バイクのオイル交換は、車に比べて抜く量が少なく、工具も少なくて済みます。そのぶん自分でやる人が多い作業ですが、困るのは決まって処分のところです。1リットル前後の廃油は、量が少ないだけに「これくらいなら」と思ってしまいがちです。ここでは、バイクならではの量の少なさを踏まえた処分の選び方と、交換のときに一緒に出るものの扱いをまとめます。
この記事の要点
- 抜く量はおおむね1リットルから3リットル。小さな廃油処理箱で足ります。
- 量が少なくても、排水や地面に流してはいけません。基準は車と同じです。
- バイク用品店では、買った店での引き取りに応じている場合があります。
- 交換のたびにドレンワッシャーを新しくするのが基本です。使い回すと漏れます。
- オイルフィルターが紙のろ材だけの型のバイクもあり、その場合はごみの区分が変わります。
抜ける量を先に知っておく
処分の準備は、量を知ることから始まります。容器の大きさも、処理箱の容量も、そこで決まります。抜いてから慌てて買いに行くことにならないよう、先に確かめておいてください。
目安は、排気量によっておおむね次のとおりです。ただし、これは「だいたいこのくらい」という幅の話であって、自分の車種の指定に置き換える必要があります。
| 排気量の目安 | 交換で抜ける量の目安 | 用意する処理箱 |
|---|---|---|
| 原付・小型 | 0.6〜1.2リットル | 2.5リットル用 |
| 250cc前後 | 1.0〜2.0リットル | 2.5〜4リットル用 |
| 400cc以上 | 2.0〜3.5リットル | 4リットル用 |
正確な量は、取扱説明書かサービスマニュアルに書かれています。同じ排気量でも、機種によってかなり違います。フィルターも替える場合は、指定の量が増えます。
用意する処理箱は、抜ける量より一回り大きいものにしてください。ぎりぎりの容量では吸い切れず、底に液体が残ります。
処分の3つの選び方
1.小さな処理箱で吸わせる
もっとも手軽な方法です。バイク用として売られている2.5リットル程度の小さな処理箱があり、原付から250ccまでならこれで足ります。値段も数百円で、ホームセンターやバイク用品店で手に入ります。
注いだあと一晩置き、底に染みがないことを確かめて、地域の区分で出します。多くの自治体で燃えるごみとして出せますが、区分は必ず確かめてください。詳しい出し方は廃油処理箱の捨て方にまとめました。
2.バイク用品店に引き取ってもらう
オイルを買った店で、古い油を引き取ってもらえる場合があります。交換のたびに、前回の廃油を持っていくという流れにすれば、ためこむこともありません。
持ち込むときは、ふたが確実に閉まる容器に入れ、倒れないように固定して運びます。バイクで運ぶなら、なおさら注意が必要です。荷台の上で倒れれば、車体にも道路にも油が広がります。
引き取りは店の善意で行われているものです。義務ではありません。電話で先に確かめ、断られたら引き下がってください。
3.交換ごと店に任せる
意外に見落とされる選択肢です。店で交換すれば、廃油もフィルターも店が処分します。工賃はかかりますが、処理箱の代金と、処分先を探す手間がなくなります。
年に1回か2回の交換で、工具も持っていないという方には、これがいちばん合っています。自分でやることが目的でなければ、任せてよい作業だと考えてください。
量が少ないからこその落とし穴
1リットルという量は、牛乳パック1本ぶん、バケツの底に少したまる程度です。見た目の量が少ないので、車の廃油とは違うもののように感じてしまいます。だからこそ、次のような扱いをしてしまう人がいます。
- 新聞紙に染み込ませて、燃えるごみに混ぜる
- 庭の土や砂利にまく
- 側溝や排水口に流す
- チェーンや金属部に塗って「使い切る」
どれも避けてください。1リットルの油でも、水面では広い面積に膜を作ります。量の少なさは、判断の理由になりません。
とくに最後の項目は、整備の知識がある人がやりがちです。使い終わった油には、金属の粉や燃えかすが混じっています。これをチェーンに塗れば、砂や粉を抱え込んで、かえって摩耗を早めます。チェーンの手入れの正しい手順はバイクのチェーン清掃と注油にまとめました。
