電動ドリルを買ったものの、どのビットを付ければよいか分からない。この迷いは、材料で決まると知れば消えます。木、金属、コンクリート、タイル。それぞれに専用の刃があり、先端の形が違います。木用の刃で金属に穴を開けようとすると、刃が焼けて使えなくなります。逆も同じです。この記事では、材料ごとの選び方と、穴の径を決める考え方を書きます。
この記事でわかること
- 材料ごとに使うビットの種類
- 先端の形で見分ける方法
- 軸の形と機械の相性
- 長持ちさせる使い方
まず材料を決める
ビット選びは、開ける相手から逆算します。
木に開けるのか、鉄板に開けるのか、コンクリートの壁に開けるのか。ここが決まらないと、選びようがありません。
売り場では、材料別に並んでいます。パッケージにも、木工用、鉄工用、コンクリート用と書かれています。まずこの表示を見てください。
兼用と書かれた製品もあります。便利ですが、専用のものより性能は落ちます。よく使う材料が決まっているなら、専用を選ぶほうが作業が楽です。
木工用の刃
先端の中央に、小さなとがりが出ています。
これは、開ける位置を決めるためのものです。木は柔らかいので、刃が滑って位置がずれやすい。このとがりを先に食い込ませることで、狙った場所に止まります。
その外側に、二つの小さな刃が付いています。これが木の繊維を先に切るので、穴の縁がきれいになります。
この形の刃を金属に当てると、先端のとがりがすぐ潰れます。木以外には使わないでください。
大きな穴を開ける道具
木に太い穴を開ける場合、別の道具があります。
平たい板の形をした刃は、安価で扱いやすい選択です。二十ミリから四十ミリ程度の穴に向きます。ただし、穴の縁が荒れます。
円筒形の刃は、円を切り抜く形式です。配管を通す穴や、扉の錠を付ける穴に使います。中心を決める細い刃が付いています。
ねじの形をした先端を持つ長い刃もあります。厚い材料を貫通させるときに、自分で食い込んでいきます。
どれも、回す力が大きく必要です。小型の機械では、力が足りずに止まります。
鉄工用の刃
先端が、山の形にとがっています。中央にとがりはありません。
材質は、高速度鋼と呼ばれる硬い鋼です。パッケージには、その頭文字が書かれています。
金色に見える製品があります。これは表面に硬い膜を付けたもので、熱に強く長持ちします。価格は上がりますが、金属をよく開けるなら差を感じられます。
ステンレスは特に硬い材料です。専用と書かれた製品を選んでください。普通の鉄工用では、すぐ切れなくなります。
金属に開けるときの下準備
先端にとがりがないので、そのまま当てると滑ります。
そこで、先にくぼみを付けます。先のとがった工具を、開ける位置に当ててハンマーで叩きます。この作業を省くと、まず位置がずれます。
太い穴を開けるときは、細い刃で下穴を開けてから広げてください。いきなり太い刃で開けようとすると、機械に大きな負担がかかります。
そして、切削油を使ってください。摩擦で出る熱が、刃を駄目にします。専用の油がない場合でも、機械用の油を数滴たらすだけで違います。
回転は遅めにしてください。速く回すほど熱が出ます。太い刃ほど、遅く回すのが原則です。
コンクリート用の刃
先端に、別の材質のかけらが埋め込まれています。
この部分が非常に硬い材質で、コンクリートを砕きながら進みます。切るのではなく、砕くという動作です。
だから、叩く動作をする機械と組み合わせます。回すだけの機械では、なかなか進みません。
ブロックやモルタルにも、同じ刃を使います。
この刃を木に使うと、穴が荒れます。使えなくはありませんが、仕上がりは期待できません。
タイルとガラスの場合
もう一つ、別の種類があります。
先端が槍のような形をした刃が、タイルやガラス用です。叩かずに、回転だけで削ります。
叩く動作をすると、タイルが割れます。機械の設定を、回転だけにしてください。
水をかけながら、ゆっくり進めます。熱が出ると割れます。
浴室のタイルに棚を付けるといった作業で、この刃が必要になります。専用のものを使わないと、まず割れます。
