タイヤの内側だけが減る。まっすぐ走っているのに、ハンドルが少し傾いている。手を離すと、車がどちらかへ寄っていく。こうした症状の原因としてよく挙がるのが、ホイールアライメントのずれです。アライメントの調整は、工具をそろえれば自分でできる作業ではありません。そのかわり、何を測り、いつ頼み、どんな店を選ぶかを知っておくと、無駄な出費と、タイヤの早い傷みを防げます。
この記事の要点
- アライメントとは、タイヤが車体に対してどの向き・角度で付いているかのことです。
- ずれると、タイヤの片減り、ハンドルの傾き、車の流れといった症状が出ます。
- 足回りの部品を替えた、車高を変えた、縁石に強く当てたあとは、測定を考える時期です。
- 正確な測定には専用の測定機が要ります。自分でできるのは、症状に気づくことと、店に正しく伝えることです。
- 店を選ぶときは、調整の前と後の数値を、紙やデータで受け取れるかを確かめてください。
アライメントとは何か
車のタイヤは、真上から見ても、正面から見ても、完全にまっすぐ付いているわけではありません。走りの安定やハンドルの戻りを良くするために、わずかな角度がつけてあります。この角度の組み合わせを、まとめてアライメントと呼びます。
よく出てくる角度は、次の3つです。名前だけでも覚えておくと、店の説明が分かりやすくなります。
| 名前 | どこから見た角度か | ずれたときに出やすい症状 |
|---|---|---|
| トー | 真上から見て、左右のタイヤの前側が内向きか外向きか | タイヤの片減り(ギザギザの減り方)、直進の不安定 |
| キャンバー | 正面から見て、タイヤの上側が内に倒れているか外に倒れているか | タイヤの内側だけ、または外側だけの減り |
| キャスター | 横から見て、ハンドルを切る軸がどれだけ後ろに傾いているか | ハンドルの戻りの悪さ、左右どちらかへの流れ |
この中で、タイヤの減り方にもっとも大きく影響するのはトーです。角度にすればごくわずかなずれでも、タイヤは走っている間ずっと、少し横にこすられながら転がることになります。
なお、どの角度を調整できるかは、車種と足回りの構造によって違います。多くの乗用車でトーは調整できますが、キャンバーやキャスターは、調整する仕組みを持たない車もあります。
アライメントがずれる原因
アライメントは、ある日突然ずれるだけでなく、少しずつずれていくこともあります。主な原因を知っておくと、測定の時期を判断しやすくなります。
一つ目は、強い衝撃です。縁石にタイヤの側面をぶつける、深い穴に落ちる、段差を速い速度で乗り越える。こうした衝撃で、足回りの部品がわずかに曲がったり、取り付け位置がずれたりします。
二つ目は、部品の劣化です。足回りには、揺れを吸収するためのゴムの部品がいくつも使われています。年数と距離を重ねるとゴムが硬くなり、へたって、タイヤの角度を保つ力が弱くなります。
三つ目は、整備や改造です。足回りの部品を外して付け直せば、元の位置に正確に戻るとは限りません。車高を変えると、足回りの動く範囲が変わり、角度も一緒に変わります。
ずれたまま乗り続けると
いちばん分かりやすい影響は、タイヤの寿命が縮むことです。片側だけが減ったタイヤは、残りの溝が十分にあっても、減った側が限界に達した時点で交換が必要になります。
次に、燃費の悪化です。タイヤが横にこすられながら転がるので、そのぶん抵抗が増えます。一回の差はわずかでも、毎日の運転では積み重なります。
そして、運転の疲れです。車が片側へ寄るのを、無意識にハンドルで直し続けることになります。長い距離を走ったあとに、いつもより肩や腕が疲れると感じたら、一つの手がかりになります。
ずれているかもしれない、というサイン
次のような変化に気づいたら、アライメントを疑う理由になります。
- タイヤの内側や外側だけが、目立って減っている
- まっすぐ走っているのに、ハンドルの中心が左右どちらかに傾いている
- 平らでまっすぐな道で、ハンドルを軽く持つと、車が片側へ寄っていく
- カーブのあと、ハンドルの戻りが以前より鈍い
