車の下回りのさびは、外から見えません。だから、気づいたときには進んでいます。そして、これは見た目の問題ではありません。車体の骨格や、ブレーキの配管が腐食すれば、車検に通らなくなり、走行の安全にも関わります。原因の大半は、冬にまかれる融雪の剤と、海沿いの潮風です。どちらも、洗えば落ちるものです。この記事では、点検の仕方と、洗い方、そして防ぐ手だてを書きます。
この記事でわかること
- 下回りがさびる原因
- 放置するとどうなるか
- 洗い方と時期
- 防錆の施工という選択
さびを進める二つの原因
鉄は、水と酸素があればさびます。しかし、それだけならもっとゆっくり進みます。速度を何倍にも上げるものがあります。
一つは、冬の道路にまかれる融雪の剤です。塩を主成分とするものが多く、これが水に溶けると、金属の腐食を強く促します。雪の降る地域では、これが最大の要因です。
もう一つは、海からの風です。海沿いに住んでいれば、走っていなくても塩分を含んだ空気にさらされます。駐車しているだけで進みます。
この二つに当てはまらない地域なら、そこまで神経質になる必要はありません。ただし、泥や砂が詰まったまま湿った状態が続くと、そこからさびは出ます。
どこがさびるか
下回りのなかでも、傷みやすい場所はおおむね決まっています。点検のときは、ここを重点的に見てください。
タイヤの後ろ側、泥よけの奥。ここには、走行中に跳ね上げた水と泥が集中します。そして、乾きにくい。
車体の縁が折り返されている部分も、危険です。二枚の鉄板が重なっているので、隙間に水が入り、内側から腐食します。外から見えないまま進みます。
前後をつなぐ骨格の部材、マフラーの周囲、そしてブレーキの配管。ここも、点検のときに必ず見る場所です。
逆に、塗装がしっかりしている面は、そう簡単には傷みません。問題は、飛び石で塗装が欠けた場所です。そこから水が入ります。
放置するとどうなるか
さびは、段階を追って進みます。どこまで来ているかで、対処が変わります。
最初は、表面が茶色くなるだけです。この段階なら、落として塗れば止まります。
次に、表面が浮いてきます。指で押すと、ぼろぼろと崩れる状態です。ここまで来ると、内部まで進んでいます。
さらに進むと、穴が開きます。車体の骨格に穴が開けば、強度が落ちます。車検では、この状態が不適合とされることがあります。
そして、最も危険なのがブレーキの配管です。ここが腐食して破れると、ブレーキが効かなくなります。走行中に起きれば、重大な事故になります。年式の古い車では、実際に交換が必要になる例があります。
自分で点検する
車の下に潜らなくても、確認できる範囲があります。まずはそこから始めてください。
タイヤの奥、泥よけの内側は、ハンドルを切れば手が届きます。懐中電灯で照らして、鉄の色が見えていないか確認してください。
車体の下の縁は、しゃがめば見えます。塗装がはがれている、茶色い筋が垂れている。こうした兆候を探してください。
手鏡や、棒の先に付けた小さな鏡を使うと、見えない場所も確認できます。スマートフォンを差し込んで撮影する方法も有効です。
車を持ち上げて下に入るなら、必ず馬と呼ばれる支えを使ってください。油圧の装置だけで潜るのは、絶対に避けてください。毎年、死亡事故が起きています。
洗うのが最大の対策
難しい話はありません。塩分を落とせば、進行は止まります。
洗車機の下回り洗浄という機能が、最も手軽です。数百円の追加で、走行しながら下から水を当ててくれます。
自分でやるなら、ホースの先を下に向けて、たっぷり水をかけてください。洗剤は要りません。塩は水に溶けるので、量が大事です。
高圧の水を使う機械があれば、泥をかき出すのに有効です。ただし、強い水を至近距離で当てると、塗装をはがし、電気の部品に水を押し込むことがあります。少し離して使ってください。
そして、洗った後は乾かしてください。濡れたまま車庫に入れると、かえって湿った状態が続きます。少し走ってから停めると、風で乾きます。
洗う時期
同じ回数でも、いつ洗うかで効果がまるで変わります。
