停電したとき、最初にやることは明かりの確保ではありません。分電盤のブレーカーを落とすことです。理由は、電気が戻ったときに火災が起きるからです。倒れた電気ストーブ、水に浸かった機器、傷ついた配線。停電中は何も起きませんが、通電した瞬間に発火します。地震のあとの火災には、この経路によるものが多く含まれています。この記事では、停電の原因の見分け方と、断つべきものの順番、そして復旧のときの手順を書きます。
この記事でわかること
- 通電したときに火災が起きる仕組み
- 停電が自宅だけか地域全体かの見分け方
- ブレーカーを落とす順番と戻す順番
- 復旧のときに確認すること
通電で火が出る仕組み
停電している間、家の中は電気の面では無害な状態です。電気が来ていないので、何も動きません。問題は、その後に起きます。
しかし、その間に状況は変わっています。地震なら、電気ストーブが倒れて布団に接しているかもしれません。水害なら、機器が水に浸かっています。家具が倒れて、コードを挟んでいるかもしれません。
この状態で電気が戻ると、機器が動き出します。倒れたストーブが発熱し、布団に火が付きます。濡れた機器の内部で短絡が起き、発火します。
しかも、復旧は自分が家にいるときとは限りません。避難している間に電気が戻り、誰もいない家で火が出る。これが被害を大きくします。
だから、停電したらブレーカーを落とす。避難するなら、必ず落としてから出る。この二つを覚えておいてください。
自宅だけか、地域全体か
停電の原因によって、やるべきことが変わります。落ち着いて、まず切り分けてください。
窓の外を見て、近所の家に明かりが付いているかを確認します。街灯や信号も手がかりになります。周囲も消えているなら、地域全体の停電です。
自宅だけ消えているなら、分電盤を見てください。どのブレーカーが落ちているかで、原因の見当がつきます。
一番大きなブレーカーが落ちているなら、使いすぎです。個別の小さいブレーカーが落ちているなら、その系統で使いすぎたか、短絡が起きています。中央にある漏電の遮断器が落ちているなら、どこかで電気が漏れています。
ブレーカーが一つも落ちていないのに電気が来ないなら、建物の外の問題です。電力会社に連絡してください。
落とすときの順番
地域全体の停電で、避難する場合の手順です。
- まず、使っていた機器のスイッチを切る
- 可能なら、プラグも抜く。特に暖房器具とアイロン
- 分電盤の個別のブレーカーを、右端から順に落とす
- 最後に、一番大きなブレーカーを落とす
- 懐中電灯を手に持ってから、この作業を始める
暗い中での作業なので、明かりを確保してから始めてください。分電盤は高い位置にあることが多く、手元が見えないと操作を誤ります。
個別のブレーカーがどの部屋に対応しているか、平時に確認して札を貼っておくと、こうしたときに迷いません。
地震の揺れを感じたら自動でブレーカーを落とす装置もあります。数千円のものから、工事が必要なものまであります。留守のあいだの地震に備えるなら、検討する価値があります。
停電中にやること
電気を断ったら、次の行動です。
明かりを確保してください。ろうそくは、倒れると火事になります。停電時は特に危険なので、電池式の明かりを使ってください。
冷蔵庫は、開けないでください。扉を閉じたままなら、数時間は冷えが保ちます。開けるたびに温度が上がります。
情報を集めてください。電池式のラジオか、携帯電話です。ただし、携帯電話は電池を消耗するので、明かりとして使うのは避けてください。
復旧の見込みがわかれば、その後の行動を決められます。電力会社のサイトで、停電の範囲と復旧の見込みが確認できることがあります。
復旧したときの手順
電気が戻ったら、慎重に確認しながら戻してください。
まず、家の中を見回ります。においを確かめてください。焦げたにおい、ガスのにおいがあれば、ブレーカーを戻さずに換気し、専門の窓口に連絡します。
