家具に傷が付いた、床がへこんだ。買い替えるほどではないが、目に入るたびに気になる。こうした傷は、種類を見分ければ自分で直せます。木のへこみは水と熱で戻せますし、浅い擦り傷は目立たなくできます。ただし、表面が木ではなく印刷された紙やシートの家具では、まったく違う方法になります。まずは、その見分け方から。この記事では、傷の型ごとの対処を書きます。
この記事でわかること
- 無垢の木とシート貼りの見分け方
- へこみを戻す方法
- 傷を埋める材料の選び方
- 直せない傷の判断
まず素材を確かめる
ここを間違えると、直すどころか広げます。家庭にある家具の多くは、見た目が木でも、表面だけが木目を印刷したシートというものです。
見分け方はいくつかあります。傷の断面をよく見てください。中から白や茶色の粉のような素材が見えるなら、シートを貼った板です。木の繊維が続いているなら、無垢か、薄い木を貼った材です。
木目の模様が、離れた場所で同じ形に繰り返されているなら、印刷です。本物の木目は、二度と同じ模様になりません。
側面や裏側を見るのも有効です。表と裏で木目のつながりが不自然なら、シートです。
この判別で、使える方法が決まります。水と熱を使う方法は、木にしか通用しません。シートに熱を当てると、縮んで剥がれます。
へこみは戻せることがある
木の表面に、物を落としてできたへこみ。これは、削れたのではなく繊維が押し潰された状態です。だから、繊維を膨らませれば戻ります。
方法は単純です。へこんだ部分に水を数滴たらし、しばらく置いて染み込ませます。そこに濡れた布をかぶせ、アイロンを当てる。水分が蒸気になって繊維に入り、押し潰された細胞が元の形に戻ります。
一度で戻らなければ、何度か繰り返してください。完全に元どおりとまではいかなくても、かなり目立たなくなります。
ただし、条件があります。塗装の膜が割れていない場所では、水が染み込みません。また、繊維が切れている、欠けている場合は戻りません。押し潰されただけの状態にのみ、この方法が効きます。
アイロンを当てすぎると、周囲の塗装が変色します。目立たない場所で試してから、本番に移ってください。
浅い擦り傷
表面の塗装だけが削れた、白っぽい線。これは、埋めるのではなく目立たなくする方向で考えます。
家具用の補修クレヨンが、数百円で売られています。色を選び、傷に塗り込んで余分を拭き取る。これだけで、かなり見えなくなります。色が合わなければ、複数を混ぜて調整できます。
ペン型の製品もあります。こちらは細い傷に向き、木目を描き足すこともできます。
色を選ぶときは、必ず明るめから試してください。濃い色は、後から薄くできません。暗すぎる補修は、傷そのものより目立ちます。
クレヨンを使った後、透明の仕上げ剤を薄く塗ると、色落ちしにくくなります。テーブルの天板など、よく触る場所では有効です。
深い傷と欠け
素材が失われている場合は、埋める作業になります。
熱で溶かして流し込む、樹脂の補修材があります。専用の道具で溶かし、傷に流し、固まってから余分を削る。仕上がりは良いのですが、道具をそろえる必要があり、慣れも要ります。
もっと手軽なのは、練って埋める型のパテです。指で押し込み、余分をへらで取り、乾いてから紙やすりで平らにします。上から色を塗って仕上げます。
木の粉と接着剤を混ぜて自作する方法もあります。同じ材料を削った粉を使えば、色も質感もなじみます。同じ家具の目立たない場所を削って粉を取ると、ぴったり合います。
どの方法でも、埋めた後は必ず平らにならしてください。盛り上がったままだと、光の当たり方で余計に目立ちます。
角の欠け
家具の角は、ぶつけて欠けやすい場所です。そして、直すのが最も難しい場所でもあります。
平らな面と違い、形を作り直す必要があります。パテを盛って、乾いてから削って形を出す。この工程には、多少の慣れが要ります。
一度で盛り切ろうとせず、二回か三回に分けてください。厚く盛ると、内部が乾かないまま表面だけ固まります。
形を作るときは、テープで型枠を作る方法があります。欠けた角に沿ってテープを貼り、その内側にパテを詰める。乾いてからテープを外せば、おおまかな形ができています。
