バッテリーは、ある日突然だめになるわけではありません。少しずつ力を失い、冷え込んだ朝や、久しぶりに乗った日に、限界が表に出ます。つまり、前もって気づくことができる部品です。ここでは、年数の目安、電圧で見るときの数字、店で測ってもらう内容、そして交換に踏み切る判断のしかたをまとめます。
この記事の要点
- 年数だけでは決められません。使い方と環境で、寿命は大きく変わります。
- 電圧の目安は、エンジンを切った状態で12.6ボルト前後が健全。12.4ボルトを下回ると弱っています。
- ただし、電圧が正常でも、始動できないことがあります。大きな電流を出す力は別に測ります。
- もっとも分かりやすい合図は、エンジンをかけるときの音が重くなることです。
- 点検は秋に。夏に傷んだものが、冬の朝に表面化します。
年数の目安と、変わる条件
「何年で交換」と言い切れないのが、この部品の難しさです。同じ製品でも、条件によって寿命が何倍も違います。売り場で「何年もつ」と書かれていないのは、このためです。
一般的な目安として語られるのは2年から5年という幅ですが、この幅の広さが実態を表しています。同じ年に付けた同じ製品でも、乗り方が違えば結果は変わります。
寿命を縮める条件を挙げます。
- 短い距離の運転ばかり。使った電気を取り戻せません。
- 乗らない期間が長い。置いておくだけでも減っていきます。
- 夏の高温。内部の劣化が進みます。
- 一度でも深く上がった経験。上がった時点で傷みます。
- 電気を使う機器が多い。後付けの機器も含みます。
逆に、週末に長めの距離を走り、後付けの機器がなく、駐車場に屋根があるという車は、長く使えます。
だから、年数は「点検を始める目安」として使うのが正しい向き合い方です。買ってから3年たったら、点検の対象に入れる。そう考えてください。
アイドリングストップ車は、始動の回数が多いため、負担が大きい部品です。専用のバッテリーが使われており、価格も高くなります。詳しくは車のバッテリー交換の順番にまとめました。
電圧で見るときの数字
電圧計があれば、自分で測れます。エンジンを切って、しばらく置いた状態で測ってください。切った直後は数字が高めに出ます。
| 電圧の目安 | 状態 |
|---|---|
| 12.6ボルト前後 | 十分に充電されている |
| 12.4ボルト前後 | 少し減っている。走って充電したい |
| 12.2ボルト前後 | かなり減っている。点検をすすめる |
| 12.0ボルト以下 | 始動できない可能性がある |
ここで大事なのは、この数字が「たまっている量」の目安にすぎないということです。満タンかどうかは分かりますが、タンクそのものが小さくなっていないかは分かりません。
古いバッテリーは、充電すれば電圧は戻ります。しかし、大きな電流を出す力が落ちているため、エンジンを回せません。電圧が12.6ボルトあるのにかからない、という状態が起こるのはこのためです。
店で測ってもらうもの
だから、最後の判断は店に任せるほうが確実です。始動に必要な力が残っているかを測る機械があり、これを使えば電圧だけでは見えない部分まで分かります。
測ってもらうこと自体は、気軽に頼める作業です。給油のついでに「バッテリーを測ってもらえますか」と言えば済みます。
この機械は、電圧に加えて、瞬間に出せる電流の力を数値で示します。新品のときの値と比べて、どれだけ落ちているかが分かります。
測定は数分で終わり、無料で行っている店も多いものです。ガソリンスタンド、カー用品店、整備工場で頼めます。
結果を受け取るときは、数値と、判定の区分を聞いてください。「良好」「注意」「要交換」のように示されることが多くあります。数値をメモしておけば、次の点検と比べられます。
数字より分かりやすい合図
測定器がなくても、ふだんの運転のなかで気づける変化があります。どれも、弱ってきたときに出やすいものです。
エンジンをかけるときの音
もっとも確かな合図です。「キュルキュル」という回転が遅く、重たい音になります。かかるまでの時間も長くなります。
毎日聞いている音なので、変化に気づきやすい部分です。「なんとなく遅い」と感じたら、それは合図だと考えてください。