融雪の剤がまかれた道を走った日。この日のうちが理想です。少なくとも、数日以内に洗ってください。
冬の間、毎回は難しいはずです。それなら、週に一度を目安にしてください。
そして、冬が終わったら、必ず一度しっかり洗ってください。春先の一回が、その年のさびの進み方を決めます。
海沿いに住んでいるなら、季節を問わず定期的に洗ってください。潮風は一年中吹いています。
凍結する日の注意
冬に洗う場合には、別の注意点があります。
気温が氷点下の日に洗うと、ドアの隙間や、鍵の穴に入った水が凍ります。翌朝、ドアが開かなくなります。
ブレーキの部品に水が残ったまま凍ると、動きが悪くなることもあります。駐車する装置が固まって、動かせなくなる例もあります。
だから、気温の上がる日中に洗い、洗った後は少し走ってください。水が飛び、熱で乾きます。
ドアの周りのゴムには、凍結を防ぐ剤を塗っておくと安心です。数百円で買えて、ひと冬もちます。
見つけたさびへの対処
点検の結果、すでにさびが出ていた場合の話です。
表面だけの軽いさびなら、自分で処理できます。ワイヤーブラシや紙やすりで落とし、さびを止める塗料を塗ります。その上から、下回り用の保護材を吹けば完了です。
ここで大事なのは、さびを完全に落とすことです。残っていると、塗料の下で進みます。
作業中は、目を守ってください。上を向いて削るので、さびの粉が落ちてきます。マスクも着けてください。
一方、穴が開いている、押すと崩れる、骨格の部分に出ている。こうした場合は、自分では対処できません。整備工場で見てもらってください。
防錆の施工
予防を、専門の業者に頼むという方法もあります。
下回り全体に、保護する材料を吹き付ける施工です。雪の多い地域や、海沿いでは、新車のうちに施工する人が多い。
費用は、数万円から十万円台が目安です。素材や、施工の範囲によって変わります。
効果は永久ではありません。数年ごとに点検し、必要なら塗り直すことになります。
すでにさびが出ている状態で上から吹くと、内部で進行します。施工の前に、さびを落とす作業が要ります。ここをきちんとやってくれる業者を選んでください。
車庫の環境
日々の保管の仕方も、進み方に影響します。
屋根があるほうが、雨に濡れないぶん有利です。ただし、風が通らない車庫では、濡れた車体が乾きません。かえって湿った状態が続くことがあります。
土や砂利の上に停めていると、地面からの湿気が上がってきます。コンクリートのほうが、条件はよくなります。
カバーをかける場合、濡れたままかけないでください。内部に湿気が閉じ込められます。
長期間動かさない車も、注意が要ります。動かさないと、下回りが乾く機会がありません。時々走らせてください。
中古車を買うときの確認
これから車を買う側の視点も、書いておきます。
同じ年式、同じ走行距離でも、使われていた地域によって下回りの状態はまったく違います。雪国で使われた車は、下回りが傷んでいることがあります。
だから、車を見るときは、必ず下をのぞいてください。上から見える部分がきれいでも、下が進んでいることがあります。
販売店に、持ち上げて見せてもらえないか頼んでみてください。断られるなら、それも判断の材料になります。
逆に、防錆の施工がされている車は、価値があります。記録が残っていれば、確認してください。
車検との関係
最後に、制度の面にも触れておきます。
下回りのさびは、車検の検査項目に直接含まれるわけではありません。しかし、腐食によって強度が保てない、部品が正常に働かないと判断されれば、そのままでは通りません。
特に、ブレーキの配管やマフラーの腐食は、検査で指摘されやすい部分です。
修理には、当然ながら部品代と工賃がかかります。腐食の範囲が広ければ、十万円を超えることもあります。
車検のときに、下回りの状態を聞いておいてください。今は問題なくても、次の車検までにどうなるかを教えてもらえます。この情報が、買い替えの判断にもつながります。
洗う前にそろえるもの
自宅で下回りを洗うなら、必要なものは多くありません。
