延長コードや電源タップは、家のどこにでもある、ありふれた道具です。けれど、使い方を誤ると発熱し、火災の原因になります。とくに暖房器具を使う冬は、電気を多く使う機器が増え、コードに負担がかかりやすい季節です。どれだけの電気を流してよいのか、どこに危険が潜んでいるのかを、道具の側から整理します。
この記事の要点
- 延長コードや電源タップには、流してよい電気の上限(多くは合計1500W)があります。
- 暖房器具やドライヤーなど、熱を出す機器を同じタップに複数つながないでください。
- コンセントとプラグのすき間にたまったほこりと湿気で火が出る「トラッキング」に注意します。
- コードを束ねたまま使う、家具の下敷きにすることは、発熱や断線の原因です。
「たこ足配線」の何が危ないのか
電源タップにさらに電源タップをつなぎ、たくさんの機器を一か所のコンセントから使う。いわゆるたこ足配線は、危ないとよく言われます。
ただ、正確に言うと、危ないのは「差し込み口の数が多いこと」そのものではありません。つないだ機器の電気の合計が、コードやタップの上限を超えることが問題です。
電気が流れると、コードは少し熱を持ちます。上限の範囲内なら問題のない程度ですが、上限を超えて流し続けると、コードやタップの内部が発熱し、被覆が溶け、周りの物に火が移ることがあります。
そして、たこ足配線をすると、気づかないうちに、消費電力の大きい機器が同じ根元に集まりやすくなるのです。それが、たこ足配線が危ないと言われる本当の理由です。
上限のワット数を確かめる
延長コードや電源タップの本体、またはコードに付いた札には、使える電気の上限が表示されています。
家庭用の製品では、「15A 125V 合計1500Wまで」といった表示が多く見られます。これは、そのタップにつないだ機器の消費電力を全部足して、1500Wを超えないようにという意味です。
ただし、製品によっては上限がもっと低いものもあります。細いコードの延長コードや、古い製品では、上限が1500Wより小さく表示されていることがあります。必ず、手元の製品の表示を確かめてください。
よく使う機器の消費電力の目安
| 機器 | 消費電力の目安 |
|---|---|
| 電気ストーブ、ヒーター | 数百W〜1200W程度(強で使うと大きい) |
| ドライヤー | 1000W〜1200W程度 |
| 電気ケトル | 1000W〜1300W程度 |
| 電子レンジ | 1000W以上になることが多い |
| アイロン | 1000W以上になることが多い |
| こたつ | 数百W程度 |
| パソコン、テレビ | 数十W〜数百W程度 |
| スマートフォンの充電器 | 数W〜数十W程度 |
これはあくまで目安です。実際の消費電力は、機器の本体の表示や取扱説明書に書かれています。
表を見ると分かるとおり、熱を出す機器は、1台だけで1000Wを超えることが多いのです。電気ストーブとドライヤーを同じタップにつないで同時に使えば、それだけで1500Wを超えてしまいます。
だから、熱を出す機器は、それぞれ壁のコンセントに直接つなぐことを基本にしてください。ブレーカーが落ちる仕組みと、家全体で使える電気の量については、分電盤とブレーカーの基礎で詳しく書きました。
ほこりから火が出る「トラッキング」
差しっぱなしのプラグとコンセントのすき間には、ほこりがたまります。そのほこりが湿気を吸うと、プラグの2本の刃の間に、少しずつ電気が流れるようになります。これを繰り返すうちに、刃の間の表面が焦げて電気の通り道ができ、ある日、火花が出て発火することがあります。これがトラッキングと呼ばれる現象です。機器の電源を切っていても、プラグが差さっていれば起こり得ます。とくに、家具の裏や冷蔵庫の後ろ、テレビ台の奥など、ふだん目に入らず、掃除もしない場所で起きやすくなります。台所や洗面所のように湿気の多い場所も要注意です。
トラッキングを防ぐには、次のことが効きます。どれも特別な道具は要らず、年に数回の習慣にするだけで、危険を大きく減らせます。大掃除や季節の衣替えのときに、あわせて行うと忘れにくくなります。
- ときどきプラグを抜いて、刃とコンセントの周りのほこりを乾いた布で拭く。
- 使わない機器のプラグは、抜いておく。
- 家具の裏のコンセントも、大掃除のときに見る。