軸の形を確認する
刃を機械に付ける側にも、種類があります。
丸い棒の形が、もっとも一般的です。つかむ部分が開閉する機械に付けられます。
六角形の軸は、差し込むだけで固定される形式です。工具の付け替えが速く、電池で動く機械によく使われます。
コンクリート用の機械には、溝の付いた専用の軸があります。これは他の機械には付きません。
買う前に、自分の機械がどの形式かを確認してください。合わないものを買うと、そのまま無駄になります。
径をどう決めるか
穴の太さは、何を通すかで決まります。
ボルトを通す穴なら、ボルトの太さより一ミリ程度太くします。ぴったりにすると、入りません。
木ねじの下穴は、ねじの芯の太さに合わせます。ねじ山の外側ではありません。目安として、ねじの太さの六割から七割です。
下穴が太すぎると、ねじが効きません。細すぎると、木が割れます。硬い木ほど、下穴を太めにしてください。
迷うなら、端材で試してください。同じ材料の切れ端があれば、確実です。
最初に買うなら
これから買いそろえる人に向けて、順番の話を書いておきます。
一本ずつ買うより、径の違うものが並んだ組の製品が割安です。木工用と鉄工用で、それぞれ組があります。
ただし、安すぎる組は、材質が落ちることがあります。数回使っただけで切れなくなると、結局は損です。
よく使う径だけ、良いものを単品で買い足すという方法もあります。実際には、三ミリ、四ミリ、六ミリあたりの出番が多いはずです。
コンクリート用は、使う場面が決まってから買えば十分です。壁に何を付けるかで、必要な径が変わります。
切れなくなったら
刃には寿命があります。
押しても進まない、削りかすが粉のようになる、煙が出る。こうなったら、切れ味が落ちています。
力ずくで押し込んでも、進みません。刃も機械も傷めるだけです。
研ぎ直す道具もありますが、細い刃では手間に合いません。太いものだけ研ぎ、細いものは買い替えるのが現実的です。
先端が青黒く変色していたら、熱で材質が変わっています。この状態からは、研いでも戻りません。
折らないための使い方
細い刃は、簡単に折れます。
原因のほとんどは、傾けることです。まっすぐ入れたつもりでも、途中で角度が変わると、刃に横向きの力がかかります。
材料をしっかり固定してください。手で押さえていると、材料が動いて刃が傾きます。
貫通する瞬間も、注意が必要です。急に抵抗がなくなり、刃が引き込まれます。下に当て木を敷いておくと、この動きが抑えられます。
そして、深く入れたら一度引き抜いて、削りかすを出してください。詰まった状態で回し続けると、熱で刃が焼けます。
保管の仕方
ばらばらに転がしておくと、刃先がぶつかって傷みます。
組で買った製品の箱は、径の順に並ぶようになっています。使ったら戻す習慣を付けてください。どの径がなくなったかも、ひと目で分かります。
湿気のある場所では、鋼の刃がさびます。さびると切れ味が落ちます。
金属に使った後は、切削油を拭き取ってください。油が残ると、削りかすが付いて固まります。
ねじを回す先端工具との違い
売り場では、穴を開ける刃と、ねじを回す先端が隣り合って並んでいます。混同しやすいので、区別を書いておきます。
ねじを回す先端は、十字や一文字の形をしています。穴を開ける働きはありません。逆に、穴を開ける刃でねじを回すこともできません。
十字の先端にも、大きさの種類があります。番号で表され、家庭で使うねじの多くは二番です。小さいねじには一番、大きいねじには三番を使います。
大きさが合っていないと、ねじの頭を潰します。一度潰れると、回せなくなって外すのに苦労します。ここは径の確認と同じくらい大事な点です。
下穴を開けてからねじを締める作業では、刃と先端を何度も付け替えることになります。この付け替えを一手で済ませる、両端が使える製品もあります。
深さをそろえる工夫
貫通させない穴を開けるとき、深さの管理が必要になります。
簡単なのは、刃にテープを巻く方法です。開けたい深さの位置に色の付いたテープを巻き、そこまで入ったら止めます。数十円で済む工夫ですが、実際によく使われています。
