引っ越しに必要な工具|家具の分解から退去前の確認まで

引っ越しの準備というと、段ボールと梱包材を思い浮かべる方が多いと思います。けれど実際には、家具を分解する、照明を外す、洗濯機の水を抜くといった、工具を使う作業がいくつも出てきます。そして、その工具が先に段ボールの奥にしまわれてしまい、当日に見つからない。これが引っ越しでよくある失敗です。

目次

先に知っておくと楽になること

  • 工具はひとつの箱にまとめ、最後に積んで最初に下ろします
  • 家具を分解するときは、ネジを部品ごとに袋へ分け、写真を撮っておくと組み立てで迷いません。
  • 灯油、ガソリン、カセットボンベは、多くの引っ越し業者が運んでくれません。早めに使い切るか処分を考えます。
  • エアコンやガス機器の取り外しは、自分でやらずに専門の業者やガス会社へ

「引っ越し用の工具箱」を作る

引っ越しで使う工具は、ほとんどが家にある基本的なものです。大事なのは、それを一か所にまとめておくことです。

道具使う場面優先度
プラスドライバー(2番)家具の分解、照明やカーテンレールの金具必須
六角レンチ組み立て家具の分解必須
カッター、はさみ梱包と開梱必須
布テープ、油性ペン箱の封と中身の記入必須
小さな袋(チャック付き)外したネジを部品ごとに分ける必須
軍手や作業用手袋運搬高い
メジャー新居で家具が入るか、通路を通るかを測る高い
ペンチ固い金具の取り外し
懐中電灯電気が通る前の新居、暗い収納の奥
雑巾、バケツ退去前の掃除、洗濯機の水受け高い

これらを1つの箱に入れ、箱の側面に大きく「工具・すぐ使う」と書いておきます。

そして、この箱は最後に積んで、最初に下ろすようにしてください。自分で運ぶなら、車の助手席に置くのが確実です。新居に着いてすぐ、ベッドの組み立てや照明の取り付けで使うことになります。

工具を一式そろえていない方は、最初に揃える工具を参考にしてください。引っ越しは、基本の工具をそろえるちょうどよい機会でもあります。

家具の分解は、組み立てのためにやる

大きな家具は、そのままでは玄関や廊下を通らないことがあります。分解すれば運びやすくなりますが、新居で元どおりに組めなければ意味がありません。

  1. 分解する前に、全体と接合部の写真を撮る。
  2. 外したネジは、部品ごとに小さな袋へ分ける。袋に「棚板・左」のように書きます
  3. 袋は、その部品にテープで貼り付ける。別の箱に入れると、はぐれます
  4. 組み立て説明書が残っていれば、一緒に入れる。
  5. ネジを締め直すときは、手で最後まで締める。電動ドライバーだけで締めると、締めすぎで木部の穴が広がります

組み立て家具は、分解と組み立てを繰り返すたびに、ネジ穴が少しずつ傷みます。とくに木くずを固めた板は、同じ穴に何度もネジを締めると保持する力が落ちます。分解は、必要な部分だけにとどめてください。

組み立て家具に使う工具と締め方は組み立て家具に必要な工具で、六角レンチの選び方は六角レンチの選び方で詳しく書きました。

分解せずに運ぶなら、測ってから

分解できない家具や、分解したくない家具は、通り道の寸法を先に測ります。

玄関の幅だけでなく、廊下の曲がり角、階段の天井の高さ、新居の部屋の入り口も確かめてください。家具の幅と高さが入り口より小さくても、曲がり角で向きを変えられずに止まることがあります。重い家具の動かし方と道具は、家具の移動・模様替えの道具にまとめました。

照明とカーテンレール

天井の照明器具は、多くの住宅で、天井の差し込み口にひねって付けるだけの作りになっています。この形なら、取り外しに資格は要りません。

ただし、電線が器具に直接つながっている場合は、電気工事士の作業です。見分け方と、外すときの手順は照明器具の取り付け・交換で書きました。脚立に乗る作業なので、足元にも気をつけてください。

賃貸の場合、ここで注意したいことがあります。

  • 入居したときから付いていた照明やカーテンレールは、外さずに残す。建物の設備です
  • 自分で取り替えた照明は、元の器具に戻す。元の器具を保管していなければ、管理会社に相談します
  • 自分で付けたカーテンレールや棚は、外したあとの穴をどうするか考える。

