カセットこんろの事故は、器具の故障よりも使い方が原因で起きています。なかでも多いのが、こんろの上に大きすぎるものを載せることです。鉄板、グリルプレート、二つ穴の焼き網、直径の大きい土鍋。これらは熱を横へ広げ、ボンベを収めている場所へ流し込みます。缶が温まれば内圧が上がり、安全装置が働いて火が消えるか、それも間に合わなければ缶が裂けます。この記事では、やってはいけない使い方と、その理由をまとめます。
この記事でわかること
- こんろの上に載せてよい大きさの目安
- 二台並べ、風防、大鍋がなぜ危ないのか
- 安全装置が働いたときの正しい対応
- 点火しないときの切り分けと掃除
載せてよい大きさには理由がある
取扱説明書には、使える鍋の直径の上限が書かれています。多くの家庭用のこんろで24センチから26センチあたりです。この数字は、こんろの五徳に載る大きさという意味ではありません。炎の熱が鍋の底で跳ね返り、横へ広がったとき、ボンベの収納部まで届かない大きさという意味です。
鍋が大きいと、底で遮られた熱の逃げ場がなくなり、こんろ本体の天板を伝ってボンベ側へ流れます。天板が熱くなれば、その下にある缶も温まります。上限を超える鍋を使うのは、缶を弱火であぶっているのと変わりません。
特に危険なのが、こんろ全体を覆う形の鉄板です。焼き肉用の大きなプレートや、複数のこんろにまたがる幅の焼き網は、熱の逃げ場を完全にふさぎます。専用品として売られている鉄板であれば、そのこんろに合わせて設計されていますが、汎用品を載せるときは幅を必ず確認してください。
二台を並べて使わない
鍋を二つ使いたくて、こんろを二台くっつけて並べる。これは家庭でもキャンプ場でもよく見る光景ですが、避けてほしい使い方です。隣のこんろの炎と熱が、こちらの缶を温めるからです。
缶の収納部は、こんろの片側に寄っています。二台を隣り合わせに置くと、片方の缶がもう片方の炎の真横に来ることがあります。この配置で長時間使えば、缶の温度は確実に上がります。二台使うなら、間を30センチ以上あけるか、缶の収納部が外側を向くように置いてください。
同じ理由で、こんろの隣に炭火のコンロや焚き火台を置くのもよくありません。屋外では熱が逃げやすいと思いがちですが、風向き次第で熱は缶のほうへ流れます。
風防の使い方を間違えない
屋外では風で炎が流されるため、風よけを立てたくなります。風防そのものは有効な道具ですが、こんろ全体を囲ってしまうと熱がこもり、缶が温まります。
正しい使い方は、風上側だけを遮り、缶の収納部の側は開けておくことです。囲いを全周にするなら、缶の部分だけ外に出す配置にします。金属の風防は熱を反射するので、缶に向けて立てると逆効果になる点も覚えておいてください。
もう一つ、こんろを地面に直接置くと風の影響を受けやすくなります。地面近くを流れる風は乱れが大きく、炎が安定しません。テーブルの上に置くほうが、風防に頼らずに済みます。
安全装置が働いたときの対応
最近のカセットこんろには、缶の温度が上がりすぎたときにガスを遮断する仕組みが付いています。作動すると、缶を押さえていた部分が外れ、大きな音とともに火が消えます。初めて経験すると壊れたと感じますが、これは設計どおりの動作です。
作動したときにやってほしいのは、まずつまみを消火の位置に戻し、こんろが冷めるまで待つことです。すぐに缶を付け直して再点火するのは避けてください。原因が取り除かれていなければ、同じことが繰り返されます。
そのうえで、原因を探します。鍋が大きすぎなかったか、風防で囲っていなかったか、隣に熱源がなかったか、長時間の煮込みではなかったか。どれか一つは当たっているはずです。原因を直さずに使い続けると、次は装置が間に合わない場面が来ます。
取り付けと取り外しの手順
- 取り付ける前に、つまみが消火の位置にあることを確認する
- 缶の切り欠きと、こんろ側の突起の位置を合わせる。無理に押し込まない
- レバーを倒して固定する。抵抗を感じたら、一度外して向きを見直す