- ほこりが入りにくい、刃の根元が覆われたプラグやカバーを使う。
プラグの刃の根元が黒く焦げている、変色しているのを見つけたら、トラッキングが進んでいる可能性があります。その機器とタップは使うのをやめてください。壁のコンセントそのものが焦げていたら、交換が必要です。壁のコンセントの交換は電気工事士の資格が要る作業なので、電気工事店に依頼します。どこからが資格の要る作業かは、電気工事は資格なしでどこまで?で整理しました。
コードの扱いで、やってはいけないこと
| やりがちなこと | 起きること |
|---|---|
| コードを束ねたり、巻いたまま使う | 熱が逃げずにこもり、発熱しやすくなる |
| 家具や重い物の下敷きにする | 中の線が押しつぶされ、傷んで発熱・断線する |
| カーペットや布団の下に通す | 熱がこもるうえ、踏まれて傷む |
| ドアや窓のすき間に挟む | 開け閉めのたびに押しつぶされる |
| ステープルや釘で壁に留める | 被覆に穴が開き、線が傷む |
| コードを引っ張ってプラグを抜く | 根元の線が切れかけ、そこで発熱する |
| 濡れた手でプラグを触る | 感電のおそれ |
中でも見落とされやすいのが、巻いたまま使うことです。とくに屋外や作業場で使うドラム式のコードで起きがちです。
ドラム式の延長コード(リール)は、コードを巻いたままだと、使える上限が大きく下がるものがあります。巻かれたコードは熱が逃げにくいためです。本体には「巻いたとき」と「全部引き出したとき」で、別々の上限が書かれていることが多くあります。電気を多く使う機器をつなぐときは、コードを全部引き出してから使ってください。
そして、コードを引っ張ってプラグを抜く癖は、ぜひ直してください。プラグの根元で中の線が少しずつ切れていき、残った細い部分に電気が集中して、熱を持つようになります。抜くときは、プラグ本体を持つこと。これだけで、コードの寿命がずいぶん変わります。
交換を考えるサイン
延長コードや電源タップは、見た目がきれいでも中で傷んでいることがあります。次のサインが一つでもあれば、使うのをやめて交換してください。
- 使っているときに、コードやタップが熱い
- 焦げたような臭いがする
- プラグの刃や、差し込み口が変色している
- コードの被覆が硬くなっている、ひび割れている、中の線が見える
- コードを動かすと、つないだ機器の電源が入ったり切れたりする
- プラグを差し込んだとき、ぐらつく、すぐ抜ける
- タップ本体が割れている、変形している
5番目の「電源が入ったり切れたりする」は、コードの中で線が切れかけているサインです。切れかけた部分では、電気が細い線に集中して発熱します。テープを巻いてごまかして使い続けないでください。
延長コードは消耗品です。安い物だからと、何年も、何十年も同じ物を使い続けがちですが、傷んだコードを使い続けるより、新しい物に替えるほうがずっと安く済みます。
選ぶときに見る表示
| 表示・機能 | 見る理由 |
|---|---|
| PSEマーク | 電気用品安全法の基準を満たした製品であることを示す表示 |
| 上限のワット数 | つなぐ予定の機器の合計に余裕があるか |
| トラッキングを防ぐ作りのプラグ | 刃の根元が覆われ、ほこりの影響を受けにくい |
| 一つずつ切れるスイッチ | 使わない機器の電気を、プラグを抜かずに切れる |
| 雷や過電流から守る機能 | 精密な機器をつなぐなら検討する |
| コードの長さ | 長すぎると余った部分を束ねがちになる。必要な長さを選ぶ |
最初に確かめてほしいのは、PSEマークです。家庭用の延長コードや電源タップは、電気用品安全法の対象で、基準を満たした製品にはこの表示があります。極端に安い製品や、出どころの分からない製品には、表示がないものもあります。
そして、コードの長さは、必要な分だけを選んでください。長すぎるコードは、余った部分を束ねたり、床に這わせたりすることになり、前の節で書いた危険を招きます。
場所ごとの使い方
暖房器具
電気ストーブやヒーターは、できるだけ延長コードを使わず、壁のコンセントに直接つないでください。取扱説明書に、延長コードを使わないよう書かれている機器も多くあります。
