車のバッテリー交換は、外す順番と付ける順番さえ守れば、工具の少ない作業です。逆に言えば、順番を間違えた瞬間に、火花とショートの危険が生まれる作業でもあります。この記事では、なぜその順番なのかという理由から、新しいバッテリーの選び方、交換後に起きやすい不具合、古いバッテリーの処分までを、作業の流れに沿ってまとめます。
この記事の要点
- 外すときはマイナス端子が先、付けるときはプラス端子が先です。
- 順番の理由は、工具が車体に触れても短絡しないようにするためです。
- 新しいバッテリーは、今付いているものの型式を読み取って選びます。アイドリングストップ車は専用品が必要です。
- 交換後は、時計やパワーウィンドウの設定が消えることがあります。慌てず初期設定をやり直します。
- 古いバッテリーは家庭ごみに出せません。購入店などの引き取りを使います。
答え:外すのはマイナスから、付けるのはプラスから
先に順番だけを書きます。
| 作業 | 1番目 | 2番目 |
|---|---|---|
| 古いバッテリーを外す | マイナス(黒・-) | プラス(赤・+) |
| 新しいバッテリーを付ける | プラス(赤・+) | マイナス(黒・-) |
覚え方は一つで足ります。マイナスは「最初に外して、最後に付ける」。この一文さえ頭に入っていれば、どちらの作業でも迷いません。
なお、ここで扱うのは自分の車のバッテリーを新品に取り替える作業です。バッテリーが上がって、他の車からケーブルで電気をもらう場合は、順番の考え方が違います。そちらはブースターケーブルのつなぎ方と順番にまとめました。
なぜ、この順番なのか
理由を知っておくと、手順を忘れても自分で組み立て直せます。
ほとんどの乗用車は、バッテリーのマイナス端子が、車体の金属につながっています。つまり、エンジンやボディの金属部分は、すべてマイナス端子と同じ側です。
ここで、プラス端子を先に外そうとした場合を考えます。レンチをプラス端子のナットに掛けたまま、レンチの反対側がボディの金属に触れると、プラスとマイナスが工具でつながります。これが短絡です。大きな電流が一気に流れ、火花が飛び、工具が焼けるほど熱くなることがあります。
マイナスを先に外しておけば、この事故は起きません。車体とバッテリーのつながりが切れているので、プラス端子を触っている工具がボディに触れても、電気の通り道ができないからです。
付けるときに逆になるのも、同じ理屈です。プラスを先に付ける時点では、まだマイナスがつながっていません。だから工具がボディに触れても安全です。最後にマイナスを付けるときは、工具がボディに触れても、もともと同じ側なので問題が起きません。
もう一つ、火花が危ない理由があります。バッテリーからは、水素ガスが出ていることがあります。充電中や、弱ったバッテリーではとくにそうです。端子のすぐ近くで火花が出れば、そのガスに火が付くおそれがあります。
交換の前に、新しいバッテリーを正しく選ぶ
作業そのものより、ここで失敗する人が多い部分です。形が似ていても、付かない、あるいは付いても性能が足りないということが起きます。
型式の読み方
今付いているバッテリーの上面か側面に、「40B19L」のような英数字が書かれています。これが日本の規格による型式で、次の意味があります。
| 部分 | 例 | 意味 |
|---|---|---|
| 最初の数字 | 40 | 性能の目安。大きいほど性能が高い |
| 英字 | B | 短い側の面の大きさ(幅と高さ)の区分 |
| 次の数字 | 19 | 長さ(おおよそのcm) |
| 最後の英字 | L | 端子の位置(LかR) |
選ぶときに絶対に合わせるのは、英字・長さの数字・最後のLかRの3つです。ここが違うと、固定金具に収まらない、ケーブルが届かない、といった問題が出ます。
最初の性能の数字は、同じか、それより大きいものを選びます。小さくすると、冬の朝などにエンジンのかかりが悪くなることがあります。
とくにLとRの取り違えには注意してください。端子の位置が左右逆になり、ケーブルが届かなくなります。無理に引っ張って付けると、ケーブルに負担がかかり、走行中の振動で傷みます。
