引き戸が重い、途中で引っかかる、閉めても隙間が残る。こうした症状の原因は、ほとんどが三つのどれかです。溝にごみがたまっている、戸車が傷んでいる、建物が動いて枠がゆがんでいる。このうち最初の二つは、自分で直せます。しかも、溝の掃除だけで解決する場合が相当な割合を占めます。工具を買う前に、まず掃除機と割り箸で溝を掃除してみてください。この記事では、原因の切り分けから、部品の交換までを順に書きます。
この記事でわかること
- 症状から原因を切り分ける方法
- 掃除だけで直る場合の手順
- 戸車の調整と交換
- 襖と障子で違う点
まず溝を掃除する
費用も工具もかからない方法から試してください。これで直る例が、想像以上に多いものです。業者を呼ぶ前に、必ずここから始めてください。
下の溝には、ほこり、砂、髪の毛、食べこぼしがたまります。特に、玄関に近い引き戸や、台所の引き戸で汚れが速く進みます。
掃除機の細いノズルで吸い取り、残った汚れは割り箸の先で削り出します。角に固まった汚れは、古い歯ブラシでこすると落ちます。
仕上げに、固く絞った布で拭いてください。濡らしすぎると、木の溝では膨らんで、かえって動きが悪くなります。
上の溝も見てください。引き戸は上の溝で振れ止めをしているので、ここに汚れがあると引っかかります。手が届きにくい場所ですが、布を棒に巻き付ければ拭けます。
戸車を見る
掃除をしても直らなければ、次に見るのは戸車です。引き戸の下に付いている、小さな車輪のことを指します。
戸を持ち上げて外し、裏返して見てください。多くの引き戸は、少し持ち上げて手前に引けば外れます。上の溝に深く差し込んでから、下を手前に出す形です。
戸車が回るかどうかを、指で回して確かめます。回らない、引っかかる、がたつく。どれも交換の対象です。
髪の毛が軸に巻き付いていることもあります。この場合は、取り除くだけで回るようになります。ピンセットか、細いドライバーで引き出してください。
戸車が摩耗して、直径が小さくなっていることもあります。新品と比べないとわかりにくいのですが、片方だけ沈んでいるなら疑ってください。
戸車の高さを調整する
戸車には、高さを変えられる形式があります。この形式なら、部品を替えずに傾きを直せます。
戸の下側面か、正面の下部に、小さなねじが見えます。これを回すと、戸車が上下します。プラスドライバーで回せます。
戸が傾いている場合、下がっている側のねじを回して持ち上げます。少しずつ回して、そのたびに動かして確かめてください。
上げすぎると、上の溝に強く当たって重くなります。ちょうど滑らかに動く位置を探してください。
閉めたときに枠との隙間が均一になるかどうかが、判断の目安です。上だけ、下だけが空いているなら、まだ調整が要ります。
戸車を交換する
傷んでいれば、部品を替えます。数百円から千円台です。
- 戸を外して、平らな場所に寝かせる
- 戸車を留めているねじを外す
- 古い戸車を取り出す。固い場合はマイナスドライバーでこじる
- 同じ寸法の新しい戸車をはめる
- ねじを締める。締めすぎない
- 戸を戻して、動きを確かめる
部品を買うときは、外した現物を持っていってください。戸車には多くの種類があり、寸法と形が合わないと使えません。
見るべきは、車輪の直径、取り付け部分の幅と長さ、ねじの位置、そして車輪の形です。溝の形に合わせて、平らなものと、V字型のものがあります。
片方だけ交換すると、高さが変わって傾きます。二つとも同時に替えてください。
レールを直す
戸の側ではなく、走る側に問題がある場合もあります。ここも確認してください。
金属のレールが付いた引き戸では、レールが曲がることがあります。重いものを落とした、上に乗った、といった原因です。
軽い曲がりなら、当て木をしてハンマーで叩けば戻ります。直接叩くと傷が付くので、必ず木を当ててください。
レールが浮いている、ねじが緩んでいる場合は、締め直します。ねじ穴が広がっていれば、爪楊枝と接着剤で埋めてから打ち直してください。