そして、暖房器具の近くに、コードやタップを置かないこと。暖房器具の熱で、コードの被覆が傷むことがあります。暖房器具の周りの安全については、石油ストーブ・ファンヒーターの手入れで書いた、燃えやすい物との距離の考え方も参考になります。
台所と洗面所
水と湿気のある場所です。電源タップを、水がかかる場所や、床に直接置かないでください。電気ケトルや電子レンジなど、電気を多く使う機器が集まりやすい場所でもあるので、同じタップにつなぐ機器の組み合わせにとくに気をつけます。
屋外
屋外で電動工具や照明を使うときは、屋外で使えると表示された延長コードを選んでください。屋内用のコードは、雨や日光に耐える作りになっていません。
つなぎ目のプラグ部分を、水たまりや濡れた地面に置かないことも大切です。つなぎ目を少し高い位置に置くか、防水のカバーを使います。凍結防止用のヒーターのように屋外で長く使う機器の注意は、水道管の凍結対策でも触れました。
よくいただく質問
Q. 延長コードをつなげて、さらに延長してもいいですか
A. できる限り、避けてください。
つなぎ目が増えるほど、接触が悪くなって発熱する場所が増えます。また、上限のワット数は、つないだ中でいちばん上限の小さいコードに合わせる必要があります。長さが足りないなら、必要な長さの延長コードを1本用意するほうが安全です。
Q. 雷から守る機能付きのタップなら安心ですか
A. 雷による一時的な過電圧から、つないだ機器を守る助けにはなります。
ただし、使いすぎによる発熱や、トラッキングを防ぐ機能ではありません。上限のワット数を守ること、ほこりを掃除することは、機能の有無にかかわらず必要です。
Q. コンセントの数が足りません。どうすればいいですか
A. 延長コードやタップで補うのは、電気の少ない機器にとどめてください。
暖房器具や台所の機器のように電気を多く使う機器のために、壁のコンセントそのものを増やしたい場合は、電気工事士の資格が必要な工事になります。部屋ごとの回路の容量も関わるので、電気工事店に相談してください。持ち家ではなく賃貸なら、まず管理会社や貸主に相談します。
Q. 使っていないときも、タップのスイッチは切ったほうがいいですか
A. タップのスイッチを切れば、つないだ機器に電気が流れなくなり、待機中の電気も減らせます。
ただし、スイッチを切っても、タップ本体のプラグは壁のコンセントに差さったままです。壁のコンセントとタップのプラグの間のトラッキングは、スイッチでは防げません。長く使わないなら、壁のコンセントからプラグごと抜いておくほうが確実です。
Q. 子どもやペットがいる家で気をつけることは
- 使っていない差し込み口には、カバーを付ける。小さな子どもが金属を差し込む事故を防ぎます
- コードを、子どもやペットが引っ張れる場所に垂らさない。機器ごと落ちてきます
- ペットがかじれる場所にコードを這わせない。かじられた被覆から、感電や発熱につながります
- タップを床に直接置かず、飲み物や水がかからない場所に置く。
ペットがコードをかじった跡を見つけたら、見た目が小さな傷でも、そのコードは交換してください。中の線まで傷んでいることがあります。
ここまでのまとめ
- タップの上限のワット数を確かめ、つなぐ機器の合計が超えないようにする。
- 熱を出す機器は、壁のコンセントに直接。同じタップに複数つながない。
- 差しっぱなしのプラグのほこりを、ときどき拭き取る。
- コードを束ねない、下敷きにしない、引っ張って抜かない。
- 熱い、焦げ臭い、変色があれば使うのをやめて交換する。
- PSEマークのある製品を、必要な長さで選ぶ。
延長コードは、つないで電気が来ていれば、それで役目を果たしているように見えます。だからこそ、中で起きている発熱や傷みに、なかなか気づけません。
今日、家の中のタップを一つずつ手で触ってみてください。つないだまま温かくなっているものがあれば、それが、見直すきっかけです。
もう一歩進めるなら、屋外で電気を使うときの注意、ブレーカーが落ちる原因もご覧ください。
参考にした公的資料
- 電気工事士法 電気工事に資格が必要な範囲の規定
- NITE(製品評価技術基盤機構)製品安全 製品事故の情報と注意喚起
法令や制度は改正されます。実際の判断では、リンク先の最新の内容と、お住まいの自治体の情報をご確認ください。
