ウッドデッキや木製のフェンスは、塗り直さなければ十年ももちません。逆に、数年に一度塗っていれば、二十年以上使えます。この差を生むのは、塗料そのものより、塗る前の下地の処理です。汚れと古い塗膜が残った上に塗っても、数か月ではがれます。そして、木材用の塗料には性質の違う二種類があり、これを混同すると仕上がりが崩れます。この記事では、その見分け方と手順を書きます。
この記事でわかること
- 木部の塗料の二つの型
- 塗り替えの時期の見分け方
- 下地処理の手順
- 塗る日の選び方
なぜ木は傷むのか
屋外の木材を傷めるのは、水と紫外線と菌です。雨が染み込み、乾き、また染み込む。この繰り返しで木の繊維が緩み、そこに菌が入って腐ります。紫外線は表面の成分を分解し、灰色に変色させます。
塗装の役割は、水をはじき、紫外線を遮ることです。つまり、見た目のためだけではありません。塗膜が切れた時点から、木は傷み始めます。
腐りが進んでから塗っても、手遅れです。指で押してへこむ、ねじが効かない、といった状態まで来たら、その板は交換するしかありません。
だから、傷んでから塗るのではなく、傷む前に塗り直す。これが、木部の塗装の考え方です。
浸透する塗料と膜を作る塗料
木材用の塗料は、大きく二つに分かれます。ここを理解すると、選択も、塗り替えの判断も楽になります。
一つは、木に染み込む型です。表面に膜を作らず、内部に浸透して木を守ります。木目が見えたまま仕上がるので、見た目は自然です。そして、はがれません。膜がないので、はがれようがないのです。
もう一つは、表面に膜を作る型です。木を完全に覆うので、水を防ぐ力は強い。色もはっきり出ます。ただし、年月が経つと膜が割れ、そこから水が入ります。そして、いったんはがれ始めると、全部削り落とさないと塗り直せません。
DIYで塗り直しを繰り返すなら、染み込む型をおすすめします。下地の処理が軽く済み、失敗しても目立ちません。ただし、効果が切れるのが早いので、二年から三年ごとに塗る必要があります。
今の塗装がどちらかを調べる
塗り替えるとき、今の塗料の型を知る必要があります。違う型を上から塗ると、はじかれたり、はがれたりします。
判断は簡単です。水を数滴たらしてみてください。玉になって転がるなら、膜がある状態です。染み込んで色が濃くなるなら、膜が切れているか、もともと浸透する型です。
木目が見えているなら浸透する型、塗りつぶされているなら膜を作る型、という見分け方もできます。
膜を作る型の上に、染み込む型は塗れません。膜が邪魔をして、染み込まないからです。逆は可能ですが、密着が悪くなることがあります。同じ型で塗り重ねるのが原則です。
塗り替えの時期
いつ塗るかの判断です。
水をかけて、玉にならず染み込むようになったら、防水の効果が切れています。これが最も分かりやすい合図です。
色が抜けて白っぽくなってきた、表面がざらついてきた、といった変化も目安になります。ここまでは、まだ木自体は健全です。
黒い点が出てきたら、菌が繁殖しています。ここから先は、洗浄の手間が増えます。
目安としては、日当たりと雨の当たり方で変わりますが、二年から三年に一度です。手すりの上面や、床板のように直接雨が当たる部分は、早く傷みます。全体を同じ時期に塗る必要はなく、傷んだ面だけ先に塗るという進め方もできます。
下地の処理が結果を決める
ここが、この作業で最も時間をかけるべき部分です。塗る時間より、準備の時間のほうが長くなります。
まず、ほこりと土と落ち葉を取り除きます。デッキの板の隙間に詰まったものも、かき出してください。ここに水がたまると、下から腐ります。
次に、洗います。デッキ用のブラシで、木目に沿ってこすってください。汚れがひどければ、木部用の洗浄剤を使います。菌による黒ずみには、専用の薬剤があります。
高圧の水で洗う機械を使う場合は、加減が要ります。強く当てると、木の柔らかい部分が削れて毛羽立ちます。離して、動かしながら使ってください。