シート貼りの家具の場合
表面が印刷されたシートの家具では、考え方が変わります。
シートがめくれているなら、接着剤で貼り直せます。木工用の接着剤を薄く塗り、押さえて乾かす。この間、クリップや重しで固定してください。はみ出した接着剤は、乾く前に拭き取ります。
シートが破れて、下地が見えている場合は、埋めて色を塗ることになります。ただし、印刷された木目を再現するのは難しい。近くで見れば、直したことが分かります。
広い範囲が傷んでいるなら、別の考え方もあります。市販の貼るシートで、その面全体を覆ってしまう方法です。傷を隠すのではなく、面ごと変える。数千円で、見た目が新しくなります。
水分を吸って膨らんだ部分は、元に戻せません。内部の板が水を吸って膨張した状態で、乾いても縮みません。ここは交換か、隠すかの判断になります。
床のへこみと傷
家具と同じ方法が、床にも使えます。
ただし、住宅の床の多くは、薄い木を合板に貼った材か、印刷されたシートです。表面の層は非常に薄く、削ると下地が出ます。強くこすらないでください。
浅い傷なら、床用の補修クレヨンで十分です。ワックスを塗り直すだけで、目立たなくなることもあります。
深い傷やへこみには、パテを使います。床用として売られている製品を選んでください。踏まれることを前提にした硬さになっています。
そして、直した後に同じことが起きないよう、原因を取り除いてください。椅子の脚にフェルトを貼る、重い家具の下に板を敷く。これだけで、新しい傷は激減します。
輪染みと白い跡
テーブルに残る白い輪。これは傷ではなく、塗膜に水分が入った状態です。
塗膜の中に閉じ込められた水分が、白く見えています。だから、水分を追い出せば消えます。乾いた布を当てて、低い温度のアイロンを短時間かける。あるいは、ドライヤーの温風を離して当てる。これで消えることがあります。
熱いものを直接置いてできた白い跡も、同じ理屈です。同じ方法を試す価値があります。
ただし、水分が木まで達して染みになっている場合は、これでは消えません。黒く変色している場合も、塗膜を落として削る作業が必要になります。
熱を当てすぎると、塗膜が白く濁ったり溶けたりします。短時間ずつ、様子を見ながら進めてください。
直さないほうがよい場合
手を出さない判断も、時には正しい。
アンティークの家具や、価値のある品物では、素人の補修が価値を下げます。専門の修理業者に相談してください。
構造に関わる部分の破損も、見た目を直しても意味がありません。脚が割れている、接合部が緩んでいる。こうした場合は、強度を戻す作業が先です。
そして、賃貸住宅の床や建具は、勝手に直さないでください。退去時の精算で、かえって不利になることがあります。管理会社に報告し、指示を仰ぐのが正しい順序です。
試し塗りの重要性
どの方法を使うにしても、共通して守ってほしいことがあります。
必ず、目立たない場所で試してください。家具の裏側、引き出しの内側、脚の内側。同じ素材で試せる場所が、どこかにあります。
色は、乾くと変わります。塗った直後の色で判断せず、完全に乾いてから見てください。多くの補修材は、乾くと少し濃くなります。
そして、明るい場所で確認してください。薄暗い部屋でぴったり合って見えても、日中の光では違って見えます。
完璧を目指さない
この作業で、最後に伝えたい考え方です。
家庭での補修は、遠目に気にならなくすることが目標です。近くでよく見れば分かる、という程度で十分だと考えてください。
完全に消そうとして手を加え続けると、かえって範囲が広がります。削りすぎ、塗りすぎ、色の重ねすぎ。多くの失敗は、やりすぎから起きます。
一度手を止めて、翌日に見てみる。この間を置くと、判断が変わることがよくあります。昨日は気になった傷が、直した後なら十分だと思えることも多い。
傷を防ぐ
直した後にやっておくことです。
椅子やテーブルの脚には、フェルトを貼ってください。数百円で、床と家具の両方を守れます。はがれやすいので、時々確認して貼り直してください。
テーブルには、敷物を使ってください。熱い鍋を直接置かない、水滴の付いたコップを放置しない。これだけで、輪染みは防げます。
