モンキーレンチとスパナの違い|なめないために選ぶのはどれか

目次

先に答えを書きます

  • ボルトやナットをなめずに回したいなら、メガネレンチが最も確実です。
  • モンキーレンチは1本で多くのサイズに合う反面、角をなめやすい工具です。
  • 最初にそろえるなら、よく使うサイズのコンビネーションレンチを数本。
  • モンキーレンチは、サイズが分からない場面の予備として持つのが向いています。

4つのレンチの違い

ボルトやナットを回す手工具には、形の違ういくつかの種類があります。

種類口の形強み弱み
モンキーレンチねじで口の幅を変えられる1本で多くのサイズに合うなめやすい。口が厚く、狭い場所に入りにくい
スパナ決まった幅で、先が開いている横から差し込める2面でしか掛からず、強い力に弱い
メガネレンチ輪になっていて、周りを囲む最もなめにくい上から差し込める場所でないと使えない
コンビネーションレンチ片側がスパナ、反対側がメガネ両方の良さを1本で使える1本につき1サイズ

この表の中で、選び方の軸になるのは「なめにくさ」です。

ボルトやナットの角が丸くなってしまうと、どの工具を持ってきても掛からなくなります。一度なめたボルトを外すのは、本来の作業より何倍も手間がかかります。

なめてしまったネジの外し方は、ネジがなめた・回らない時の対処で段階ごとにまとめました。ただ、そこに書いた方法を使わずに済むのが一番です。そのために、最初の工具選びがあります。

モンキーレンチがなめやすい理由

モンキーレンチは、ねじを回して口の幅を合わせる工具です。この便利な仕組みそのものが、弱点にもなっています。

わずかな隙間が残る

口の幅を変えられる以上、動く部分にはどうしてもわずかな遊びがあります。

ぴったり合わせたつもりでも、ナットとの間には小さな隙間が残ります。力をかけると、その隙間の分だけ口がずれ、角に力が集中します。これが、角を丸くする原因です。

使っているうちに、口が開いていく

回しているうちに、調整用のねじがわずかに動き、口が少しずつ開いてくることがあります。

最初はきちんと合っていても、何度か回すうちに緩んでいる。これに気づかないまま力をかけ続けると、ある瞬間に滑ります。

口が厚く、浅くしか掛からない

調整の仕組みを入れるため、モンキーレンチの頭は大きく、口は厚くなっています。

そのため、薄いナットや、奥まった場所にあるボルトには、浅くしか掛からないことがあります。浅い掛かり方で強く回せば、角をなめるのは時間の問題です。

メガネレンチは、なぜなめにくいのか

メガネレンチは、ナットの周りをぐるりと囲む形をしています。

スパナが2つの面でナットを挟むのに対し、メガネレンチは6つの面すべてに接して力を分散させます。一か所に力が集中しないので、角が丸くなりにくいのです。

そして、口が開いていないので、強い力をかけても広がりません。固く締まったボルトを最初に緩めるときは、メガネレンチが最も安心です。

6角と12角の違い

メガネレンチの内側には、形が2種類あります。

6角12角
ナットへの当たり方面で当たる角の近くの点で当たる
なめにくさなめにくい6角より、ややなめやすい
掛け直しの角度60度ごと30度ごとで、狭い場所で扱いやすい
向く場面固いボルト、錆びたボルト振り幅が取れない狭い場所

迷ったら、固く締まっていそうな場所には6角、と覚えておいてください。

12角は、レンチを振れる幅が狭い場所で役に立ちます。少しの角度で掛け直せるので、エンジンルームのような込み入った場所で便利です。

スパナにしかできないこと

なめにくさではメガネレンチに劣るスパナですが、スパナにしかできない仕事があります。

横から差し込めることです。

たとえば配管のつなぎ目のナット。管が通っているので、メガネレンチのように上からかぶせることができません。こういう場所では、口の開いたスパナが必要になります。

ただし、スパナで強い力をかけるときは注意してください。

  • 口の奥まで、しっかり差し込む。先端だけで掛けると、口が開いて滑ります
  • ナットの面に、平らに当てる。斜めに当たると、角をなめます
  • 固いものは、先にメガネレンチで緩める。スパナは、緩んだあとに素早く回す役に回します