ライトの明るさ
止まっているときに暗く、アクセルを踏むと明るくなる。この差が大きいと、バッテリーの力が落ちている可能性があります。
パワーウィンドウの動き
電気を多く使う部分なので、力の低下が出やすい場所です。いつもより遅いと感じたら、気にしてください。
アイドリングストップが働かない
信号待ちでエンジンが止まらなくなった。これは故障ではなく、装置がバッテリーの状態を見て、止めるのをやめていることが多いものです。分かりやすい合図の一つです。
交換に踏み切る判断
合図が出たとき、すぐ替えるべきか、もう少し使えるか。迷う場面だと思います。判断の目安を書きます。
- すでに一度上がっている:交換をすすめます。上がった時点で傷んでいます。
- 店の判定が「要交換」:数値で出ているので、従うのが確実です。
- これから寒い季節に入る:早めに替えるほうが安全です。
- 遠出の予定がある:出先で上がると、手間も費用も大きくなります。
- 合図が一つだけ、判定は「注意」:しばらく様子を見てもよい範囲です。
私の考えでは、冬を越す前と、遠出の前の2つの場面では、迷ったら替えるほうが結果的に安く済みます。出先で止まれば、救援の手配と時間の損失が加わります。
逆に、近所しか乗らず、すぐ点検に出せる環境なら、様子を見る選択もあります。
長く使うための工夫
新しいものに替えたあと、同じ使い方を続けていれば、同じくらいの年数で弱ります。寿命を延ばす工夫は、道具を足すことより、習慣を変えることにあります。
週に一度は30分ほど続けて走る。これがもっとも効きます。流れのよい道のほうが充電は進みます。
止める前に、電気を使うものを切る。次にかけるとき、いきなり全部が動き出すことがなくなります。
端子の緩みと白い粉を、年に一度見る。接触が悪いと、充電も始動も効率が落ちます。
長く乗らないときは、充電器を使う。月に一度つなぐだけで、状態が保たれます。
上がる原因を掘り下げた話はバッテリーがすぐ上がる原因にまとめました。何度も上がる車は、バッテリー以外に原因があります。
電圧計を使う場合
自分で測ってみたい方のために、道具と手順を書きます。難しい作業ではありません。
必要なのは、電圧を測れるテスターです。数千円のもので足ります。シガーソケットに差して電圧を表示する製品もあり、こちらは手軽です。
測る手順は次のとおりです。エンジンを切り、30分ほど置きます。切った直後は、充電の直後なので数字が高めに出ます。
そのうえで、赤い測定棒をプラス端子、黒い測定棒をマイナス端子に当てます。端子に触れるとき、測定棒が車体の金属部に同時に触れないよう気をつけてください。
もう一つ、エンジンをかけた状態で測る方法もあります。このとき、13.5から14.5ボルト程度あれば、充電の仕組みは働いています。ここが12ボルト台のままなら、充電されていない可能性があります。
数字は、季節と時間を書いてメモしておいてください。同じ条件で比べると、変化が見えてきます。
季節ごとの点検の時期
点検に向いている時期があります。結論から言えば、秋です。
理由は2つあります。一つは、夏の高温で傷んだ状態を確かめられることです。内部の劣化は、暑い時期に進みます。
もう一つは、冬の前に手当てできることです。気温が下がると、バッテリーの力は落ちます。同時に、ライトや暖房で電気を使う量も増えます。弱った状態で冬に入れば、朝に動かなくなります。
タイヤを冬用に替える時期と重ねると、忘れません。「タイヤを替える日に、バッテリーも測ってもらう」と決めておくのが、いちばん確実です。冬に向けた準備は冬の車の備えと冬支度でやること一覧にまとめました。
交換のときに決めること
替えると決めたら、次の3つを決めます。
一つ目は、型式です。今付いているものの表示を読み、英字・長さ・端子の向きを合わせます。性能を表す数字は、同じか大きいものを選びます。
二つ目は、自分で交換するか、店に頼むかです。登録作業が必要な車種や、取り出しにくい位置にある車は、店に任せるほうが確実です。
三つ目は、古いものの出し先です。買った店で引き取ってもらえるかを、買うときに聞いておきます。出し方は古いバッテリーの処分方法にまとめました。