ホースと、先端のノズル。水の向きを変えられる形のものが便利です。下に向けて差し込めるよう、角度の付いた製品もあります。
柄の長いブラシがあると、届かない場所の泥を落とせます。タイヤの奥や、泥よけの内側は、手だけでは届きません。
そして、服装です。下に向けた水は跳ね返ってきます。濡れてもよい服と、長靴を用意してください。冬なら、防水の手袋も欲しくなります。
作業する場所にも配慮が要ります。泥水が流れ出るので、集合住宅の駐車場や、隣家に近い場所では避けたほうが無難です。排水の経路も確認しておいてください。
洗う順番
効率よく進めるための、洗う順番です。
まず、タイヤの奥から始めてください。ここが最も汚れており、後から洗うと、落とした泥がきれいにした場所に付きます。ハンドルを片側に切ってから、反対側も同じように洗います。
次に、車体の下全体へ水をかけます。前から後ろへ、一方向に流してください。行ったり来たりすると、時間がかかるわりに落ちません。
最後に、もう一度たっぷり水をかけて流します。塩分は、水の量で落とすものです。ここで惜しまないでください。
時間は、十分から二十分あれば済みます。車体を洗うついでに、この時間を足すと考えてください。
マフラーと足回り
ひとくちに下回りといっても、部品ごとに事情が違います。
マフラーは、熱くなる部品です。走った直後は触れません。洗うなら、十分に冷めてからにしてください。高温の状態で水をかけると、急な温度差で傷みます。
ステンレスの素材でも、条件が厳しければさびます。継ぎ目や、溶接した部分から出ることが多い。穴が開くと、音が大きくなり、排気が漏れます。この状態は車検に通りません。
ばねや、路面からの衝撃を吸収する部品も、点検の対象です。表面のさびは仕方ない部分もありますが、可動する部分に固着が出ていないか見てください。
ブレーキの部品には、強い水を直接当てないでください。動く部分に泥を押し込むことがあります。離して、水を流す程度にとどめてください。
バイクや自転車の場合
同じ理屈が、二輪にも当てはまります。むしろ、部品がむき出しなぶん、条件は厳しくなります。
冬に走った後は、必ず水で流してください。特に、鎖の周りと、ばねの部分に塩分が残ります。流した後は、油を差し直すところまでが一連の作業です。
自転車も同じです。雪の日に乗った後、そのまま置いておくと、鎖が一冬でさびて固まります。ここまで来ると、交換が必要になります。
屋外に置いているなら、カバーをかけるだけでも違います。ただし、濡れたままかけないという点は、車と同じです。
よくある質問
洗うときに洗剤は要りますか
下回りに関しては、水だけで十分です。落としたいのは塩分で、これは水に溶けます。量をかけることのほうが大事です。泥がこびりついている場合だけ、こすり落としてください。
コイン洗車場でもできますか
下向きにノズルを向ければ可能です。ただし、車体の下に頭を入れるのは危険なので、届く範囲にとどめてください。下回り専用の装置を備えた店もあります。
すでにかなりさびています
まず、整備工場で状態を見てもらってください。表面だけなのか、構造に関わるのかで、判断が変わります。修理の費用が車の価値を超えるなら、買い替えを含めて考える段階です。
新車なら安心ですか
今の車は防錆の性能が上がっていますが、条件が厳しい地域では数年で出ることがあります。新車だからと油断せず、冬の後には洗ってください。むしろ、新しいうちから習慣にすることに意味があります。
まとめ
下回りのさびを進めるのは、融雪の剤と潮風です。どちらも塩分なので、水で洗えば落とせます。難しい作業ではありません。融雪の剤がまかれた道を走った日は、その週のうちに。冬が終わったら、必ず一度しっかりと。これだけで、進み方がまったく変わります。表面の軽いさびなら自分で処理できますが、穴が開いている、骨格に出ている場合は整備工場へ。ブレーキの配管の腐食は、命に関わります。
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