そして、完全に乾かします。ここが重要です。濡れたまま塗ると、水分を閉じ込めることになり、内部から腐ります。晴れた日が二日から三日続いた後が理想です。
削る工程
洗って乾かしたら、表面を整えます。
膜を作る型の塗料が浮いている、はがれているなら、その部分をすべて落とす必要があります。中途半端に残すと、境目から再びはがれます。専用の道具や、電動の研磨機を使います。
染み込む型なら、削り落とす必要はありません。毛羽立った部分を、紙やすりで軽くならす程度で十分です。百八十番前後を使ってください。
ささくれている箇所は、念入りにならしてください。裸足で歩く場所なら、なおさらです。ここを整えておくと、塗料の乗りも良くなります。
削ったあと、粉を完全に払ってください。残ったまま塗ると、密着しません。ほうきで掃き、さらに固く絞った布で拭くと確実です。
ねじと金具の点検
塗る前に、構造も見ておいてください。塗ってしまうと、確認しにくくなります。
緩んだねじがあれば、締め直します。効かなくなっているなら、一回り太いものに替えるか、別の位置に打ち直してください。
さびが出ている金具も、この機会に交換します。屋外では、さびにくい材質のものを使ってください。さび汁が木に垂れると、跡が残ります。
腐っている板は、塗っても直りません。交換してください。触って柔らかい、色が濃く変わっている、ねじを回しても手応えがない。こうした板が対象です。特に、地面に近い部分と、支えている柱の根元を見てください。
塗る日を選ぶ
天気が、仕上がりを左右します。
塗った後、少なくとも二十四時間は雨が降らない日を選んでください。乾く前に濡れると、塗料が流れます。天気予報を見て、二日連続で晴れる日に始めるのが安全です。
気温は、五度以上が目安です。製品によって条件が違うので、缶の表示を見てください。寒すぎると乾かず、暑すぎると乾きが早すぎて刷毛の跡が残ります。
真夏の直射日光の下も、避けてください。塗った端から乾いて、むらになります。朝の早い時間か、日が傾いてからが向いています。
梅雨の時期は、湿度が高くて乾きません。春の終わりか、秋が、この作業に適した季節です。
塗る手順
準備が終われば、塗る作業自体は難しくありません。
まず、缶をよく混ぜてください。色の成分が底に沈んでいます。混ぜずに塗ると、後から色が変わります。棒で底からすくい上げるように、数分かけて混ぜます。
塗る方向は、木目に沿ってです。刷毛を一方向に動かし、往復させないでください。一枚の板を端から端まで、一気に塗り切ります。途中で止めると、そこに継ぎ目の跡が残ります。
厚く塗らないでください。特に染み込む型は、木が吸える量に限界があります。余った分は表面に残り、べたついたまま乾きません。塗った後、余分をふき取るという工程が指示されている製品もあります。
二度塗りが基本です。一度目が乾いてから、二度目を塗ります。乾燥の時間は製品ごとに違うので、表示に従ってください。
見落としやすい場所
塗り残しは、そこから傷みます。
木の切り口は、最も水を吸う部分です。板の端、柱の上面。ここは他の面より多めに塗ってください。実際、腐りはここから始まることが多い。
板と板の隙間、手すりの下面、階段の裏側。姿勢がつらい場所ほど、手を抜きがちです。細い刷毛を用意しておくと、届きます。
地面に近い部分も、忘れないでください。跳ね返った雨が当たり続けています。
塗り終えたら、日を改めて明るい時間に見直してください。作業中には見えなかった塗り残しが、見つかります。
道具と後片づけ
そろえるものと、終わった後の処理です。
刷毛は、幅の広いものと細いものを一本ずつ。広い面にはローラーやコテ状の道具を使うと、作業が早く進みます。塗料を入れる容器と、養生のための布も要ります。
油性の塗料を使うなら、うすめ液で洗います。水性なら水で落ちます。この違いも、選ぶときの判断材料になります。
そして、塗料の付いた布を、丸めて放置しないでください。油性の塗料が染みた布は、酸化するときに熱を出します。条件が重なると、自然に発火します。広げて乾かすか、水に浸してから捨ててください。
