カセットボンベを、棚に寝かせて置いている。段ボール箱に横向きで並べている。この置き方が危ないのかどうか、はっきり書かれたものが少ないと思います。結論から言えば、保管そのものは横置きでも大きな問題になりません。ただし、機器に取り付けて使うときの向きは、決められたとおりでなければなりません。この違いを知らないと、火が大きく出る事故につながります。理由を、缶の中身の状態から説明します。
この記事の要点
- 保管中に横に寝かせること自体は、ただちに危険ではありません。温度のほうが重要です。
- ただし、使用中の向きは、機器の説明書のとおりにしてください。
- 缶の中には液体のガスと、気体のガスが入っています。向きで、どちらが出るかが変わります。
- 液体のまま出ると、炎が大きくなったり、器具が冷えて不調になったりします。
- 横置きで気をつけるのは、転がり落ちること、ノズルに物が当たることです。
缶の中では、ガスが2つの姿でいる
カセットボンベの中身は、主にブタンです。常温では気体ですが、缶の中では圧力をかけて液体にしてあります。
ただし、全部が液体ではありません。下に液体、上に気体という状態で共存しています。振ると、液体が動く音がするのは、そのためです。
こんろが使っているのは、上側の気体です。気体が減ると、液体が蒸発して気体になり、補われます。この繰り返しで、安定して燃え続けます。
ここまで分かると、向きの話が理解しやすくなります。取り出し口が液体の側に来ると、液体のまま出てしまうのです。
液体のまま出ると何が起きるか
器具が想定しているのは気体です。液体が入ってくると、次のことが起こります。どれも、実際に事故や不調として報告されている現象です。
一つ目は、炎が急に大きくなることです。同じ体積の液体は、気体になると体積が大きく増えます。つまり、燃える量が一気に増えます。
二つ目は、周りが冷えることです。液体が気体に変わるとき、まわりから熱を奪います。缶や器具が急に冷え、霜が付くことがあります。
三つ目は、器具の不調です。安定して燃えなくなり、すすが出たり、途中で消えたりします。
だから、機器に付けて使うときの向きは、説明書のとおりにする必要があります。カセットこんろなら、缶を横にして所定の向きで差し込む形が一般的です。その向きで、取り出し口が気体の側に来るように作られています。
保管中の横置きは、何が問題なのか
ここが本題です。使っていない缶を横に寝かせて置くこと自体は、中身の性質を変えるものではありません。液体と気体が分かれている状態は、向きが変わっても同じです。下に液体、上に気体という関係が保たれるだけです。
ノズルは缶の上面の中心にあり、横にすると、その位置が液面と同じ高さに近づきます。ただし、使っていない缶では弁が閉じているので、そこから何かが出ることはありません。
横にしていた缶を、使うときに正しい向きで取り付ければ、中身は普通に気体として出ます。寝かせて置いたから中身が悪くなる、ということはありません。
ただし、横置きには別の弱点があります。
- 転がります。棚の上から落ちれば、へこみます。落下でノズルが傷めば、そこから漏れます。
- 積み重ねると、下の缶に力がかかります。缶は上下方向に強く、横からの力には弱い形です。
- ノズルの向きが定まりません。何かが当たったとき、押し込まれる向きになることがあります。
- 表示が読みにくくなります。使用期限や製造年月を確かめるとき、いちいち持ち上げることになります。
だから私は、立てて並べるほうをおすすめします。危険の度合いではなく、扱いやすさと、傷つけにくさの話です。
向きより、温度が大事
横置きを気にする方に、まず知っていただきたいのがここです。カセットボンベの保管でいちばん危ないのは、向きではなく温度です。向きを正しても、置き場所を間違えていれば意味がありません。
缶の表示には、40℃以上になる場所に置かないことが書かれています。温度が上がると、中の圧力が上がります。上がりすぎれば、安全装置が働いてガスが抜けるか、缶が耐えられなくなります。