メガネで緩めて、スパナで回す。両側がそろったコンビネーションレンチは、この使い分けを1本でできるように作られています。

それでも、モンキーレンチが役立つ場面

ここまで弱点ばかり書いてきましたが、モンキーレンチが要らないわけではありません。

  • サイズが分からない、あるいは毎回変わる:家の中のあちこちのナット
  • 大きなサイズのナット:水まわりの配管など、手持ちのレンチにないサイズ
  • インチとミリが混在している:古い機械や輸入品
  • とりあえず1本だけ持ち歩きたい:外出先や、車に積んでおく予備

とくに水まわりでは、大きなナットを扱うことがあります。蛇口の修理で使う工具の組み合わせは、水まわりの修理に必要な工具にまとめました。

なめないための使い方

モンキーレンチを使うなら、次の点を守ってください。

  1. 口を、ナットに隙間なく合わせる。少しきついくらいまで締めます
  2. ナットを、口の奥まで入れる。先端でつままないでください
  3. 回す向きを、取扱説明書の図で確かめる。回す向きによって、力を受ける側が変わります
  4. 少し回すごとに、口の締まり具合を確かめ直す。
  5. 固いと感じたら、無理に回さない。メガネレンチに持ち替えます

3番は、多くのメーカーが説明書や本体の刻印で示している点です。手元の製品の表示に従ってください。

そして5番。「固い」と感じた時点が、なめる直前です。そこで力を足すのではなく、道具を替える判断をしてください。

どれでも、やってはいけない扱い

柄にパイプを差して長くしないでください。レンチの柄の長さは、その口の大きさに見合った力で回せるように決められています。延長すれば、ボルトが耐えられる以上の力がかかり、ボルトが折れるか、レンチが割れます。割れた破片や、急に外れたレンチで手や顔をけがすることもあります。ハンマーで柄を叩くのも避けてください。叩いて使うことを前提にした専用の工具は別にあります。普通のレンチは、その衝撃に耐える作りではありません。

固いボルトを回したいとき、力を足す方向に考えがちです。長く触っていない屋外の機械ほど、その傾向は強くなります。

ですが、先に考えてほしいのは掛かり方を良くすることです。モンキーからメガネに替える。12角から6角に替える。浅く掛かっていたなら奥まで入れる。それだけで回ることが、実際には多くあります。

錆びついたボルトを回すとき

屋外に置かれた機械や、何年も触っていない金具のボルトは、錆で固まっていることがあります。ここで力任せに回すと、角をなめるか、ボルトそのものがねじ切れます。

順番を守ると、回る確率が上がります。

  1. 錆びた部分を、ワイヤーブラシで軽く落とす。工具の掛かりが良くなります
  2. 浸透潤滑剤を吹き付けて、時間を置く。すぐに回さず、しみ込むのを待ちます
  3. 6角のメガネレンチか、ソケットを奥までしっかり掛ける。ここでモンキーレンチやスパナは使いません
  4. 勢いをつけず、じわりと力をかける。瞬間的な力は、角をなめる原因になります
  5. わずかに締める方向へ動かしてから、緩める方向へ回す方法もあります。固着がはがれるきっかけになることがあります

2番の潤滑剤は、火気の近くで使わないでください。多くのスプレーは燃えやすい成分を含んでいます。使い方の注意は、同じく燃えやすいパーツクリーナーの保管と使い方と共通する部分があります。

それでも回らないなら、そこで止める判断も大切です。ボルトを折ってしまうと、外すのは格段に難しくなります。車の足回りなど、折れると困る場所であれば、整備工場に任せたほうが結果的に安く済みます。

サイズの選び方

レンチのサイズは、ナットの向かい合う2つの面の距離で表します。「10ミリのレンチ」なら、この距離が10ミリのナットに合う、という意味です。

いきなりセットを買う前に、自分が回したいものに使われているサイズを確かめるのが無駄のない順番です。

用途よく出てくるサイズの傾向
車やバイクの一般的な整備8・10・12・13・14・17ミリあたり
組み立て家具・自転車六角レンチが中心。ナットは10〜15ミリ前後が多い
水まわり大きめのナットがあり、モンキーレンチが出番になりやすい

この表はあくまで傾向です。実際に使われているサイズは、製品ごとに違います。作業の前に手持ちのレンチを一本ずつ当ててみて、ぴったり合うものを探すのが確実です。

もう一つ、ミリとインチを取り違えないでください。近いサイズどうしは、ほとんど見分けがつかない差しかありません。それでも、合っていないレンチはわずかにがたつき、角をなめる原因になります。この話は、六角レンチの選び方でも詳しく書きました。

