ディスクグラインダーは、円盤を高速で回して金属を切ったり削ったりする道具です。一台あれば、さび落とし、切断、研磨、面取りまでこなせます。その代わり、円盤が割れて飛ぶ事故が起きています。毎分一万回転を超える速さで回るものが破片になると、防ぎようがありません。だから、円盤の選び方と取り付け方が、この道具では何より重要になります。この記事では、そこを中心に書きます。
この記事でわかること
- 円盤の種類と用途の対応
- 取り付けで確認する数字
- 体と手の置き方
- 火花と粉じんの管理
何ができる道具か
本体は同じで、付ける円盤を替えることで用途が変わります。
薄い円盤を付ければ、金属を切断できます。ボルト、鉄パイプ、金網。手ノコでは何分もかかるものが、数秒で切れます。
厚い円盤なら、削る作業です。溶接した跡をならす、切った断面のバリを取る。
ブラシの形をしたものを付ければ、さび落としや塗装はがしができます。
この付け替えの自由さが、この道具の価値です。ただし、円盤ごとに守るべき条件が違います。
回転数を必ず確認する
円盤には、使用できる最高の回転数が表示されています。
本体にも、回転数が書かれています。この二つを比べ、円盤の側が本体以上であることを確認してください。
本体のほうが速い円盤を付けると、遠心力に耐えられず割れます。破片は、弾のような速さで飛びます。
径も合わせてください。百ミリ用の本体に、百二十五ミリの円盤は付きません。無理に付けると、カバーからはみ出します。
中心の穴の大きさも規格があります。合わないものは、そもそも取り付けられません。
切る円盤と削る円盤
この二つを混同することが、事故の入り口になります。見た目が似ているので、買うときも使うときも確認してください。
切断用は、厚さが一ミリから三ミリ程度です。薄いので、横からの力に弱い。切る以外の使い方をすると、割れます。
研削用は、六ミリ程度の厚みがあります。こちらは面を当てて削るための形です。
切断用の円盤で、面を削ってはいけません。側面に力がかかって割れます。これが事故の典型です。
切っている途中で本体を傾けるのも、同じ理由で危険です。切り込んだ線に沿って、まっすぐ進めてください。
カバーを外さない
本体には、円盤の半分ほどを覆うカバーが付いています。
これは、円盤が割れたときに破片を受け止める部品です。そして、火花の飛ぶ方向を制御する役目もあります。
作業がやりにくいからと外す人がいますが、外した状態で割れれば、破片は真正面に飛びます。
カバーの向きは、作業に合わせて回せます。火花が自分に来ない向きに調整してから、固定してください。
カバーが変形しているものは、使わないでください。受け止める働きが落ちています。
取り付けの手順
円盤を替えるときの流れを、順に書きます。
まず、電源を抜きます。電池の機種なら電池を外します。ここを省いた事故が起きています。
回転を止める押しボタンを押しながら、付属の工具で固定の部品を緩めます。
円盤には向きがあるものと、ないものがあります。表示を確認してください。文字が書かれた面を外側にするのが一般的です。
締めたら、手で回してみてください。ぶれるようなら、正しく座っていません。締め直してください。
試運転をする
新しい円盤を付けたら、いきなり材料に当てないでください。
周囲に人がいないことを確認し、何も当てない状態で一分ほど回します。
ひびの入った円盤は、この段階で割れます。材料に当てた状態で割れるより、はるかに安全です。
このとき、本体の延長線上に立たないでください。回転する面の方向から外れた位置に立ちます。
異音や大きな振動があれば、止めて原因を探してください。
円盤の保管と点検
円盤は、落とすと外から見えないひびが入ります。使う前の点検は、ここを前提にしてください。
床に落としたものは、使わないほうが安全です。外見が無事でも、内部が傷んでいることがあります。
保管は、平らに重ねて乾いた場所に置いてください。立てかけておくと、倒れて欠けます。