アイドリングストップ車と、輸入車は別扱い
信号待ちでエンジンが止まる車は、エンジンの始動回数が多く、専用のバッテリーが使われています。型式の表記も「M-42」「N-55」のように、先ほどとは別の形です。
この車に普通のバッテリーを付けると、寿命が大きく縮んだり、アイドリングストップが働かなくなったりします。取扱説明書か、今付いているバッテリーの表記を必ず確かめてください。
輸入車や一部の国産車では、欧州の規格のバッテリーが使われています。さらに、交換したあとに、車のコンピューターへ新しいバッテリーを登録する作業が必要な車種もあります。登録しないと、充電の制御が合わず、新品でも早く傷むことがあります。この場合は、自分で交換するより、整備工場に任せるほうが確実です。
ハイブリッド車の場合
ハイブリッド車には、走行用の大きな電池とは別に、補機用の小さなバッテリーが積まれています。自分で交換の対象にできるのは、この補機用だけです。
補機用のバッテリーは、車種によって荷室の床下や座席の下にあります。室内に置くため、ガスを外に逃がす管が付いた専用品が使われていることもあります。見た目が似ていても、普通のバッテリーで代用しないでください。走行用の高電圧の電池には、絶対に触らないでください。
必要な道具
| 道具 | 用途 |
|---|---|
| メガネレンチまたはソケットレンチ(10mmが多い) | 端子のナットと、固定金具のナットを回す |
| 保護めがね | 液の飛び散りから目を守る |
| ゴム手袋か作業用手袋 | 手の保護と、端子への接触を減らす |
| ウエス | 端子まわりの汚れを拭く |
| 端子用のブラシ | ケーブル側の端子の白い粉を落とす |
| メモリーバックアップ(必要な場合) | ナビや設定の消去を防ぐ |
端子のナットは、車種によって大きさが違います。長いスパナより、短いメガネレンチやソケットが向いています。柄が短いほど、反対側がボディに触れにくくなるためです。レンチの種類ごとの向き不向きはレンチの種類と使い分けに、ソケットの選び方はソケットの差込角の選び方にまとめました。
交換の手順
作業の前に
- 平らな場所に止め、エンジンを切り、キーを抜きます(電子キーの車は、車から離しておきます)。
- ライト、エアコン、オーディオなど、電気を使うものをすべて切ります。
- ナビの暗証番号や、オーディオの防犯コードが必要な車は、番号を控えておきます。
- 腕時計や指輪など、金属のアクセサリーを外します。端子に触れると短絡の原因になります。
古いバッテリーを外す
- マイナス端子のナットを緩め、ケーブルを外します。外したケーブルは、端子に戻って触れないよう、脇へよけて布でくるんでおきます。
- プラス端子の赤いカバーを開け、ナットを緩めて外します。
- バッテリーを押さえている固定金具を外します。ナットを落とさないよう、外した部品は一か所にまとめます。
- バッテリーを持ち上げて取り出します。重さは小さいものでも10kg前後あります。腰を落とし、傾けないようにまっすぐ上げます。
取り出したバッテリーは、傾けたり、横に寝かせたりしないでください。中には希硫酸が入っています。服や車の塗装に付くと、穴が開くことがあります。
新しいバッテリーを付ける
- 台座のゴミや汚れを拭き取り、新しいバッテリーを、端子の向きを確かめて置きます。
- 固定金具で、しっかり固定します。ここが緩いと、走行中の振動で揺れ、端子やケーブルが傷みます。
- ケーブル側の端子に白い粉があれば、ブラシで落とします。
- プラス端子にケーブルを付け、ナットを締めます。赤いカバーを閉じます。
- 最後に、マイナス端子にケーブルを付け、ナットを締めます。
端子のナットは、手で揺すって動かない程度に締めます。締めすぎると、鉛でできた端子が変形します。
付け終わったら、エンジンをかけて、警告灯が消えるか、ライトやワイパーが動くかを確かめます。
最後に、工具や外した部品をエンジンルームに置き忘れていないかを見てください。ボンネットを閉じる前に一度見渡すだけで防げます。置き忘れた工具が端子に触れれば、せっかく守った順番の意味がなくなります。
