駐車場のコンクリートに、黒いしみができてしまった。作業中に受け皿をひっくり返した。物置に置いた缶から、いつのまにか漏れていた。油のしみは、時間がたつほど落ちにくくなります。そして、水で流して広げてしまうと、面積が何倍にもなります。この記事では、こぼした直後にやること、時間がたったしみへの対処、そして場所ごとの違いをまとめます。
この記事の要点
- 最初にやるのは「吸わせる」ことです。拭くのも流すのも、そのあとです。
- 水で流さないでください。油は水に浮いて広がり、汚れる面積が増えます。
- 吸わせるものは、猫砂、乾いた砂、吸着マット、市販の吸着材が使えます。
- コンクリートはしみ込みます。完全に元に戻すのは難しく、早さが結果を決めます。
- 吸った砂や布は油の付いたごみです。丸めて放置せず、その日のうちに出し方を決めます。
こぼした直後の3分でやること
油をこぼしたとき、多くの人がまず雑巾やウエスを取りに行きます。その前にやることがあります。最初の数分の動き方で、片付けの手間が何倍も変わります。
やることは3つだけです。順番も決まっています。
- 広がる方向をふさぐ。低いほうへ流れます。砂や吸着材を、流れの先に土手のように置きます。
- 上から吸わせるものをかける。油の上に、たっぷりかけます。薄くかけても効きません。
- 踏まない。靴の裏に付くと、家の中や車内まで運んでしまいます。
この順番が大事です。先に面積を止めて、それから吸わせる。逆にすると、吸わせている間に流れて広がります。
かけたものは、すぐにほうきで集めないでください。油を吸うには時間がかかります。5分から10分ほど置いて、上から軽く踏んで吸わせると、より深くまで届きます。
吸わせるものの選び方
| もの | 向いている場面 | 注意 |
|---|---|---|
| 猫砂(鉱物系) | 量の多いこぼれ。安くて手に入りやすい | 紙系や固まる系は吸いが弱いことがある |
| 乾いた砂・土 | 屋外の応急処置 | 細かい砂のほうがよく吸う |
| 市販の油吸着材 | 確実に吸わせたい場面 | 値段は高め |
| 吸着マット・ウエス | 少量、仕上げの拭き取り | 大量には向かない |
| 新聞紙 | ごく少量 | 吸う量が少なく、しみ込みを止めきれない |
ふだんから整備をする方には、猫砂を1袋、物置に置いておくことをおすすめします。安く、大量に使えて、こぼした瞬間に迷いません。
洗剤やお湯は、最後の仕上げに少量だけです。最初から使うと、油が溶けて広がり、そのまま排水へ流れていきます。
なぜ水で流してはいけないのか
ホースで流せば、その場からは消えたように見えます。しかし、実際には3つの問題が起きています。どれも、あとになって表に出てくるものです。
一つ目は、面積が広がることです。油は水に溶けず、水面に薄く広がります。1リットルの油が、何十平方メートルもの膜になります。
二つ目は、排水に流れることです。側溝や雨水の桝へ入った油は、川へ出ていきます。下水につながっていても、処理の設備に負担がかかります。家庭の排水にも油分の基準があることを覚えておいてください。
三つ目は、しみ込みが進むことです。水と一緒に、油がコンクリートの細かいすき間へ押し込まれます。表面は薄くなっても、内部に残ります。
下水や側溝に油を流す行為は、法令に触れます。近くの川で油の膜が見つかれば、原因を調べられることもあります。量が少ないから大丈夫、という話ではありません。
場所ごとの対処
コンクリート
もっとも多い場面で、もっとも落ちにくい相手です。コンクリートには細かい穴が無数にあり、油はそこへ入り込みます。表面を拭いても、内部に残った油がにじみ出てきて、また色が戻ることがあります。
だからこそ、しみ込む前に吸わせることがすべてです。かけるものを手元に置いて作業していれば、被害はほとんど出ません。
吸わせて集めたあと、残った色は専用のしみ取り剤か、油汚れ用の洗剤とブラシで落とします。洗剤は少量の水で泡立て、ブラシでこすり、汚れを布で吸い取ります。流すのではなく、拭き取るのが基本です。
