雪かきは、道具の選び方で作業時間も体への負担も変わります。同じ雪を相手にしても、押して運ぶ道具と、すくって放る道具では、使う筋肉が違います。そして、この作業では毎年、転倒や心臓への負担による事故が起きています。降った直後の軽い雪と、踏み固められた氷では、必要な道具も違います。この記事では、雪の状態ごとの道具と、体を壊さない進め方を書きます。
この記事でわかること
- 雪の状態と道具の対応
- 材質と大きさの選び方
- 腰を痛めない動かし方
- 雪を置く場所の決め方
道具は三つの型に分かれる
売り場には似た形のものが並んでいますが、役割ははっきり分かれています。まず、この違いを押さえてください。
一つめは、すくって放る型です。先が四角く、深さのある形をしています。積もった雪をすくい、離れた場所へ投げるための道具です。量をこなせますが、腕と腰を使います。
二つめは、押して運ぶ型です。幅が広く、前に押すことで雪を寄せます。持ち上げないので体は楽ですが、雪が深いと押せません。降った直後の、十センチ程度までの雪に向きます。
三つめは、削る型です。先が金属で、薄く平らな形をしています。踏み固められた雪や、張り付いた氷を剥がすための道具です。すくう力はありませんが、他の道具では歯が立たない相手に効きます。
一本ですべてをこなす道具はありません。雪の多い地域なら、押す型と削る型を最低限そろえてください。
材質で変わること
同じ形でも、材質によって使い勝手と寿命が変わります。ここも選ぶときの判断材料です。
樹脂のものは軽く、雪が付きにくい。安価で、扱いやすい選択です。ただし、寒さで硬くなり、氷を無理にこじると割れます。低温でも割れにくい材質を使った製品を選ぶと、寿命が伸びます。
金属のものは丈夫で、氷にも負けません。その代わり重く、長時間の作業では疲れます。また、地面をこすると、舗装や側溝のふたを傷つけます。
樹脂の先端に金属の刃を付けた製品もあります。軽さと丈夫さを両立させた形で、家庭で使うにはこれが扱いやすい。
柄の材質も見てください。木は手が冷えにくく、金属は軽くて丈夫です。長さは、立ったときに腰をかがめすぎない高さを選んでください。短いと、必ず前かがみになります。
大きければよいわけではない
選ぶときに、つい大きなものを手に取りがちです。しかし、これが体を痛める入り口になります。
しかし、一度に運べる量が増えるということは、一回あたりの重さが増えるということです。湿った雪は、思っているより重い。大きな道具で満杯にすると、十キロを超えることもあります。
これを何十回も繰り返せば、腰を痛めます。心臓にも負担がかかります。
だから、自分の体力に合った大きさを選び、しかも満杯にしないことが大切です。小さめの道具で回数を増やすほうが、結果的に早く終わることもあります。
使う人が複数いるなら、体格に合わせて何本か用意しておくとよいでしょう。
腰を痛めない動かし方
道具の選び方より、じつは使い方のほうが体への影響は大きいものです。
持ち上げるときは、膝を曲げて、脚の力で立ち上がってください。腰だけで持ち上げると、そこに負担が集中します。背中を丸めない姿勢を意識してください。
そして、体をひねって放るのを避けてください。上半身だけを回すと、腰を傷めます。放る方向に足ごと向き直ってから投げる。手間に見えますが、この習慣が体を守ります。
そもそも、可能なら持ち上げないことです。押して運べる雪なら、押してください。持ち上げる動作を減らすほど、負担は減ります。
柄を持つ手は、離してください。両手を近づけて持つと、てこが効きません。片方を柄の端、もう片方を中ほどに置くと、少ない力で動かせます。
体調への注意
雪かきは、想像以上に激しい運動です。ここは道具の話より優先して読んでほしい部分です。
寒い中で急に力を使うと、血圧が上がります。高齢の方や、持病のある方には、相当な負担です。実際、この作業中の事故は毎年報告されています。