- タイヤを新しくしたのに、同じ減り方がまた始まった
ただし、これらの症状はアライメント以外の原因でも起きます。たとえば、空気圧が左右で違えば、車は低いほうへ寄ります。道路は雨水を流すために端へ向かって傾いていることが多く、それだけで車は路肩のほうへ寄ることがあります。
だから、店に行く前に自分で確かめられることを先に確かめるのが、遠回りに見えて近道です。
店に行く前に、自分で確かめること
空気圧をそろえる
運転席のドアを開けたところに貼られた指定の空気圧に、4本ともそろえます。空気圧がずれた状態では、症状の見分けも、店での測定も正確になりません。タイヤが冷えている状態で測るのが基本です。
タイヤの減り方を見る
タイヤの溝を、内側・真ん中・外側に分けて見比べます。手のひらでタイヤの表面を内から外へなでて、ザラザラと引っかかる方向があれば、それも店に伝えると役に立ちます。
| 減り方 | 考えられる主な原因 |
|---|---|
| 両肩(内と外の両方)が減る | 空気圧の不足 |
| 真ん中だけが減る | 空気圧の入れすぎ |
| 内側だけ、または外側だけが減る | アライメントのずれ(トーやキャンバー) |
| 部分的にえぐれるように減る | 足回りの部品の傷みや、タイヤのバランスの不良 |
空気圧の不足と入れすぎは、アライメントの調整では直りません。表の上2つに当てはまるなら、まず空気圧の管理を見直してください。
いつから症状が出たかを思い出す
店にとって、いちばん役に立つ情報の一つです。縁石に当てた、段差を強く乗り越えた、タイヤを替えた、部品を交換したなど、症状が出始めた前後の出来事をメモしておきます。原因の見当がつけば、測定のあとの説明も分かりやすくなります。
測定と調整を考えるタイミング
症状がなくても、次のような作業や出来事のあとは、測定を検討する時期です。
- サスペンションやタイロッドなど、足回りの部品を交換したあと
- 車高を上げた、下げたあと
- 縁石や大きな穴に、強くタイヤを当てたあと
- 事故の修理で、足回りに手が入ったあと
- 高価なタイヤに新しく替えるとき
最後の項目は、費用の考え方によります。アライメントがずれたまま新しいタイヤを付けると、せっかくの新品が早く片減りします。タイヤの価格が高いほど、先に測っておく意味が大きくなります。
逆に、季節ごとのタイヤの履き替えだけで、アライメントがずれることは通常ありません。ホイールを付け替えても、タイヤの付いている角度は、足回りの部品が決めているためです。履き替えの作業そのものはタイヤ交換に必要な工具にまとめました。
なぜ自分では調整しないほうがよいのか
当サイトは「その作業に何の工具が要るか」を書いていますが、アライメントについては、家庭でそろえる工具で正確に測る方法はないと考えてください。
理由は3つあります。どれも、道具の値段や腕前の問題というより、測る条件をそろえられないことに関わっています。
- ずれの単位が、とても小さい。目で見て分かる角度になったときには、タイヤはすでに傷んでいます。
- 車を水平な場所に置き、4輪を同時に測る必要がある。前の2輪だけを合わせても、後ろの向きがずれていれば、車は斜めに走ります。
- 調整する部品の固着やねじの締め付けに、専門の知識が要る。足回りのナットは、走行の安全に直結します。
糸や定規を使って測る方法が紹介されることもあります。しかし、その精度で調整した結果を、高速道路を走る車にそのまま使うのはおすすめしません。自分の役割は、症状に気づき、空気圧とタイヤの状態を整え、正確な情報を持って店に行くことだと割り切るほうが、結果として安く済みます。
自分でやってよい整備と、店に任せる整備の線引きは車の整備をどこまで自分でやるかで詳しく書きました。
店の選び方
アライメントの測定と調整は、タイヤ店、カー用品店、整備工場、自動車販売店など、さまざまな店で受けられます。店によって、設備も説明の丁寧さも違います。選ぶときに確かめたい点を挙げます。
調整の前と後の数値を受け取れるか