木の溝がすり減っている場合は、テープ状の部材を貼る方法があります。溝の幅に合わせて貼るだけで、滑りが戻ります。
滑りをよくする道具
掃除をしても少し重い、という程度なら、補助の道具が使えます。
引き戸の溝に塗る、ろう状の製品があります。棒状で、溝に直接こすりつけて使います。数百円で、効果はすぐ出ます。
吹き付ける形式の潤滑剤もありますが、こちらは注意が要ります。油分がほこりを集め、しばらくすると前より悪くなることがあります。
使うなら、油分の残らない形式を選んでください。製品の表示に、乾く形式かどうかが書かれています。
ろうそくを溝にこすりつける方法もあります。手元にあるもので済ませたい場合には使えます。
襖の場合
襖には戸車が付いていません。木の枠が、そのまま溝の上を滑る構造です。
だから、滑りをよくするには、接する部分の摩擦を減らすことになります。溝に貼るテープ状の部材が、最も効きます。
襖の下枠に貼る方法もあります。どちらか一方に貼れば十分です。両方に貼ると、厚みで動きが変わることがあります。
襖が重い原因として、湿気で膨らんでいる場合もあります。梅雨時に重くなり、乾燥する季節には軽くなる。こうした変化があるなら、湿気が原因です。
この場合、削るのは最後の手段です。乾燥する季節に隙間ができてしまいます。まず除湿を試してください。
障子の場合
障子も襖と同じく、枠が直接溝を滑ります。
ただし、障子のほうが軽く、枠も細いため、ゆがみが出やすいという特徴があります。
枠がねじれていると、閉めたときに上下のどちらかに隙間が残ります。この場合、戸を外して平らな場所に置き、重しを乗せて数日置くと戻ることがあります。
組んである部分が緩んでいるなら、木工用の接着剤を差し込んで固めます。隙間に流し込み、はみ出した分を拭き取ってください。
建物のゆがみが原因の場合
掃除も部品交換もしたのに直らない。この場合、枠そのものがゆがんでいます。
木造の住宅では、年月とともに建物が動きます。地盤の沈下、木材の乾燥と収縮、地震の影響。原因はいくつもあります。
判断の目安として、戸を外した状態で枠を見てください。上下の溝が平行でない、左右で高さが違う。こうした状態なら、枠のゆがみです。
軽いゆがみなら、戸車の調整で吸収できます。大きい場合は、枠の調整か、戸を削る作業になります。
ここまで来たら、建具を扱う業者に相談してください。無理に削ると、元に戻せません。
外すときの注意
戸を外す作業には、いくつか気をつける点があります。
戸は思っているより重いものです。ガラスが入った戸なら、なおさらです。一人で無理なら、二人で作業してください。
外した戸は、壁に立てかけます。倒れないよう、角度を付けすぎないでください。ガラスの戸が倒れると、危険です。
外れない戸もあります。上の溝が浅い、外れ止めの部品が付いている、といった場合です。無理に力をかけず、外れ止めを探してください。溝の上部に、小さな部品が付いていることがあります。
戻すときは、外したときの逆です。上を先に入れ、下を溝に落とします。
閉まりきらない場合
動きは軽いのに、最後まで閉まらないという症状もあります。
まず、溝の端に汚れが固まっていないか見てください。一番奥は掃除が行き届かない場所です。
戸当たりのゴムが劣化して、膨らんでいることもあります。硬くなったゴムは交換できます。
引き手の金具が緩んで、出っ張っている場合もあります。ねじを締め直してください。
複数の戸が重なる部分では、戸どうしが当たっていることもあります。順番を入れ替えると解決する場合があります。
音が出る場合
動かすときに出る音も、状態を知らせる合図になります。音の種類で原因の見当がつきます。
ごろごろという音なら、戸車の軸が傷んでいます。交換の時期です。
きしむような音なら、木と木がこすれています。滑りをよくする部材を使ってください。
金属が擦れる音なら、レールと戸車が正しく噛み合っていません。高さの調整を見直してください。
音が急に変わったら、何かが起きています。放置すると、部品が完全に壊れます。