余った塗料は、缶の縁をきれいにしてから密閉します。次に使うときのために、塗った日付と場所を缶に書いておくと役立ちます。
作業の段取りを組む
デッキ全体を塗るとなると、一日では終わりません。段取りを決めてから始めてください。
初日に洗浄まで済ませ、乾かす時間を取り、翌日以降に削って塗る。この分け方が現実的です。洗った当日に塗ろうとすると、必ず乾燥が足りません。
床面を塗るときは、出口から遠い側から始めて、後ろ向きに進んでください。塗った面を踏まずに終われます。当たり前のようですが、考えずに始めて、自分が塗った面に囲まれてしまう人が実際にいます。
乾くまでの間、そこを通れなくなります。家の出入りに使う通路なら、別の経路を確保しておくか、区画を分けて日をずらしてください。
ペットや子どもが入らないよう、囲いも用意してください。乾く前に足跡が付くと、直すには削るしかありません。
周囲を汚さない準備
塗料は、飛びます。思っているより広い範囲に散ります。
デッキが建物に接している場合、外壁にかからないよう覆ってください。塗装用の養生テープと、薄い布を使います。粘着の強いテープを外壁に貼ると、はがすときに塗装を持っていくことがあるので、専用のものを選んでください。
下が土やコンクリートなら、板の隙間から落ちた塗料が跡になります。コンクリートに落ちると、簡単には落ちません。下にも布を敷いてください。
植木が近くにあるなら、覆うか移動させてください。塗料がかかると枯れることがあります。
そして、風の強い日は避けてください。飛んだ塗料が、隣家の車や洗濯物に届くことがあります。これは、やり直しの効かない失敗です。
塗る以外の長持ちの工夫
塗装だけが対策ではありません。水がたまらない状態を保つことが、それ以上に効きます。
板の隙間に落ち葉や砂が詰まると、そこが常に湿った状態になります。年に何度か、細い棒や掃除機でかき出してください。これだけで、腐る速さが変わります。
デッキの上に、鉢植えやマットを置きっぱなしにしないでください。その下だけ乾かず、変色して腐ります。位置を時々ずらすか、下にすのこを挟んで風を通してください。
柱の根元が地面に直接触れている場合は、特に注意が要ります。ここは土から水を吸い上げます。周囲に砂利を敷いて水はけを良くすると、傷みが遅くなります。
雨どいから落ちた水が、いつも同じ場所に当たっていないかも見てください。原因を直せば、その部分だけ早く傷むことがなくなります。
よくある質問
新しいデッキにも塗る必要がありますか
すでに防腐の処理がされた材なら、すぐには要りません。ただし、切断した断面は処理されていないので、そこだけは塗ってください。無処理の材なら、設置する前に全面を塗るのが理想です。
色を変えられますか
濃い色へは変えられます。薄い色にするには、今の塗料を削り落とす必要があります。染み込む型どうしなら、重ねるほど濃くなると考えてください。試し塗りをしてから決めると、失敗しません。
すぐはがれてしまいました
下地に汚れか水分が残っていたか、違う型の塗料を重ねた可能性があります。塗る前の乾燥が足りなかった場合も、同じことが起きます。残念ながら、はがれた部分は落としてやり直すことになります。
業者に頼むといくらですか
広さや傷み具合によりますが、一般的なデッキで数万円からが目安です。自分でやれば塗料代だけで済みますが、下地処理を含めると二日仕事になります。体力と時間を考えて決めてください。
まとめ
木部の塗装で仕上がりを決めるのは、塗る作業ではなく下地の処理です。汚れを落とし、古い塗膜を整え、完全に乾かしてから塗る。ここを省くと、何を塗ってもはがれます。塗料は、染み込む型と膜を作る型のどちらかを選び、同じ型で塗り重ねてください。塗り替えの合図は、水をかけて玉にならなくなったときです。傷んでから塗るのでは遅い。二年から三年ごとに手を入れれば、木は長くもちます。
洗浄の道具は高圧洗浄機の選び方、余った塗料の処分は塗料の捨て方、物置の設置は物置を自分で設置するにまとめています。