この記事の要点
- 自転車のチェーンは、汚れを落としてから、専用の油を差します。 汚れの上から油を足すと、砂を巻き込んで、かえって摩耗が進みます。
- 注油のあとは、余分な油を、必ず拭き取ってください。 油が多すぎると、汚れを呼びます。
- ブレーキに油を付けない。 ディスクの面やリムに付くと、ブレーキが効かなくなります。
- チェーンは消耗品です。伸びたら、交換します。油だけでは直りません。
注油の時期を見極める
チェーンの油は、使うほどに減ります。次のサインが出たら、手入れの時期です。
- 漕ぐと、「キーキー」「ジャリジャリ」と音がする。
- チェーンが、乾いて、白っぽく見える。
- 雨の中を走ったあと。
- チェーンが、黒く汚れて、手に付くほどべたつく。
- 変速が、もたつく。
音が出るのは、油が切れているか、汚れが詰まっているかのどちらかです。見た目で判断して、先に汚れを確認します。
頻度の目安
使い方で変わります。
- 毎日、通勤や通学で乗る人: 月に1回ほど。雨のあとは、早めに。
- 週末だけ乗る人: 数週間に1回、または、汚れや音が気になったとき。
- ロードバイクなどで、長い距離を走る人: 走行距離で管理する人もいます。
あくまで目安です。汚れや音の様子を見て、決めてください。
注油の前に、掃除をする
汚れたチェーンに、新しい油を足してはいけません。 古い油と砂が混ざり、研磨剤のようにチェーンを削るからです。
必要な道具
- 古い布や、使い捨てのウエス。
- 古い歯ブラシや、チェーン用のブラシ。
- チェーン用の洗浄剤(ディグリーザー)。
- チェーン専用の油。
- ゴム手袋。
- 床や地面に敷く、新聞紙や古いシート。
掃除の手順
- 自転車を、スタンドで立てるか、壁に立てかけます。
- 床に、新聞紙や古いシートを敷きます。
- チェーンに、洗浄剤を塗ります。
- ブラシで、汚れを浮かせます。
- ウエスで、チェーンを挟み、ペダルを逆回転させながら、汚れを拭き取ります。
- 汚れが取れるまで、繰り返します。
- 水や洗浄剤が残っていないか確認し、しっかり乾かします。
洗浄剤を使うときの注意
洗浄剤の中には、引火しやすいものがあります。
- 火気の近くで、使わない。
- 風通しのよい場所で、使う。
- 使い終わったら、ふたを閉めて、涼しい場所に保管する。
燃えやすい液体の扱いは、パーツクリーナーは危険物でも説明しています。保管の考え方は同じです。
ブレーキに付けない
掃除のときに、洗浄剤が、ブレーキの部分に付かないようにします。
- ディスクブレーキ: ローターやパッドに付くと、効きが悪くなります。
- リムブレーキ: タイヤのリムに付くと、すべって止まれません。
ブレーキ周りは、布で覆うなどして、保護しておくと安心です。
掃除の道具を使い分ける
掃除の方法には、いくつかの選び方があります。
- ウエスで挟んで拭く方法: 道具が少なく、手軽です。軽い汚れに向いています。
- チェーンクリーナー(洗浄用のケース)を使う方法: チェーンを、ケースの中を通しながら洗います。汚れが強いときに向いています。
- チェーンを外して洗う方法: 最も念入りですが、手間がかかります。専用の工具が必要です。
最初は、ウエスと洗浄剤で、十分です。汚れがひどいときだけ、洗浄用のケースを使うと、効率がよくなります。
洗ったあとは、しっかり乾かす
洗浄のあと、水分や洗浄剤が残ったまま油を差すと、油が定着しません。さびの原因にもなります。
- 布で、しっかり水気を拭き取る。
- 風通しのよい場所に、しばらく置く。
- 完全に乾いたことを、手で触って確認する。
急いで次の作業に進まず、乾燥の時間を、きちんと取ってください。
油の選び方
チェーンの油には、使う環境に合わせて、いくつかの種類があります。
- ウェット系: 粘り気があり、雨の日や、湿気の多い環境に強い油です。ただし、汚れが付きやすい面があります。
- ドライ系: さらっとしていて、汚れが付きにくい油です。乾いた環境に向いています。雨には弱めです。
- オールラウンド: 両方の中間の性質を持つ、扱いやすい油です。
一般の潤滑スプレーを、そのまま使ってよいか
家庭で使う、浸透性の潤滑スプレーは、チェーンの長期的な注油には向かないことがあります。