始める前に、軽く体を動かしてください。いきなり全力で始めないことです。
そして、こまめに休んでください。十分作業して数分休む、という進め方でかまいません。汗をかいたら、水分も取ってください。寒いと喉の渇きを感じにくいのですが、体は水分を失っています。
一人で作業しないことも、大切です。誰かに声をかけてから始める、時間を伝えておく。倒れたときに気づいてもらえます。
雪をどこに置くか
作業を始める前に、必ず決めておくべきことがあります。かいた雪をどこに積むかです。
考えずに始めると、あとで積んだ雪が邪魔になります。玄関の前、車の出入り口、隣家との境。ここに積むと、後日の作業が難しくなります。
日の当たる場所に積むと、早く解けます。逆に、北側の日陰に積んだ雪は、春が来るまで残り続けます。
道路に出すのは、避けてください。通行の妨げになりますし、地域によっては禁じられています。
隣の敷地に投げ入れるのも、当然ながら問題になります。近隣との関係を損ねる原因になりがちです。
そして、排水の溝をふさがないでください。解けた水の行き場がなくなり、凍って滑る路面を作ります。
凍らせない工夫
同じ量の雪でも、状態によって必要な労力はまるで違います。ここを利用する考え方です。
降った直後の雪は、軽く、簡単に動かせます。踏み固められた雪は、削る道具でなければ取れません。そして、いったん凍ると、手作業ではほとんど落ちません。
だから、降り続く日は、途中で何度かに分けて作業するほうが楽です。一度に全部やろうとすると、その間に踏み固められます。
人が通る前に片づけるのが理想です。朝の早い時間に手を入れておけば、その日は楽に過ごせます。
そして、除雪した後の薄い雪も、残さないでください。それが解けて夜に凍ると、最も滑りやすい路面になります。
滑り止めの材料
削っても取れない、凍った路面への対処です。
融雪の剤は、雪や氷を解かします。玄関先や、車の出入りする場所に使います。ただし、金属をさびさせ、植物を傷める性質があるので、まく場所を選んでください。
砂や小石をまく方法もあります。解かすのではなく、摩擦を作る考え方です。植物や金属への影響がありません。ただし、春に片づける必要があります。
灰や、使い終わった猫の砂を使う人もいます。手に入るもので工夫すれば十分で、わざわざ買いそろえる必要はありません。
自治体によっては、融雪の剤を無料で配布しています。冬の前に確認しておくとよいでしょう。
屋根の雪
屋根の雪については、はっきり書いておきます。
屋根に上っての作業は、転落の危険が非常に高い。毎年、死亡事故が起きています。積もった雪の上は、足場としてまったく信用できません。
命綱を付けず、一人で上るのは避けてください。可能なら、業者に頼んでください。
地上から届く範囲なら、長い柄の道具で落とす方法があります。この場合も、落ちてくる雪の下に立たないでください。屋根から滑り落ちる雪は、人を埋めるだけの量と重さがあります。
軒先にできる氷の柱も、危険です。落ちると人に当たります。下を通る人がいる場所では、早めに落としてください。
足元の装備
作業中の転倒を防ぐための、身に着けるものの話です。
雪用の靴を履いてください。普通の靴底では、凍った路面で滑ります。靴に後付けする滑り止めの器具も、数百円から売られています。
手袋は、防水のものを選んでください。雪は手の熱で解けるので、防水でない手袋はすぐ濡れ、かえって手を冷やします。
服装は、重ね着にしてください。作業を始めると体温が上がるので、脱いで調整できる形が適しています。厚着で始めて汗をかき、休憩中に冷えるのが、体調を崩す典型的な流れです。
そして、雪の照り返しは強い。長時間の作業では、目を守るものがあると楽です。
保管と手入れ
シーズンが終わったときの、しまい方の話です。
金属の部分は、使った後に水気を拭き取ってください。融雪の剤が付いたままだと、さびます。
樹脂の道具は、直射日光の当たる場所に置かないでください。紫外線で劣化し、次の冬に割れます。