日ごろの手入れ
直した後は、その状態を保つ工夫をしてください。手間はほとんどかかりません。
掃除機をかけるとき、溝も吸ってください。専用のノズルがなくても、細い口のもので足ります。数秒の作業です。
年に一度、戸を外して溝を拭くと、状態が長く保てます。大掃除のときにやっておくと忘れません。
そして、戸を乱暴に閉めないことです。勢いよく閉めると、戸車と枠に衝撃がかかります。子どもがいる家庭では、閉まる速度を抑える部品を付ける方法もあります。
賃貸の場合
借りている住まいでは、どこまで手を入れてよいか迷います。
掃除と、滑りをよくする部材の使用は、通常の手入れの範囲です。問題になることはありません。
戸車の交換は、部品を元に戻せるなら実務上は問題になりにくいのですが、設備の不具合として管理会社に連絡するほうが筋です。貸主の負担で直してもらえる可能性があります。
枠のゆがみは、建物の問題です。これは確実に貸主側の対応になります。自分で削ったりしないでください。
押し入れとクローゼットの戸
同じ引き戸でも、収納の扉は構造が違うことがあります。
上から吊る形式があります。下に戸車がなく、上のレールで支える構造です。この形式では、下の溝の掃除より、上のレールと吊り車の点検が重要になります。
折れ戸の形式もあります。二枚の板が中央で折れる構造で、上下に軸があります。動きが悪いときは、軸の部分とレールを見てください。
どちらも、調整用のねじが付いていることが多いはずです。扉の上部か側面を探してください。取扱説明書が残っていれば、調整の方法が載っています。
中に物を詰め込みすぎて、扉が押されている場合もあります。これは扉の問題ではありません。
玄関の引き戸
外に面した引き戸は、条件がさらに厳しくなります。
砂とほこりが直接入るので、溝が汚れる速度が室内の戸とは比べものになりません。掃除の頻度を上げてください。
雨の影響で、金属部分が錆びることもあります。戸車が錆びると、回らなくなります。
防犯の面でも、動きが悪い戸は問題です。鍵がかかりにくい、閉めきれないという状態は、そのまま侵入されやすさにつながります。
玄関の引き戸は、建物の骨組みに近い部分にあるため、ゆがみの影響も受けやすい場所です。動きが急に悪くなったら、建具の業者に見てもらってください。
よくある質問
潤滑剤を吹いてもすぐ重くなります
油分がほこりを集めています。一度、溝と戸車をきれいに拭き取ってください。そのうえで、油分の残らない形式の製品か、ろう状の部材を使ってください。吹き付ける形式は、この用途には向きません。
戸車の部品が見つかりません
古い建具では、同じ製品がないことがあります。この場合、寸法の近い汎用の部品で代用できることがあります。現物を持ってホームセンターの建具の売り場で相談してください。取り付け部分の加工が必要になる場合もあります。
閉めても隙間から光が入ります
戸車の高さを調整すると、改善することがあります。それでも残るなら、枠のゆがみか、戸の反りです。隙間を埋める部材を貼るという対処もあります。冬の隙間風対策としても効きます。
子どもが指を挟みます
閉まる速度を抑える部品や、指を挟まないようにするカバーが市販されています。数百円から千円台です。引き戸は勢いがつきやすいので、小さな子どもがいる家庭では検討する価値があります。
まとめ
引き戸が重いときは、まず溝を掃除してください。これで直る例が多くあります。次に戸車を見て、回らなければ交換します。部品は数百円で、作業は三十分ほどです。高さを調整できる形式なら、ねじを回すだけで傾きが直ります。滑りをよくする部材は、油分の残らないものを選んでください。吹き付ける潤滑剤は、ほこりを集めて逆効果になります。そして、掃除も部品交換も効かないなら、枠のゆがみです。ここからは業者の領域になります。
襖と障子の張り替えは障子とふすまの張り替え、網戸の手入れは網戸の張り替えに必要な道具、隙間風の対策は窓の結露・すきま風対策にまとめています。