倒れた機器がないか、水に浸かった機器がないか、コードが挟まれていないかを確認します。問題があれば、その機器のプラグを抜いておきます。
確認が済んだら、一番大きなブレーカーを上げ、次に個別のブレーカーを一つずつ上げていきます。上げるたびに、異常がないか様子を見てください。
途中で落ちる系統があれば、そこに原因があります。無理に上げ続けず、その系統は落としたままにして、電気工事店に相談してください。
水に浸かった機器は使わない
水害のあとで、特に伝えたいことです。
水に浸かった電気製品は、乾いたように見えても使わないでください。内部に水分や泥が残っていると、通電した瞬間に短絡して発火します。
見た目で判断できません。外側が乾いていても、基板の間や、部品の隙間には残ります。時間が経ってから発火した例もあります。
メーカーか販売店に連絡して、点検を受けるか、買い替えてください。惜しい気持ちはわかりますが、火災の損害とは比べられません。
壁のコンセントが浸かった場合も同じです。電気工事店の点検を受けてから使ってください。
ブレーカーが繰り返し落ちるとき
停電とは別に、日常的にブレーカーが落ちる場合の対処です。
同じ時間帯に落ちるなら、使いすぎです。電子レンジとドライヤーを同時に使う、といった場面が原因になります。使う時間をずらすか、契約の容量を見直してください。
特定の機器を使ったときだけ落ちるなら、その機器に原因があります。内部で短絡しているか、漏電しています。使用をやめて、点検に出してください。
何もしていないのに落ちるなら、配線の問題か、漏電です。これは自分で解決できません。電気工事店に見てもらってください。
落ちるたびに上げ直すだけ、という対応を続けないでください。原因が残っています。
備えておくもの
停電に備えて、手の届く場所に置いておくものを挙げます。
電池式の明かりを、寝室と居間に一つずつ。分電盤の近くにも一つあると、操作のときに助かります。
電池の予備も用意してください。明かりと、ラジオで使う分です。年に一度、入れ替えてください。
携帯電話を充電する手段も要ります。蓄電池を用意しておくと、数日分の充電が賄えます。乾電池で充電する製品もあります。
そして、分電盤の場所と操作の方法を、家族全員が知っていること。これが何より重要です。一度、一緒に開けて確認しておいてください。
分電盤の中身を知っておく
いざというときに操作できるよう、平時に見ておいてください。
蓋を開けると、左から順に並んでいます。一番左の大きなものが、家全体の電気を入り切りするものです。その隣が、漏電を検知して切る装置です。右側に並ぶ小さなものが、部屋や系統ごとのものです。
個別のものには、どこの系統かを書いた札が付いていることがあります。付いていなければ、一つずつ落として、どこが消えるかを確認し、自分で書いておいてください。三十分もあれば終わります。
この作業をしておくと、停電のときだけでなく、一部だけ電気が来ないときの原因探しも速くなります。
蓋の内側に、電力会社の連絡先を貼っておくのも有効です。暗い中で調べる手間が省けます。
台風の前にやること
停電が予想される場面では、前もって備えられます。
携帯電話と蓄電池を満充電にしてください。停電してからでは遅すぎます。
浴槽に水をためておきます。断水したときの生活用水になります。停電でポンプが止まる建物では、水も出なくなります。
冷凍庫に保冷剤や、水を入れた容器を入れて凍らせておくと、停電中の保冷に使えます。冷蔵の部分へ移せば、温度の上がり方が緩やかになります。
そして、懐中電灯の電池を確認してください。いざ点けようとして、電池切れだったという話をよく聞きます。
家族で決めておくこと
停電は、家族がそろっているときに起きるとは限りません。誰が家にいても対応できる状態にしておいてください。
分電盤の場所と、蓋の開け方。これを全員が知っていることが前提です。高い位置にあるなら、踏み台の場所も決めておきます。
懐中電灯の置き場所も共有してください。停電してから探すのでは間に合いません。決めた場所から動かさない、という約束も必要です。