- 取り外すときは、必ず火を消して器具が冷めてから行う
- 外した缶は立てて置く。転がしてノズルをぶつけない
取り付けの向きを間違えたまま押し込むと、缶の切り欠き部分が変形します。変形した缶は次に使うとき密閉が甘くなり、漏れの原因になります。手ごたえが違うと感じたら、力で解決しようとしないでください。
使い終わったら、缶は外しておくのが基本です。付けたまま保管すると、パッキンが押されたままになり、劣化が早まります。次に使うときまで数日なら問題ありませんが、シーズンが終わったら必ず外してください。
点火しないときの切り分け
火が点かない原因は、いくつかに分けられます。順に確かめれば、たいていは特定できます。
まず缶を振って、液体の動く感触があるかを見ます。何も感じなければ空です。次に缶を手で握り、冷たければ温度が原因です。缶が常温で残量もあるのに点かないなら、器具側を疑います。
器具側で多いのは、バーナーの穴の詰まりと、点火装置の電極の汚れです。煮こぼれが固まって穴をふさいでいると、ガスが出ても火が回りません。針や歯ブラシで落としてください。電極は先端の白い部分と金属の先を、乾いた布で拭きます。濡れていると火花が飛びません。
火花は飛ぶのに点かない、という場合はガスが届いていません。缶の取り付けを確認し、それでも駄目なら器具の内部の問題です。分解はせず、買い替えを検討してください。カセットこんろは構造が単純なぶん、内部の部品が傷むと修理費が本体の値段に近づきます。
炎の色と形で状態を読む
正常な炎は、青く、内側の輪郭がはっきりしていて、音が静かです。この状態から外れたら、何かが起きています。
炎が赤やオレンジ色になるのは、空気が足りていないか、空気の取り入れ口にほこりが詰まっているためです。不完全燃焼につながるので、換気を確保したうえで取り入れ口を掃除してください。屋内でこの状態を放置すると一酸化炭素が出ます。
炎が片側だけ伸びる、あるいは一部の穴から出ていないのは、バーナーの詰まりです。炎がゆらいで安定しないのは風の影響か、缶の残量が少ない状態です。炎が大きく吹き上がるのは、缶が高温になっている可能性があります。この場合はすぐに消火してください。
屋内で使うときの換気
カセットこんろは屋内で使える器具ですが、換気は必要です。ガスが燃えるときに酸素を消費し、二酸化炭素と水蒸気を出します。締め切った部屋で長時間使うと、酸素が減って不完全燃焼が始まります。
目安として、鍋料理をする程度なら、換気扇を回すか窓を少し開けておけば十分です。停電時に暖房として長時間使う場合は、一時間に一度、数分の換気を入れてください。眠っている間の使用は避けます。
テントの中での使用は、屋内よりさらに危険です。空間が小さく、一酸化炭素が短時間で危険な濃度に達します。前室で使う場合も、確実な換気の経路を作ってください。
置く場所と周囲の片付け
こんろを置く面は、平らで、燃えにくく、動かないことが条件です。折りたたみのテーブルは便利ですが、天板がたわむ製品では鍋の重みで傾きます。湯が入った鍋が傾くと、火傷につながります。指で天板の中央を押してみて、はっきりたわむようなら別の台を使ってください。
周囲に置いてはいけないものも決まっています。紙皿、ふきん、レジ袋、キッチンペーパー。どれも炎に触れなくても、輻射熱だけで焦げます。特にレジ袋は溶けて縮み、こんろ側へ引き寄せられることがあります。調理台の上は、使う道具以外を置かない状態にしてください。
屋外では、地面の上に直接置くと安定しません。砂利や芝の上は特に不安定です。平らな板を一枚敷くだけで、こんろの足が沈まなくなります。テーブルがない場面では、この一枚が効きます。
頭上も見てください。テントのひさし、タープの生地、家の中なら吊り戸棚。炎から50センチ程度は何もない空間を確保します。生地は燃えなくても、熱で溶けて穴が開きます。
使い終わったあとの手入れ
手入れといっても、難しいことはありません。器具が冷めてから、天板と受け皿に落ちた汚れを拭く。これだけです。ただし、汚れを残したまま次の季節まで置くと、固まって落ちにくくなり、バーナーの穴に入り込みます。