湿気も大敵です。吸湿すると、強度が落ちます。
製品によっては、有効期限が書かれています。古いものは、使う前に状態をよく見てください。
体と手の置き方
持ち方が、とっさのときに制御できるかどうかを決めます。ここは慣れても崩さないでください。
本体には、横に取り付ける握りが付属しています。これを必ず付けて、両手で持ってください。片手では、引っかかったときに支えきれません。
円盤の回転する面の延長上に、体を置かないでください。割れたときの破片は、この方向に飛びます。
材料は、万力やクランプで固定してください。手で押さえると、跳ねたときに手ごと持っていかれます。
そして、押し付けないでください。円盤の重さと回転で削れます。力を入れると、引っかかりやすくなります。
火花の管理
金属を切ると、大量の火花が出ます。
この火花は、実際に熱を持った金属の粒です。数メートル飛び、落ちた場所で燃えるものがあれば火が付きます。
作業する場所から、燃えるものを片づけてください。新聞紙、布、木くず、そして燃料を入れた容器。
車のそばで使うなら、特に注意してください。燃料の配管や樹脂の部品に当たります。
作業のあと、しばらくその場を離れないでください。くすぶりから火が出るのは、少し時間が経ってからです。水を張ったバケツを近くに置いておくと安心です。
身に着けるもの
この道具では、装備を省略できません。
保護の眼鏡は必須です。顔全体を覆う形のものなら、さらに安全です。火花と削りかすが、常に飛んできます。
長袖の作業着を着てください。火花が肌に当たると、やけどします。化学繊維の服は、溶けて肌に付くので避けてください。
革の手袋があると、熱と切創から手を守れます。この道具では、手袋を着けたほうが安全です。刃物ではなく、円盤に巻き込まれる構造ではないためです。
粉じんを吸わないよう、マスクもしてください。塗装をはがす場合は、特に必要です。
使ってはいけない材料
円盤の表示に、対応する材料が書かれています。
金属用の円盤で木を切ると、引っかかって跳ねます。木を切る用途には向きません。
石材やタイル用の円盤は、別に用意されています。金属用とは材質が違います。
密閉された容器を切ることは、絶対に避けてください。中に何が残っているか分かりません。燃料の入っていた容器は、洗っても蒸気が残ります。爆発します。
電線の通っている可能性がある場所も、切る前に確認してください。
買うときの目安
これから買う人に向けて、見るべき点を挙げておきます。用途が決まっていれば、迷う要素は多くありません。
家庭で使うなら、百ミリの円盤を使う機種が標準です。軽く、扱いやすい大きさです。
電源につなぐ機種は、力が安定します。電池の機種は取り回しが楽ですが、連続して使うと電池が減ります。
本体の価格は、数千円から一万円台です。ただし、円盤は消耗品なので、その費用も見込んでください。
途中で手を離すと止まる形式のスイッチが付いた機種は、安全性が高くなります。引っかかったときに、離せば止まります。
切る作業の進め方
金属を切るときの、実際の動かし方を書いておきます。
まず、切る線に印を付けます。金属には鉛筆が乗らないので、先のとがった工具で線を引くか、専用のペンを使ってください。
円盤が最高の速さで回ってから、材料に当てます。当てた状態で電源を入れると、跳ねます。この順番は、回転する工具に共通する原則です。
一度で切り落とそうとせず、浅く何回かに分けて進めてください。深く入れるほど、挟まれる危険が増します。
切り終わりが近づいたら、落ちる側を支える準備をしてください。落ちた勢いで円盤を挟むことがあります。誰かに支えてもらうか、下に台を置いておきます。
切ったあとの断面は、鋭く熱くなっています。素手で触らないでください。冷めてからバリを落とすまでが、一連の作業です。
削る作業の進め方
面を削る場合は、当てる角度が結果を決めます。
円盤を材料に対して十五度から三十度ほど傾けて当てます。平らに当てると、円盤の全面が接して跳ねやすくなります。垂直に立てると、削るのではなく切り込みます。