40℃を超える場所は、身近にあります。夏の車内、直射日光の当たる窓際、こんろのそば、暖房器具の前。立てて置いていても、こうした場所なら危険です。
つまり、「立てているから安心」ではなく、「どこに置いているか」が先です。置き場所の考え方はカセットボンベの保管場所に詳しくまとめました。
保管のしかた、具体的に
- 立てて、倒れない形で並べます。箱に入れて仕切ると、転がりません。
- 火の気と熱源から離します。こんろの下の収納は避けてください。
- 直射日光の当たらない場所を選びます。
- 湿気の多い場所を避けます。缶の外側がさびると、強度が落ちます。
- 表示が見える向きにします。製造年月と使用期限を確かめやすくなります。
もし場所の都合で横置きにするなら、転がらないように仕切りを入れ、ノズルの側に物が当たらないようにしてください。段ボールの仕切りや、缶を寝かせて並べる専用の箱があれば十分です。
そして、取り出しやすさも考えてください。災害のときに、奥に積み上げた缶は取り出せません。
使うときの向きを、もう一度
大事な点なので、繰り返します。器具に取り付けるときは、缶に書かれた向きと、器具の説明書に従ってください。多くのカセットこんろでは、缶の切り込みを器具の突起に合わせる形になっています。
この合わせ方には、2つの意味があります。取り出し口が気体の側に来ることと、缶が正しく固定されることです。
無理に逆向きで押し込もうとすると、ガスが漏れたまま点火することになり、炎が缶の側へ回ります。差し込みが固いと感じたら、向きが違うと考えてください。
そして、使用中に缶を動かさないでください。燃えている間に傾ければ、液体が取り出し口に来ることがあります。
缶の側面にある表示を読む
置き方に迷ったときの答えは、たいてい缶そのものに書かれています。カセットボンベの側面には、細かい字で注意書きが印刷されています。買ったときに一度読んでおくと、迷いが減ります。
そこに書かれている内容は、おおむね次のとおりです。
- 40℃以上になる場所に置かないこと
- 火気の近くで使わないこと
- 指定された器具以外に使わないこと
- 穴を開けないこと、火の中に入れないこと
- 使い切ってから捨てること
ここで注目してほしいのは、「横に寝かせないこと」とは書かれていないという点です。書かれているのは温度と火気の話です。この記事の結論も、缶の表示と同じことを言っています。
もう一つ、指定された器具に使うという項目も大事です。ボンベの規格は統一されていますが、器具の側には、対応するボンベを指定しているものがあります。他社のカセットボンベを使っていいかに、この点をまとめました。
缶がへこんだり、さびたりしたら
横置きでとくに気にしてほしいのが、落下による傷です。棚から転がり落ちた缶は、見た目より傷んでいることがあります。拾って棚に戻す前に、一度確かめてください。
へこみがある缶は、使わないでください。へこんだ部分は強度が落ちています。温度が上がったときに、そこから変形が進むおそれがあります。
さびが出ている缶も、使わないほうが安全です。とくに、底の縁や、ノズルのまわりのさびは要注意です。湿気の多い場所に長く置いた缶では、よく見られます。
そして、ノズルの先が曲がっている、ゴムの部分が固くなっている缶も避けてください。取り付けたときに、そこから漏れる原因になります。
使わないと決めた缶は、中身が残っていても処分に回します。穴を開けずに、地域の案内に従ってください。出し方はカセットボンベの捨て方にまとめました。
まとめ買いしたときの置き方
防災用にまとめ買いする方が増えています。数が多くなると、置き方の影響も大きくなります。1本や2本のときとは、考えることが変わってきます。
気をつけたいのは、一か所に集めすぎないことです。万一の火災のときに、まとまった量が同じ場所にあると、被害が大きくなります。可能であれば、2か所に分けて置いてください。
そして、古いものから使うようにしてください。買った日を箱に書いておけば、順番に迷いません。使用期限の目安は、製造から6年程度とされています。