そして、避難するときは必ずブレーカーを落とす。この一点だけでも伝えておいてください。慌てて出るときほど、忘れられます。玄関に貼り紙をしておく方法もあります。
集合住宅で違うこと
マンションやアパートでは、戸建てと事情が変わります。
停電すると、給水のポンプが止まります。高い階ほど早く水が出なくなります。断水していなくても、水が上がってこない状態です。
エレベーターも止まります。階段での移動になるので、高層階では買い物や避難が大変になります。水は特に重いので、備えておく意味が大きい住まいです。
共用部の照明や、機械式の駐車場も止まります。車を出せなくなることがあるので、事前に確認しておいてください。
復旧までの過ごし方
長引く停電では、体調の管理も課題になります。
夏なら、熱中症を警戒してください。冷房が使えないため、室温が上がります。水分をこまめに取り、日中は日の当たらない部屋で過ごしてください。濡らした手ぬぐいを首に当てるだけでも違います。
冬なら、低体温を警戒します。暖房が使えない部屋では、重ね着と毛布で体温を保ちます。一部屋に集まると、人の熱で室温が上がります。
情報から切り離されると不安になります。ラジオを点けておくだけで、状況がわかり落ち着きます。携帯電話の電池は、通信のために温存してください。
そして、無理に動かないことです。暗い中での移動は、転倒の危険があります。明かりを確保してから動いてください。
復旧後に確認する機器
電気が戻った後、設定が消えている機器があります。
時計の付いた機器は、ほとんどが再設定になります。炊飯器、電子レンジ、録画の機器など、順に見て回ってください。
給湯の設定や、床暖房の予約も消えていることがあります。冬なら、湯が出ないことに気づくのが夜になります。早めに確認してください。
通信の機器も、再起動が必要な場合があります。電源を入れ直しても通じなければ、契約先に連絡してください。
よくある質問
短時間の停電でもブレーカーを落とすべきですか
数分で復旧しそうなら、そこまでの必要はありません。ただし、地震が原因の停電なら、時間にかかわらず落としてください。家の中で何が起きているかわからないためです。
停電が復旧したか、どう確認しますか
近所の家や街灯を見てください。分電盤を落としていると、自宅では判断できません。周囲が明るくなっていれば、復旧しています。
冷蔵庫の中身はいつまで持ちますか
扉を開けなければ、冷蔵の部分で数時間、冷凍の部分で一日近く保ちます。保冷剤を入れておくと、さらに延びます。傷みやすいものから先に食べてください。
エレベーターに閉じ込められたら
非常用のボタンを押して、連絡してください。自分で扉をこじ開けようとしないでください。復旧したときに動き出す危険があります。多くの機種では、非常用の電源で管理室につながります。
発電機を家の中で使ってもよいですか
使えません。排気に一酸化炭素が含まれます。屋外に置き、窓から離れた位置で運転して、延長コードを引き込んでください。玄関先やベランダも避けます。集合住宅では、そもそも使える場所がほとんどありません。
ブレーカーを落とすと困る機器があります
医療の機器を使っている場合は、事前に主治医や機器の提供元に相談してください。停電時の手順が定められていることがあります。冷蔵庫については、扉を開けなければ数時間は保つので、落としても大きな問題にはなりません。
まとめ
停電したら、分電盤のブレーカーを落としてください。電気が戻ったときの火災を防ぐためです。避難するなら、必ず落としてから家を出ます。復旧したら、においを確かめ、倒れた機器や水に浸かった機器がないかを見てから、一つずつ戻してください。水に浸かった電気製品は、乾いて見えても使わないでください。そして、分電盤の場所と操作を、家族全員が知っている状態にしておいてください。
ブレーカーの見方は分電盤とブレーカーの基礎、停電中の熱源は停電3日間の熱源計画、防災の道具は防災で備える工具にまとめています。