そろえる順番

  1. よく使うサイズのコンビネーションレンチを、数本買う。作業する対象を見てから選びます
  2. 中くらいのモンキーレンチを1本、予備として持つ。
  3. ボルトの数が多い作業をするなら、ソケットレンチを考える。回す速さがまったく違います

3番のソケットレンチは、メガネレンチと同じく周りを囲んで回す工具です。車やバイクの整備を続けるなら、いずれ必要になります。差込角の選び方はソケットの差込角の選び方に、工具全体のそろえ方は最初に揃える工具にまとめています。

使ったあとの手入れ

レンチは丈夫な工具ですが、手入れの差は口の状態に出ます。

  • 油汚れを拭き取る。柄に油が残っていると、次に使うとき手が滑ります
  • 口の内側の錆を放置しない。錆はナットとの間にすき間を作り、掛かりを悪くします
  • 湿気の多い場所では、薄く油を塗ってしまう。
  • モンキーレンチの調整ねじに入ったごみを落とす。動きが渋くなると、口をぴったり合わせにくくなります

しまうときは、サイズの順に並べておくことをすすめます。探す時間が減るだけでなく、なくしたサイズにすぐ気づけます。作業の途中で「10ミリがない」と分かり、手近な合わないレンチで済ませてしまう。角をなめる失敗は、そういう場面からも生まれます。

気になる点

Q. ラチェットの付いたメガネレンチは便利ですか

A. ボルトを何回も回す作業では、とても便利です。

レンチを外さずに往復させるだけで回せるので、掛け直しの手間がなくなります。

ただし、内部の仕組みがある分、普通のメガネレンチほど強い力には向きません。固いボルトを最初に緩める作業は、普通のメガネレンチで行い、緩んだあとに持ち替えるのが無難です。

Q. 安いセットで足りますか

A. たまに使う程度なら、足りることが多いです。

気をつけたいのは、口の精度です。作りの甘いレンチは、口の寸法がわずかに大きく、合わせたときにがたつきます。これはなめる原因になります。

よく使う1〜2本のサイズだけは、精度の良いものを選ぶ。それ以外はセットで済ませる。そんな分け方も現実的です。

Q. モンキーレンチの大きさは、どれを選べばいいですか

A. 家庭の予備なら、中くらいのものが扱いやすいです。

大きすぎると、小さなナットに合わせにくく、狭い場所に入りません。小さすぎると、大きなナットに届きません。

製品には、最大でどこまで口が開くかが表示されています。回したいナットの大きさを測ってから選んでください。

Q. 締め付けの強さはどう判断しますか

A. 指定がある場所では、トルクレンチを使ってください。

普通のレンチでは、どのくらい締まったかは分かりません。とくにタイヤのホイールナットのように、締めすぎも締め不足も危険な場所では、数字で締める道具が必要です。トルクレンチの選び方を参照してください。

まとめると

  • なめにくさで選ぶなら、メガネレンチ。固いボルトには6角。
  • スパナは横から差し込む場面で。強い力は、先にメガネで。
  • モンキーレンチは便利な予備。口をしっかり合わせ、こまめに締め直す。
  • 柄を延長しない、叩かない。力より、掛かり方を良くする。
  • サイズは回したいものを見てから選ぶ。

モンキーレンチは、工具箱にひとつ入っていると心強い存在です。何にでも合う、というのはたしかに大きな利点です。

ただ、「何にでも合う」と「どれにもぴったり合う」は別の話です。回したいナットがはっきりしているなら、そのサイズ専用のレンチを選ぶ。それが、結局はいちばん早く、きれいに作業を終わらせる方法です。

ほかの工具を買い足すときの順番は、工具の選び方まとめで整理しています。

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この記事を書いた人

工具逆引き堂の運営者。乙種第4類危険物取扱者(令和3年8月取得)、第二種高圧ガス販売主任者(令和8年5月取得)。ガソリン・灯油などの燃料やカセットボンベの扱いを中心に、作業ごとに必要な工具と、法令・安全上の注意点を整理しています。資格の詳細と記事の守備範囲は運営者情報をご覧ください。

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