買うときに見る表示
売り場には、同じ大きさでも値段の違う製品が並んでいます。違いは、性能と、作りの丁寧さです。
まず、型式が合っているか。ここが第一です。英字(幅と高さの区分)、長さの数字、端子の位置を表すLかRを合わせます。ここを間違えると、固定金具に収まらなかったり、ケーブルが届かなかったりします。
次に、性能を表す最初の数字。同じか、それより大きいものを選びます。小さくすると、冬の朝に力が足りなくなります。
そして、製造からの期間です。バッテリーは、棚に並んでいる間にも少しずつ自然に減っていきます。製造年月の表示を見て、できるだけ新しいものを選んでください。
保証の条件も確かめておくとよいでしょう。期間だけでなく、何が保証の対象になるかが製品ごとに違います。消し忘れで上がった場合は、保証の対象にならないのが普通です。
交換の直後に起きること
新しいものに替えたあと、いくつか変化が出ます。故障ではありません。
時計やラジオの設定が消えます。パワーウィンドウの自動の上げ下げが効かなくなることもあり、この場合は車種ごとの初期設定をやり直します。
アイドリングが少し不安定になることもあります。エンジンの制御が学習し直している間の状態で、しばらく走ると落ち着きます。
そして、アイドリングストップが数日働かないことがあります。装置が新しいバッテリーの状態を学習する仕組みのためです。何日も戻らない場合は、登録作業が必要な車種かもしれません。店に相談してください。
よくある質問
Q. 充電すれば、また使えますか。
A. ライトの消し忘れなどで一度減っただけであれば、充電して使い続けることができます。ただし、年数がたっている、深く上がった、二度目以降という場合は、充電しても力が戻りません。
Q. 性能の数字を上げれば、長持ちしますか。
A. たまる量に余裕ができるので、上がりにくくはなります。ただし、寿命そのものは、あくまで使い方で決まります。短い距離ばかりの運転が続けば、大きな製品でも弱ります。
Q. 寒冷地では、違うものを選ぶべきですか。
A. 寒い地域では、始動に必要な電流が増え、バッテリーの力も落ちます。つまり、必要な量が増えるのに、出せる量が減るという条件になります。指定の範囲で、性能に余裕のあるものを選んでください。取扱説明書に寒冷地向けの指定がある車種もあります。
Q. 点検は、どこで頼むのがよいですか。
A. 測ってもらう先はどこでも構いませんが、できれば測定の数値を見せてもらえる店を選んでください。「弱っています」だけでなく、測定値と判定を示してもらえると、納得して決められます。
Q. 車検のときに「交換をすすめられた」のですが、本当に必要ですか。
A. 測定の数値を見せてもらってください。「念のため」ではなく、数値と判定で示されるなら、根拠があります。判定が「注意」の段階であれば、すぐでなくても構いません。次の冬の前までに、と決める方法もあります。
Q. 何度も上がる車のバッテリーを、新品に替えれば直りますか。
A. 原因がバッテリーの寿命なら直ります。しかし、消し忘れ、短い距離ばかりの運転、後付け機器による消費、充電の仕組みの不調が原因の場合は、新品でもまた上がります。替える前に、原因を一度確かめてください。
まとめ
バッテリーの寿命は、年数だけでは決まりません。使い方と、置かれている環境によって大きく変わります。3年を過ぎたあたりから、点検の対象に入れてください。
自分で測るなら、エンジンを切った状態で12.6ボルト前後が健全、12.4ボルトを下回ると弱っているという目安です。ただし、電圧だけでは分からない部分があります。
そして、いちばん確かな合図は、エンジンをかけるときの音の変化です。重たくなったと感じたら、寒くなる前に点検を受けてください。
上がる原因はバッテリーがすぐ上がる原因、交換の手順は車のバッテリー交換の順番、外したバッテリーの処分は古いバッテリーの処分方法で扱っています。
長期間乗らない車のバッテリーは、車に数か月乗らないときの保管を参考にしてください。
前後の作業については、ジャンプスターターの選び方と使い方が参考になります。