歩くたびに床が鳴る。夜中にトイレへ行くだけで家族を起こしてしまう。この症状は、床材そのものが壊れているわけではなく、部材どうしが擦れる音であることがほとんどです。原因の場所によって、自分で直せるものと、床をはがす工事になるものに分かれます。まず試してほしいのが、音の出る位置を正確に特定することです。ここを飛ばして補修材を使うと、効かないまま材料だけ無駄になります。この記事では、原因の切り分けから対処までを順に書きます。
この記事でわかること
- 床が鳴る三つの原因
- 音の出る位置を特定する方法
- 自分で試せる対処と、その限界
- 業者に頼む判断と費用の目安
床が鳴る仕組み
音の正体は、木と木、あるいは木と金属が擦れる音です。体重がかかって部材がわずかに動き、その瞬間に接する面がこすれて音が出ます。だから、体重をかけたときだけ鳴り、離すと止まります。
原因は大きく三つに分かれます。一つめが、床板どうしの接する部分です。床板は互いにかみ合う形で並んでいて、この接合部が緩むと擦れます。フローリングで最も多い原因です。
二つめが、床板と下地の間です。床板を支える骨組みとの間に隙間ができ、踏むたびに上下して音が出ます。釘が緩んでいる場合も、ここに含まれます。
三つめが、下地そのものです。床を支える木材が痩せた、接合部が緩んだ、あるいは湿気で傷んだ。この場合は、床の上からの対処では直りません。
どれに当たるかで、対処と費用がまったく変わります。だから、切り分けが最初の作業になります。
音の位置を特定する
まず、鳴る場所を正確に見つけてください。ここが作業の起点になります。
ゆっくり歩いて、鳴る位置に印を付けます。テープを貼っておくと、後で探し直す手間が省けます。数か所で鳴るなら、全部に印を付けてください。
次に、その場所で体重を前後左右に移してみてください。どの方向に力をかけたときに鳴るかで、どの部分が動いているかの見当がつきます。
床板の継ぎ目の上に立って鳴るなら、接合部が原因の可能性が高くなります。継ぎ目から離れた場所で鳴るなら、下地との間が疑わしくなります。
もう一人に踏んでもらい、自分は床に耳を近づけて聞くと、より正確にわかります。二人いる場合は、この方法が確実です。
下地の位置を知る
床板を支える骨組みは、一定の間隔で並んでいます。三十センチから四十五センチ程度が一般的です。
この位置を知っておくと、後の作業で役立ちます。床を軽く叩いて、音が詰まって聞こえる場所が骨組みの上です。響く場所は、間の空洞です。
壁を探すときと同じ道具も使えます。針を刺す形式のものは床に穴が残るので、電子的に探す道具のほうが向いています。
床板を留めている釘の位置も手がかりです。フローリングでは、釘が見えないよう斜めに打たれていますが、古い床では頭が見えることがあります。
まず試せる方法
床板どうしの擦れが原因なら、費用をかけずに軽減できる場合があります。
継ぎ目に、ろう状のものを塗り込む方法です。ろうそくを継ぎ目にこすりつけ、布で余分を拭き取ります。摩擦が減って、音が小さくなることがあります。
粉状のものを隙間に入れる方法もあります。ベビーパウダーや、粉石けんを継ぎ目に落とし、ブラシで押し込みます。同じく、擦れる面の摩擦を減らす狙いです。
どちらも一時的な効果で、数週間から数か月で戻ることが多いものです。ただし、費用がかからず、床を傷めません。試す価値はあります。
油を差す方法は避けてください。床材に染み込んで、しみになります。塗装も傷めます。
補修材を注入する方法
市販の補修材を使う方法があります。床鳴りを止めるための専用の製品です。
細い穴を床に開け、そこから接着する成分を注入します。隙間を埋めて、部材が動かないように固定する仕組みです。
製品には、注入する道具と、穴をふさぐ材料が入っています。穴の直径は二ミリから三ミリ程度で、補修すれば目立ちません。
ただし、効くのは接合部や、床板と下地の隙間が原因の場合です。下地そのものが傷んでいる場合には効きません。