家具を動かすときは、持ち上げてください。引きずると、床にも家具の脚にも傷が付きます。重くて持てないなら、下に敷いて滑らせる道具があります。
そして、直射日光の当たる場所は、色が抜けます。カーテンで調整するか、時々向きを変えてください。
そろえておく補修の道具
ひととおり対応できる道具を挙げておきます。一度そろえれば、家中の小さな傷に何年も使えます。
補修クレヨンの組が一つ。明るい茶から濃い茶まで、数色入ったものを選んでください。これが、出番の最も多い道具になります。
木部用のパテを一つ。色付きのものと、後から塗れる白いもの、どちらでもかまいません。使い切る前に固まることが多いので、小さい容量で十分です。
紙やすりは、二百四十番と四百番を数枚。へらは、樹脂の薄いものがあると便利です。硬いカードで代用してもかまいません。
そして、細い筆と、綿棒。木目を描き足すときや、狭い場所に色を入れるときに使います。どれも百円の店でそろいます。
作業の進め方の順序
複数の傷があるとき、どこから手を付けるかで結果が変わります。
まず、いちばん目立たない場所の傷から始めてください。そこが練習になります。手順に慣れてから、目につく場所に移る。逆にすると、最初の一か所で失敗した跡が、いちばん見える場所に残ります。
作業に入る前に、その面を掃除してください。ほこりや油が付いたままだと、補修材が付きません。中性洗剤を薄めて拭き、乾かしてから始めます。
そして、明るい場所で作業してください。手元が暗いと、色の判断ができません。可能なら、昼間の自然光の下で進めるのが理想です。
時間にも余裕を持ってください。パテが乾くのを待つ時間、塗料が乾く時間があります。一日で終わらせようと急ぐと、乾く前に次の工程へ進んで失敗します。
直した跡が浮いて見えるとき
色は合っているのに、なぜか目立つ。この場合、原因は色ではなく光沢です。
周囲がつやのある仕上げなのに、補修した部分だけつや消しになっていると、光が当たったときにそこだけ違って見えます。逆の場合も同じです。
仕上げ剤には、つやの度合いが違う製品があります。周囲に合わせて選んでください。分からなければ、中間のものが無難です。
表面の凹凸も、原因になります。周囲が平らなのに補修部分がざらついていると、光の反射が変わります。細かい紙やすりでならしてください。
もう一つ、木目の有無があります。周囲に木目があるのに、補修部分だけのっぺりしていると目立ちます。細い筆で線を描き足すと、驚くほどなじみます。この一手間が、仕上がりを大きく変えます。
よくある質問
補修クレヨンの色が合いません
複数の色を混ぜて調整できます。手のひらで温めてから練ると、混ざりやすくなります。数色が入った組の製品を買えば、たいていの色に近づけられます。
猫がひっかいた傷はどうしますか
細い傷が集中している状態なので、一本ずつ埋めるのは現実的ではありません。その面全体に紙やすりをかけて塗り直すか、シートで覆うのが効率的です。同じ場所を繰り返すなら、爪とぎを近くに置く対策も必要です。
アイロンで戻す方法が効きません
塗膜が厚くて水が染み込んでいないか、繊維が切れている可能性があります。塗膜がある場合は、細い針で目立たない穴を数か所開けて水を入れる方法もありますが、傷を増やす危険があります。埋める方法に切り替えたほうが確実です。
業者に頼むといくらかかりますか
傷一か所で、数千円から一万円台が目安です。出張の費用が別にかかることもあります。複数の箇所をまとめて頼むほうが、単価は下がります。家具の価値と比べて判断してください。
まとめ
家具の傷を直すときは、まず素材を確かめてください。木なのか、印刷されたシートなのか。ここで使える方法が変わります。木のへこみは、水とアイロンの蒸気で戻せることがあります。浅い擦り傷は補修クレヨンで、深い欠けはパテで埋めます。どの方法でも、必ず目立たない場所で試し、色は乾いてから判断してください。そして、完全に消そうとしないこと。やりすぎが、いちばん多い失敗です。
壁の補修は壁の穴を自分で直す、床のきしみは床鳴りの直し方、家具の組み立ては組み立て家具に必要な工具をご覧ください。