もっとも大事な点です。多くの測定機は、各タイヤの角度を数値で出し、基準の範囲と並べて表示できます。調整前と調整後の両方の数値を、紙かデータで受け取れる店を選んでください。
数値が手元にあれば、本当にずれていたのか、どこまで直ったのかが自分でも分かります。次に同じ症状が出たときの比較にも使えます。
4輪を測るか
前輪だけを測って合わせる方法もあります。ただ、先に書いたとおり、後輪の向きが基準になって、前輪の合わせ方が決まる車は多いものです。4輪をまとめて測る店のほうが、原因の見落としが少なくなります。
調整できない項目を、先に説明してくれるか
先に書いたとおり、車によっては調整の仕組みがない角度があります。その場合、直すには部品の交換や、調整用の部品の追加が必要になることがあります。
測定の前に「この車で調整できるのはここまでです」と説明し、追加の費用がかかる可能性を伝えてくれる店は、あとで話が食い違いにくくなります。
料金の出し方が分かりやすいか
料金は、測定だけの料金と、調整まで含む料金が分かれていることが多く、車種や車高を変えた車かどうかでも変わります。金額は店による差が大きいので、予約の前に、自分の車種で見積もりを出してもらうのが確実です。
「測定の結果、調整が必要なければ測定料金だけ」なのか、「調整の有無にかかわらず一定額」なのかも、聞いておくと安心です。
当日の持ち物と、伝えること
- 荷室の重い荷物は、下ろしておく。車の沈み方が変わると、測定値も変わります。
- 燃料は、極端に少なくも多くもない状態にしておくと、普段に近い状態で測れます。
- 症状と、気づいた時期のメモを渡します。
- 足回りの部品を替えていれば、その内容を伝えます。
- 過去に測定したことがあれば、そのときの数値の紙を持っていきます。
調整のあとに確かめること
受け取った数値の紙で、調整後の値が基準の範囲に入っているかを確かめます。帰り道に、平らでまっすぐな道で、ハンドルの中心と車の寄り方を見ます。
そのうえで、1か月ほど走ったら、タイヤの減り方をもう一度見てください。すでに片減りしたタイヤの形は元に戻らないため、調整の直後は、以前の減り方の癖が残って感じられることがあります。
片減りが進んで溝が浅くなった部分がある場合は、タイヤそのものの交換を考える時期です。溝が浅いタイヤは、雨の日に滑りやすく、パンクにも弱くなります。パンクへの備えは車のパンクに必要な道具にまとめました。
よくある質問
Q. タイヤのローテーションで、片減りは直りますか。
A. 前後を入れ替えると、減り方が分散されて、タイヤを長く使える効果はあります。ただし、アライメントのずれそのものは直りません。原因が残ったままなら、入れ替えた先で同じ減り方が始まります。
Q. 新車でも、アライメントはずれていますか。
A. 新車は工場で基準の範囲に合わせて出荷されるのが普通です。症状がなければ、わざわざ測る必要は通常ありません。強い衝撃や、足回りの変更をしたかどうかが判断の分かれ目です。
Q. ハンドルの傾きだけなら、我慢して乗ってもよいですか。
A. 傾きだけで、タイヤの減りや車の流れがなければ、すぐに危険というわけではありません。ただ、何かにぶつけたあとに急に傾いた場合は、足回りの部品が曲がっていることがあります。その場合は、早めに点検を受けてください。
Q. 調整したのに、また同じ症状が出ました。
A. 短い期間で同じずれが戻る場合は、足回りのゴムの部品のへたりや、部品の曲がりが残っていることがあります。調整は角度を合わせる作業で、傷んだ部品を直すものではありません。前回の数値の紙を持って同じ店に相談し、部品の点検を頼んでください。
まとめ
アライメントは、タイヤが付いている向きと角度のことです。ずれるとタイヤの片減りや、ハンドルの傾き、車の流れにつながります。
調整そのものは、測定機を持つ店の仕事です。自分でやるべきことは、空気圧をそろえ、減り方を見て、症状が出た時期を伝えることでした。
店を選ぶときは、4輪を測るか、調整前後の数値を受け取れるか、調整できない項目と料金を先に説明してくれるか。この3点を確かめれば、納得のいく調整につながります。