そして、床に穴を開ける作業なので、賃貸では使えません。持ち家でも、床材の種類によっては適さない場合があります。製品の説明をよく読んでください。
ねじで留める方法
床板が下地から浮いている場合、ねじで固定すると直ります。
下地のある位置に、細いねじを打ち込みます。床板を下地に引き寄せる形になり、浮きがなくなります。
ねじの頭が床面から出ないよう、少し沈めて打ちます。その上から、床の色に合わせた補修材を詰めれば、目立ちません。
下地の位置を外すと、床板を貫通するだけで効きません。下からの配線や配管を傷める危険もあります。打つ前に、必ず下地の位置を確認してください。
床暖房が入っている床には、絶対に打たないでください。配管やヒーターを傷めます。床暖房の有無は、事前に確認してください。
床下から直す方法
床下に入れる住宅なら、下から直すという選択肢があります。床の表面を傷めずに済む方法です。
床下に潜り、鳴っている位置の真下を確認します。床板と骨組みの間に隙間があれば、そこにくさびを打ち込んで固定します。
骨組みが痩せて隙間ができている場合は、添え木を当てて補強します。接着剤とねじで固定する作業です。
ただし、床下の作業は環境が厳しいものです。狭く、暗く、湿っていて、虫もいます。防護の服装と明かりが必要です。
そして、入口の位置と、潜れる高さがあるかどうかを確認してから計画してください。床下の高さが足りない住宅では、そもそも作業できません。
放置してよい場合
床が鳴ること自体は、必ずしも危険を意味しません。
新築から数年の住宅で鳴る場合、木材が乾燥して収縮している途中ということがあります。時間とともに落ち着くことも多いものです。
季節によって鳴ったり鳴らなかったりするなら、湿度による木材の伸縮が原因です。これも構造の問題ではありません。
音が気にならない程度なら、無理に直す必要はありません。補修材を注入すれば、後で元に戻せなくなります。
新築なら、施工した会社に連絡してください。保証の対象になる可能性があります。自分で手を入れると、保証が受けられなくなることがあります。
放置してはいけない場合
一方で、床の不具合が別の問題を知らせている場合があります。
踏むと沈む感覚があるなら、下地が傷んでいます。音より、この沈み込みのほうが重要な合図です。
水まわりの近くで鳴る、しかも沈むなら、水漏れによる腐りを疑ってください。洗面所、台所、トイレの周辺は、特に注意が要ります。
床の一部が変色している、カビくさいにおいがする。こうした症状が重なるなら、床下の状態を確認してください。
鳴る範囲が広がっている場合も、進行している証拠です。早めに専門の業者に見てもらってください。
業者に頼む場合
自分で対処できない場合の費用の目安を書きます。
補修材の注入で済む範囲なら、一か所あたり数千円から一万円台です。複数箇所をまとめて頼むと、単価は下がります。
床下から補強する作業なら、数万円が目安になります。床下の状態を確認する費用が含まれることもあります。
床をはがして張り替える工事になると、一部屋で十万円を超えます。下地まで交換するなら、さらに上がります。
複数の業者から見積もりを取ってください。原因の見立てが違うことがあり、提案される工事の範囲も変わります。
賃貸での対応
借りている住まいでは、まず管理会社に連絡してください。
床鳴りは、建物の経年による現象です。入居者の過失によるものでなければ、貸主の負担で対応される可能性があります。
自分で床に穴を開ける、ねじを打つ。こうした作業は、原状回復の義務に関わります。退去のときに費用を請求されかねません。
ろうを塗る、粉を入れる程度なら、問題になりにくい範囲です。ただし、これも効果は限定的です。
入居したときから鳴っていたなら、その時点で伝えておくのが確実です。記録が残ります。
畳の部屋の場合
畳の部屋で音がする場合、原因の場所が変わります。
畳そのものは音を出しません。下にある板が鳴っています。畳を上げれば、下地に直接触れられます。