カーテンレールの取り付け方はカーテンレールの取り付けに必要な工具にまとめています。新居で最初の夜からカーテンを掛けたいなら、窓の幅を事前に測っておくと、当日に慌てずに済みます。

洗濯機と冷蔵庫は、前日から準備する

洗濯機

洗濯機の中やホースには、水が残っています。そのまま運ぶと、トラックの荷台や、ほかの荷物を濡らします。

  1. 水道の蛇口を閉める。
  2. 取扱説明書の手順に沿って、給水ホースと本体の水を抜く。多くの機種で、蛇口を閉めた状態で短く運転する手順が案内されています
  3. 排水ホースの中の水を、バケツに出す。
  4. 給水ホースを蛇口から外す。外した部品は袋に入れて、洗濯機にテープで貼ります

ドラム式の洗濯機には、運ぶときにドラムを固定する部品が必要な機種があります。買ったときに付いていた部品を捨ててしまった場合は、メーカーや販売店に確認してください。

冷蔵庫

冷蔵庫は、前日のうちに電源を切っておくのが基本です。中が空になっていれば、棚や扉のまわりのゴムを拭いておく好機でもあります。運ぶ間に扉が開かないよう、跡の残りにくい養生テープで軽く留めておくと安心です。

  • 中身を計画的に使い切っておく。数日前から買い物を控えます
  • 電源を切ったら、霜が解けるのを待つ。
  • 下にある水受けの皿の水を捨てる。忘れると、運ぶときにこぼれます
  • 新居では、すぐに電源を入れず、説明書に書かれた時間を待つ。

最後の点は、機種によって案内が違います。運んだ直後は中の冷媒が落ち着いていないため、しばらく置いてから電源を入れるよう示している製品があります。

運んでもらえない物があります

灯油、ガソリン、カセットボンベ、スプレー缶などの燃えやすい物は、多くの引っ越し業者が運搬を引き受けていません。トラックの荷台は、夏には高温になり、荷物どうしがぶつかり合います。漏れた燃料や、破裂したボンベは、ほかの荷物ごと火災につながります。段ボールに紛れ込ませて運ぼうとしないでください。業者に伝えずに積めば、事故が起きたときの責任も問われかねません。何を運べないかは業者によって違うので、見積もりのときに確認してください。

引っ越しの日程が決まったら、次のように準備を進めます。

準備
灯油計画的に使い切る。残った分は、購入した販売店などに処分を相談
石油ストーブタンクと本体の灯油を抜き、空にしてから運ぶ
ガソリン草刈機などに入っている分も含めて、燃料を抜く
カセットボンベ使い切る。自分で運ぶ場合も、車内に放置しない
スプレー缶使い切り、自治体の決まりに従って処分

余った灯油の扱いは去年の灯油は使えるかに、ストーブの灯油を抜く手順の考え方は石油ストーブ・ファンヒーターの手入れにまとめました。カセットボンベを自分の車で運ぶときの注意は、カセットボンベの保管方法で書いた、車内の温度の話と同じです。

自分でやらないほうがいい取り外し

引っ越しの費用を抑えたくて、何でも自分で外そうとする方がいます。ですが、次の2つは専門の手に任せてください。

エアコン

エアコンの室内機と室外機は、冷媒の通る管でつながっています。取り外すときには、冷媒を室外機に回収する作業が必要です。管を外したり切ったりすれば、冷媒が抜けて、新居で使えなくなります。

取り付けの側でも、専用の工具と、場合によっては電気工事の資格が要ります。詳しくはエアコン取り付けに必要な工具と資格を参照してください。引っ越し業者が、提携している専門業者を手配してくれることもあります。

ガス機器

ガスの閉栓と開栓は、ガス会社が行います。新居で使い始めるときには、立ち会いが必要になるのが一般的です。予約が混み合う時期もあるので、日程が決まったら早めに連絡してください。

ガスこんろなどの機器の接続にも、自分でしてよい範囲と、してはいけない範囲があります。ガス工事は自分でできる?で線引きを整理しました。都市ガス用とプロパンガス用の機器は、互換がありません。引っ越し先のガスの種類も、事前に確かめてください。

新居で最初にやること

荷物を運び込む前に、数分でできる確認があります。ここを飛ばすと、荷物が積み上がってから困ることになります。

  1. 分電盤のブレーカーが上がっているか見る。入居前はブレーカーが落とされていることがあります。場所だけでも先に確かめておくと、夜に電気が点かないときに慌てません
  2. 水道の元栓が開いているか確かめる。蛇口から水が出なければ、メーターのそばの止水栓を見ます
  3. ガスの開栓の立ち会い時間を守る。立ち会えないと、その日にお湯が使えません
  4. 部屋の傷や汚れを、荷物を入れる前に写真に撮る。日付の分かる形で残します
  5. 照明、カーテン、寝具を最初に整える。その夜を過ごすための最低限です

