玄関の鍵が回りにくい。差し込むときに引っかかる。この状態を放置すると、ある日突然、家に入れなくなります。そして、多くの場合は原因が分かっており、数百円の道具で直ります。ただし、ここで絶対にやってはいけないことがあります。潤滑のための油を差すことです。多くの人が最初にやってしまい、かえって悪化させます。この記事では、正しい手入れと、交換の判断を書きます。
この記事でわかること
- 鍵に油を差してはいけない理由
- 回りにくいときの原因の切り分け
- 正しい手入れの方法
- 交換と防犯の考え方
油を差してはいけない
まず、この一点から書いておきます。ここを知らずに手を出す人が、いちばん多い。
鍵の穴に、機械用の油や、潤滑のためのスプレーを吹き込まないでください。一時的には滑らかになりますが、その後がよくありません。
油は、空気中のほこりを吸い寄せます。内部で泥のような状態になり、細かい部品の動きを妨げます。数か月後には、油を差す前より重くなります。
そして、いったん油が入ってしまうと、素人には取り除けません。結局、交換することになります。
使ってよいのは、鍵専用の粉状の潤滑剤だけです。数百円で、ホームセンターや通販で手に入ります。
鍵の中で何が起きているか
中の仕組みを知っておくと、なぜ油が駄目なのかも腑に落ちます。
鍵の穴の中には、細いピンが何本も並んでいます。正しい鍵を差し込むと、そのピンが決まった高さにそろい、回せるようになります。
この動きは、非常に精密なものです。わずかなごみの混入や、鍵そのものの摩耗で狂います。
だから、内部を汚さないこと、鍵そのものを傷めないことが、手入れの中心になります。
粉状の潤滑剤が使われるのも、この構造のためです。液体と違い、ほこりを集めません。
原因を切り分ける
回りにくいと感じたとき、原因は三つに分かれます。
一つめは、鍵の穴の内部です。ごみがたまっている、または内部の部品が摩耗している。この場合、どの鍵を使っても同じように重い。
二つめは、鍵そのものです。長年使って、山の形が削れています。予備の鍵で試して、そちらが軽く回るなら、これが原因です。
三つめは、扉のほうです。扉が下がって、金具の位置がずれています。この場合、扉を持ち上げながら回すと軽くなる、という特徴があります。
この三つを見分けてから、対処に進んでください。
穴の掃除
一つめの原因、内部にごみがたまっている場合の対処です。
まず、空気を吹き付ける道具で、内部のほこりを飛ばします。事務用品として売られている、缶入りのものが使えます。
そのあと、鍵専用の粉状の潤滑剤を、少量だけ吹き込みます。入れすぎないでください。
そして、鍵を差し込んで、数回抜き差しします。奥まで行き渡らせるためです。
これで、多くの場合は改善します。年に一度やっておけば、そもそも重くなること自体がありません。
鍵そのものの手入れ
穴の側だけでなく、差し込む鍵の側にも汚れは付きます。
ポケットや鞄の中で、ほこりや繊維が付着します。それを穴の中へ持ち込んでいるわけです。
乾いた布で拭くだけでも、かなり違います。使い古した歯ブラシで溝をこするのも有効です。
ただし、鍵を洗剤で洗ったり、水に浸けたりしないでください。乾ききらないまま差すと、内部にさびを呼びます。
そして、鍵をキーホルダーに何本もぶら下げないでください。重みで、差し込んだ状態の鍵に横向きの力がかかります。これが、内部を摩耗させます。
合鍵の落とし穴
意外と見落とされている原因が、もう一つあります。
合鍵から、さらに合鍵を作ると、わずかな誤差が積み重なります。二代目、三代目となるほど、元の形から離れていきます。
この誤差が、回りにくさの原因になります。そして、精度の低い鍵を使い続けると、穴の内部も削られます。
だから、合鍵は必ず、最初に付いてきた鍵から作ってください。合鍵を店に持ち込むのではなく、元の鍵を持っていくということです。
その元になる鍵は、普段使わずに保管しておくのが理想です。使うのは、そこから作った鍵にしてください。