新聞紙に染み込ませる方法も、おすすめしません。油を含んだ紙や布は、丸めて置くと酸化の熱で発火することがあります。この危険については油の付いたウエスの捨て方で詳しく書きました。
一緒に出るもの
ドレンワッシャー
ドレンボルトに付いている小さな金属の輪です。アルミや銅でできていて、締めるとつぶれて密着します。
交換のたびに新品に替えてください。一度つぶれたものは、次は密着しません。数十円の部品ですが、ここを惜しむと油がにじみます。
外した古いワッシャーは、金属ごみとして出せることが多いものです。小さいので、ほかの金属ごみと一緒に袋へ入れてください。
オイルフィルター
バイクのフィルターには、金属の殻ごと交換する型と、中の紙のろ材だけを交換する型があります。
殻ごとの型なら、車と同じ扱いです。逆さに立てて一晩置き、油を抜いてから、金属ごみか不燃ごみの区分で出します。詳しくはオイルエレメントの捨て方を参照してください。
ろ材だけの型なら、出るのは油を含んだ紙とゴムの部品です。こちらも油を抜いてから出します。区分は地域によって違うので、「油の付いた紙」として扱えるかを確かめてください。
ろ材を交換する型では、ゴムのOリングも一緒に替えるのが基本です。古いものを使い回すと、そこから漏れます。
作業の段取り
- 前日までに:新しいオイル、ドレンワッシャー、必要なら処理箱と新しいフィルターを用意します。
- 暖める:数分エンジンをかけ、油を流れやすくします。そのあと必ずエンジンを切ります。
- 少し冷ます:熱いままでは、やけどをします。手で触れる程度まで待ちます。
- 抜く:車体をまっすぐ立てた状態で、ドレンボルトを緩めます。受ける位置は、油の飛ぶ方向を見て決めます。
- 入れる:指定の量を入れ、油量を確かめます。窓や検油棒の見方は機種ごとに違います。
- 確かめる:短く走らせて、ドレン部とフィルター部からのにじみを見ます。
- 片付ける:廃油を処理箱か容器へ移し、その日のうちに置き場所を決めます。
3番の「少し冷ます」を飛ばす人が多くいます。熱い油は、思っているより勢いよく出ます。手に当たればやけどをします。急がないでください。
4番では、車体の傾きが効きます。サイドスタンドを立てたままでは、抜け切りません。センタースタンドがない車種では、誰かに支えてもらうか、スタンドを使ってまっすぐ立ててください。
必要な道具は少なくて済む
バイクのオイル交換でそろえる道具は、車より少なくて足ります。処分の準備も含めて、次のものがあれば作業できます。
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| ドレンボルトに合うレンチ | 多くは17mmか19mm。車種で違います |
| トルクレンチ | 締めすぎを防ぐ。アルミのねじ山を守ります |
| 廃油処理箱 | 抜いた油を吸わせる |
| じょうご(オイルジョッキ) | 注ぐときにこぼさない |
| ウエス | にじみを拭く |
| 耐油手袋 | 手を守る |
この中で、意外に大事なのがトルクレンチです。バイクのドレンボルトは、アルミのケースにねじ込まれていることが多く、力任せに締めるとねじ山が壊れます。修理は大がかりになります。
締め付けの指定値は、説明書に書かれています。数値で締める道具の選び方はトルクレンチの選び方と使い方に、レンチの種類ごとの向き不向きはレンチの種類と使い分けにまとめました。
抜いた油の見方
処分する前に、抜いた油を少し見てください。エンジンの状態を知らせる合図が混じっていることがあります。
黒くなっているのは正常です。油は使われるうちに汚れを抱え込みます。黒いことそのものは、心配の理由になりません。
気にしてほしいのは次の3つです。金属の粉がきらきら光って見える場合、内部が削れている可能性があります。白く濁っている場合は、水分が混ざっています。焦げたにおいがする場合は、油が高温にさらされていたことになります。
どれも一度で判断はできませんが、次の交換のときと見比べると分かります。気づいたことをメモしておくと、整備の相談がしやすくなります。水が混ざった油の扱いは水が混ざった廃油の処分に書きました。