- 成分が、すぐに流れ落ちやすいものがあります。
- 洗浄の役割が強く、油膜が残りにくいものがあります。
自転車用の、チェーン専用の油を、使うほうが確実です。
環境に合わせた油の選び方
どの油が合うかは、乗る場所や天気で変わります。
- 雨の日も走る通勤用: 水に流れにくいウェット系や、オールラウンド。
- 乾いた道を、週末に走る: ドライ系。汚れが付きにくく、掃除が楽です。
- 砂ぼこりの多い道: ドライ系を選び、こまめに掃除します。
- 海の近く: 潮風でさびやすいため、防錆性のある油を選び、洗ってから注油します。
迷ったときは、オールラウンドを選べば、大きな失敗はありません。
乗る前の簡単な点検
走り出す前に、数十秒でできる点検があります。
- チェーンを、手で軽く触れて、乾いていないか。
- ペダルを回して、異音がしないか。
- チェーンが、ギアにしっかり掛かっているか。
- 後輪を持ち上げて回し、変速がスムーズか。
異常があれば、走る前に、掃除や注油をします。出先でチェーンが外れると、手が汚れるだけでなく、危険です。
注油のやり方
掃除と乾燥が終わったら、油を差します。
- チェーンの、コマ1つずつに、油を一滴ずつ垂らします。
- ペダルを、ゆっくり逆回転させながら、全周に行き渡らせます。
- そのまま、数分置いて、油をなじませます。
- きれいな布で、チェーンの表面の余分な油を、しっかり拭き取ります。
油を、ぬりつけすぎない
油の役割は、チェーンの内部を守ることです。外側が油でべたべたしていると、ほこりや砂が付いて、汚れが進みます。
拭き取ったあと、手で触って、表面がしっとりする程度が目安です。
ペダルを、逆回転させる理由
ペダルを逆に回すと、チェーンが動いても、後輪が回りません。変速機に負担がかからず、チェーンだけを回せます。
ブレーキまわりの確認
注油のあと、必ず、ブレーキに油が付いていないかを確認します。
- ディスクのローターや、パッドの表面を見る。
- リムの側面を、布で触る。
- 触って、ぬるつく部分があれば、ブレーキ用の洗浄剤で拭く。
ブレーキに油が付いたまま走ると、止まれず、とても危険です。作業後の確認を、省かないでください。
チェーンの伸びを確認する
チェーンは、使うと、少しずつ伸びます。伸びたチェーンは、歯車を傷め、変速の不調の原因になります。
伸びの確かめ方
- 専用のチェーンチェッカーを使います。
- または、定規で、一定の長さのコマ数を測ります。標準の長さから、一定以上伸びていたら、交換の目安です。
測り方の詳細は、チェーンの種類で違うので、製品の取扱説明書か、自転車店の案内に従ってください。
伸びたチェーンを使い続けると
- ギアが、早く摩耗する。
- 変速のたびに、チェーンが飛ぶ。
- 結果として、ギアやスプロケットまで交換が必要になり、費用が増える。
チェーンは、ギアと比べて安価です。伸びたら、早めの交換が、結果として経済的です。
変速の種類で違う手入れ
自転車の変速方式によって、チェーンの扱いが変わります。
- 外装変速(後ろの歯車が見える形): チェーンがむき出しなので、汚れやすく、定期的な掃除が必要です。
- 内装変速(ハブの中に変速機がある形): チェーンの種類は単純ですが、チェーンカバーがある場合は、カバーの中を見て点検します。
- シングルスピード: チェーンの手入れだけで、足ります。
ふつうの通勤用の自転車で、チェーンカバーが付いているものは、カバーを外す必要があるかもしれません。分からなければ、自転車店に相談してください。
交換するときの注意
チェーンは、どれでも付けられるわけではありません。
- 変速の段数に合ったものを選びます。 段数によって、チェーンの幅が違います。幅の合わないチェーンは、変速不良の原因になります。
- 長さを合わせます。 古いチェーンと、同じコマ数にします。
- つなぎ方を確認します。 ピンで留めるものと、専用のつなぎ具を使うものがあります。
交換の作業は、専用の工具が要り、慣れないと失敗しやすい作業です。不安なら、自転車店に頼んでください。交換の費用は、チェーンが伸びてギアまで傷んでからの修理費より、ずっと安く済みます。
長く乗らないときの保管
自転車を、長期間使わないときも、チェーンの手入れが役立ちます。