扉のずれを直す
三つめの原因、扉のずれへの対処です。
扉には、飛び出す金属の部品と、それを受ける枠側の金具があります。この二つの位置が合っていないと、鍵が回りません。
受ける金具に、こすれた跡が付いていないか見てください。上側や下側が削れているなら、位置がずれています。
金具はねじで留められており、多くは少し動かせる余裕があります。ねじを緩めて、位置を調整してみてください。
それで足りないなら、扉を支える金具の調整が必要です。ここは製品によって方法が違うので、説明書を確認してください。
交換する判断
手入れをしても直らない場合の話です。
掃除しても重い、鍵を替えても同じ、扉の調整でも変わらない。こうなったら、内部が摩耗しています。交換の時期です。
目安としては、十年から十五年と言われています。毎日何度も使う部品なので、消耗します。
交換は、穴の部分だけを取り替える方法と、機構ごと替える方法があります。前者なら、部品代が一万円台から、作業も比較的簡単です。
ただし、扉に合う型番を選ぶ必要があります。扉の厚み、ねじの間隔、扉の側面に見える板の寸法。これらを測って、合う製品を探してください。分からなければ、業者に頼むのが確実です。
古い鍵の防犯上の問題
交換を考えるとき、動作の重さとは別の理由もあります。
古い形式の鍵は、工具で短時間に開けられてしまうものがあります。何十年も前の住宅では、この種類が付いていることがあります。
今の製品は、内部の構造が複雑になり、こうした手法に強くなっています。
鍵の表面に、細かい凹みが並んでいる形式なら、比較的新しい構造です。ぎざぎざの山だけの形なら、古い可能性があります。
そして、鍵が一つしかない扉は、二つに増やすだけで侵入の時間が倍になります。空き巣は、時間がかかる家を避けます。
凍結と冬の対策
寒い地域に住んでいる方への話です。
鍵の穴に入った水分が凍ると、差し込めなくなります。雨の日や、洗車の後に起きやすい現象です。
この場合、熱湯をかけないでください。急な温度差で部品が傷み、かけた水がまた凍ります。
鍵を手で温めてから差す、解氷用の剤を使う。この二つが正しい対処です。解氷剤は、車用のものが数百円で買えます。
予防としては、穴にカバーを付ける方法があります。寒い地域の住宅では、最初から付いていることもあります。
鍵をなくしたとき
起きてから慌てないために、考えておくことです。
紛失したら、拾った人が使える状態です。住所が分かるものと一緒になくしたなら、交換を急いでください。
賃貸では、管理会社に連絡してください。勝手に交換すると、退去時に問題になります。
そして、玄関の周りに予備の鍵を隠さないでください。植木鉢の下、メーターの箱の中。こうした場所は、真っ先に探されます。
信頼できる人に預ける、実家に置いておく。こうした方法のほうが、はるかに安全です。
手入れをする時期
この作業は、不具合が出てからやるものではありません。
年に一度、時期を決めて行ってください。年末の掃除のときや、火災警報器の点検と同じ日にまとめると、忘れません。
作業そのものは、五分で終わります。空気で吹いて、粉を少し入れて、鍵を数回抜き差しするだけです。
玄関だけでなく、勝手口、物置、門扉も同じです。特に、屋外にあって普段あまり使わない鍵は、動かさないぶん固まりやすい。いざ使おうとして回らない、ということが起きます。
自転車やバイクの鍵も、同じ考え方で手入れできます。こちらは雨に直接さらされるので、より条件が厳しくなります。
兆候を見逃さない
鍵は、ある日突然使えなくなるわけではありません。必ず前触れがあります。
差し込むときに、以前より引っかかる。奥まで入れたとき、手応えが変わった。回すときに、途中で止まる感じがある。どれも、進行中の合図です。
そして、鍵を少し抜いたり、揺すったりしないと回らなくなったら、かなり進んでいます。この状態を「なんとかなっている」と放置していると、ある朝、まったく動かなくなります。