備蓄の本数の考え方と、災害のときに取り出せる場所かどうかについては、防災で備える工具にも書きました。
キャンプ用の機器では、向きの考え方が違う
ここで補足しておきます。キャンプ用のバーナーなどでは、あえて液体のまま取り出す仕組みを持つ製品があります。
液体を送り出し、器具の中で熱を加えて気体にする作りです。この場合、缶を逆さにして使うことが正しい使い方になります。
つまり、向きの正解は器具ごとに決まっているということです。ほかの器具の使い方を、そのまま当てはめないでください。判断の根拠は、いつでもその器具の説明書です。
キャンプ用のOD缶と、こんろ用のCB缶の違いはCB缶とOD缶の違いにまとめました。形も接続の仕組みも別のものです。
車で運ぶときの置き方
買ってきた缶を車で運ぶ場面も、置き方が気になるところです。ここでは、向きより置き場所と時間が問題になります。
横向きでも立てた状態でも、短い時間であれば運搬そのものに問題はありません。ただし、動かないように固定してください。急ブレーキで転がれば、ノズルをどこかに当てます。
問題になるのは、車内に置いたまま忘れることです。夏の車内は、外気温が30℃なら、締め切った状態で50℃を超えることがあります。40℃という基準を大きく超えます。
キャンプ帰りに積んだままにする、車中泊の道具として常備する、といった使い方は避けてください。使い終わったら、その日のうちに降ろすことを習慣にしてほしい部分です。
ダッシュボードの上は、もっとも温度が上がる場所です。直射日光が当たる位置に、缶を置かないでください。
よくある質問
Q. 横に寝かせていた缶は、使う前に立てて置くべきですか。
A. 立てて置き直してから使う必要はありません。器具に正しい向きで取り付ければ、取り出し口は気体の側に来ます。横にしていた時間の長さも関係ありません。取り付ける前に、缶を振って中身を混ぜる必要もありません。
Q. 段ボール箱に横向きで買ってきたままにしています。
A. 販売されている箱は、缶が動かないように仕切られた作りになっています。その箱のまま、涼しい場所に置いておくのは合理的な方法です。箱がつぶれてきたら、別の入れ物に移してください。
Q. 横にしていたら、ガスが漏れることはありますか。
A. ノズルと弁が傷んでいなければ、向きを変えただけで漏れることはありません。ただし、ノズルに物が当たって押されれば、向きに関係なく漏れます。だから、上に物を載せないことが大事です。
Q. 使いかけの缶は、どう置けばよいですか。
A. 置き方は、未使用のものと同じ扱いで構いません。温度と火気に気をつけてください。使いかけと分かるように、別の場所にまとめておくと、次に使うときに迷いません。残りが少ない缶から先に使えば、中途半端な缶がたまりません。
Q. 立てて置くと場所を取ります。横に積み上げてもよいですか。
A. 積み上げる場合は、間に仕切りを入れて、下の缶に力がかからない形にしてください。販売時の箱のまま重ねるのは、箱が力を受け止めるので、比較的安全です。箱から出して直に積み重ねるのは避けます。
Q. こんろに缶を付けたまま、しまってよいですか。
A. 付けたままにしないでください。使い終わったら缶を外すのが原則です。器具に付いたままでは、わずかな漏れに気づけません。また、器具ごと熱源の近くに置いてしまう危険もあります。
まとめ
カセットボンベを横に寝かせて保管すること自体は、それだけでただちに危険というわけではありません。それで中身が悪くなることもありません。
気をつけるのは、転がり落ちること、上に物を載せること、ノズルに何かが当たることです。これらを避けたいのであれば、立てて並べておくほうが扱いやすくなります。
そして、向きよりも温度。40℃を超える場所に置かないという一点が、いちばん大事です。そして、使うときの向きだけは、必ず器具の説明書のとおりにしてください。
温度の上限は何度まで耐えられるか、車での扱いは車内に置いてはいけない理由、古い缶の見分け方は使用期限と古い缶の見分け方にまとめています。