カセットボンベを燃料にする機器が増えています。発電機、暖房機、草刈機、高圧洗浄機、投光器。どれもガソリンを扱わずに済む手軽さが売りです。ただし、こんろと同じ感覚で使うと期待した性能が出ません。理由は一つで、連続して長く使うと缶が冷え、ガスが出なくなるからです。この記事では、カセットガス式の機器に共通する弱点と、その前提でどう選び、どう使うかをまとめます。
この記事でわかること
- カセットガス式の機器が苦手とする場面
- 缶が冷えて出力が落ちる仕組みと対策
- 機種ごとの向き不向き
- ガソリン式と選び分ける基準
連続運転で缶が冷える
缶の中のブタンは、液体から気体になるときに周囲の熱を奪います。ガスを使い続けると、その熱が缶そのものから奪われ、缶の温度が下がっていきます。缶が冷えれば内圧が下がり、出てくるガスの量が減ります。
こんろで鍋を温める程度なら、消費が少ないのでこの影響は小さく済みます。しかし発電機や暖房機は、こんろの何倍もの量を連続して使います。気温20℃の日でも、30分ほど運転すれば缶の表面に霜が付きます。そこから先は、出力が目に見えて落ちていきます。
カタログに書かれた出力や運転時間は、条件のよい環境での数字です。気温が低い日、風が強い日、長時間の連続運転では、その数字に届きません。これは製品の欠陥ではなく、燃料の性質による限界です。
メーカーが用意している対策
この弱点は当然知られているので、機器の側でいくつかの工夫がされています。どんな仕組みが入っているかを知っておくと、製品選びの基準になります。
一つは、エンジンや燃焼部の熱を缶へ戻す仕組みです。排熱の一部を缶の収納部へ導き、冷えるのを打ち消します。この機構がある製品は、寒い日でも出力が保たれやすくなります。
もう一つは、缶を複数本同時に使う設計です。二本、三本と分散させれば、一本あたりの消費が減り、冷え方が緩やかになります。発電機や大きめの暖房機で採用されています。
取扱説明書に、使用できる気温の範囲が書かれている製品もあります。ここに下限が示されていれば、それが実用の限界です。数字が書かれていない製品は、5℃を下回ると厳しいと考えておくのが無難です。
機種ごとの向き不向き
用途によって、カセットガス式が向く場面と向かない場面があります。共通しているのは、短く区切って使う作業には強く、長く回し続ける作業には弱いという点です。以下、代表的な機種ごとに見ていきます。
発電機は、停電時の非常用として持つなら有力です。ガソリンを備蓄しなくてよい点、始動が簡単な点、保管中に燃料が傷まない点が利きます。一方で、長時間の連続運転や、大きな消費電力の機器を動かす用途には向きません。冷蔵庫を数時間動かす、照明と携帯電話の充電を賄う、この程度が現実的な範囲です。
暖房機は、屋外での一時的な暖を取る用途に向きます。ただし消費が速く、一本で二時間前後しか持ちません。一日中の暖房を賄おうとすると本数がかさみます。長時間の暖房には、石油ストーブのほうが向いています。
草刈機は、狭い庭や短時間の作業なら十分に使えます。混合燃料を作る手間がなく、始動も軽い。ただし、長い畦や斜面を一日かけて刈るような作業では、缶の交換が頻繁になり、かえって手間が増えます。作業量が一定を超えるなら、エンジン式か充電式を検討してください。
高圧洗浄機や投光器も同じ考え方です。短時間で終わる作業、電源のない場所での一時的な使用に向きます。洗車や玄関先の掃除なら十分ですが、外壁を一面洗うような作業では缶の交換が続きます。投光器は消費が比較的穏やかなので、夜間の短時間の作業には使いやすい部類です。いずれも、電源が取れる場所なら電気式のほうが手間がかかりません。
出力が落ちたときにできること
使っている最中に力が落ちてきたら、缶を触ってみてください。冷たければ温度が原因です。
- 予備の缶と交換する。外した缶は常温に戻せばまた使える
- 缶を複数本使える機種なら、最初から全数を装着しておく
- 使わないときは缶を屋内や車内の暖かい場所に置き、冷えたら入れ替える