それでも薄い影が残ることがあります。時間がたつほど、この影は消えにくくなります。完全に消せない場合もあると、あらかじめ知っておいてください。
アスファルト
アスファルトは、石油から作られた材料です。そのため、油や溶剤に弱く、長く触れていると表面が柔らかくなります。
吸わせて取るところまでは同じですが、強い溶剤や、パーツクリーナーを大量に使うのは避けてください。汚れと一緒に、舗装まで傷めます。
洗剤を使う場合も、薄めて短時間で済ませます。油が広い範囲にしみた場合は、管理者に伝えるほうがよい場面もあります。
土・砂利
土にこぼした場合は、油を含んだ土をすくい取るのが基本です。表面だけでなく、下へ染みています。色の変わっている範囲を、スコップで掘って取り除きます。
取り除いた土は、油の付いたごみです。袋に入れ、自治体に出し方を確かめてください。量が多い場合は、業者に相談することになります。
「土に返るから大丈夫」と考えないでください。エンジンオイルは、土の中で簡単には分解されません。井戸や畑が近い場所では、とくに注意が必要です。
物置や倉庫の床
缶から漏れて、気づいたら床に広がっていた、という場面です。まず缶を移して、漏れを止めることが先です。
そのうえで、吸わせて集めます。屋内は換気をしてください。油のにおいがこもり、頭が重くなることがあります。
そして、漏れた原因を確かめます。容器の底がさびていた、ふたが緩んでいたというのが典型です。同じ容器を使い続けると、また起きます。
衣類や靴に付いた場合
作業着に付いた油は、洗濯機にそのまま入れないでください。槽の内側に油が残り、次に洗う衣類に移ります。
先に、固形石けんか食器用洗剤を直接つけて、もみ洗いします。落ちる範囲を落としてから、洗濯機へ入れます。それでも、完全には落ちないことが多いものです。
そして、油の付いた衣類を乾燥機に入れないでください。熱が加わり、布が重なる状態は、発火の条件に近づきます。この危険については油の付いたウエスの捨て方に詳しく書きました。
靴の裏に付いた場合は、家に入る前に気づくことが大事です。玄関から廊下、車の運転席まで、点々と広げてしまいます。作業のときは、専用の靴やサンダルを決めておくと確実です。
吸ったあとのごみの扱い
油を吸った砂、マット、布は、すべて油の付いたごみになります。区分は自治体によって違うので、必ず確かめてください。「燃やすごみ」で受け入れる地域が多いものの、量によって扱いが変わることもあります。
そして、丸めて袋に押し込み、室内に置かないでください。油を含んだものは、酸化のときの熱がこもると発火することがあります。屋外の日陰に置き、収集日に出します。
量が多い場合は、家庭ごみとして出せる範囲を超えることがあります。一度に何袋も出す前に、窓口に相談してください。
集めた油を、処理箱に入れて固める方法もあります。液体が残らない形にしてから出すという考え方は、廃油と同じです。詳しくは廃油処理箱の捨て方を参照してください。
ご近所や管理者への伝え方
共用の駐車場や、道路に面した場所でこぼした場合は、片付けと同時に、伝えることも考えてください。
油のしみは目に付きます。黙っていると、あとから「誰がやったのか」という話になり、余計に気まずくなります。先に自分から伝えて、片付けた旨を報告するほうが、話は簡単に済みます。
伝えるときは、何をこぼしたか、どれだけの量か、どう片付けたかを具体的に言ってください。「エンジンオイルを500ミリリットルほどこぼし、吸着材で取ってから洗剤で拭きました」と言えれば、相手も状況をつかめます。
道路や側溝に流れ出てしまった場合は、量によっては自治体や消防に連絡することになります。川に達すれば、油の膜が下流まで広がります。自分で追いきれないと感じたら、早めに相談してください。
こぼさないための準備
ここまでの後始末の手間を知ると、準備の大切さが分かります。作業を始める前にやっておくことを挙げます。どれも数分で終わることばかりです。
- 広めに段ボールを敷き、その上に新聞紙を重ねる。受け皿の下だけでは足りません。
- 受け皿は、抜ける量より大きいものを使う。ぎりぎりでは、勢いで跳ねて外へ出ます。