機械によっては、深さを止める棒が付属しています。本体の横に取り付けて、決めた位置で当たるようにする部品です。同じ深さの穴をいくつも開けるなら、こちらが確実です。
深さを間違えて貫通させると、反対側の面が欠けます。家具の側板などでは、目立つ傷になります。
まっすぐ開けるために
斜めに入った穴は、後から直せません。
人の目は、正面から見た傾きには気づきますが、横方向の傾きには気づきにくいものです。だから、開ける途中で立ち位置を変えて、二方向から確認してください。
垂直に開けるための補助具も売られています。刃を通す筒が付いた台を材料に当てるだけで、角度が決まります。家具の組み立てを何度もやるなら、あると失敗が減ります。
簡易な方法としては、材料の横に直角の物を立てて、それを目印にするやり方があります。四角い箱でも、さしがねでもかまいません。
最初の食い込みを、ゆっくり回して作ることも大切です。ここで位置と角度が決まります。勢いよく始めると、その後は修正できません。
粉じんと安全
穴あけの作業では、削りかすが飛びます。
金属の切りくずは薄く鋭く、目に入ると危険です。保護の眼鏡は必ず着けてください。手で払うのも避けてください。手袋をしていても切れます。
コンクリートの粉は、吸い込むと体に良くありません。屋内で開けるなら、マスクをして換気してください。開ける位置に掃除機のノズルを添えておくと、粉の飛散が減ります。
そして、回転する部分に巻き込まれないよう、袖口を締め、長い髪はまとめてください。軍手は、刃に巻き込まれると指ごと引き込まれます。穴あけの作業では、布の手袋は使わないほうが安全です。
穴を開ける前に確認すること
刃を選び終えたら、最後に開ける場所そのものを見てください。ここを飛ばすと、道具の選択が正しくても失敗します。
壁なら、中に何が通っているかです。電線、水道の管、ガスの管。どれに当たっても大ごとになります。探知する道具は数千円で買えるので、壁に開ける機会があるなら一台持っておく価値があります。
木材なら、節の位置を避けてください。節は周りより硬く、刃がそれます。まっすぐ入れたつもりでも、節に当たった瞬間に逃げます。
金属なら、裏側に何があるかです。貫通した刃が、その先の部品を傷つけることがあります。車体に穴を開けるような場面では、特に注意してください。
そして、位置に印を付けてから始めてください。目分量で当てると、必ずずれます。鉛筆の線を二本交差させ、その交点を狙うのが確実です。
よくある質問
木工用で金属に開けてしまいました
薄い板なら開くことがありますが、先端のとがりは潰れています。その刃で木に開けると、位置が決まらなくなります。潰れ方を見て、駄目なら買い替えてください。
壁に穴を開けても大丈夫ですか
壁の中には電線や配管が通っています。開ける前に、探知する道具で確認してください。コンセントやスイッチの近く、真上や真下は特に危険です。賃貸なら、開ける前に管理会社に確認してください。
ドリルとインパクトのどちらで使いますか
穴あけは、回転が安定するドリルが向きます。叩く動作のある機械は、ねじ締めが得意な道具です。ただし、六角の軸の刃なら、叩く機械でも穴あけはできます。
刃が抜けなくなりました
締めすぎているか、熱で膨張しています。冷めてから、専用のかぎで緩めてください。手で締める形式なら、布を巻いて回すと力が入ります。
まとめ
ビットは、開ける材料で決まります。木用は先端に位置決めのとがりがあり、鉄工用は山型で下準備にくぼみが要る。コンクリート用は硬い材質を先端に埋め込んであり、叩く機械と組み合わせます。タイルには専用の刃を使い、叩かずに水をかけて進めてください。そして、軸の形が自分の機械に合うかを、買う前に確認してください。合わないものを買うと、そのまま使えません。
機械の選び方はインパクトドライバーとドリルドライバーの違い、壁への取り付けは石こうボード用アンカーの選び方、棚の取り付けは壁に棚を付ける道具にまとめています。