交換のあとに起きやすいこと
ケーブルを外すと、車の電気が一度途切れます。そのため、故障ではない変化がいくつか起きます。
- 時計やラジオの選局が消える。設定し直せば戻ります。
- パワーウィンドウの自動の上げ下げが効かなくなる。車種ごとに初期設定の手順があります。多くは、窓をいちばん下まで下げ、そのまま上げきってスイッチを数秒押し続ける、という流れです。取扱説明書を確認してください。
- アイドリングが少し不安定になる。エンジンの制御が学習し直している間に起きることがあります。しばらく走ると落ち着くのが普通です。
- ナビが暗証番号を求める。控えておいた番号を入力します。
こうした手間を避けたい場合は、メモリーバックアップという道具を使います。シガーソケットや診断用の差し込み口から電気を送り、交換中も設定を保つものです。ただし、バックアップ中はケーブルに電気が来ているので、外したプラス側のケーブルを車体に触れさせないよう、いっそう注意が要ります。
古いバッテリーの処分
車のバッテリーは、家庭ごみとしては出せません。多くの自治体で、収集しない品目とされています。
現実的な出し先は次のとおりです。
- 新しいバッテリーを買った店。多くのカー用品店やガソリンスタンドは、交換品を買った場合に古いものを引き取っています。
- 通信販売で買った場合は、販売店が回収の仕組みを用意していることがあります。注文前に確かめてください。
- 回収を行っている整備工場やリサイクル業者。
引き取りまでの間は、端子にテープを貼って絶縁し、立てた状態で保管します。子どもの手の届かない場所に置いてください。
車から出る他の不要品も、出し方にそれぞれ決まりがあります。抜いたエンジンオイルはエンジンオイルの捨て方を参照してください。
自分で交換しないほうがよい場合
次のような場合は、店に任せる判断をおすすめします。
- 交換後に、バッテリーの登録作業が必要な車種
- バッテリーが座席の下や荷室の奥など、取り出しにくい場所にある車
- バッテリーが膨らんでいる、液が漏れている、異臭がする場合
- 重いものを持ち上げるのが難しい場合
膨らみや液漏れは、中で異常が起きている合図です。そのまま触らず、充電もしないでください。
そもそも、どこまでを自分の作業にするかの線引きは車の整備をどこまで自分でやるかにまとめました。寒くなる前の点検については冬の車の備えも参考にしてください。
よくある質問
Q. マイナスだけ外せば、プラスは付けたままでもよいですか。
A. 点検や、長く乗らないときに電気の消耗を防ぐ目的なら、マイナスだけ外すことはあります。ただ、バッテリーを取り出すなら、プラスも外す必要があります。そのときも、マイナスが外れていることを確かめてからです。
Q. 性能の数字を大きくすると、車に悪い影響はありますか。
A. 寸法と端子の位置が合っていれば、数字を上げること自体で困ることは通常ありません。ただし、アイドリングストップ車や、登録作業が必要な車では、指定の種類から外れないことが優先です。
Q. バッテリーの寿命はどのくらいですか。
A. 使い方と環境で大きく変わるので、年数だけでは決められません。エンジンのかかりが重くなった、ライトが暗く感じるといった変化は、交換を考える合図です。店で電圧や状態を測ってもらうと、判断しやすくなります。
Q. 端子に付いている白い粉は何ですか。
A. 端子の腐食でできたものです。素手で触らないでください。手袋をしてブラシで落とし、ウエスで拭き取ります。粉が多い場合は、端子の締め付けが緩んでいたり、バッテリーが傷んでいたりすることがあります。
まとめ
バッテリー交換で覚えることは、マイナスは最初に外して、最後に付ける、この一つです。理由は、工具がボディに触れても電気の通り道を作らないためでした。
そして、作業より先に大事なのが、型式を読み取って正しいバッテリーを選ぶことです。英字、長さ、端子の向きを合わせ、アイドリングストップ車は専用品を選びます。
交換後に時計や窓の設定が消えても、故障ではありません。古いバッテリーは家庭ごみにせず、買った店の引き取りを使ってください。