- 猫砂かウエスを、手の届く場所に置いておく。こぼしてから取りに行くと、その間に広がります。
- 移し替えは、じょうごを使う。缶から缶へ直接注ぐと、必ずこぼれます。
- 作業のあと、容器のふたをその場で閉める。あとでやろうとして、倒すことがあります。
集合住宅の駐車場では、そもそも整備を禁じている場合があります。油のしみは管理側との争いのもとになりやすい部分です。作業してよい場所かを、先に確かめてください。
燃料をこぼした場合は、別の危険がある
ここまではエンジンオイルの話です。ガソリンや灯油をこぼした場合は、優先することが変わります。
油と違って、燃料は蒸発します。そして、蒸発した蒸気に火が付きます。だから、最初にやるのは吸わせることではなく、火の気を止めることと、換気することです。
エンジンを切る、近くのたばこを消す、スイッチに触らない。ガソリンの蒸気は空気より重く、床の近くにたまります。屋内なら、窓を開けて風を通してください。
そのうえで、吸着材で吸い取ります。吸ったものは屋外で広げて乾かし、においが消えるまで火気に近づけないようにします。ガソリンを扱うときの注意は携行缶の噴き出し事故やガソリン携行缶の選び方にまとめました。
灯油の場合は、火が付きにくいものの、においが長く残ります。床材に染みると、数週間にわたって気になることがあります。吸い取ったあと、水拭きではなく、洗剤を含ませた布で何度か拭き取るほうが早く収まります。
車内にこぼした場合
廃油の容器を車で運ぶときに起きるのが、これです。荷室のカーペットに染みると、家の駐車場の何倍も手間がかかります。
まず、吸着材やウエスで、上から押して吸わせます。こすらないでください。こすると、繊維の奥へ広げてしまいます。
次に、車内用の洗剤を少量つけて、押して吸い取る作業を繰り返します。一度で落とそうとせず、回数を分けるほうが結果がよくなります。
そして、窓を開けて乾かしてください。湿ったまま閉めると、においとかびが残ります。車内の掃除の道具は車内の掃除に必要な道具にまとめました。
運ぶときの防ぎ方は簡単です。容器を箱に入れ、周りを詰め物で固定し、下に厚手の袋を敷く。これだけで、倒れても被害は箱の中で止まります。
よくある質問
Q. 洗剤で洗って、そのまま流すのはだめですか。
A. 洗剤で油を細かい粒にしても、油そのものがなくなるわけではありません。排水へ移るだけです。吸わせて取り除いたあと、残った薄い汚れに少量の洗剤を使い、布で拭き取ってください。
Q. 時間がたったしみは、もう落ちませんか。
A. 薄くすることはできますが、完全に消えないことが多くあります。あきらめる前に、次の順で試してみてください。コンクリート用のしみ取り剤を試す価値はあります。それでも残る場合、上から塗る、洗浄を専門の業者に頼む、という選択肢になります。
Q. 高圧洗浄機で飛ばすのはどうですか。
A. 水で流すのと同じことで、しかも勢いがあるぶん周囲に油を飛び散らせることになります。吸わせて取り除いたあと、仕上げに使うなら構いませんが、最初の手段にはしないでください。使い方の注意は高圧洗浄機の選び方に書きました。
Q. 猫砂は、固まるタイプでもよいですか。
A. 固まるタイプでも使えますが、鉱物系で固まらないタイプのほうが、油を吸う力は強いように感じています。紙系は軽くて扱いやすい反面、量が必要です。どれを使う場合も、たっぷりかけるのが要点です。
まとめ
油をこぼしたときの手順の順番は、広がりを止める、吸わせる、集める、最後に少量の洗剤で拭き取るです。水で流すのは、いちばんやってはいけないことです。
コンクリートやアスファルトは、時間がたつほど落ちにくくなります。早さが結果を決めます。だからこそ、吸わせるものを手元に置いてから作業を始めてください。
そして、吸ったあとに残る砂や布は、どれも油の付いたごみです。丸めて放置せず、屋外に置いて、その日のうちに出し方を決めてください。
使った布の始末は油の付いたウエスの捨て方、灯油の場合は灯油をこぼした時の対処、吸わせた油の出し方は廃油処理箱の捨て方で扱っています。