畳は、専用の道具か、マイナスドライバーを差し込んで持ち上げます。重いので、二人で作業するほうが安全です。
下の板が浮いているなら、ねじで留められます。床材の表面が見えないので、仕上がりを気にせず作業できる利点があります。
畳を戻すときは、元の位置に戻してください。畳は一枚ずつ寸法が違うので、入れ替えると収まりません。上げる前に、番号を書いた紙を貼っておいてください。
予防できること
完全には防げませんが、進行を遅らせる方法はあります。
湿度の管理が最も効きます。木材の伸縮が小さくなり、接合部の緩みが進みにくくなります。加湿しすぎ、乾燥させすぎのどちらも避けてください。
床下の換気も重要です。換気口が物でふさがれていないか、確認してください。湿気がこもると、下地が傷みます。
重い家具を一点に置き続けるのも、負担になります。脚の下に板を敷いて、力を分散させてください。
水をこぼしたら、すぐ拭き取ってください。染み込んだ水は、下地まで届きます。
音の種類で原因を読む
どんな音が出るかも、原因を絞る手がかりになります。注意して聞いてみてください。
きしむような高い音なら、木と木が擦れています。床板どうしの接合部か、床板と下地の間です。この場合は、自分でも対処できる可能性が高くなります。
ぎしぎしと低く鈍い音で、しかも床が沈む感覚を伴うなら、下地側の問題です。骨組みが緩んでいるか、傷んでいます。表面からの補修では届きません。
金属的な音がする場合は、釘が擦れています。床板を留めている釘が緩み、踏むたびに穴の中で動いている状態です。ねじで留め直すと止まります。
ぱきっと一度だけ鳴る音は、木材の内部の応力が解放されている音であることがあります。同じ場所で繰り返さないなら、心配は要りません。
作業の前に確認すること
床に手を入れる前に、必ず調べておく点があります。ここを飛ばすと、取り返しがつかない失敗につながります。
床暖房が入っていないか。入っている床にねじを打つと、配管やヒーターを壊します。修理には床をはがす工事が必要になり、費用は数十万円に及びます。図面か、施工した会社への確認が確実です。
床下に配線や配管が通っていないか。特に、台所や洗面所の近くでは、給水や排水の管が通っています。長いねじを打つと、貫通します。
床材の種類も確認してください。無垢の板、合板、表面に化粧を施した材料。それぞれ補修の方法が変わります。製品の資料が残っていれば、目を通しておいてください。
よくある質問
新築なのに鳴ります
木材の乾燥による収縮で、初期に鳴ることはあります。ただし、施工した会社に連絡してください。保証の対象になる可能性がありますし、施工の不良という場合もあります。自分で補修すると、保証が受けられなくなることがあります。
補修材を注入すれば必ず直りますか
原因によります。接合部や床板の浮きが原因なら効きます。下地そのものが傷んでいる場合は効きません。原因を特定せずに使うと、材料が無駄になります。まず、沈み込みがあるかどうかを確認してください。
冬だけ鳴ります
乾燥で木材が縮み、隙間ができているためです。湿度が戻れば収まることが多いものです。加湿器を使うと改善する場合があります。季節で変わる症状は、構造の問題ではないことがほとんどです。
マンションでも同じですか
構造が違うため、原因も変わります。コンクリートの上に直接床材を張る形式や、支持脚で浮かせる形式があります。支持脚の緩みが原因のこともあります。管理会社に相談してください。
まとめ
床鳴りは、部材どうしが擦れる音です。まず、鳴る位置に印を付けて特定してください。ここを飛ばすと、どの方法も効きません。ろうや粉を継ぎ目に入れる方法は費用がかからず、床も傷めないので最初に試す価値があります。補修材の注入やねじ留めは効果が高い反面、床に穴が残ります。そして、踏むと沈む感覚があるなら、音より重要な合図です。下地が傷んでいる可能性があるので、業者に見てもらってください。
下地の探し方は石膏ボードに棚を付ける、ネジの選び方はネジの種類と使い分け、建具の調整はドアの建て付けを直すにまとめています。