出勤の直前や、帰宅した夜に起きれば、その場で業者を呼ぶことになります。費用も、余裕のあるときに頼むより高くつきます。
だから、少しでも変化を感じたら、その週末に手を入れてください。これが、いちばん安く済む対処です。
業者に頼むときの注意
自分ではどうにもならない場面もあります。
鍵が中で折れた、まったく回らない、締め出された。こうしたときは、専門の業者を呼ぶことになります。
ここで注意が要ります。緊急の場面につけ込んで、高額な請求をする事例が報告されています。検索して最初に出てきた広告に、そのまま電話するのは避けてください。
電話の段階で、作業の費用と出張の費用を確認してください。現地で見ないと分からないと言われた場合でも、おおよその範囲は聞けるはずです。作業を始める前に、必ず金額の合意を取ってください。
そして、身分証で住人であることを確認されます。これは正当な手続きなので、応じてください。逆に、確認もせずに開ける業者は、信用しないほうがよいでしょう。
平時のうちに、地域の鍵の店を調べて連絡先を控えておくと、こうした被害を避けられます。
締め出されないための備え
鍵の不具合とは別に、そもそも入れなくなる場面があります。
ごみを出しに行く、宅配を受け取る。ほんの数十秒のつもりで出た間に、扉が閉まってしまう。オートロックの形式や、風の強い日に起きやすい事故です。
これを防ぐには、短時間でも鍵を持って出る習慣をつけることです。玄関の内側に、鍵を置く定位置を作っておくと、手に取りやすくなります。
家族が複数いるなら、それぞれが鍵を持つ。一本を使い回していると、行き違いで誰も入れないという事態が起きます。
そして、締め出されたときに、窓から入ろうとしないでください。高い場所からの転落や、ガラスで手を切る事故が起きています。費用はかかりますが、業者を呼ぶほうが安全です。
鍵まわりの防犯を上げる
手入れのついでに、見ておきたい点があります。
扉と枠の隙間から、内部の金具が見えていないか。ここから工具を差し込まれる手口があります。隙間を覆う金属の板を後付けできる製品もあります。
玄関の周囲が暗くないかも、確認してください。人が近づくと点く照明は、数千円で設置できます。手元が明るくなるので、鍵を差すときにも役立ちます。
そして、玄関の前に高い植木や物置があると、身を隠す場所になります。外から見通せる状態のほうが、安全です。
鍵そのものを強くするだけでなく、こうした周囲の条件も合わせて考えてください。侵入をあきらめさせるのは、鍵の頑丈さだけではありません。
よくある質問
すでに油を差してしまいました
量が少なければ、空気を吹き付けて飛ばし、様子を見てください。改善しないまま重くなっていくようなら、交換を検討することになります。今後は、鍵専用の粉状のものだけを使ってください。
鍵が折れて中に残りました
細いもので取り出そうとすると、内部を傷めて奥へ押し込みます。鍵の業者に頼んでください。取り出しだけなら、交換より安く済むことが多い。折れる前に、回しにくさの兆候があったはずです。
電気で開ける鍵はどうですか
後付けできる製品があり、扉に貼るだけで使えるものもあります。ただし、電池が切れると開きません。物理的な鍵を併用できる製品を選び、予備の電池を用意しておいてください。
賃貸でも交換できますか
勝手にはできません。ただし、防犯上の不安や、不具合があるなら管理会社に相談してください。入居時に交換されていることが多いのですが、確認する価値はあります。
まとめ
鍵が回りにくくなったら、まず油を差したくなります。しかし、そこを我慢してください。液体の油は、ほこりを集めて必ず悪化させます。使うのは、鍵専用の粉状の潤滑剤だけです。そのうえで、原因を三つに分けてください。穴の内部か、鍵そのものか、扉のずれか。予備の鍵で試す、扉を持ち上げて回してみる。この二つで切り分けられます。そして、合鍵は必ず元の鍵から作ってください。