4番は、次に引っ越すときの自分を守る作業です。

入居したときからあった傷と、住んでいる間にできた傷は、時間がたつと区別がつかなくなります。家具を置く前の、何もない部屋の写真が、退去のときに役に立ちます。床の傷、壁の穴、設備の不具合は、見つけたら管理会社にも伝えておいてください。

ブレーカーの見方は分電盤とブレーカーの基礎に、止水栓の場所の考え方は水道管の凍結対策にまとめました。どちらも、住み始めてから一度は確かめておきたい設備です。

退去の前にやること

荷物を出したあとの部屋は、住んでいる間は見えなかった汚れや傷が目立ちます。家具をどかした床の跡や、冷蔵庫の裏の壁は、とくに見落としやすい場所です。

  • 家具の跡や、壁の汚れを掃除する。
  • 自分で開けたネジ穴を確かめる。
  • 設備の付属品(照明、リモコン、鍵)がそろっているか見る。
  • 部屋の状態を、写真に残しておく。

壁の穴については、画鋲の小さな穴と、ネジの穴では扱いが違うとされています。そして、雑に埋めた補修の跡が、かえって印象を悪くすることもあります。自分で補修するかどうかは、賃貸でできるDIYの範囲壁の穴・傷の補修を読んでから決めてください。迷ったら、管理会社にそのまま伝えるのが確実です。

引っ越し前によく出る疑問

Q. 新居で洗濯機を自分でつないでもいいですか

A. 蛇口に給水ホースをつなぐ作業は、多くの場合、自分で行えます。

ただし、蛇口の形によっては、つなぐための部品が別に必要です。旧居と新居で蛇口の形が違うことはよくあります。つないだあとは、少し水を出して、つなぎ目から漏れていないかを必ず確かめてください。漏れたまま使えば、下の階まで水が届くことがあります。

Q. テレビの壁掛け金具は、外したほうがいいですか

A. 自分で付けたものなら、外すのが原則です。

重いテレビを支えるための金具は、太いネジで壁の下地に留められていることが多く、外したあとの穴も大きくなります。賃貸であれば、外す前に管理会社に相談してください。新居で付け直すなら、壁の中の下地の位置を確かめてからです。下地の探し方は壁に棚を付ける必要工具で書きました。

Q. 工具は新居に着いてから買えばいいですか

A. 最低限のドライバーとカッターは、旧居で手元に残しておくことをすすめます。

引っ越しの当日は、ベッドの組み立て、照明の取り付け、段ボールの開梱と、すぐに工具を使う作業が続きます。新居の近くの店を探して買いに行く時間は、なかなか取れません。

逆に、錆びた工具や刃の欠けたニッパーのように、傷んで使っていない工具は、引っ越しを機に手放すのも一つの方法です。荷物が減るうえ、新居で本当に使う工具だけを一つの箱にまとめやすくなります。処分するときは、自治体の区分に従ってください。

引っ越しの工具を一箱に

  • 工具は一つの箱にまとめ、最後に積んで最初に下ろす。
  • 家具の分解は写真とネジの小分け。締め直しは手で。
  • 洗濯機と冷蔵庫は前日から水と霜の準備
  • 灯油・ガソリン・ボンベは、多くの業者が運ばない。早めに使い切る。
  • エアコンとガス機器は、専門の業者とガス会社へ。
  • 退去前は穴と付属品を確かめ、写真を残す

引っ越しの当日は、思っている以上に慌ただしくなります。その中で「ドライバーはどの箱に入れたか」を探す時間ほど、もどかしいものはありません。

箱ひとつ分の準備で、当日の作業はずいぶん落ち着いたものになります。荷造りを始める最初の日に、まず工具箱を作ってください。

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この記事を書いた人

工具逆引き堂の運営者。乙種第4類危険物取扱者(令和3年8月取得)、第二種高圧ガス販売主任者(令和8年5月取得)。ガソリン・灯油などの燃料やカセットボンベの扱いを中心に、作業ごとに必要な工具と、法令・安全上の注意点を整理しています。資格の詳細と記事の守備範囲は運営者情報をご覧ください。

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