五徳と受け皿は外せる製品が多いので、外して中性洗剤で洗います。バーナーの部分は水をかけないでください。内部に水が入ると、次に使うときに点火しにくくなります。固く絞った布で拭く程度にとどめます。
収納するときは、缶を外し、本体を乾いた状態で箱に戻します。専用のケースが付いている製品なら、それを使うのが一番です。ケースがないなら、点火装置のつまみが押されない向きで置いてください。荷物の下敷きになると、つまみが折れます。
子どもとペットがいる場所で使う
食卓でこんろを使う場面では、家族の動きも考える必要があります。こんろは食卓の中央ではなく、子どもの手が届きにくい側に寄せて置いてください。中央に置くと、全員から等しく近い位置になります。
つまみの位置にも注意が要ります。テーブルの縁に近い向きだと、体や袖が当たって火力が変わることがあります。つまみは壁側、あるいは大人が座る側へ向けておくのが安全です。延長コードやテーブルクロスの端が、こんろの近くを通っていないかも見ておいてください。
猫を飼っている家では、使い終わった直後のこんろに近づかせないでください。天板は火を消してからも数分は熱いままです。器具を片付けるまでの数分が、いちばん見落とされる時間です。
停電時に長時間使う場合
災害で電気やガスが止まったとき、カセットこんろは主力の熱源になります。ただし、普段の鍋料理とは使い方の条件が変わります。使う時間が長くなり、窓を開けにくい季節に当たることもあるためです。
長時間使うときは、一度に長く点けるのではなく、必要なときだけ点けて消す運用にしてください。湯は多めに沸かして保温容器へ移しておけば、点火の回数を減らせます。缶の消費も抑えられます。
換気は、寒くても省略できません。一時間に一度、二方向の窓を数分開けるのが基本です。一酸化炭素は無色無臭で、気づいたときには動けなくなります。電池式の警報器を一つ備えておくと、判断の助けになります。
よくある質問
こんろの本体に寿命はありますか
メーカーは設計上の標準使用期間としておおむね10年を示しています。ゴム部品と点火装置が経年で傷むためです。本体に貼られたシールで製造年月を確認できます。長く使っていない本体は、必要になる前に一度点火して動作を見ておいてください。
違うメーカーの缶を使ってもよいですか
カセットボンベは規格が共通なので、基本的には使えます。ただし器具の取扱説明書で特定のメーカーの缶を推奨している場合は、それに従うのが確実です。登山用のOD缶は規格が別なので、カセットこんろには使えません。
使用中にこんろを移動してもよいですか
火が点いた状態で動かさないでください。鍋の中身がこぼれる危険に加えて、缶の中の液体が揺れて燃焼が不安定になります。移動するなら、一度消火し、鍋を降ろしてからにしてください。
アルミホイルを敷いて汚れを防いでもよいですか
すすめません。天板をホイルで覆うと、熱の逃げ道がふさがれ、缶の収納部の温度が上がります。空気の取り入れ口をふさぐと不完全燃焼の原因にもなります。汚れは使い終わってから拭いてください。
カセットこんろで揚げ物をしてもよいですか
製品によって可否が分かれます。取扱説明書に揚げ物を禁じている記載があれば従ってください。可能な製品でも、鍋の直径の上限と油の量の上限が定められています。油は発火温度に達すると一気に燃え上がるので、目を離さないことが前提になります。
まとめ
カセットこんろで避けるべきことは、熱をこもらせる使い方に集約されます。大きすぎる鍋や鉄板、二台並べ、全周を囲う風防、アルミホイルでの覆い。どれも缶の温度を上げ、同じ結末につながります。鍋の直径の上限を守り、缶の側を開けておく。この二つだけで、事故のほとんどは避けられます。安全装置が働いたら、それは警告です。原因を直してから使い直してください。
缶の温度の限界は何度まで耐えられるか、保管の条件はカセットボンベの保管場所、備蓄する本数は家に何本まで置けるかで扱っています。