柄と先端をつなぐ部分のねじが緩んでいないか、しまう前に確認してください。使う前に気づくより、この時期に直しておくほうが楽です。
そして、冬の前に取り出しやすい場所へ置いてください。降ってから物置の奥を探すことになると、その時点で作業が遅れます。
どこから手を付けるか
順番を決めておくと、限られた時間と体力を無駄にしません。
最優先は、出入り口です。玄関から道路までの通路が確保できていれば、最低限の生活は回ります。ここを幅一メートルほど、まず通してください。全面をきれいにするのは、その後です。
次が、車を使うなら駐車場と、そこから道路までの経路です。車が出せないと、買い物にも通院にも行けません。
そして、給湯器や室外機の周りです。ここが雪で埋まると、機器が止まります。排気の経路がふさがれると危険でもあるので、確認してください。
後回しでよいのは、庭や、使っていない通路です。放っておいても困りません。全部をやろうとして力尽きるより、優先度の高い場所を確実に処理してください。
近所との関わり
雪の多い地域では、この作業が近隣との関係に直結します。
自分の敷地の前を、どこまで片づけるか。境界のあたりで雪が残っていると、双方が気にします。少し多めにやっておくくらいが、角が立ちません。
共用の通路や、集合住宅の駐車場では、誰がやるのかが問題になりがちです。管理組合や自治会で取り決めがあるか、確認しておいてください。
高齢の世帯が近くにあるなら、声をかけておくとよいでしょう。この作業は、体力のない人には危険な負担です。地域によっては、支援の仕組みが用意されています。
そして、朝早い時間の作業は音が響きます。金属の道具が舗装をこする音は、思っているより遠くまで届きます。時間帯には配慮してください。
冬が来る前にやっておくこと
最後に、備えの部分です。降ってから慌てると、選ぶ余裕も買う余裕もありません。
道具は、秋のうちに買っておいてください。大雪の予報が出た日には、売り場から消えます。価格も、シーズン前のほうが落ち着いています。
融雪の剤も、同じです。使う量を見込んで、早めに確保しておいてください。
雪を積む場所も、この時期に考えておきます。そこに物を置いているなら、片づけておく。冬の間ずっと使えない場所になると割り切れば、置き方も変わります。
そして、屋外の水栓や配管の位置を、把握しておいてください。雪に埋もれると場所が分からなくなり、道具をぶつけて壊すことがあります。目印の棒を立てておくと確実です。側溝のふたや、庭の敷石も同じ理由で、位置を覚えておく価値があります。
よくある質問
一本だけ買うなら何を選びますか
雪が年に数回の地域なら、押して運ぶ型が扱いやすい。体への負担が少なく、降った直後の雪に対応できます。よく降る地域なら、すくう型と削る型の二本をそろえてください。
雪が道具に張り付いて落ちません
湿った雪では起きやすい現象です。表面に少量の油や、専用の滑り剤を塗ると軽減します。時々、道具を地面に打ち付けて落としながら進めるのも有効です。
除雪機を買うべきでしょうか
広い駐車場や長い通路があり、毎年何度も降る地域なら、検討する価値があります。数万円から数十万円と幅があり、保管場所と燃料の管理も必要です。まず手作業でどれだけ負担か確かめてから判断してください。
お湯をかけて解かしてもよいですか
すすめられません。解けた水がすぐ凍り、かえって危険な路面になります。給湯器の湯を大量に使えば費用もかかります。凍結した部分には、融雪の剤か滑り止めを使ってください。
まとめ
雪かきの道具は、すくう型、押す型、削る型に分かれます。降った直後なら押す型、積もっているならすくう型、凍っているなら削る型。一本ですべてをこなすものはありません。そして、大きな道具を満杯にしないこと、膝を使って持ち上げること、体をひねって放らないこと。この三つが、腰と心臓を守ります。雪を置く場所は、始める前に決めてください。屋根の作業は、業者に頼むのが正解です。