一か所に留めると、その部分だけ深くへこみます。常に動かし続けてください。
熱にも注意が必要です。削り続けると材料が高温になり、薄い板なら変形します。時々止めて、冷ましながら進めてください。
塗装された面を削ると、削りかすと一緒に塗料の粉が舞います。屋外で、風下に人がいないことを確かめてから始めてください。
他の道具との比較
同じ作業を、別の方法でできる場合があります。
細い金属の棒を一本切るだけなら、金切りのノコギリで足ります。時間はかかりますが、火花も音も出ません。集合住宅ではこちらのほうが現実的です。
ボルトを切るだけなら、専用のはさみ状の工具があります。刃を当てて握るだけで切れるので、火花も出ません。
薄い板金なら、金属用のはさみが使えます。切り口はやや曲がりますが、後で整えれば問題ありません。
ディスクグラインダーが必要になるのは、太い材料、硬い材料、そして量が多い場合です。年に一度の作業のために買うより、そのときだけ別の方法を探すほうが合理的なこともあります。
作業のあとの片づけ
金属の粉は、放っておくと厄介です。
床や周囲に飛び散った粉は、その日のうちに掃除してください。濡れるとさびて、床に跡が残ります。
車のそばで作業した場合、塗装の上に落ちた粉が刺さっていることがあります。放置すると、そこからさびが出ます。水で流してから拭き取ってください。
本体にも粉がたまります。空気の取り入れ口がふさがると、内部の温度が上がって故障します。乾いた布と、空気を吹く道具で払ってください。
そして、使った円盤は本体から外しておくと、次に使うときに向きや状態を確認する習慣が付きます。付けたまま保管すると、点検を飛ばしがちになります。
中古品をもらったとき
親や知人から譲り受けるという場面があります。この道具に関しては、状態の確認を省かないでください。
まず、カバーが付いているかです。外されたまま渡されることが、実際によくあります。本体の型番からカバーだけを部品として注文できるので、必ず付けてから使ってください。
横の握りも、なくなっていることがあります。これも部品として手に入ります。両手で持つために必要なものです。
電源の線に、被覆の破れや硬化がないかも見てください。古い機械では、線が劣化していることがあります。
そして、付いたままの円盤は使わないでください。いつ買ったものか分からず、保管の状態も不明です。新しい円盤を買うところから始めるのが、いちばん安全です。数百円で済みます。
よくある質問
円盤が減ってきました。どこまで使えますか
固定する金具の外径に近づいたら、交換してください。小さくなるほど切れ味が落ち、押し付けがちになって危険です。使い切る手前でやめるのが、結果的に安全で速いです。
切っている途中で急に止まりました
切り口が閉じて円盤を挟んでいます。材料の支え方を見直してください。切り落とす側が下がって閉じる置き方になっていないか確認します。無理に力を入れると、円盤が割れます。
住宅地で使ってもよいですか
音が非常に大きく、火花も飛びます。近隣への配慮が要ります。時間帯を選び、短時間で終わるようにしてください。集合住宅のベランダでの使用は、避けるべきです。
さび落としだけならこの道具が要りますか
面積が小さいなら、紙やすりやワイヤーブラシで足ります。この道具は、広い面や量が多い場合に価値が出ます。危険もあるので、必要になってから買っても遅くありません。
まとめ
ディスクグラインダーで最も大事なのは、円盤の選び方です。円盤に書かれた回転数が、本体の回転数以上であること。径と穴の大きさが合っていること。そして、切断用の薄い円盤で面を削らないこと。この三つを外すと、円盤が割れて破片が飛びます。カバーは外さず、材料は固定し、円盤の回転面の延長上に体を置かない。火花は数メートル飛ぶので、燃えるものを片づけてから始めてください。
固着したボルトの対処はさびて回らないボルトを外す、切断前の道具選びは工具の選び方、木の切断は丸ノコの使い方をご覧ください。