- 保管の前に、掃除して、油を差します。
- 湿気の少ない場所に置きます。
- 久しぶりに乗るときは、まず、チェーンの状態と、空気圧を確認します。
放置したチェーンは、さびて固まり、動かなくなることがあります。季節ごとの点検が、さび防止になります。
雨のあとと、冬の手入れ
雨の中を走ると、油が流れ、さびが出やすくなります。
- 雨のあとは、チェーンを拭いて、水気を取ります。
- 乾かしてから、油を差し直します。
- 冬に、融雪剤の撒かれた道を走ったあとは、洗い流して、油を差します。
さびたチェーンは、動きが固くなり、切れる危険もあります。さびが出たら、交換を検討してください。
汚れた手や、床の始末
チェーンの作業は、手や床が汚れやすい作業です。
- 作業前に、ゴム手袋をします。素手だと、油や洗浄剤で、手が荒れます。
- 床には、新聞紙やシートを敷き、油が垂れても汚さないようにします。
- 衣類の袖や裾は、チェーンに巻き込まれないよう、まとめます。
- 作業の終わりに、手を洗剤でよく洗います。
洗浄剤や油が、排水に流れないようにも注意してください。拭き取った汚れは、布や新聞紙に染み込ませて、ごみとして処理します。
手入れの道具を、まとめて保管する
手入れの道具は、小さな箱にまとめておくと、作業を始めるときの手間が減ります。
- 古い布、ブラシ、洗浄剤、油、ゴム手袋を、一つの箱に入れる。
- 洗浄剤と油は、直射日光の当たらない場所に置く。
- ふたをしっかり閉めて、こぼれを防ぐ。
準備の手間が減れば、手入れを続けやすくなります。
使った布の始末
油や洗浄剤を拭いた布は、扱いに気をつけてください。
- 油の付いた布を、丸めて放置しない。
- 自治体の分別に従って、出す。
種類によっては、熱がこもり、発火することがあります。詳しくは、油の付いたウエスの捨て方を読んでください。
バイクのチェーンについては、仕組みが異なるため、別に説明しています。バイクのチェーン清掃と注油を参照してください。
道具をそろえる順番
自転車の整備には、空気入れと、チェーンの手入れ道具が、基本になります。必要な道具の全体は、自転車の整備に必要な工具にまとめています。空気入れの選び方は、自転車の空気入れで説明しています。
異音が出たときの、切り分け
音が出ても、原因がチェーンとは限りません。
- ペダルを回したときだけ鳴るなら、ペダルやクランク周りの可能性があります。
- 後輪が回る間だけ鳴るなら、ハブやブレーキの可能性があります。
- 変速したときに鳴るなら、変速機の調整が必要かもしれません。
チェーンの手入れをしても、音が続くときは、別の部分を疑ってください。自分で直せないときは、自転車店で診てもらうのが確実です。
よくある質問に答えます
Q. 油を差しても、音が消えません
汚れが残っているか、チェーンが伸びている可能性があります。もう一度、掃除してから注油してください。それでも消えなければ、チェーンの交換を検討します。
Q. 食用油や、台所の油を使ってもよいですか
おすすめしません。酸化してべたつき、汚れを呼びます。自転車用の油を使ってください。
Q. 洗浄剤は、台所用洗剤でもよいですか
軽い汚れなら、洗剤を薄めた水で、拭き取る方法もあります。ただし、水分は確実に乾かし、さびを防いでください。
Q. 掃除は、どのくらいの頻度で必要ですか
汚れ具合で決めます。黒く汚れて、触ると手に付くようなら、掃除の時期です。
Q. チェーンの交換は、自分でできますか
専用の工具があれば、できます。ただし、手順が難しい場合は、自転車店に頼むのが確実です。
最後に確認しておくこと
もう一度、整理します。
- 汚れを落としてから、油を差します。
- 油は、コマ1つずつに、少しずつです。
- 注油のあとは、余分な油を、しっかり拭き取ります。
- ブレーキに油を付けません。付いたら、すぐ拭きます。
- 伸びたチェーンは、交換します。
チェーンの手入れは、15分ほどでできます。慣れないうちは、掃除と注油を、別の日に分けてもかまいません。乾燥の時間を、十分に取れるからです。音がしない、軽く漕げる自転車は、日々の手入れで、保てます。
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