- 寒冷地向けの缶を使う。イソブタンやプロパンを混ぜた製品は低温に強い
- 連続運転を避け、途中で休ませる。休んでいる間に缶の温度が戻る
やってはいけないのは、缶を火であぶること、熱湯に浸けること、機器の排気を直接缶に当てることです。どれも缶の温度が制御できない形で上がります。缶を温めたいなら、体温か、40℃以下のぬるま湯までにとどめてください。
機器に断熱材を巻いて缶を保温する方法も見かけますが、メーカーが想定していない改造です。排熱の経路を変えてしまうと、別の場所に熱がこもります。取扱説明書にない方法は避けてください。
排気とにおいの扱い
発電機と草刈機はエンジンを回すので、排気に一酸化炭素が含まれます。ガソリン式と同じで、屋内やガレージの中では使えません。カセットガスだから安全ということはありません。
停電時に発電機を使いたい場面では、この制約が効いてきます。屋外に置き、窓から離れた位置で運転し、延長コードを室内へ引き込む。この手順が必要です。玄関先やベランダでの運転は、排気が室内へ入る可能性があるため避けてください。
暖房機は屋内で使える製品もありますが、換気が前提になります。一時間に一度、数分の換気を入れてください。眠っている間の使用は、どの製品でも避けます。
保管と持ち運び
使い終わったら、缶を必ず外してください。取り付けたまま保管すると、缶のパッキンが押された状態が続き、劣化が早まります。機器側のゴム部品にも負担がかかります。
本体は乾いた場所に置きます。エンジンを積んだ機器は、湿気で内部が錆びると始動しにくくなります。物置に入れるなら、地面からの湿気を避けて台の上に置いてください。
非常用として備える場合は、年に一度は動かしてください。何年も使わずに置いた機器は、いざというときに始動しないことがあります。点火装置、燃料の経路、ゴムのパッキン。どれも動かさないと傷みます。防災訓練の日や、季節の変わり目に決めておくと忘れません。
車で運ぶときは、本体と缶を分けて積みます。缶は車内に置きっぱなしにせず、目的地に着いたら降ろしてください。
ガソリン式と選び分ける基準
どちらを選ぶか迷ったときは、一回の作業にどれだけの時間を使うかで考えるのが簡単です。価格や出力より、この一点のほうが満足度を左右します。
一回の作業が一時間以内で、使う頻度も低いなら、カセットガス式が有利です。燃料の備蓄が要らず、保管中に劣化せず、始動が楽です。年に数回しか使わない草刈機や、非常用の発電機がこれに当たります。
一回の作業が数時間に及ぶ、あるいは毎週のように使うなら、ガソリン式のほうが結果的に楽です。缶の交換に追われず、燃料の単価も安く済みます。ただし混合燃料の管理と、携行缶の保管が必要になります。
もう一つの選択肢が充電式です。草刈機や高圧洗浄機では、電池の性能が上がって実用になってきました。排気が出ないので屋内でも使え、音も静かです。作業時間が電池の容量で決まる点は、缶が冷える問題と似ていますが、予備の電池を用意すれば解決します。
必要な缶の本数を見積もる
機器を買うときに見落とされやすいのが、缶の消費量です。本体の値段だけで比べると、後から燃料費で驚くことになります。
取扱説明書やカタログには、一本あたりの運転時間が書かれています。暖房機なら二時間前後、発電機なら一時間から二時間、草刈機なら一時間前後というのが一般的な水準です。この数字は最も条件のよい状態でのものなので、実際には二割から三割短くなると見ておいてください。
停電に備えて発電機を持つなら、何時間動かしたいかから逆算します。一日に三時間、三日分と決めれば九時間。一本で一時間半なら六本が必要です。ここに余裕を足して、十本前後というのが一つの目安になります。
草刈りなら、刈る面積から見積もります。庭や小さな畑なら一本で足りますが、畦や斜面を含めると三本、四本と必要になります。作業の途中で缶が切れると段取りが崩れるので、多めに用意しておくほうが実際的です。
使う前に確認しておくこと