2サイクルのバイクは話が変わる
ここまでは、4サイクルのエンジンを積んだバイクの話です。2サイクルのバイクには、オイル交換という作業がありません。
2サイクルでは、オイルを燃料と一緒に燃やして使います。混合の比率を守って燃料を作るか、別のタンクにオイルを入れて自動で混ぜる仕組みになっています。つまり、抜く廃油が出ません。
そのかわり、余った混合燃料の処分という別の悩みが出ます。混合燃料はガソリンなので、処理箱に入れてはいけません。作り方と保管は混合燃料の作り方と保管に、容器の捨て方は混合燃料の缶・ガソリン携行缶の捨て方にまとめました。
なお、ギヤオイル(ミッションオイル)は2サイクルでも交換します。量は少なく、数百ミリリットルという場合もあります。こちらは4サイクルの廃油と同じ扱いで処分できます。
集合住宅や駐輪場での作業
バイクは、駐輪場やアパートの駐車スペースで整備されることが多くあります。ここで気をつけたいのが、油のしみと、規約です。
コンクリートやアスファルトに落ちた油は、ほとんど落ちません。作業の前に、段ボールと新聞紙を広く敷いてください。抜くときだけでなく、注ぐときにもこぼれます。
そして、共用部分での整備を禁じている物件もあります。油や燃料を扱う作業は、とくに問題になりやすい部分です。規約を確かめてから始めてください。どこまで手を入れてよいかの考え方は賃貸でできるDIYの範囲にも通じます。
運ぶときの注意
引き取りに持っていく場合、運び方でつまずく人がいます。廃油は、思っている以上に漏れます。
容器は、口が狭く、ふたがねじ式のものを選んでください。バケツや、ふたを載せるだけの容器は倒れた瞬間に全部出ます。
車で運ぶなら、荷室に段ボールや厚手の袋を敷き、容器が転がらないように固定します。箱に入れて、周りを詰め物で埋めるのが確実です。夏の車内は温度が上がるので、積んだまま長時間置かないでください。
バイクで運ぶ場合は、量を少なくしてください。1リットルを超える液体を、荷台に載せて走るのはおすすめしません。加速や制動で中身が動き、バランスに影響します。
そして、店に着いたら中身が何かを伝えてください。「4サイクルのエンジンオイル、およそ2リットル、水は入っていません」と言えるだけで、受け入れの判断が早く済みます。
よくある質問
Q. 抜いた油を、次の交換までためておいてよいですか。
A. ふた付きの容器なら構いませんが、おすすめしません。置いている間に、雨や結露で水が混ざります。水が入ると引き取りを断られることがあります。詳しくは水が混ざった廃油の処分に書きました。
Q. 車のオイルとバイクのオイルを同じ容器にためてよいですか。
A. 処分に回すだけなら混ざっても構いません。ただし、ギヤオイルやブレーキ液は混ぜないでください。性質が違い、受け入れ先の判断も変わります。
Q. バイク用のオイルを、車に使ってよいですか。
A. 逆もそうですが、指定が違えば使わないでください。多くのバイクでは、エンジンオイルがクラッチの潤滑も兼ねています。そのため、車用のオイルに含まれる成分が、クラッチの滑りにつながることがあります。指定された規格のものを使ってください。
Q. オイルの交換時期は、距離で決めるのですか。
A. 走行距離と、前回からの期間の両方で指定されているのが普通です。どちらか早いほうで替えます。あまり乗らない場合も、期間で交換します。置いている間にも油は劣化します。指定は機種ごとに違うので、説明書を確かめてください。
まとめ
バイクの廃油は量が少ないので、小さな処理箱ひとつで片が付きます。吸わせて出す、これが基本の形になります。
買った店で引き取ってもらえるなら、交換のたびに持っていく習慣にすると、ためこむこともありません。年に1回だけの作業なら、店に任せて処分まで含めて考えるのも、十分に合理的な選択です。
そして、量が少ないことを理由に、地面や排水に流さないでください。ここだけは、車と全く同じ基準です。
処理箱を使う場合は廃油処理箱の捨て方、スタンドへの持ち込みは廃油をガソリンスタンドに持ち込む、チェーンの手入れはバイクのチェーン清掃と注油で扱っています。