋外の金属製物置、日の当たる窓辺は、どれもこの条件を超えます。室内の涼しい場所を選んでください。
使い終わったらノズルを掃除しておくと、次に使うときに詰まりません。缶を逆さにして、塗料が出なくなるまで数秒噴射する。これだけでノズルの中が空になります。
とはいえ、塗料スプレーには使用期限があります。何年も置いた缶は、中身が固まって使えなくなることがほとんどです。次に使う予定がないなら、その場で使い切って処分するほうが結局は楽です。
他のスプレー缶との違い
家庭にあるスプレー缶は、塗料以外にもいくつかあります。処理の考え方は共通ですが、注意する点が変わります。
殺虫剤は、周囲に薬剤を撒くことになるので、噴射する場所を選んでください。庭の植物や、近所の洗濯物にかからない位置で行います。
パーツクリーナーは溶剤が主成分なので、地面に染みます。段ボールや布に吸わせて、乾かしてから捨ててください。においも強いので、風のある日に短時間で済ませます。
制汗剤や消臭剤は、中身が水に近いものもあります。とはいえ噴射剤は可燃性なので、扱いは同じです。においが室内にこもるので、屋外で作業してください。
やってはいけないこと
- 室内やベランダで中身を出す。ガスがたまって引火する
- 火のそばで作業する。噴射した霧そのものが燃える
- たき火に投げ込む。破裂した缶が飛ぶ
- ドライバーや釘を叩いて穴を開ける。火花が出る
- 中身が残ったまま袋に入れて出す。収集車で火災になる
- 下水や地面に中身を流す。土壌と水を汚す
とくに、噴射した霧が燃えるという点は見落とされがちです。細かい粒になった塗料と溶剤は、火が近くにあれば一瞬で燃え広がります。タバコを吸いながらの作業は絶対に避けてください。
失敗しやすい塗り方から見直す
缶が余る原因の一つに、使い方の失敗があります。うまく塗れずに何本も買い足した結果、中途半端な缶が残るという流れです。
よくあるのが、一度で色をつけようとして厚く吹く失敗です。塗料が垂れ、乾いた後に筋が残ります。正しくは、薄く三回に分けて塗ります。一回目は下地が透けていて構いません。
距離も決まっています。対象から二十センチから三十センチ離し、缶を動かしながら吹きます。一か所に留めると、そこだけ厚くなります。缶を止めたまま手首だけ動かすと、端が薄くなるので、腕ごと平行に動かしてください。
気温も影響します。寒い日は塗料の粘りが強くなり、うまく広がりません。逆に真夏の直射日光の下では、届く前に乾いて表面がざらつきます。春と秋の穏やかな日が一番塗りやすい季節です。
使う前に缶をよく振ることも忘れないでください。中の玉が音を立ててから、さらに一分ほど振ります。この手間を省くと、色が均一になりません。
缶の表示を読む
処分の判断にも、使い方の判断にも、缶の表示が役立ちます。
まず、内容量です。三百ミリリットルなのか、四百ミリリットルなのかで、塗れる面積が変わります。必要な本数を見積もる材料になります。
次に、成分の欄です。溶剤の種類が書かれています。ここに危険物としての表示があれば、保管も処分も慎重に扱う必要があります。
そして、注意書きです。四十度以上になる場所に置かないこと、火気のそばで使わないこと、穴を開けないこと。この三つはどの缶にも共通して書かれています。処分のときにガス抜きをする場合も、この注意書きの範囲で行うことになります。
作業のあとに残るもの
缶を空にして終わりではありません。作業に使った養生の道具も、あわせて片付ける必要があります。
塗料を受けた段ボールや新聞紙は、完全に乾かしてから出してください。濡れたまま袋に入れると、溶剤が揮発せず、袋の中に蒸気がたまります。一日屋外に広げておけば、たいていは乾きます。
マスキングテープや養生のシートも同じです。塗料が乾いてから、可燃ごみの区分に従って出します。
よくある質問
中身がわからない古い缶が出てきました
ラベルが読めない缶は、自己判断で処理せず自治体に相談してください。塗料か殺虫剤か溶剤かで、扱いが変わります。噴射して確かめる方法もありますが、中身がわからないものを自分に向かって出すのは避けます。
寒い日に噴射しても出にくいのはなぜですか
噴射剤のガスが気化しにくくなるためです。缶が冷えると押し出す力が落ちます。室内で常温に戻してから、屋外で作業してください。缶を火で温めるのは危険なので、体温か室温で戻します。
穴を開けた缶は資源ごみに出せますか
自治体の区分に従ってください。穴を開けることを求める地域なら、その後の出し方も案内されているはずです。分別カレンダーに記載がなければ、電話で確認してください。
まとめて何十本も処分したいのですが
本数が多い場合は、通常の収集で受け付けてもらえないことがあります。清掃センターへの持ち込みを案内される場合が多いので、先に相談してください。持ち込みなら、職員の指示のもとで処理してもらえます。
屋外で作業する場所がありません
集合住宅などで屋外の作業場所が取れない場合、無理に自分で処理しないでください。ベランダも室内も使えません。自治体に相談すれば、中身が残ったままの缶の出し方を案内してもらえることがあります。清掃センターへの持ち込みを認めている地域もあります。
車の補修に使った缶も同じ扱いですか
同じです。車用のタッチアップ用のスプレーも、クリア塗装用の缶も、中身とガスを出し切ってから出してください。二液を混合するタイプの缶は、混ぜた時点で固まり始めるので、その日のうちに使い切る前提で考えます。
まとめ
塗料のスプレー缶は、塗料とガスの両方を出し切ってから出します。残量は振った音ではわからないので、重さで比べるか、段ボールに向けて噴射して確かめてください。作業は屋外、風下へ向けて、段ボールを敷いて行います。穴あけの扱いは自治体で割れているので、求められていなければ開ける必要はありません。そして、ガスが抜けて中身だけ残った缶は家庭で処理できません。自治体に相談してください。
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