非常用の機器ほど、使う場面は切迫しています。その場で説明書を読む余裕はありません。買ったときに一度、落ち着いた状態で試しておいてください。
- 缶の取り付け方と、レバーの動かし方を手で覚える
- 始動の手順を通しでやってみる。発電機なら、実際に何かをつないで動かす
- 使いたい機器の消費電力を調べ、発電機の出力に収まるか確かめる
- 延長コードの長さが足りるか、屋外から室内まで引けるか確認する
- 運転音の大きさを聞いておく。集合住宅や夜間では問題になる
- 説明書を本体と同じ場所に保管する
この確認には三十分もかかりません。使えると思っていた機器が使えなかった、という事態を避けられるのであれば、十分に見合う時間です。
音と設置場所の問題
発電機と草刈機は、思っているより音が出ます。カセットガス式だから静かということはなく、エンジンを回す以上はガソリン式と同じ水準の音になります。停電の夜に住宅地で発電機を回すと、近隣に響きます。
設置する場所は、排気が室内へ入らないことを第一に決めますが、そのうえで隣家の窓から離すことも考えてください。壁に向けて置くと音が反射して大きくなります。庭の中央や、建物から離れた位置のほうが結果的に静かです。
集合住宅では、発電機を使える場所がほとんどありません。ベランダは排気の面でも規約の面でも使えず、共用廊下も同じです。集合住宅にお住まいなら、発電機より大容量の蓄電池のほうが現実に即しています。持っていても使えない道具に費用をかけるより、使える道具を選ぶほうが確実です。
草刈機の場合は、作業する時間帯に配慮してください。早朝や日曜の朝は、音の問題で苦情になりやすい時間です。近所づきあいの面では、道具の選び方より時間帯のほうが効きます。
よくある質問
こんろ用の缶をそのまま使えますか
規格は共通なので、基本的には使えます。ただし取扱説明書で特定のメーカーの缶を指定している製品があります。指定がある場合は従ってください。消費が速い機器ほど、缶と器具の相性が出力に影響します。
発電機で何が動かせますか
製品の出力によりますが、家庭用の小型機なら、照明、携帯電話の充電、小型の冷蔵庫、扇風機あたりが現実的です。電子レンジ、エアコン、電気ケトルのように消費電力の大きい機器は、動かないか、動いても缶がすぐ冷えます。使いたい機器の消費電力を先に調べてください。
冬の屋外でも使えますか
気温5℃を下回ると、普通の缶では厳しくなります。寒冷地向けの缶を使い、予備を暖かい場所に置いて交換しながら使うのが現実的です。排熱を缶へ戻す機構がある製品なら、もう少し低い気温まで使えます。
缶を二本使う機種で、一本だけ装着してもよいですか
取扱説明書で認められていなければ避けてください。設計上、二本で分担するはずの消費が一本に集中し、冷え方が急になります。出力が出ないだけでなく、機器の動作も不安定になります。
使い終わった缶が冷たいまま外れません
缶が冷えて縮み、収納部に張り付いたように感じることがあります。無理にこじると缶の切り欠きが変形するので、数分置いて常温に戻してから外してください。機器が熱を持っている場合も、冷めるまで待ちます。
草刈機はエンジン式と比べて力が弱いですか
柔らかい草を刈る分には差を感じませんが、太い茎や密生した場所では違いが出ます。連続して負荷をかけると缶が冷え、回転が落ちるためです。刈る対象が笹や灌木に及ぶなら、エンジン式のほうが作業は進みます。
まとめ
カセットガス式の機器は、燃料の管理が楽で始動も簡単ですが、連続して使うと缶が冷えて出力が落ちます。この性質を前提に、短時間の作業や非常用という位置づけで選んでください。予備の缶を暖かい場所に置いて交換する、寒冷地向けの缶を使う、連続運転を避けて休ませる。この三つで実用の幅はかなり広がります。長時間の作業や毎週の使用が前提なら、ガソリン式か充電式のほうが向いています。
缶の温度の性質は何度まで耐えられるか、保管の条件はカセットボンベの保管場所、備蓄の本数は家に何本まで置けるかにまとめています。